それと後半から初めて主人公視点の話が入ります。
「マガト副隊長、……4時間もの艦砲射撃を生き残っている人がいるとは、とても思えません。……この捜索に意味はあるのでしょうか?」
硝煙の匂いが充満して、煙燻る荒野となった大地を歩く男たち。小隊を作って警戒しながら周囲を探索していた。
「なんだァ、エルディア人? お前はシューペア家の人間が死んで喜んでいるのか?」
「い、いえ、隊長殿!? とんでもございません!! このようなテロ行為など、断固として許されることではありません!! エルディア人を代表して遺憾に思う所存であります!!」
隊長と呼ばれる男が意地悪そうな顔で、赤い腕章をつけた男に言う。対してその部下は慌てた顔で、宣誓する動作を行った。
「ふん、エルディアの悪魔めが。口と敬礼だけは立派と見える。でも良かったな。こんなテロを起こせば、ますますお前ら悪魔どもの地位はなくなるだろうよ」
マガト副隊長は、名誉戦士隊の隊長であるこの男に疑問を投げかける。
「ンンッ……とはいえ、隊長、不思議に思いませんか。なぜ本部は巨人殲滅に、戦士隊の到着を待たず、第六艦隊で無理矢理殲滅したのでしょうか?戦士隊ならば巨人だけを殲滅できるものを……」
質問の意図は、単に気になったというのもあるが、
「……出現した巨人は三十体以上だった。その数じゃ、人間なんてあっという間に奴らの餌だ。
沖で演習していた艦隊が急行した時には、既に巨人の一部が海を渡ろうとしていたらしい。政府は、島の人間全部が食い殺されたと判断して、直ちに殲滅を下令したんだよ」
英雄シューペア家を狙ったであろう、巨人テロ事件。
今頃世界中の新聞社で、号外を作るのに大忙しだろう。そのほどの大事件だ。
「……そうですか」
(この島の警備はそれなりに厳重だったはず。三〇人以上の敵性エルディア人が誰にもバレず、島内に侵入することが可能なのか?
さらには、だ。
……テロだというなら、首謀者たちの目的が分からない。マーレ建国の英雄への憎しみか? そんな稚拙な動機でここまでのことを?ローマン中将たち、英雄の一族を殺すことで何を得られる?世界から一層エルディア人が、恨まれることになると、馬鹿でも分かるはずだ)
マガトは隊長の説明を聞いても、納得がいかなかった。
そして一番不可解なのは、マーレ政府と軍の対応である。
(夜間演習中だったとはいえ、事件発生からの第六艦隊の動きが早すぎる。すべての対応が早すぎるのだ。こんなにすぐに対応できるものか? それに生存者を探すには、人手がいる。それにもかかわらず、戒厳令がひかれ、現場は中央から派遣された軍以外の立ち入りを禁じている。応援に駆け付けた現地当局の侵入ですら許さなかったのはなぜだ?
まさか事前に起きることを知っていた? それならば我々の急な配置転換にも説明がつく……)
テオ・マガトは頭の中で、膨らむ疑念の渦を自ら振りはらった。
考えても仕方がない。自分は今やるべきことをするだけだと。
「お前ら、注意を怠るなよ。我々の任務は、生存者の捜索もあるが、殲滅しきれなかった巨人の討伐もあるのだからな」
マガトは監督する戦士たちやエルディア人兵士に向かって注意喚起する。
「土壇場でビビッて、巨人になり損ねたテロリストも、ハハっ、もしかしたら、生き残っているかもしれんぞ!」
笑って、隊長がマガトの言葉に付け加えた時だった。
ウグワァァァァワァァァ
「「「巨人!?」」」
少し離れたところから、低いうなり声が聞こえる。
「ひっ、本当に生き残っておったとは!!」
「戦士隊!! いつでも巨人化できる準備をしておけ!!! あちらの方向だ! いくぞ!!」
「「「はい!!」」」
狼狽えてしまう隊長の代わりに、マガトが戦士隊に号令をかける。
巨人がいる方向に戦士隊を先頭にして駆ける。
そして……
「は、きょ、……巨人いました! 7m級、一体です!!」
確かにそこに巨人がいた。巨人も小隊に気付き、振り返る。
だが、何かがおかしい。体のバランスが異様なのだ。
「おい、あの巨人何かおかしいくないか!? 手がないぞ!?」
7mの巨人の両手が肘から存在していないのだ。
肘から煙を出している。
「きょっ、巨人化許可、お願いします!!!」
「……あ、ああ」
戦士隊が巨人化のために、ナイフで手を切る。
しかし彼らは、……巨人化しなかった。
なぜならその間に巨人が……倒されてしまったからだ。
突如、こちらを向いていた7m巨人の両足が切断され、巨人が転倒した。
そして小さな赤い何かが、うつ伏せで転倒した巨人の背を駆ける。
そのまま赤い薙刀のようなもので、“うなじを取った”。
