第15話 置きっぱなしの未来皇
場面は戻り、旅館部屋の一室。対峙する未来皇とお師匠・・・!!
お嬢「ククク。どう?目もくらむでしょう?この輝き?」
お師匠は、私のフィールドで威風堂々と剣を構える未来皇を、眩しそうに見つめる・・・けれどすぐに眉間に皺を寄せ、いつもの淡泊そうな表情に戻った。
探偵「・・・成程な。確かに、厄介だ。そのモンスターは。」
FNo.0 未来皇ホープ エクシーズ・効果モンスター
ランク0/光属性/戦士族/攻 0/守 0 「No.」モンスター以外の同じランクのXモンスター×2
ルール上、このカードのランクは1として扱う。
(1):このカードは戦闘では破壊されず、このカードの戦闘で発生するお互いの戦闘ダメージは0になる。
(2):このカードが相手モンスターと戦闘を行ったダメージステップ終了時に発動できる。その相手モンスターのコントロールをバトルフェイズ終了時まで得る。
(3):フィールドのこのカードが効果で破壊される場合、代わりにこのカードのX素材を1つ取り除く事ができる。
お嬢 手札4枚 場 FNo.0 未来皇ホープ
探偵「戦闘での破壊は免れ。更に戦闘中だけ戦ったモンスターのコントロールを得る「友愛」の効果。加えて効果破壊までも二回まで無効に出来る。「スクラップ・ドラゴン」では壊せず、バウンズで除去できる「スクラップ・ツイン」を出そうとも、「未来皇」しかフィールドにいない今、「二枚」なければ「ツイン」の効果は使えない。しっかり学習しているじゃないか。お嬢さん。」
お嬢「貴方とそばかす娘のデュエルを思い出しただけよ。どう対処するのかしら?ロートルのお師匠には対処何て浮かばないんじゃあないかしら?師弟関係、「強制転移」させてやるわ。」
探偵「ドロー。・・・「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン」をPスケールに設置!さらにモンスターとカードを一枚セットしてターンエンド!そしてエンドフェイズ時に、「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン」を破壊する事で、「星読みの魔術師」を手札に加える!!」
お嬢「遅い!ペンデュラムするにはあまりに遅いわ。予想通りスクラップ・ドラゴンは出さない・・・当然よね。奪われるだけじゃないくて、そのまま殴られちゃんだから。」
探偵「随分とドスの利かせ方も上手くなったな。そんな事は教えた覚えはないがな。」
お嬢「自前よ。ど・う・せ、「雲魔物」は低攻撃だから、ある程度はダイレクトアタックを受けても耐えられる、とか考えているのでしょう?」
探偵「!!」
お嬢「そんなヴェインホープ。私の成長で消し飛ばしてやる。私のターン!ドロー!」
お嬢手札 5枚
お嬢「魔法カード!「愚かな埋葬」を発動!このカードでデッキから「雲魔物タービュランス」を墓地に落とし!加えて魔法!「サルベージ」で攻撃力1500以下の水属性モンスター・・・すなわち「雲魔物スモークボール」と「タービュランス」の二体を手札に加える!」
お嬢「そして。タービュランスを召喚!その効果でデッキから新たな「スモークボール」を特殊召喚する!」
探偵「!?そんな事をすれば、「スクラップ・ツイン」の効果を許すだけになるぞ!」
お嬢「かもしれないわ。けれどそれ以上の勝機を既に私は見つけているのよ。貴方への宿題の回答、その3!ちょっと事故が怖かったけれど案外うまく回ってくれた!」
お嬢「魔法カード!!「融合」!!!」
探偵「!!!それが出るという事は!」
お嬢「手札の、「スモークボール」とフィールドの「スモークボール」、二体の通常モンスターを超然たる力の渦でかき回し、原始の龍を復活させる!!」
雲魔物タービュランス+雲魔物タービュランス=!!!
「出でよ!始祖竜ワイアーム!!!」
古代の世界から呼び覚まし原始の龍が、野蛮さを忘れた現代の生物に弱肉強食を教えるべく咆哮する!!!
