「急いで病院に来て。早く。」
その少年の絶望は、セントラル南地区大会に優勝した日の帰り道、唐突にかかってきた電話が運んできた。
その日の決勝は新しいギミックが予想通りに機能して、まるで何かの映画やドラマの主人公になったような。そんな幸福感に満たされていた。
だから、その声を聴いたときも、「なんか今日はドラマチックだな」と、寝ぼけたことを感じていた。
・・・
少年の姉は妖精の様な少女だった。流れるような金髪。儚げな美貌。それこそ、何かのSFに出てくる魔術的な存在のようだった。
生まれついての持病で自宅と病院を行き来する、不憫な身であったものの、それを感じさせぬ程の不思議な魅力が彼女にはあった。
だからこそ、少年は姉のための決闘を始めた。同性の友人が欲しい姉のために、煌びやかな女装だってしていた。幸いなことに彼らの両親は資産家であり、不安定で金のかかる娘一人を養うことなど大した問題ではなかった。
だから少年は幸せだった。その電話がかかるまでは。
・・・
泣きじゃくる母。
動揺を隠しきれない父。
なんと言葉に起こそうか困り果てた医者。
・・・そしてそれを少年は少しだけあけたドアの隙間から見ていた。
「そんな・・・もう方法はないのですか!?他の病院ならば!」
「本当に申し訳ございません。このようなケース。一切記録がないのです・・・
「あの娘が何をしたっていうのよ!!!なんであの娘ばかり!!!」
「落ち着け!!」
「でも貴方!」
「・・・お医者様。もってこの娘はどれだけ生きられる?」
「分かりません。体力的には一切問題ないのです。そう、体力的には一切。」
「どういうことだ?「2年」といったではないか?貴方は私たちの「娘の命が危ない。あと2年で意識が消えてしまう」。そう言ったよな?」
「・・・そこなのです。ご令嬢は生まれつき眩暈もちで、歳をとるたびにその時間が増えている。それはご存じだと思います。」
「ああ。そうだ。だがそれが・・・っ!!」
「はい。そうなのです。この前の健康診断及び脳波のチェックの結果。彼女の脳内には異常な電流が流れている事が分かりました。自律神経を痛みつける定期的な電流です。それが彼女の脳内をフリーズさせてしまっています。」
「っ!!」
「まさか!!」
「・・・その間隔が、この数か月で急速に狭まっています。今はまだ、週に数回といった回数でしょう。ですが段々とその回数は増えていきます。そして段々とフリーズした時間が増えていき。・・・そのまま起きている時間とソレが逆転していくでしょう・・・」
「!!!」
母の限界はそこまでだった。もう言葉も出せず、涙を流す母。
それを必死で支える父。
・・・そして絶望は訪れた。いや、絶望に気づいてしまった。
あまりに悲痛な姉の人生の行方を聞いて。少年は・・・少年は・・・
笑っていた。
気づいた時には時には遅かった。少年は、姉がいなくなる事に愉悦を感じていたのだ。
そうだ。姉がいたから、両親の愛は明らかに偏っていた。虐待でもネグレストでもない。けれどなにを取っても姉が最優先。自分の扱いだって雑。
それだけじゃない。自分の今までの行動はすべて姉のためだった。決闘だって、服装だって。全ては姉と、身の回りの人に「姉思いの弟」と思われるためだった。
そうだ。もしも姉がいなかったら、今日の大会にだって両親はきっと来てくれただろう!
姉だったのだ。そんな、自分の人生をしばりつけた姉がいなくなると分かって、自分は確かに笑ったのだ。
否定したい。そんな最低の人間だとは思いたくなかった。死んでほしいわけがない!!
でも駄目だった。
日に日にフリーズの幅が伸びていく姉の姿を見るたびに、その未来を思うたびに彼の心は確かに笑う。
「生きていてほしい」「死んでほしい」。アンチノミーの牢獄が彼の心を閉ざす。
・・・正確には「生死」ではないのだが、フリーズしきった脳みそならば、少なくとも彼にとっては「死」と同意義だと思った。
自分の本性への回答時間は用意されていない。日に日に姉は壊れていく。1年が過ぎたその時には既に、一日の半分は脳内の電流が走っていた。
・・・医者の予測には二つだけ間違いがあった。
一つは、症状。電流はフリーズの時間よりも、暴走の時間を生んだ。
神経を傷つける事により意識そのものではなく、記憶障害と言語障害、自律抑制の不可能・・・わかりやすく言うなら、「発狂」。もっとも、「フリーズ」も「発狂」も「姉という存在」が死んでいくことには変わりなかったが。
二つ目は、「対策」。そう、彼女の暴走にはたった一つだけ、対策があったのだ。
その行為の間だけ、彼女はまともなコミュニケーションが取れたのだ!
