今後もコロッと生きを吹き返す場合があります。長い目で見て下さい(土下座)
「俺たちの妹分を勝手に可愛がるのはやめてもらえない、かなッ!」
「ふ、ファーラン!」
上から降ってきたのは小刀を手にしたファーランだった。マキマは片手でイザベルを抱えたまま、すでに着剣していたスナップブレードでファーランと鍔迫り合いを演じる。そして刃を合わせる憲兵の薄い桃色の唇から落ち着いた声が出る。
「……ガールズトークの途中だよ、お邪魔虫さん」
「地下街にいる連中はみんな鼻つまみ者さ。それと、うちのじゃじゃ馬を【女の子】って言ってくれるとはありがたいことだねッ」
「ファーラン! こいつ立体機動が壊れてるぜ! 援軍もなしだ!」
「ナイス情報だ、イザベル!」
「はは、ざまみろ憲兵、お前は終わりだぜ。ばーか! アハハハ!」
イザベルはまだマキマに抱えられているのにも関わらす、歯茎を出してマキマをあざける。一方、憲兵の隙を狙ったはずのファーランは、平静を装っていたが、心の内では驚愕していた。
(この憲兵、俺の奇襲を察知していたばかりか、俺の体重を乗せた一撃を片手だけで受けやがった)
「グッ」
鍔迫り合いは徐々にマキマが勢いを増して、たまらずファーランが距離をとる。だがそれはファーランにとって失策だった。
「カハッ」
彼が距離をとった少ない時間で、彼女は腕の中で暴れるイザベルに素早く手刀を入れ気絶させたのだ。そのままブレードを持たない方の腕で、しっかりとイザベルを脇に抱える。ファーランが慌てて牽制しようと小刀を手に再び突撃するが、その前にマキマはファーランが突っ込んでくる空間にブレードを振りぬいていた。
ファーランは避けるためにブレーキをかけた。そこを少女を抱えていることは思えない速度でもう一つのブレードで突く。
プシュッ「あぶねぇっ……」
(こいつ、人間かよ……、人ひとり抱えてなんて動きなんだ!? とっさに立体機動で後ろの壁にアンカーを刺して、逃げてなかったら.......)
「上手に逃げるね」
感心するような、されど穏やかな憲兵の態度がファーランを苛立たせる。焦りを落ち着かせようとするが、目の前にいるのは片手で自分を弄ぶ奇天烈な女だ。彼女を打倒する方法が全く浮かばない。
(こんなことになるならば、リヴァイと合流してから奇襲すべきだった)
ファーランは合流場所に中々来ないイザベルを、リヴァイと手分けして探しに来ていたのだが、憲兵に捕まっている妹分を発見してとっさに飛び込んでしまう。そして女の憲兵一人だと侮った結果、手痛いしっぺ返しを食らうことになる。
(だが、じきにリヴァイは到着するだろう! 襲いかかる前に笛で合図を送ったしな。リヴァイなら居場所を察知してすぐに来てくれるはずだ。それまで.....持ちこたえてやるさッ!)
ファーランは少しでも時間を稼ごうと、注意を引くために目の前の憲兵に声をかける。
「そいつを抱えたまま、何のつもりだ」
「……君たちのボスはどこにいるの?」
「!?」
意外にも会話に応じた女だったが、彼女は質問に質問で返してきた。
「話をしたい」
「……あいつはここらにいないよ。もう遠くへ行っちまった」
「へぇ、部下思いだと聞いているんだけど、残念」
女によって会話が終わってしまい、間を置かず軽い剣戟の応酬へと戻ってしまう。だがそれも今度は長くは続かない。少女を抱えながらも憲兵が鋭い突きの連撃をファーランに放つ。彼女はついに様子見を止めたらしい。攻撃は風を切ってさらに苛烈になっていく。ファーランも時折立体機動を使って対処するが、防御の姿勢の一方だ。それもだんだん慣れてきたのか、ファーランの逃げる方向を考慮して追撃するようになる。
(よけ損ねたッ! クッ、浅いが腕をやられた。ついさっき腿をやられたばかりだぞ。くそ、化け物が。もうもちそうにねぇ。だが……なぜか奴はリーチの長い突き攻撃を多用するだけで、一度もインファイトをしかけてこない? 攻撃が間違って、抱えるイザベルに当たるのを恐れてなのか……?)