一瞬の間で行われた解体ショーだった。
それを為した人間が明らかになる。
それは少女だった。
巨人の死体の上に小さな少女が立っているのだ。
血肉のような濃い赤色、そのロングストレートの長い赤髪がなびく。巨人の死骸から出る蒸気が揺れる中、黄色に光る瞳だけがこちらを、じっと見つめる。まるで獲物を狩るか悩む夜行性の獣の如く、瞬き一つしない。男たちは不用意に動けば、まるで殺されるような錯覚を受ける。小隊の軍人たちは、その間誰一人動けなかった。
蒸気が晴れる。それは確かに少女だった。
(私は何を見ているのだ)
マガトは心の中でそう呟く。己の理性が、この10歳も満たないような少女が、一人で巨人を殺すなどありえないと主張する。簡単に言うと、脳が追い付かなかったのだ。あまりに信じられないものを見て、自分たちが目にしたものを、処理できなかった。しかし、彼女の研ぎ澄まされた刃のような佇まい、そして何より本能が、これは現実だと伝えてくる。
「わ、我々はマーレの兵だ。生存者を保護しに来た。もう安心していい」
四〇代のおっさんであるマガトだが、なるべく優しい声で、少女に話しかけた。
少女は初めて瞬きを一つ。そして、何も持たずに巨人の死体から、地面に降り立った。あまりに顔が整っていて、まるで神聖な天使のよう。だがその表情はニコリともせず、微動だにしない。
「わかりました」
声だけは、ちゃんと幼い少女のものであった。
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840 (始祖奪還計画 発動まであと5年)
「見てみろよ! あれで壁まで行こうってのか? 無理に決まっているだろ! 諜報部は何を考えているんだ!」
「あの瞳の色知っているよ。雑誌で読んだことがある。新大陸の何とか族だっけかな、、、」
「じゃあ、新大陸の有名な血筋とマーレ人の混血なのかもな。生きててもらっちゃ困るってことなんだろうさ。だからこんな自殺みたいな作戦に志願させるんだ」
「洗脳か~。諜報部は怖いね~。エルディア人でもないのに、あんな美少女、勿体ないだろ」
「しょうがねぇよ。悪魔共はマーレの英雄の一族を根絶やしにしやがった。やっぱりエルディアの糞どもは滅ぼさなきゃならねぇんだ」
パラディ島、唯一の港。
その港を巨人から守るために造られた壁。普段はごく少数の兵士しか、駐屯しない秘密軍港だ。
エルディア人をここから蹴落とす場所でもあるが、今日そこには三つ編みの赤毛少女と、マーレ諜報部の人間がいた。
少女たちの様子を複数の海軍兵士が興味深そうに鑑賞している。
「14番、心の準備はいいか?」
「はい、少しでも悪魔の住処、その情報を取って参ります」
今から地獄へ落とされるというのに、少女の無機質な瞳は微塵も揺れることはない。簡素な返事を返して、言われたまま簡易的に設置されたエレベーターに荷物ともに乗る。少女を乗せたエレベーターがゴトゴトと音を立てて、壁際を沿って降下していく。地面に降り立った後、彼女はすぐにそのまま自転車を漕ぎ始めた。彼女はまったく振り返ることはなく、グングン進んでいく。速い速度で自転車のペダルが回転する。ここが巨人領域であることを忘れそうになるくらい順調にサイクリングロードを突き進む。そして彼女の自転車は壁を離れていき、壁の上から見えなくなっていった……。
大丈夫。
見た限り壁近くに巨人はいなかった。
しばらくは、快適なサイクリングが楽しめそう。
走れ~走れ~走れ~走れ、銀輪部隊
ウォールマリアだっけ? 壁まで長い旅だ。壁内に近づくまでは巨人と接敵することも少ないだろう。
これでようやく“進撃の巨人”の舞台に行くことができる。
14番(笑)は転生してからの七年間を思い出す。
すべてを失ったあの日、ジーニアの人格は、ほとんど死んでしまった。そして代わりに、別世界の記憶を持つ人格が、その希薄となった自意識を埋めるように誕生したのだ。
砲弾降る中で、いきなり転生を自覚した時は、もう訳が分からなかった。私の前世の造形と、よく似た少女が、うずくまっている。そう思ったら、それが“自分”だったんだから。今考えてみれば、一人の体に二人分の人格が存在するのは、かなり危険なことだと思う。人格同士が喧嘩して、最悪発狂するかも。
“もう一人の幼い私”は、悲しみや絶望の感情に支配され、心が折れる間際だった。それを支えるような形で、転生した人格が、元の人格とパズルのピースの如く、はまったんだろう。魂の相性もよかったのかもしれない。前世と名前も違うが“この少女”と、なぜか繋がりがあるように感じたんだ。まあ、可愛いからおっけーです!