・・・その行為は、「決闘」。その間だけは彼女は昔のような優しい少女の表情を取り戻す。獣の人格を捨て去る。だから、専属決闘者の彼だけがある意味で、彼女の心を知っていた。語りつくす時間があった。
彼女はいつも容赦なく弟をボコリ、勝つ。
自分の心の闇に気が付いた少年にとって、既に彼女との決闘は苦痛でしかなかった。
それでも決闘だけは彼は続けた。
いつも彼女は決闘が終わるたびにこう言った。
「ずっとずっと。決闘ができればいいのにな・・・」
そして。その願いは。とある「精霊になりかけた少女」の最後の願いと共鳴し・・・
その願いは、混沌を起こそうとする「神父」を呼び寄せた。
そう。全ては、姉のため。どこまでいっても姉のため。そして同時に自分のために。
自分の絶望を認め。全てを納得させるために。
女装したその少年は、すべてを・・・壊し、殺す。その覚悟をきめた。
第二十七話 「目覚めよと呼ぶ声がする。」
突撃したバイクが半分食い散らかしたキャンピングカー。
その損傷と裏腹に車は荒野を突き進む。
同じように決闘者も止まれない。
「計画」だとか「情報」だとかまどろっこしいものを忘れて、悪へと身を落とした女装の少年は、探偵に牙をむく!!
「「決闘!!」」
男の娘 VS 探偵
男の娘「殺す!!」
探偵「どうぞ。どうせ生き返る。」
男の娘「一生死んでいろ!うちのターン!!手札から「レスキューラビット」を召喚!そしてその効果でデッキからエーリアンソルジャーを二体特殊召喚!!」
エーリアンソルジャー×2→特殊召喚
お嬢(あいつのデッキのパターンね。方法は変えているけど、やることは一緒。つまり。)
男の娘「二体の☆4でオーバーレイ!!X召喚!!」
いでよ!ランク4!!キングレムリン!!
キングレムリン エクシーズ・効果モンスター
ランク4/闇属性/爬虫類族/攻2300/守2000 レベル4モンスター×2
1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。
デッキから爬虫類族モンスター1体を手札に加える。
男の娘「効果発動!ウチは「エーリアン・ソルジャー」を墓地に送り、デッキから「エーリアンモナイト」をサーチ!」
エーリアンナイト→手札に
お嬢「ワンパターンね。いつもそれ。」
男の娘「定石手といって欲しいね。そしてウチは、1枚のカードをセット。そして「禁止令」を二枚発動!!」
そばかす娘「げえ!出た!」
男の娘「宣言する!「スクラップ・ドラゴン」!そして「ペンデュラム・コール」!!」
探偵「!?」
お嬢「・・・思い切った作戦に出るわね。」
そばかす娘「どういうこと?」
お嬢「スクラップ・ドラゴンを封じる意味は分かるわね?」
そばかす娘「そりゃ探偵さんの主軸だからな。それにアイツの「禁止令」とか破壊できるし。」
お嬢「そうね。そしてもう一つのカード「ペンデュラム・コール」はコストが必要とはいえデッキから魔術師のPカード二枚を手札に加える強力な魔法カード。さっきの一試合を見て、探偵さんのデッキのエンジンカードだと考え宣言した。」
そばかす娘「!でもさっき別に使ってなかったじゃん!」
お嬢「使ってなくても察する。それが此奴のやり口よ。・・・やっぱり連戦をさせるべきじゃなかった。此奴に情報を収集の隙を与えてしまった!」
ペンデュラム・コール 通常魔法
「ペンデュラム・コール」は1ターンに1枚しか発動できず、「魔術師」PモンスターのP効果を発動したターンには発動できない。
(1):手札を1枚捨てて発動できる。カード名が異なる「魔術師」Pモンスター2体をデッキから手札に加える。このカードの発動後、次の相手ターン終了時まで自分のPゾーンの「魔術師」カードは効果では破壊されない。
探偵「・・・」