女憲兵とファーランの間には圧倒的な剣技の差があった。腕の中のイザベルを気にしてるからこそ、彼女はファーランに王手をかけていない。それほどまで彼女は余裕綽々なのだ。ファーランはそれを嫌でも理解できてしまう。
人を片腕で持ちながらも目にも止まらぬ速さで、手数の突きを繰り返す。避けたと思ったら次の突きが襲来する。ブレードでファーランの刃を絶妙に逸らして、さらに深く攻撃を返してくる。
このままでは表情を欠片も変えぬままを振るう彼女に、傷を量産されてなぶられるのみだ。彼は一旦、建物の上まで立体機動で逃げて体制を立て直し、リヴァイと落ち合うべきだと判断した。
ファーランはすばやく小刀を腰に戻し、逃げようと立体機動で両側のアンカーを上に射出する。だが、この時を待っていたかのように素早くマキマはブレードを振り上げ、途中でブレード離脱スイッチを押す。なんと驚くことにクルクルとブレードの刃が回転しながら、ファーランの方へ向かっていく。
「え!?」
しかしながら投げられた刃はファーランに当たらず、体の斜め上を掠めただけだった。ブレードのまさかの使い方に思わずよろめいてしまったが、当たらなければ意味はない。
「へっ、おしかったね、憲兵さん」
さんざんやられて嫌味の一つでも言いたかったファーランは、負け惜しみを言い放つ。そして両方のレバーを引いて上に逃げる。それにより上に伸びたワイヤーが巻き取られ、ファーランの体は建物の上まで上昇する。
…………はずだった。
ファーランの体は少し上がったあと、なんと上斜め横の方向に引っ張られたのだった。想定していなかった動きを見せた立体機動にバランスを崩し、彼は空中でひっくり返ってしまう。
ファーランは完全にパニックになる。
(なんだ、どうなってる!? どうして自分はバランスを崩した? さっきの戦いで立体機動が故障したのか! それとも奴に何かされたのか? クソ、マズぃ! 早く体勢を直さn!?)
ファーランに自分の方へ飛んでくる憲兵の姿が目に入る。初めてファーランとの戦闘で彼女は立体機動を使った。
(壊れてるんじゃなかったのかよ!)
マキマの立体機動は片方は壊れているが、もう一方はちゃんと使えるので単純な挙動は可能なのだ。マキマは少女を抱えたまま、飛び蹴りの姿勢に入る。
「おしかった?」
(まさか投げたブレードで俺の射出したアンカーの軌道を変えたのか!? ならアンカーを外してもういちd!)
