GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
バトルトーナメント決勝戦を目の前にして巻き起こった、世界規模のサイバーテロの影響でGBBBBは長期のメンテナンスに入っていた。
首謀者達とのガンプラバトルはアラタ達が勝利を収めたが、むしろGBBBBの今後と言う意味では、これからが本番だった。
「今回の事件に関しては首謀者が逮捕されたことにより、GBBBBはむしろサイバーテロに使われたということで同情的な声も上がっているけれど、サブカルチャーに疎い者達や一部の工作員によるネガキャンは未だに続いている」
経営者同士の会議でウィルが端的に現状を説明していた。
非常に運が良いことに今回の事件では死者は出ていなかったので、怒りの声はずっと規模の小さい物で済んでいた。
だが、何処にでも騒ぎたてる輩はいる。インプレッションを稼ぐ為の煽情的な見出しや憎悪を煽る者達も少なからずはいる。個人だけではなく、ラシードと繋がりがある様な者達も少なくは無いだろう。
「それに、ただでさえ長期メンテナンスだ。この間に、別のゲームに移ったユーザーも少なくはあるまい」
代表の1人が懸念を述べた。拭い切れない風評被害に加えて、現代はもはやゲーム戦国時代と言っても良い。
ガンダムと言うIPが如何に魅力的であろうと、他にも面白いゲームは多数存在しているのだ。プレイできない間に他所にユーザーを取られるということは大いにあり得る。
「再開の暁には、バトルトーナメント決勝戦も行うにしても。間が空いてしまっては、熱量的にも盛り上がり辛いだろう」
また、別の代表が述べた。試合や大会などはスケジュールを組み立ててユーザーを盛り上げていく物でもあり、決勝戦だけ再開しても熱が続いているとは思い難い。ウィルは彼が言おうとしていることを直ぐに汲み取った。
「なので、もう一度バトルトーナメントを予選からやり直そうと思います。『ビアンカ』のクランと『マイスター』のクランは予選を免除した上でね」
つまり、一度負けた者達でも敗者復活の可能性もあれば、優勝候補である二つのクランに先んじて対戦できる可能性もあるという訳だ。GBBBB再開の契機としては、上位プレイヤー達のモチベーションを大きく刺激してくれることだろう。
「だが、これだけでは少し物足りない気がする。PvPユーザー以外をも取り込む戦略は……あるかね?」
GBBBBにいるユーザーは何も皆が対戦を好んでいる訳ではない。
ガンプラのビルドに執心する、いわゆる『マイルーム勢』も多く、彼らを盛り上げる為にも『ビルド』をメインにした『コンテスト』と呼ばれるイベントも定期的に開催しており、オリジナルの解釈や素晴らしい造詣の物もあれば、GBBBBの民度を表すが如き作品群も少なからず提出される。
「勿論です。その為に、今回はスポンサーに死ぬほど無理を言って新規のパーツを実装させて貰うつもりです。レコ君、プロモの再生を」
『はい! 分かりました!』
代表達は察していた。『アレ』を使うのはGBBBBの正式サービス開始の時では無かったのか。そんなにイベントを集中させてしまって、今後のスケジュールのタネは尽きないのかと。
再生されたのは、今はまだどの媒体にも流されていない物だった。1年前、ガンダムSEEDフリーダムが界隈を大いに盛り上げ、GBBBBの盛況にも一役買ってくれた。そして、再生されたのは……新作のガンダム。では無かった。
『人類が増え過ぎた人口を……』
もはや、ガンダムに携わっている者達にとっては馴染みのある口上だ。オリジンかHDデジタルリマスターか。いや、そんな話ではない。
サイド7。これからリアルでも連綿と続いて行く伝説の始まりであるが、この映像では展開がまるで違っていた。
「『Beginning』に続き、最新作のガンダム『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』の先行上映と最速での主役機のパーツ実装を発表します」
これは危険な賭けである。最速の実装は関心こそ呼ぶかもしれないが、コンテンツの消費速度を早めてしまう。最新作のガンダムのパーツが見飽きた物、になってしまえば、イメージ損は計り知れない。
「ウィル君。これが如何に危険な試みかは分かっているハズだ。焦る必要はない。コンテストとバトルトーナメント決勝戦の二本立てでは駄目なのか?」
ドル箱にもなり得るコンテンツで寿命を縮めかねない行為は避けたい。というのは、経営者としてはむしろ必要な慎重さであった。だが、ウィルは首を横に振った。
「今の移ろいやすいユーザーを取り戻すには、これ位の熱量が必要だ。それに、戦ってくれた彼らに感謝の意味も込めている」
慎重を期している間にユーザーが離れてしまっては元も子もない。
何より、GBBBBだけではなく、社会のインフラを築く『マザーAI』をテロリストの魔の手から守った有志を引き合いに出されては、代表達も一考せざるを得なかった。