男の娘「ウチが思うに。お前はそのカードを入れている。なぜならば、「魔術師」のPカードを入れているだけでなく、そのカードのコストで手札の「スクラップ・ビースト」や「スクラップ・ゴブリン」を墓地に送り、「スクラップ・キマイラ」の蘇生に繋ぐ流れ。そして何より、1ターン「Pカード」の破壊を防ぐ効果が「スクラップドラゴン」の効果の弾代わりになる!そんなつながりのあるカード、入れないはずがない。そして1ターン目に場の調える「ペンデュラム・コール」はあったら危険。どうですか~~~♡ウチの予想、当たってますか~~~~~♡」
探偵「・・・っち。ドロー!」
探偵「・・・」
お嬢(嫌な感じ。あの間。まさかまじで「Pコール」があったのかしら・・・)
お嬢(それにしても。「スクラップドラゴン」を封じるってのも結構リスキーな行為よね。エクストラデッキを封じるってのは直接的なプレイングの封印には繋がらない。だって、代替えの戦術に変えればいいだけなのだから・・・)
男の娘(・・・ウチが思うに、此奴のデッキに今、スクラップ・ドラゴン以外の☆8のシンクロはいない・・・!なぜならば、さっきのデュエル、此奴は「貴竜の魔術師」をコストとして活用している。つまり、「貴竜の魔術師」とのコンボカード、「オッドアイズ・メテオバーストドラゴン」も入れている!つまりつまり、「オッドアイズ・アブソリュードドラゴン」だって入れている可能性が高い。確実に「ビーストアイズ」だっている。スクラップ・ドラゴン、スクラップツインドラゴンを各3枚投入していたとして、それらのオッドアイズ系統のカードがいるならば、はっきり言って、他の☆8のシンクロを入れている余裕はない!だからこそ、スクラップ・ドラゴンの封印は「キク」!レベル8の代替えモンスターはいない!ここからの選択肢は「ツイン・ドラゴン」か「魔術師オッドアイズ」に絞られる・・・!)
探偵「・・・魔法カード「ハーピィの羽箒」!その魔法罠をすべて破壊する!」
そばかす娘「!よっしゃ!!楽勝!」
男の娘「馬鹿が!!ウチがその手の破壊の対策をしてないと思ったか!!リバースカードオープン!「スターライトロード」!!二枚以上のカードの破壊を無効にして、エクストラデッキから「スターダストドラゴン」を特殊召喚する!!」
スターライト・ロード 通常罠
(1):自分フィールドのカードを2枚以上破壊する魔法・罠・モンスターの効果が発動した時に発動できる。その効果を無効にし破壊する。その後、「スターダスト・ドラゴン」1体をエクストラデッキから特殊召喚できる。
スターダストドラゴン→特殊召喚
スターダスト・ドラゴン シンクロ・効果モンスター
星8/風属性/ドラゴン族/攻2500/守2000 チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
(1):フィールドのカードを破壊する魔法・罠・モンスターの効果が発動した時、このカードをリリースして発動できる。その発動を無効にし破壊する。
(2):このカードの(1)の効果を適用したターンのエンドフェイズに発動できる。その効果を発動するためにリリースしたこのカードを墓地から特殊召喚する。
そばかす娘「また無効系かよ!!いい加減にしろよ!」
お嬢「まあ無効系モンスターカードの元祖みたいなものだから。それよりお師匠。随分と安直な一手だけれど大丈夫なの?」
探偵「ああ。勿論。手札から「EMドクロバット・ジョーカー」を召喚!その効果で、デッキから「慧眼の魔術師」をサーチする!」
EMドクロバット・ジョーカー ペンデュラム・効果モンスター 星4/闇属性/魔法使い族/攻1800/守 100【Pスケール:青8/赤8】
(1):自分は「EM」モンスター、「魔術師」Pモンスター、「オッドアイズ」モンスターしかP召喚できない。この効果は無効化されない。
【モンスター効果】
(1):このカードが召喚に成功した時に発動できる。
デッキから「EMドクロバット・ジョーカー」以外の「EM」モンスター、「魔術師」Pモンスター、「オッドアイズ」モンスターの内、いずれか1体を手札に加える。