始祖竜ワイアーム 融合・効果モンスター
星9/闇属性/ドラゴン族/攻2700/守2000 通常モンスター×2
このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。
(1):「始祖竜ワイアーム」は自分フィールドに1体しか表側表示で存在できない。
(2):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、このカードは通常モンスター以外のモンスターとの戦闘では破壊されず、このカード以外のモンスターの効果を受けない。
探偵「!!!これは予想できなかったな。」
お嬢「あら?「それが出るという事は」何て言ったから、予測済みだと思っていたけれど違ったのね。」
探偵「君が「融合」を使うならば、きっと似合うだろうと思っていたカードはあった。君は気づいていないみたいだがな。」
お嬢「それじゃあ、私が勝った時のご褒美にそのカードの事も追加よ。しっかりご教授されたいわ。もっとも、このワイアームでお師匠を倒すことは十分出来ると思うのだけど、どうかしら?」
探偵「・・・!」
お嬢「ワイアームの効果は、効果モンスターのあらゆる効果を受けず、戦闘でも破壊されない。つまり、通常モンスターか、魔法・罠で処理しないといけないのだけれど。お師匠の今のデッキは「ペンデュラム型」。通常型にあった、「荒野の大竜巻」や「ビックバンシュート」みたいな除去効果を持つ「魔法・罠」は少ない!精々「激流葬」位でしょうけれど、今発動されなかった事を見るとそれもないみたいね。」
探偵「そこまで考えてのこの「融合」か。狡猾だな。」
お嬢「プロの頃、相手が「ジェムナイト」や「シャドール」「ネグロス」だと予測して「封魔の呪印」積みまくった逸話を持つお師匠には言われたくないわ。・・・尤も、今ならそこまでして勝利に拘ったワケも分かるけれど。」
探偵「まあな。所詮俺そのものは二流デュエリスト。カードに愛された強運強豪ばかりのプロリーグで俺がしがみつくには、そんなセコイ手を使ってでも勝つ必要があった。彼女を守る、「館」を建てる為に。」
お嬢「・・・何年か前に海外の大会で準優勝してすぐに引退したのは、十分なお金が手に入ったから?それとも、闘う事に疲れたから?」
探偵「どっちもだ。賞金やそれまでの貯金で彼女を一生守れるであろう金は確保できた。それに、もう。ひたすら戦い、闘う相手を研究して、命を擦り切らして行うデュエルを続ける体力は無かった。デュエルアカデミア系列の教師にも誘われたけれど断ったよ。きっと、「デュエルを楽しむ事にしか興味がない無邪気な天才」とかに嫉妬して、苦しんでしまうだろうって思ってな。」
お嬢「それで、今に至るのね。ねえ。分かっている?お師匠の歩いた道は立派よ。本当に尊敬する。けど「「彼女」を守る状態が整ったから、後は目覚めるのを待つだけだ。見守っていよう。」何て人生。そんなの只の「墓守」よ。そんな未来のどこにお師匠の幸せはどこにあるの?」
探偵「・・・」
お嬢「そんなの私は認めらない。いえ、私だけじゃない。そばかす娘も。アイドルさんだってお師匠が幸せになる事を願っている。もっとさ、真剣に考えてよ。自分を
人工知能の隅から隅に走る感情を、必死に抑えるかのような機械音声でワイドさんは答えた。
ワイド「―――肯定。」
探偵「…ワイド。」
ワイド「主の選択を全力で支えるのが精霊の役目。そして「彼女」へ直接手を下したのは私です。それゆえの使命を感知し、これまで御主人の行動を肯定してきましたが。御主人。御嬢様の言う通りです。貴方の人生はまだ長い。その時間を、憂いだけで過ごすのを許せるほど。私は愚かなAIではありません。」
探偵「・・・」
お嬢「ワイドさん、ありがとう。それじゃあ!決めてやるわ!お師匠の凝り固まった頭脳を震盪させる、