「グハッーー」
ようやく何をされたか理解したファーランだが、すべては遅かった。そのままマキマの飛び蹴りを食らった勢いで、ワイヤーが外れ地面に背中から叩きつけられる。
(さてさて、ファーラン君を拘束して、リヴァイが来るのを待っていよう)
マキマは一仕事終えてそう考える。そのまま彼女は未だ気絶したイザベルを壁に寄りかけさせた。そしてさっき投げたブレードの刃を回収して、背中を打ってのびているファーランに近づく。
「ちゃんと刺さったアンカーの位置を確認しないとね………それじゃ訓練兵からやり直しだよ」
恐ろしいほど整った顔で見下ろす彼女はそう言った。
「ほさけ! ク、ソが.....」
「肩が脱臼してる。治してあげる」ボキャ
「ぐうあっ」
「これで大丈夫だよ」
ファーランを近くの建物の柱と繋ぐ。
「どうするつもりだよ?」
「戦う時に言ったよね。君たちのリーダーと話をしたいって」
「……俺たちを縛り上げておいてよく言うぜ。俺たちがここまでやってこられたのも、リヴァイが仲間を絶対に見捨てないからだ。周りのやつはそれを知ってる。俺とイザベルを捕まえていい気になっているんだったら、あんた地獄を見るみることになるぜ」
「……本当に敵対したいわけじゃないんだけどな」
目の前の憲兵は口をへの字にして、本気で困っている顔をしていた。
「だって、私はイモウトを取り返しに来ただけだよ」
「は?」
彼女は片目をつぶって、ウインクをかます。お茶目さとクールな美貌が奇跡的に融合している。ムカつくことに美人は何をしても様になるらしい、とファーランは思った。
すると………
ばさ、ばさ、ばさ……
二人が話している上から突然大きな布が落ちてきた。人が五人くらい入るほどの大きな布だ。あまりにも不自然であり、見え見えの陽動。布の裏には光物を持った刺客がいる。そう思ったマキマは二本のブレードを手に布を斬る。落ちてくる布は細切れになり、布の裏側が明らかになる。
だがしかしそこには誰もいなかった。そこにはあったのは大きな木箱が一つ。巧妙な二段構えの罠だ。布を避けるのではなく、斬ってしまった選択をしていまったため、彼女は嵌ってしまった。
(あ、柑橘系だ)
果物が入っているのだろうか。戦闘面だけはよく働く脳みそが、匂いで木箱の中身を判断する。
(まずいかも。上からおちてくる木箱を斬ったとき、どうしても硬直時間が発生する。そしてその時……きっと飛び込んでくる)
なぜ分かるか、理屈とかじゃない。だってマキマにとってはそれは勘のようなものだから。その勘を戦闘では疑ったことはない。まるで研ぎ澄まされた野生動物の勘だ。刹那の時間の中で戦うために発達した脳みそがギュルギュルと動く。クモ男の物語を知っている人ならスパイダーセンスのようだと表現するだろう。
木箱を片手のブレードで真っ二つにする。中身の果物の雨が降る。
背後上方からガスの噴射音とアンカーの射出音。
直後、弾けるような痛みを感じた。背中にアンカーを刺されたのだ。
音を置いてくようなスピードで振り返る。ここで初めて相手から身をよだつような殺気を感じた。随分と久しぶりに体が危険信号のようなものを発している。
視界の隅で動くものを捉える。それはかなりの勢いで突っ込んでくる。黒髪で、目つきの悪い人相。リヴァイだ!
リヴァイは彼女の背中に刺したワイヤーを巻き取り急接近する。一方のマキマは落ちてくる果物に動きを制限されている。果汁が飛び散り視界不良の中、かろうじて一方のブレードで反撃しようとするも。
ばきぃぃぃ
リヴァイの勢いある蹴りをブレードで受けることは成功したが、ブレードは音を立てて折れてそのまま飛んで行ってしまう。すかさず彼は体勢が不利な状態のマキマにナイフを突き立てようとするが、マキマは落下物をいなしていた方のブレードで防ぐ。彼女は折れた方のブレードを替える余裕はない。
ギリギリギリと金属が軋む。
残りの果物が降り注いで、柑橘類の甘酸っぱいミストのカーテンができている。それは壮絶な殺し合いのはずが、どこか幻想的な情景だった。
これまでの戦闘を見ていたファーランは、固唾をのんで自分たちのボスが女憲兵を追い詰めるの見ていた。
(リヴァイのやつ、見たことがないくらい本気だ! でもこれで勝ったろう!)