探偵「さらに、Pスケールに「竜脈の魔術師」と「慧眼の魔術師」を発動!そして「慧眼の魔術師」の効果でデッキから「竜穴の魔術師」を発動!」
探偵「そして!!P召喚!!手札とEXデッキから現れよ!守備表示!「慧眼の魔術師!」攻撃表示!「オッドアイズ・ペンデュラムドラゴン」!!」
オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン
慧眼の魔術師→P召喚
そばかす娘「いいぞ!!探偵さん!!」
お嬢(完全に魔術師デッキじゃない。これ・・・)
探偵「バトルだ!オッドアイズ・Pドラゴンで「キングレムリン」を攻撃!!発生するダメージが二倍で400ダメージだ!!」
男の娘「その程度!」
キングレムリン→破壊
男の娘ライフ4000-400=3600
探偵「ターンエンド。そっちの番だ。」
お嬢「スターダストドラゴンさえいなければ、「竜穴」のP効果で「禁止令」の破壊も狙えたでしょうに・・・いや。今回はスクラップカードがなかったからスルーした・・?」
探偵「さあ?どうだろうね?読みが外れたんじゃない?君?」
男の娘「うるさい!!ウチのターン!!ドロー!!!」
男の娘手札3枚へ
男の娘「そんなPカード使って随分とご機嫌みたいだけねえ!ウチは絶対に許さない!!」
探偵「・・・つまり、君はこの決闘が楽しくないと。」
男の娘「ああそうだ!!こんなん只のツール!!」
探偵「ツール?ならこんな大嫌いなツール使ってまで君は何をしようとしているんだ?どうせ、ロクでもないに決まっているだけどな。」
先ほどのドラッグジャンキーとは違い、まともな理性を残した人間。だからこそ、コミュニケーションも挑発も心に届く。ひとまず復活の決闘に勝って冷静さを取り戻してきた探偵は、悪党の本音を引き出すための戯言を垂らす。
男の娘「ああ!!その通りだよ!!小賢しくウチからインフォメ引き出そうとしているんだろうけど!!だったら!!!教えてやるよ!ウチがこんなことしてる理由!!」
男の娘「ウチはなあ!ウチの姉ちゃんを殺して「女神」にするために決闘ドラッグ蔓延させている!どうだ!!意味が分からないだろ!!ウチだってそう思うよちくしょう!」
探偵「・・・女神?」
男の娘「続きはお前を殺してから話してやるよ!!ウチは!「エーリアンモナイト」」
を召喚!その効果で墓地のエーリアン・ソルジャーを蘇生!!そして!!シンクロ召喚!!」
こんな世界を崩すため!!
刃向うアイツの名前を叫べ!!!
姉よ!さっさと成仏したまえ!!!
☆1+☆4=☆5!!!
宇宙砦ゴルガー!!!
蒼空墜ちる。悪意の塊そのものが召喚される!
宇宙砦ゴルガー シンクロ・効果モンスター 星5/光属性/爬虫類族/攻2600/守1800
「エーリアンモナイト」+チューナー以外の「エーリアン」と名のついたモンスター1体以上 1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に発動できる。フィールド上に表側表示で存在する魔法・罠カードを任意の枚数選択して持ち主の手札に戻し、その後手札に戻したカードの数だけAカウンターをフィールド上に表側表示で存在するモンスターに置く。
また、1ターンに1度、フィールド上のAカウンターを2つ取り除く事で、相手フィールド上のカード1枚を選択して破壊する。
お嬢「でたわね・・・!!待って!あのゴルガーの効果って!!」
そばかす娘「探偵さんのPスケールカードも戻される!!」
男の娘「ゴルガーの効果発動!その効果で、ウチの「禁止令」を二枚とお前の場のお前の場の「竜脈の魔術師」を手札に戻し!Aカウンターをゴルちゃんに乗せる!乗ったカウンターは三個!」
禁止令×2→男の娘の手札へ
竜脈の魔術師→探偵の手札へ
男の娘「お前のそのウザったいPスケールを封じる!ゴルちゃんの破壊効果を発動!Aカウンター二つを取り除き、お前のPスケール「竜穴の魔術師」を破壊する!」
「竜穴の魔術師」→破壊!