お嬢「バトルよ!まずは「未来皇」でそのセットモンスターを攻撃する!その際生まれるダメージは無効にされる!その臆病の塊みたいなセット、見せてみせてもらうわ。」
探偵「ッ!!」
セットモンスター⇒「スクラップ・サーチャー」
お嬢「あら意外。サーチャーだったわね。ゴブリンあたりだと思ったわ。けれど。「未来皇」の効果発動!!バトルフェイズが終わるまで戦ったそのモンスターをこちらの陣営の味方にするわ。カモン。こっちの水はあ~まいぞ♪「スクラップ・サーチャー」!!」
スクラップ・サーチャー⇒お嬢のフィールドへ。
お嬢「これで!貴方の場はがら空き!!畳みかえるわ!「タービュランス」「ワイアーム」でダイレクトアタック!!」
探偵「っち!!つうううううううううううううううう!!」
探偵のライフ 4000-3500=500
お嬢「効いたかしら?私の攻撃?」
探偵「・・・ああ。大打撃だよ。ちくしょ。」
お嬢「そのダメージは、お師匠の貯めに溜まった心のタンクへの風穴。さっさと醜く膿を吐き出しなさいよ。全部罵ってあげるわ。」
探偵「本当に性格の悪い弟子を持ってしまったよ。その必要はない。少なくともこのデュエルでは。」
お嬢「超えてみせるというの?この状況を。」
探偵「それは次のドロー次第。分からないがな。だがなお嬢さん。デュエルの勝敗抜きにしても。それだけはないんだよ。それだけは。」
お嬢「・・・?」
探偵「腐っても、元「プロ」。知っているかい、お嬢さん。プロデュエリストなら当然守るべき「掟」がある。」
探偵「どんなに心が揺らされようと。例えその場に暴漢が割って入り銃を向けようと。予期せぬ電報が肉親の死を伝えようと。それでも、カードを握る手が止まらない。攻略と勝利へ頭脳が回転する。それが「プロ」。感情や心など、とうにどこかに置いてデュエルに挑む。だからな。お嬢さんのその優しい言葉も。今だけは届かない。」
お嬢「気取ったことを。なら見せてよ。お師匠のデュエル。修羅道を歩き続けた男の意地を!バトルフェイズ終了時、スクラップ・サーチャーはお師匠のフィールドに戻るわ。そしてターンエンド。」
探偵「俺のターン、ドロー。」
お嬢「さあ、さっさとスクラップ・ツイン・ドラゴンでも出しなさいよ。」
探偵「やっぱり勘違いしているな。お嬢さん。」
お嬢「なにィ?どういう意味よ?」
探偵「きっと君の中には、「「ツインドラゴン」のバウンズでひとまず「未来皇」を処理して、その上で「ワイアーム」を処理できるカードが来るまで耐えきる」、なんて長期戦を想定しているのだろう?」
お嬢「・・・だとしたら?」
探偵「このデュエル、そんなものじゃあない。真実の姿は、超短期決戦。このターンで決める。手札より速攻魔法発動、「スクラップ・スコール」。「スクラップ・サーチャー」を破壊し、1ドローとデッキからの墓地肥やしを行う!俺が墓地に落とすのは、「スクラップ・ビースト」。」
探偵「そしてだ。ギリギリ間に合った二つのカード。「星読みの魔術師」と「時読みの魔術師」をPスケールにセット。これで、勝利の環境は整った・・・!行くぞ!P・召喚‼現れよ!「スクラップ・ゴーレム」!エクストラデッキからこい!「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン」!!」
オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン
ペンデュラム・効果モンスター 星7/闇属性/ドラゴン族/攻2500/守2000
【Pスケール:青4/赤4】
「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン」の(1)(2)のP効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分のPモンスターの戦闘で発生する自分への戦闘ダメージを0にできる。