遂にマキマが体制を崩し地面に倒れ、それにリヴァイは覆いかぶさる。彼はぶつかり合う刃に力を籠める。彼が力を籠めると、同じようにマキマも両手でブレードを持ち換え力を返す。両者の力に耐えきれず、彼女の持つブレードにひびが入り始める。
「……なぁ憲兵、貧民に顔を近づけられる気分はどうだ?」
「……私の生まれも貧しいですよ」
「そうか。だがやられたらやり返すがここのルールだ。勿論もちろん覚悟は出来ているよな? なぁ!」
マキマを地に伏せさせるほど完璧な奇襲を行ってみせたリヴァイ。憤怒の表情で女憲兵をにらみつける。一方現在進行形で上から覆いかぶさられているマキマは、顔は人形じみた美しさを歪めることはなく、すましたもので多くの顔のパーツは微動だにしない。だけれども彼女の口だけは少しだけ弓なりの弧を描く。
自身の力を弄んで、どこか腕を振りかぶる先を探すような孤独に彷徨う獣。
強者の本能が同じような強者とまみえたことで、戦いの本能が刺激される。そして忘れてはいけない。進撃の巨人のキャラ人気ランキング、その一位はリヴァイ。彼女も例にもれず彼は推しキャラだ。ここは正直に言おう、滅茶苦茶ファンだった。奇襲された興奮、それにより無意識に彼女自身の欲望を優先させてしまう。
実はここでマキマには戦闘を止めて降参する選択肢があったのだが。原作最強キャラの魅せるその攻撃に、マキマは少しハイになって、戦闘を継続をさせた。
ブレードが割れる前にマキマはアンカーを、向かい合う彼に発射する。リヴァイが手を動かしたことで至近距離で発射されたアンカーは二人の刃に当たって、ナイフと折れたブレードが吹っ飛ぶ?
無手になった両人は防御を捨てて、即座に攻撃する判断をした。それはとんでもない結果を引き起こしてしまう。
リヴァイは覆いかぶさったまま拳で彼女の鳩尾を殴ろうとし、マキマは背中に引っ付いてたアンカーを引き抜いてリヴァイをワイヤーで引っ張り寝技にもちこもうとしていた。
すると、、、
彼女の鳩尾を狙っていたリヴァイのパンチは引っ張られた拍子で、斜め上方向にずれ彼女のDカップの双丘を左、右の順でつぶしていった。
立派なたわわが強烈に歪む。
「ムネダ???」
瞬間的に痛みが走る。無意識に全身の筋肉に力が入る。その結果、さらにワイヤ―を掴んだ手でリヴァイを引っ張ってしまい、図らずもリヴァイは体勢を崩して顔面から二つの豊かに育ったメロンの間にダイブしてしまう。
女性の急所の一つである、胸。神が創りたもうたと言っても過言ではない造形美を誇る、18歳の超弩級美女。そのいまだ大口径化し続ける気高き巨砲へのダイレクトアタック。
それは粉うことなきかいしんの いちげき!だった。
マキマのようなチートボディをもってしても、急所は急所、それも力が強いアッカーマン流のラッキースケベはクリティカルヒットに違いない。ダメージを受けた瞬間、生命の危機に体が反応したのだろう。彼女は自身の胸に頭を乗せて動きが鈍くなっていたリヴァイを、驚異的な力で襟と彼のワイヤーでもって投げ飛ばす。
ガッシャーン!
ほぼ彼女の腕の力で投げられた彼は、吹き飛んで無造作に置かれていた木箱の山に突っ込んでしまう。マキマは彼を投げたはいいが、まだ呆然としている状態だった。
一方あの瞬間リヴァイも困惑していた。
(なぜ俺はファーラン、イザベル達に危害を加えた憲兵の胸なんかに突っ伏しているのか)
柑橘類の甘酸っぱい匂い。そして後から欲情を誘う女のいい匂いが鼻腔と脳を刺激する。柔らかくて形のいい弾力。熟しつつある女の体温。リヴァイ自身、ここまで逼迫した殺し合いはあまりない。いつも複数の敵を相手にやりあっており、大人になってからは自分以上の敵とタイマンすることなどありはしなかった。自分より強いやつなんて、ケニーぐらいだった。
本気な戦いの途中で起きた女憲兵へのムネダイブ。そんな予想外のハプニングに張り詰めていた戦いの緊張が、一瞬解けてしまう。
(俺は何をやっている?)
正常な思考が戻ってきたのは、女に投げ飛された後だった。
ガッシャーン!