そばかす娘「モンスターを狙わない!?」
男の娘「どうせ破壊しようとPスケールがある限りゾンビモンスターどもは甦る!ならばその鬱陶しい門をぶち壊す!」
探偵「・・・悪くない作戦だ。」
男の娘「そしてだ!まさかお前、封じられたのが「竜穴」だけだとは思ってないよな?ウチは、「禁止令」を再び発動!一枚増えて「三枚」のな!」
男の娘「宣言するっ!!「スクラップ・ドラゴン」!「ペンデュラム・コール」そして「竜脈の魔術師」!!」
そばかす探偵「うぉ!?」
そばかす娘「あ!!!あいつずるっこい!?」
お嬢「っち!!そういう事ね!やられた!!」
男の娘「ウチがわざわざ手札に戻させたカードを再利用させるワケないだろう!!!これでお前のペンデュラムの活用は二度とさせない!!」
お嬢「手札に戻すことで再び「発動」という手順を踏ませて、すでに発動済みのカードまで「禁止令」で封印・・・!しかも100%当たるに決まっている「宣言」!!」
男の娘「バトルだ!!ゴルガーで「オッドアイズ・P・ドラゴン」!スターダストドラゴンで「EMドクロバットジョーカー」を攻撃!塵となれ!!」
探偵「ふ!!」
「オッドアイズ・P・ドラゴン」
「EMドクロバットジョーカー」→破壊
探偵ライフ 4000-100-700=3200
男の娘「ウチはこれでターンエンド!もはやお前の手筋の半分以上が封じられている!!迂闊にウチにインフォメ晒したのがまずかったなあ~~~?」
探偵「・・・ドロー」
探偵手札 手札4枚へ
お嬢「・・・あれ。本当に詰んでいるじゃないの?お師匠?さっきみたいな派手さはないけど。これ、何気に動けないんじゃ・・?」
探偵「・・・」
男の娘「P召喚はスケールがなくて出来ない。慧眼の魔術師こそいるけれど、ここから何を出したところで逆転の一手には踏み込まれない!「ゴーレム」を出しても墓地にはチューナーはいない!ビーストを出しても肝心の「スクラップドラゴン」は「禁止令」で縛っている!せいぜいゴブリンを出して☆7のシンクロ程度だが、その程度なら大した被害にならん!ジワジワと死んでいけ!」
探偵「・・・「EMパートナーガ」。」
男の娘「あ?」
探偵「EMパートナーガ」は1ターンに一度、モンスター一体の場のEM×300攻撃力を上げる力がある。仮にPスケールに二枚発動した場合、双方の能力で1200の攻撃力が上がる。そして、「もし」それらを1ターンに2ずつ使えたならば2400もの攻撃力の上昇に。さらにモンスターゾーンに「EM」が1体いたならば3600のUPだ。」
男の娘「・・・はぁ?」
探偵「「EM」には「EMエリザードロー」というドロー効果のPモンスターもいて。パートナーガと組み合わせると2-6のPスケールが完成する。この二枚はともに爬虫類族であり、「キングレムリン」でサーチ可能。事故率も抑えやすい。」
男の娘「おいおいおい~~~?なに語っているの?頭痛い人?ウチ、イライラするんだけど~~~?」
探偵「そして「EM」には強力な「EMモンキーボード」がいる。こいつはPゾーンに発動したときだけ発動できる効果だが、「EM」カードのサーチが可能できる。ターンに1度という制限はあるが、このカードも「もし」使いまわせるならば。毎ターン非常に強力な後続補強が可能だ。」
男の娘「だから!!何の話をしている!!」
探偵「君のデッキの「可能性」の話だ。」
男の娘「はぁ!?」
探偵「君は。決闘を楽しむ奴が許せない。そう言ったね。ツールだと言った。だけど、君は本当に愉悦を感じないのか?「禁止令」と「ゴルガー」という陰湿で美しいコンボを決めて、楽しくないのか?」
男の娘「戯言を。騙されないぞ。ウチは楽しんでいるさ!けれどそれは馬鹿な獲物をインフォメの罠に嵌めた事にだ!決闘を楽しんでいるんじゃあない!」
探偵「ならば、さっきの「Pカード」「EM」を入れた君の「ゴルガー」デッキを聞いて。心は欠片も動かなかったんだな?新しいシステムや未知の決闘に対する興奮は一切ないんだな?」