(2):自分エンドフェイズに発動できる。このカードを破壊し、デッキから攻撃力1500以下のPモンスター1体を手札に加える。
【モンスター効果】
(1):このカードが相手モンスターと戦闘を行う場合、このカードが相手に与える戦闘ダメージは倍になる。
オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン スクラップ・ゴーレム⇒P召喚
お嬢「来たわね!ペンデュラム召喚!」
探偵「更に、スクラップ・ゴーレムの効果発動!墓地のレベル4以下の「スクラップ」モンスターを、自分か相手のフィールドに蘇生させる。選ぶのは、「スクラップ・サーチャー」。そしてお嬢さんのフィールドだ。」
スクラップ・サーチャー⇒お嬢のフィールドに攻撃表示で蘇生。
探偵「この時、「スクラップ・サーチャー」は、その場にいる「スクラップ」以外のモンスターを全て破壊する。」
お嬢「その程度なの?「ワイアーム」は、効果モンスターの効果を受け付けず!「未来皇」はオーバーレイユニットを一つ送る事で効果破壊を無効にする!破壊されるのは、「雲魔物タービュランス」だけよ!」
雲魔物タービュランス⇒破壊
スクラップ・サーチャー 効果モンスター 星1/地属性/鳥獣族/攻 100/守 300
このカードが墓地に存在し、自分フィールド上に存在する「スクラップ・サーチャー」以外の「スクラップ」と名のついたモンスターが破壊され墓地へ送られた時、このカードを墓地から特殊召喚する事ができる。このカードが特殊召喚に成功した時、「スクラップ」と名のついたモンスター以外の自分フィールド上に表側表示で存在するモンスターを全て破壊する。
探偵「これで。状況は整った。」
お嬢「はあ?結局!貴方は「ワイアーム」も「未来皇」を攻略できていない!!これ以上何をするつもりなのよ?」
探偵「気が付かないのかい?既に全てのパーツは出揃っている事を。バトルフェイズだ!「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン」で、攻撃表示で送り付けた、「スクラップ・サーチャー」を攻撃!」
お嬢「っ!!けれど、それじゃあライフを削り・・・っは!!」
探偵「そう。単純な話だ。「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン」が戦闘で与える戦闘ダメージは、「二倍」になる!!」
お嬢「きゃ!?嘘!?嘘!?」
探偵「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンとスクラップ・サーチャーの攻撃力の差は「2400」・・・それを二倍にし!「4800」のダメージだ!!」
お嬢「そんなあっさりとお!?きゃあああああああ!!!」
お嬢ライフ 4000-4800=-800
WIN 探偵 - LOSE お嬢
探偵「よし。俺の勝ちだ。」
お嬢「な~に~この決着の仕方!!!折角の「ワイアーム」「未来皇」、ガン無視なの!!」
探偵「そんな鬱陶しいヤツらまともに相手していたら長引くだろう?敵がいないなら作ればイイ。それだけの話だ。」
お嬢「もう!豪華なディナーを丹精込めて作ったのに、カップ麺持ち込まれた気分だわ!」
探偵「すまんな・・・けど。結局、「未来皇」から逃げちゃったなあ。いつも通り。」
お嬢「自覚しているならいいのよ。置きっぱなしにされるのは非常に腹立つけれど。逃げているって分かっているなら既に向き合っている事と同じ意味だわ。もう、過ぎた事を私が口出す資格はない。それにお師匠はもう十分、「彼女のため」出来る限りの事をしてあげている。だからもう。「彼女」の事ばかり考えるんじゃなくて、何か新しい事を始めてみたら?」