木箱のがれきを押しのけていると、四つん這いから立ち上がる女と、自分のことを呼ぶファーランが目に入る。
「リヴァイ、オイ! リヴァイ! 大丈夫かよ! 顔から血が出てるぞ!」
(チッ、鼻血か)
「クソが、汚ねぇな」
常備しているハンカチで拭っているが、止まらない。
「ファーラン、イザベルは無事か」
「あ、ああ。多分気絶してるだけだ」
「そうか、待ってろ。すぐにこいつを殺して助けてやる」
「リヴァイ、憲兵を殺すのはまずくないか?」
「……だが手加減できる相手じゃない」
「…………」
フユカイ
ヘイチョウハ、ムネヲサワッタリシナイシ、オッパイニダイブシタリシナイシ、ヤルコトゼンブガ、サイキョウ、デナキャイケナイノ。
彼女は何も言わない。だが初めて目を鋭くして剣呑さを見せた。それでも殺意に支配されてもなお端正な顔立ちが崩れることはなく、それがかえって人間味を薄く感じさせる。
次の瞬間だった。二匹の獣が再びぶつかる。すぐ近くで見ていたファーランだったが、二人の応酬はもう目では追えなくなってしまう。
「オイオイ、これが、人間の戦いかよ!?」
二人の戦いの余波で近くにあったがれきは吹っ飛ぶ。マキマはブレードを付け替えて戦うが、ブレードの耐久性を無視して振るわれるせいで、すぐに折れてしまう。リヴァイも斬撃を紙一重でよけ、建物の柱をむしり取って、立体機動の機動力と合わせて応戦する。しばらくして周囲は爆発したような惨状になる。ブレードを使い果たしても、戦いは終わらない。
彼女は鋭い上段回し蹴りを放つ、スレスレで避けたリヴァイは横からフックをお見舞いする。お互いが音を置いてく攻撃を繰り出し、それをギリギリで避ける。だが均衡は破れ、互いの攻撃があたる。リヴァイが建物のドアにたたきつけられ、マキマは建物の壁を壊しながら吹っ飛んでいく。お互いが手の獲物なくして、投げて、殴って、蹴って.....。
手錠が繋がれていた柱が折れて自由になっていたファーランはイザベルを抱えて避難していた。
ドォォォーーン、ガラガラガラ!
「……ん」
気絶していたイザベルがついに起きる。騒音が頭に響いて目を覚ましたようだ。
「あれ、ここは? え? あの憲兵はどこ行った?」
「あの憲兵はリヴァイと殺し合ってるよ、ほら」
「えーーー? なにあれ! 兄貴は大丈夫なのかよ!」
「俺たちのリーダーを信じるしかない」
「わけわかんねぇぜ、なんでこんなことになってるんだよ!」
「おい、大きな声を出すな。あいつらの気を引いたらどうする。とにかく今の状況はこうだ。お前の手錠を外すには、憲兵から鍵を奪うしかない。奴を倒せないなら、俺たち二人だけでも逃げるしかねぇ。理解したか? 」
「兄貴を置いていけないぜ!」
「おいおい、頼むからあの人外バトルに混ざろうなんていうなよ。……癪なことに俺たちは随分と手加減されていたらしい。あいつが例の凄腕憲兵で間違いないな」
「そもそもなんで兄貴を来るまでの時間稼ぎも出来なかったんだよ。……兄貴を置いて行けないし。頭脳担当はファーランだろ。何かないのか」
「マスコット担当が憲兵に捕まったりしなきゃよかったんだがな。……まあ一つ疑問がある。手練れとはいえあいつはずっと一人だ。もし俺があの憲兵であればこの状況であれば、撤退や応援を呼ぶことを視野に入れるだろう。なぜ俺たちに固執する? ここまで騒がしくなっても応援が来る様子がない」
「それは兄貴たちに囚われてる俺の妹を探すっていう設定で、騙くらかしてここまで連れてきたからだよ。一人でここまで来たのはあいつ自身様子見だったんじゃないかな」
「ああ、だからさっきの『イモウトを取り返しに来ただけだよ』か」
「上手い嘘だろ?」