男の娘「当然!「未知のカード」「可能性」そんなもの大嫌いだ!ウチは今あるインフォメと決められた運命。二つだけ知っていれば十分なんだよ!!余計なことをしゃべる位なら、さっさとサレンダーしろ!!」
ワイド「―――――完全にお節介です。ご主人。」
探偵「あ~~。なかなか君が僕にやってくれたようには上手くいかないな。お嬢さん。」
お嬢「ええ。まず、語りがだめだわ。たどたどしいし、長い。こーゆうのはスパッと相手を斬らないと上手くいかないのよ。」
探偵「ご指導ありがとさん。ま、結局。男なら。背中で見せないといけない、って事か。・・・見ていろよ。二人。そして、少年。やっと目が「醒めた」んだ。俺だって、少しくらいは「魅せてやる」。」
男の娘「ああ!?」
探偵「俺は、速攻魔法カード「サイクロン」を発動!「スクラップ・ドラゴン」を封じた「禁止令」を破壊する!」
そばかす娘「!!そこを破壊するってことは、手札にビーストがいる!?けど!!相手の場には!!星屑野郎が!!」
男の娘「その通り!ウチがそんなの通すわけないだろ!!スターダスト・ドラゴンの効果発動!破壊を無効にしこのカードを墓地へ!「スターライトロード」で出た故、復活はできないが、これでお前の抵抗は封じた!」
探偵「・・・それはどうかな?俺は、レベル4チューナー「スクラップ・ビースト」を召喚する!!」
スクラップ・ビースト→召喚
男の娘「っ!!だがスクラップドラゴンは封じ込めている・・・!!!まさか!!」
探偵「確かに。ほんの少し前まではレベル8シンクロは「スクラップ・ドラゴン」くらいだったさ・・・。まして今の魔術師混合型。EXデッキはパツンパツン。☆8シンクロもなるたけ少なくスクラップドラゴンを三枚だけにしようとしたよ。だが。な。」
探偵「やっぱりな。馬鹿なんだよ決闘者は。すこしでも「ロマン」を。「このデッキだけが出来る事」に気づいたら、寝ても醒めても浮かれちまう。そんでだ。興奮しちゃうんだよ。そんなモンさ、きっと。俺も、お前も。」
男の娘「ウチは!違う!!ただ相手をつぶせればそれでいい!!勝つだけだ!!楽しみなんていらない!!」
探偵「だから「魅せる」。いくぞワイド!目覚ましビンタ。一発頼んだ!」
ワイド「寝ても醒めても決闘馬鹿。どうせ貴方は変わりません。いきます。」
探偵「俺は、レベル4の「慧眼の魔術師」に!」
ワイド「レベル4「スクラップ・ビースト」をチューニング。」
「浅き夢見し。その瞼を開けて新世界を望め!!」
「レムノンレム。惰眠終了魔法再見」
「「シ ン ク ロ 召 喚 」」
現れろ!!レベル8!!「
その剣士、荒野を往くためでなく、家路を辿るのでもなく。
ただ未来を目指すために魔法を振るう!
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
「覚醒の魔導剣士」の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):「魔術師」Pモンスターを素材としてこのカードがS召喚に成功した場合、自分の墓地の魔法カード1枚を対象として発動できる。そのカードを手札に加える。
(2):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した時に発動できる。そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。
お嬢「っく!!なによこれ!!こんなん・・・こんなん!!」
そばかす娘「探偵さんにしては!珍しく正統派で」
「「かっこいいい!」」
探偵「黄色い声援感謝。悪くないなこんな演出も。」
男の娘「だが!!攻撃力2500!!所詮2500だ!!ゴルガーは2600!!その戦闘時のバーン効果も生かせない!」
探偵「ああそうだとも。だが、こいつには「魔術師」をS素材にした時だけの効果がある!」
男の娘「!!!まさかッ!!!」
探偵「奇跡は再び目を覚ます!墓地の魔法カードを手札に回収する!!その一枚は!!」
「ハーピィの羽箒」!!