ウィルは若く、卓越した経営手腕を持っている。だが、市場の動きや積み重ねて来た人脈。何よりも、利益に繋がるかという直感的な『センス』については、この場に集まった代表達の方が上だ。最もメインターゲット層の感性に近い、若手社長の提案と現状を鑑みた結果、代表達は頷いた。
「分かった。前向きに検討しよう」
「ありがとうございます」
決してお茶を濁す言葉ではなく、利益を出せるか。あるいは今後のスケジュールなども含めて考えるという、実施を視野に入れた発言だった。
細かい取り決めをした後、本社に戻った彼はマイスターことタクマ達にも事情を説明したが、当の本人は噴き出していた。
「ウィル。お前が、俺達に感謝しているって」
「あーいう、オジサン達って義理人情が好きだからね。ビジネスの世界は冷酷なやり取りだけじゃないんだよ」
「正直、キャラ作り過ぎでしょうとは思っていましたが」
傍で控えていたメイドのドロシーの呟きは一旦置いとくにして。
タクマ達は経営陣に近い故、最新作のガンダムの存在も知っていた。試写会にも参加する予定ではあるが、彼が何を思っているのかウィルは察した。
「一緒に見たい相手がいるって顔しているね」
「分かり易いか?」
「それはもう。最近、惚気話が多かったので腹が立ちまくっています。良かったですね、業務時間内で」
「なら、15分は話し続けても問題ないな」
タクマが煽った。あの飲み会でミサが大胆な告白をして来たので、GBBBBのトッププレイヤー達の間では、彼らの仲は公認の物となっていた。
「君達の仲が進展しないのをもどかしく思っていたけれど、くっ付いた瞬間にキララクレベルだとは思わなかったよ。時間が空いて破局したりするよりかは良いけれどさ。だから、一緒に最新作のガンダム。見たいだろ?」
「……正直に言うと。だけど、ミサは関係者でも何でもない。私情を挟むべきでは無いだろう」
こういう生真面目な奴だからウィルは雇用しているのだが、彼はビジネス一辺倒な人間と言う訳では無かった。
「じゃあ、こういう理由はどうだろう? バトルトーナメント決勝戦まで進んだけれど反故にしたお詫びと言うことで。ミサ達が所属しているクランは『フリーダムフリート』と同じく、今となってはスタッフ側だしね」
これだけスタッフ側と交流をしていることを運営が把握していない訳もなく。
実際、そんな彼らだからこそ。先日の騒ぎでは大いに力を貸して貰えた訳だが。一緒に映画を見に行ける可能性を聞いて、タクマの端正な顔が戸惑いと喜びで凄いことになっていた。
「顔面可変機ですね」
「ミサと一緒に見に行く映画が最新ガンダムだったら、ロマンティクスじゃないか?」
「去年、盛り上げてくれた映画ガンダムのED曲を隠語みたいに使うんじゃない。ただ、2人きりと言う訳には行かないよ? 誘うなら、ビアンカのメンバー全員を誘わないと」
流石に通すべき筋は通すこともあり、試写会に呼ぶとなればビアンカのメンバー全員に声を掛けるべきではある。
「今からでも連絡を入れよう。だが、彼らは守秘義務を守れるだろうか?」
「一人、心配な人間がいますが」
ドロシーがサクッと言った。これは決して該当人物の人格とか性格のことではなく、彼女が動画配信者と言うこともあり、不用意な秘密を持っていてポロリとこぼした場合のヤバさが他メンツとは比べ物にならないのだ。
「ミサからも話は聞いているが、意外と規律や案件はキチンと守るそうだ。大丈夫だろう」
「よし、じゃあ。早速打診をしようか」
学生は予定が付きやすいかもしれないが、大人などは早めに告知をして行いと都合が付かなくなる。という、ウィルの判断は正しい物だった。
しかし、1つ誤算があるとすれば。連絡を入れようとした相手は、大半がガンダム好きであるということだった。即ち。
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「(があぁああああああ!! 喋りてぇえええええええええ!!)」
連絡を受けたアラタは悶えていた。水星の魔女、SEED FREEDOM、復讐のレクイエムに続く最新のガンダム。
しかも、脚本を書いているのは、とある有名な怪獣や宇宙人。改造人間などのリブート作品で有名な『あの方』だ。興味が無い訳がない。
『良かったですね。誰よりも先に鑑賞できるなんて』
「だから辛いんだよ!」
スマホに映し出された文は嬉しそうにしていたが、アラタはそれ所では無かった。皆より、先に見るということは誰よりも楽しみを先に享受できるということだ。
だが、同時に守秘義務も存在する。ネタバレ厳禁程度ではなく、会社の規約などにも絡んで来るのだ。
『でも、リンやコウラ達と話し合えば』
「俺! ガンブレ学園生徒!!」
ただでさえ、ガンダム好きが大量に集まる学園で自分だけが最新作の内容を知っていると生じるのは優越感。ではない、誰とも話題を共有出来ない悶絶である。それでも最新作を見たい欲求には敵わなかった。
「と、とりあえず。皆と話を共有しておくか」
既に全員にも話が回っているだろうということを考えて、チャットアプリに入ってみた。案の定、カルパッチョが騒ぎ立てていた。
果たして、この熱量に対抗できるか? 映画を見た後には更に過熱しそうだ。その前哨戦だろうと考えて、文とアラタの2人も会話に参加した。