「いや、……でもな、それは戦闘前の話だ。お前が気絶する前、憲兵のこと散々煽ってただろう。当然その時点で嘘はバレただろ。女憲兵がおれに対してイモウト云々言ったのはその後の話だ」
「そっか……う~ん」
「……奴の言っていたイモウトってのはなんのことだ?」
「???」
ファーランはチームの頭脳担当らしく、考えを巡らせる。強盗現場から逃走した際、彼女はイザベルを追っていた。そしてイモウトを取り返しに来た。応援を呼ばず一人でいるのに固執する憲兵。イザベルに攻撃を当たらせないように気を配る。リーダーであるリヴァイと話をしたい。そして
まさか! いや、ナイナイ。
しかし……、万が一のことを考えて……。怪しさ満点だが憲兵は話し合いを望んでいた。真実はどうかは分からないが、あちらさんは本当に妹を探しに来たのだとしたら。……話し合いが必要だ。
「……もしかしてあの憲兵、お前の姉ちゃん......とかじゃないよな?」
「え!? はぁー!?」
「だってよ、あの憲兵がお前を妹だと思って取り返しに来たとするなら、全てが辻褄が合うだろ?」
イザベルには信じられない。だが……。
(『やっぱり可愛がられているんだね』今思えば憲兵の割に異様に優しくされた。優しく頭を撫でられた。それはあいつが俺の姉だから!?)
まだまだ疑心暗鬼だが、物心ついたときから孤児だったイザベルは自分の生い立ちを知らない。なので確信をもって否定できない。
「じゃあ、仮に、仮にそうだとして、なんでずっと兄貴と殺し合ってるんだよ」
「非常に言いにくいんだが……仮にだぞ。お前が男に胸を触られたらどう思う」
少し考えた後、すっきりとした顔でイザベルは答える。
「うーん、ギッタンギッタンにする」
「……あー多分だぞ。わざとじゃ……ないんだろうが、えーとリヴァイが彼女の
「アレアレってなんだよ……えっ!」
イザベルはファーランの言葉を正確に理解すると、自身の胸を押さえ苦虫を嚙み潰したような顔をする。
「変態大魔王じゃん!」
「いや、いやリヴァイの名誉のために言っておく。もう一度言うが故意じゃないんだ。思い出してみろ俺たちのリーダーは女憲兵の
「……でも兄貴、敵には容赦ないっていうか。……仮にわざとじゃなくても、さすがそれはないっていうか。あの女の人可哀そうだぜ。私だったら死ぬほど怒ると思う」
「……えっと……まぁあれだ。それからすまし顔の憲兵さんが、殺気だだもれで豹変したことを鑑みるに……相当頭に来ちゃったんだな」
「…………」
二人とも自身が言っていることの意味がもうよく分からなかった。
「………じゃ、じゃあ、とりあえず、二人を止めようぜ。な?、イザベル」
「……そうだな」
するとちょうど、二人の戦いが小康状態になっている。顔を合わせたファーラン、イザベルの二人はそちらに向かう。リヴァイとマキマはお互いが切り傷を作り、所々服を赤く滲ませている。致命傷になっていないが、肩で息をする状態だ。さすがの化け物のような二人でも体力の限界は存在するらしい。そして二人の理性はだんだんとまともなものになりつつあった。
「ちっ、しぶてぇ野郎だ」
「変態が喋ってる」
「ハッ、くだらねぇな」
罵り合いを少々挟んだ後、再び拳の語り合いが始まろうとする。そんな時イザベル達が止めに入る。
「待て、リヴァイ! あと憲兵さんも一回止めてくれ」
「そうだ」
ファーランたちの制止に対し、リヴァイはマキマから目を放さないようにして答える。
「何を言っている。もう少し弱らせてから、その後全員でかかる。それで一気にケリをつけるぞ」
「違うんだ。この人私の姉貴かもしれないんだ」
「は? なんだと!?」
********************
「この凶暴な女がイザベルの姉だと?」