ハーピィの羽根帚 通常魔法(制限カード)
(1):相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する。
男の娘「ばかな!?そんなインフォメ!データ!戦略!!あってたまるか!?」
探偵「ある!ここに魔法はあるんだ!「ハーピィの羽箒」発動!君の場の魔法トラップをすべて破壊する!!」
男の娘「おおおおおおおおおおおおお!!!!」
禁止令×3⇒破壊
探偵「そして!君は決闘への情熱を隠すというのならこの魔法を見せてやる!通常魔法発動!」
「ペンデュラム・コール」!!
男の娘「!?」
そばかす娘「あれって!」
お嬢「・・・本当に的中していたのね。」
ペンデュラム・コール 通常魔法
「ペンデュラム・コール」は1ターンに1枚しか発動できず、「魔術師」PモンスターのP効果を発動したターンには発動できない。
(1):手札を1枚捨てて発動できる。カード名が異なる「魔術師」Pモンスター2体をデッキから手札に加える。このカードの発動後、次の相手ターン終了時まで自分のPゾーンの「魔術師」カードは効果では破壊されない。
探偵「手札の!「竜脈」を捨てて発動!デッキから二枚目の「竜脈」「竜穴」の魔術師をぁ発動!Pスケール1―8、再度始動・・・ペンデュラム召喚!!エクストラデッキより出でよ!オッドアイズ・P・ドラゴン!EMドクロバッドジョーカー!慧眼の魔術師!竜穴の魔術師!」
オッドアイズ・P・ドラゴン
EMドクロバッドジョーカー
慧眼の魔術師
竜穴の魔術師→P召喚
男の娘「やめろ・・・やめろおおおおおおお!!!そんな一手を見せるなぁぁアアあああ!!」
探偵「レベル7の竜穴とオッドアイズで!!オーバーレイネットワークを構築!!エクシーズ召喚ッ!!」
二色の眼が全てを封ずる温度を結ぶ!!
「オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン!!」
オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン エクシーズ・効果モンスター
ランク7/水属性/ドラゴン族/攻2800/守2500 レベル7モンスター×2
「オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分または相手のモンスターの攻撃宣言時に、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。その攻撃を無効にする。
その後、自分の手札・墓地から「オッドアイズ」モンスター1体を選んで特殊召喚できる。
(2):X召喚されたこのカードが墓地へ送られた場合に発動できる。エクストラデッキから「オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン」以外の「オッドアイズ」モンスター1体を特殊召喚する。
男の娘「あああ!!あああ!!!辞めてくれええええ!!もう!ウチを!!ウチを壊さないでくれえええええええええ!!!」
探偵「バトルだッ!!オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴンでゴルガーを攻撃!!「永訣の刻氷」ッ!!」
男の娘「うわああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン VS 宇宙砦ゴルガー
→ゴルガー破壊 男の娘ライフ 3600-200=3400
探偵「止めだッ!!慧眼の魔術師と
お嬢「仕留めたッ!!」
男の娘「ウチは!!ウチは!!!!!ウチはあああああああ!!!」
金切り声と共に、悪の決闘者は魔道にひれ伏した・・・!