探偵「定年退職した男に言うような言葉だな。・・・新しい事、か。」
お嬢「私としては、弟子の英才教育とプロになるためのプロデュース&コネクションに人生をかけてもらいたいのだけれど。何でもいいわ。お師匠の新しい夢。私は見たいのよ。」
探偵「・・・ワイドォ。俺、何かまた出来るかなぁ。俺に何か、」
ワイド「餓鬼が母親に甘えるような言い方をしないで下さい。気持ち悪いです。ただ、私としてはやはり御主人には「デュエル」に携わっていて欲しいと述べます。唯一御主人が心から晴れやかな顔を出来るのは「デュエル」ですから。「プロデュエリスト復帰」「デュエルスクール教員」などを推奨。」
探偵「そっか。・・・ありがとうな。二人とも。直ぐには無理だろうけれど、考えてみる。そうだな。この「デュエルドラッグ事件」を解決したら。ゆっくりと、向き合ってみるよ。」
ワイド「肯定。」
お嬢「肯定。ね。お師匠。そう思ってもらえたなら、私も嬉しいわ。・・・そばかす娘やアイドルさんも、そろそろ来るはず。晩御飯食べに行きましょう。今夜はきっと鍋物よ。」
探偵「おう。」
「♪」
突然お師匠の携帯が鳴った。
探偵「はいもしもし。あ、ミュージアムの、スタッフさん。はい。え、ちょっと、早口過ぎるよ?」
探偵「落ち着いて、どうしたのかな?テレビ…分かった。」
電話をきるお師匠。
お嬢「どちら様だったの?」
探偵「例のミュージアムのスタッフさん。速急にテレビをつけろとさ。リモコンそっちある?」
お嬢「ええ。あるわ。」
ぷち。
電源をつける。古いテレビだからか映るまで時間がかかる。
探偵「?・・・!!!これは!!」
お師匠の顔は見る見るうちに青ざめる。・・・!
探偵「お嬢さん!!!万が一だ。この前渡した「PC用メガネ」をかけてくれ。」
お嬢「!分かったわ・・・これでイイ?」
探偵「ああ。ほら。・・・だれだ。こんな、気の違えた事をしたのは…。」
TVチャンネルはニュース番組だった、けれど、その画面は穏やかで安全なスタジオではなく、大都会の駅前スクランブル交差点で荒れ狂う大衆達が、デュエルディスクを構え、血走った眼で他の誰かに掴みかかる光景を映し出している。目視できる限りでも、サッカーワールドカップや人気歌手コンサートの観客と同じくらい・・・300人以上はいる。
自動車も立ち往生するどころか、暴徒と化したデュエリストがガラスを割って無理やり運転手を引きずり出そうとしている。まるで、遠くの異国で起きている暴動やテロの様な、私達に馴染みのない世界。
地獄絵図、いや、これは修羅だわ。デュエルという果てのない争いへどぶどぶ浸る、心のない世界。
TVアナウンサー「ここ、「セントラルタウン」では突然若者を中心に多くのデュエリスト達が暴動を起こしています!!彼らは誰これ構わず対戦相手を探し!!無理矢理でもデュエルを求めています!!!彼らは意思疎通が出来ず!!セキュリティの呼びかけにも曖昧な反応を示します!!現在家にご在中の方は外出を控え・・・・!!!続報です!!今入った情報によりますと、セントラルタウンだけでなく!ノースシティ!!ネオドミノ町、舞網市、サウスエリア!!各地方で同様の暴徒が発起しているそうです!!!繰返します!現在全国で「デュエリストの暴徒」が暴れています!!・・・えええ!!!なんと、各地方の約8%近くの人が、この暴走に参加している・・・!?それじゃあ、え。これは「セキュリティレベル5」。・・・現在、セキュリティが全力で対応しております。皆様は、必ずご自宅か会社、学校から離れないでください。既に「セキュリティレベル5」です。外は非常に危険です。必ず、室内に隠れてください。繰返します。」
大声で「デモンズチェーン」の発動を張り上げ、「俺が最強なんだぁぁぁ!」と自己主張する若い学生さんも。
「カード・ガンナー」を召喚し、デッキから3枚を落としながら名刺を手裏剣みたいに投げる、サラリーマンも。