「マキマ、本当に俺を探しに来たのか?」
3人ともがマキマのことを見る。当のマキマは少しだけ気まずそうに答える。
「………イザベルちゃんは私の妹かもしれない」
「おい、つくならもっとマシな嘘をつきあがれ。俺たちを油断させたいだけだろうが」
口を歪ませたリヴァイは吐き捨てるように言う。
「私はマキマ・ランス、……母方の名前はマグノリアです」
「!?」
衝撃の告白だった。こういう家業のリヴァイたちだ。もちろん自身の名前は公にはしていない。まぁ百歩譲って名ぐらいは色んな筋から露見したとしても、ましてやファーランやイザベルが持っている姓は本当に親密な間柄にしか明かさないものだ。マキマが語ったマグノリアという姓。それは娼婦だったというイザベルの母親の姓だ。物心から着いた時には母親は死んでおり、母親の関係者がそうだと言っていた姓なのだ。イザベルにとっては顔も知らない母親の姓に大して思い入れはない。リヴァイのように姓を持っていない人間も地下街には多くいる。アンダーグラウンドな環境で、姓の有無なぞ大して意味はないのだ。だが事実イザベルには姓があり、本来知る由もないマキマがそれを知っている。その事実に、確かにストーリー性のある意味が生まれてくる。
ファーランが驚きを隠せないまま、マキマに訊ねる。
「……アンタは本当に俺たちを捕まえに来たわけじゃないのか」
「あなたがたは憲兵の間でも大人気です。お陰で私は地下街に応援に行く羽目になりました」
「じゃあ……」
「――――ですが私はあなた達の捕縛に乗り気しません。あなた方を捕まえても、上官の袖の下が増えるだけです。私はもっと大きなものを相手にしたい。その不正や犯罪から多くの人を救いたい」
彼女の淡々と三人へ語る様子から、任された任務への背信になんら感情を抱いていないことが見据えられる。
「それはご大層な夢だな。応援しておこう。チンケな俺たちを追い回す前に、お前らのお仲間にぜひ言って欲しいからな」
「……ご理解いただけたようですね。ではこれ、手錠の鍵です。どうぞ」
リヴァイは吃驚すべき告白にも冷静なシニカルな反応だ。そしてマキマはイザベルに繋っている手錠の鍵を何の気もなく、ポイとファーランの方へ投げる。だがまたしてもリヴァイはその行動に異を唱えるようだ。
「おい、勘違いするな、憲兵。お前の言うことがどこまで本当なのか、まだ俺たちには分からない。よって……俺たちと話をするなら、お前が手錠をつけろ」
「初めて会いますが、随分と積極的だね。……鼻血。私の感触がそんなに気に入ったのかな?」
意味ありげに黄色い瞳を彼へと向ける。図らずもマキマへセクハラ攻撃を行って投げ飛ばされた後から、リヴァイの鼻からは血が出ていた。
「……てめえの頭はてめぇの胸と同じように中身が詰まっていないらしいな」
二人の口から嫌味の応酬が繰り出される。
「いや、待て待て! とりあえず二人の傷の手当てをしてから、一端仕切り直して話し合おう」
すぐに険悪になりそうになる二人を、慌ててファーランが抑えた。
「近くに闇医者をやってる店がある。そこで話そう」
リヴァイ兵長とマキマさんの初対面回でした。
いやー正直、滅茶苦茶な展開になってしまった。それぞれのキャラランキング一位と二位をこんな絡ませ方して……罪の意識はあります、ハイ。
良質なバトルシーンが書けないからと言って、悩みに悩んでネタに走るなんて、不敬罪の極みですね。すべては深夜テンションのせいです。二人に何させてんだ、ふざけんなと言う方、申し訳ありません。
兵長のデンジャラスなセクハラはR指定じゃないと思うんだけど、少し不安です。そこら辺詳しくないのでやばそうでしたら教えて下さい。
PS:マキマさんが毎回二位なのが、納得できない!