男の娘のライフ 3400-1500-2500=-600
WIN探偵―LOSE男の娘
探偵「・・・ふう。」どさ
お嬢「!!お師匠!」
そばかす娘「大丈夫か!?」
探偵「大丈夫・・・ちょっと疲れただけだ・・・」
如何に歴戦の決闘者とはいえ、病み上がりでの連戦は体に応えるものがあった。
リーゼントとの戦いでは膨大な物量と速度に食らいつき。彼との戦いでは脳みそとルートの奪い合いに消耗した。決して安い勝負ではなかった。
そして勝者と同様にまた、敗者も地に伏せていた。
男の娘「・・・ウチは・・・ウチは・・・」
探偵「・・・言ってごらん。どうせ。君はもう負けたんだ。言うだけ言いな。」
男の娘「ウチは・・・何のために・・・何のために闘って来たんだろう・・・。こんなボロボロになって・・・色々捨てて・・・そう。辛いのに決闘を続けて・・・結局、こんな無駄になって・・・」
探偵「僕の「
男の娘「・・・」
お嬢「・・・きっとこれは。貴女が言った方がイイかもしれないわね。ね?」
そばかす娘「?アタシ?」
お嬢「ええ。かつて、私が貴女に言った言葉。きっと貴女ならこの変態少年に響くハズ。」
そばかす娘「・・・そだね。なぁ。アンタはさ。確かデータがどうこうって言っていたしさ。探偵さんの事も良く調べているんでしょう?」
男の娘「・・・ああ。」
そばかす娘「この人はさ。もの凄いお人好しで。それでいて、卑怯者で、いつまでも餓鬼みたいでもあって。うんロクでもないなこの人。」
お嬢「そうね。」
ワイド「肯定」
探偵「え」
そばかす娘「でも。それでも。同じように苦しんでいる人を救わずにはいらないんだ。自分が溺れていたくせにさ。いやだからこそなのかな?アンタが何を背負っているか何て知ったこっちゃないけれど。絶対にアンタを見捨てない。全部話しちゃいなよ。そう・・・「素直になって」。さ。」
男の娘「!!・・・」
心が揺れた。振り子の様に。水滴を受けて広がる波紋の様に。
彼の悪い癖はやたらめったら、振り返る事だったが。それは同時にしゃべっていい事とダメな事を振り分ける作業であった。認めたくない言葉をうっかり出さない為の分別でもあった。
けれど。今回ばかりはその作業を辞めた。女装の少年は何も考えずに口を開いた。
男の娘「・・・ウチは。ウチは今のデュエル。すっごく。すっごく楽しかった。この決闘だけじゃない。そっちの下衆の子と闘った時も。本当はすごくすごく。すごく楽しかった。」
お嬢「そう。だとしたら私も嬉しいわ。楽しんでもらえたならば。」
男の娘「でも。ウチは決闘を楽しんじゃいけないんだ。ウチの決闘は全て、姉ちゃんの為のデュエル。ウチは、姉ちゃんが死ぬことに喜んでいる最低な奴なんだ。そんな奴が決闘を楽しんじゃいけない。姉ちゃんは自由に決闘を楽しめないのに。そんな事思っちゃうウチなんかが・・・」
お嬢「・・・」
ワイド「御主人」
探偵「ああ。・・・本当に嫌になる。」
探偵の脳裏にフラッシュバックする「グリムロ」の少女。
――――ようやく分かった。この少年と闘った時から感じていた嫌な感じが・・・。
ああ。ありゃ僕だ。そうだよ。コイツは、あの娘を救えずにただ自分を呪うしかなかった僕だ。
決闘を楽しまない。ツール。
そのまんまじゃないか。それも僕よりも悲痛だ。僕にはワイドがいた。アイツがいた。
だから、「待っていたい」と信じ込めた。
きっとどこかにあった「もうこの娘に消えて欲しい」という心の影を口にせずに済んだ。
けれどコイツには誰もいなかったんだ。
「生きて欲しい」と「死んで欲しい」。あまりにも酷い天秤だ。
だけども。一つだけ。一つだけこの少年が僕よりも救われているとしたら、それはきっと―――――
探偵「ねぁ。聞かせてくれないか?君の話を。」
男の娘「・・・ウチの話?」
探偵「ああ。別に、キミたちが不利になる事は話さなくていい。ただ、キミがなんでこんな事をしたのか・・・いやそんな事も話さなくていいや。何でもいいんだ。君の話を聞かせてくれ。」
男の娘「ウチは・・・ウチは・・・」
探偵「お願いだ。俺に君を助けさせてくれ。俺は彼女を救うには間に合わなかった。けど君は違う。きっとまだ間に合う。まだ出来る事がある。それにな。」
探偵「ここに、君の道をゆく、駄目な先輩がいるんだ。・・・聞かせてくれ。」
知らずとも。一筋の涙が流れていた。情報もリテラシーも今は只無力。
もうどうにも止まらなかった。
男の娘「ウチは。ウチは。デュエルが好きだった!それで・・・そう。セントラル南地区で優勝したんだ。それで・・・その帰り道にね・・・」
・・・
第二十七話 「目覚めよと呼ぶ声がする」 エンド
いよいよ魔術師のデッキ侵略が激しくなっています(白目)