スカートがめくれ、丸見えになっても一切を気にせず「メガロアビス」で追撃を仕掛ける女子高生も。
みんな、みんな、みんな。ただ「デュエルをする事だけ」を頭の中に詰めこめている。対戦相手が同じような暴徒か逃げ迷う普通の人すら気にせずに、ただ、「目の前の敵を潰し、自分の快楽を得る」。狂気の世界。
私達の知らない間に、「デュエルドラッグ」は、世界を修羅に塗り替えていたのだった。
・・・いいえ。塗り替えたのは、世界だけじゃない。私は見た。少しだけ、晴れた顔をしたお師匠の顔に、再び陰りが出来た事を。
・・・
同時刻 セントラルタウン
今まさにTVで中継された大都市駅前の地獄絵図を。
リムジンの中から窓越しに見つめる一人の少女。
妖精を思わせる金髪と儚い華奢な身体。触れば溶けてしまう様な雪の白い肌。折れてしまいそうな細い体に、もう初夏だというのに厚手のカーディガンを羽織る。けれど、彼女にとって今は「熱い」も「寒い」も関係ない。目の前で起きている「奇跡」を見ることに必死で、自分の体の事なんてどうでも良かった。
そしてハンドルを握る運転手は、その少女を愛おしそうに見つめる・・・暖かい光景だが、問題は、その運転手は相変わらず不審者全開なヴェネツィアの仮面を被る猫背の神父。
仮面神父「どうでしょう?私のクライアントの尽力によって、「決闘ジャンキー」となった群衆は?この光景を、我らは既にこれと同じ群衆を各地方で生み出しています。」
少女「ステキ・・・。本当に奇跡です!とてもワクワクします!!」
仮面神父「いえいえ。そして、この奇跡を全国。いや全世界に感染させ、この世に「修羅」を浮上させる事。それが我らの「修羅三千世界」計画です。」
少女「・・・本当に嬉しいです。最期の最期でわたしは生きる価値を見つけれました。本当に、嬉しい。こんな奇跡があっていいのでしょうか?」
仮面神父「いいのです。これは、貴女の為の奇跡。」
少女「早くまた「クライアント」様にお会いしてお礼を言いたいです。」ぽわあああ。
仮面神父「ええ、直にお会いしますよ。最も、クライアントの目的は貴女の目的とは異なりますが。」
少女「そうなのですか?この光景を作る事ではなくて・・・?」
仮面神父「ええ。「クライアント」は、「実」を手に入れるため。私は「花」を愛でる為。そして貴女は。「イコン」になるために。思惑の違う迷える子羊がたまたま乗り合わせただけの乗合船のようなモノ。けれど、貴女にとってはもう、そんな事はあまり問題ではないでしょう?」
少女「はい!デュエルできるなら!」
仮面神父「いい子ですねェ。クライアント様と次に御対面するのは三日後です。それまでは、また家で待ちましょう。」
少女「・・・。いや。」
神父の言葉を聞くと共に、一瞬で少女は青ざめる。さっきまでの興奮の熱は消え失せて、氷点下。何も聞きたくないとばかりに、耳に手を当てて目を瞑る。嫌だ。嫌だ。そう、壊れたテープレコーダーの様に呟く。
そんな少女を、憐れみと慈悲を持って神父は、肩を叩いた。
神父「やれやれ。困ったお姫様ですねェ。考えてください。いずれ我らがアジトにも、暴徒と化した決闘者が押し掛けてくるでしょう。」
少女「!!ひょっとして、」
神父「ええ。勿論。貴女には門番の仕事を任せます。貴女がデュエルをしていいですよ。」
少女「ぅぅぅぅぅぅぅう、やったぁぁぁぁ!!!ありがとう!神父様!!」
神父「くく。それと、クライアント様の補助と救助のため、貴女の弟をお借りしますが。よろしいですか?」
少女「はい!弟もきっと協力してくれます!」
神父「では。その通りに。・・・では帰りましょうか。我らの家に。」
少女「はい。」
神父「いい返事だ。」
「
妖精は、無邪気に頷いた。
第15話 置きっぱなしの未来皇
次回、第三章「修羅の道」最終話。
ここまでは臨界値。ここより先は修羅の眼の中。