とにかく安全に人格同士が融合して、やっとのことで理性を取り戻し、生還を果たした私だったが、その後もかなり大変だった。家族を謀殺したマーレにとって、私が生き残ってしまったのは、非常にまずかったのだ。私の生存は隠され、異民族との混血孤児として処理された私は、マーレ諜報部に引き取られることになった。事件のショックで記憶喪失であるフリをしたのが功を奏したのだろう。すぐに殺されることはなかった。以降、孤児の諜報員養成プログラムにぶっこまれ、一二歳まで訓練に明け暮れる毎日。その五年間は他者との接触は教官だけで、ワンーツーマンで、常人では死んでもおかしくないほどの訓練を課された。
いや、ホント、ウォーターボーディングとか、子供にやらせる訓練ではないだろ、あれ。
しかしそのおかげでマーレに対する忠誠は、十分だと判断されたみたいで、一二歳以降、実践投入されるようになる。
情報収集、証拠隠滅、不穏分子の始末、そして、始末、始末、始末……。
どんな危険な任務でも、私は100%完遂させた。
味方から赤い茨姫とか……色々と愛称をつけられるほど、頑張ったよ。
でも一三歳になる頃から、何か……きな臭い任務ばかり、命令されるようになる。
どうみても死んできてください、っていうような任務の数々。
頑張りすぎて、上官たちは恐ろしくなったんだろうね。
あの事件の真相を知った私が、彼らを首無しオブジェにしちゃうんじゃないかって。
まあ、いずれこうなるとは分かっていたけど、、、このままじゃ家族と同じ末路だ。
この国を盛大にぶっ壊してから、亡命することも計画してた頃。
私はインテリジェンス・オフィサーにある一つの任務を提案されたのだ。
それが、始祖奪還計画……
……の前座、パラディ島の侵入及び情報収集だ。
色々と説明されたけど、簡単に要約すると、、、
始祖奪還作戦を行う前に、少しでも壁内での情報をとってきてくれないかな?
もちろん一人で、だよ!
大丈夫! 巨人領域でも、君ならきっと生きていけるよ!
あ、あ~、帰りね! 作戦実行の一年前に、情報持って自力で帰ってきて!
マーレへの忠誠心があるんなら、断ったりしないよね?
もちろん断る権利はあるよ。でもおじさん、おすすめしないな。
このマーレという国の(裏の)歴史にのるほどの立派な任務だよ。光栄だよね!
大丈夫、君なら(死んでも)ノープロブレムだよ。
いやぁ、持ち掛けられたとき少し笑ってしまった。
それもうほとんど、死んで来てねってことじゃん、隠す気ないよね?
でも、、、良かった。
これで私の思い通りに進んだから。
パラディ島へ行けるんだから、折角この世界へ転生したんだ。
『進撃の巨人』の世界の舞台へ行ってみたかった。エルディア人への敵意マシマシのふりしておいて……正解でしたよ。
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841
「ハルトおじさん、大丈夫?」
「ゴホッゴホッ……、さ、最近、咳が止まらなくてのぅ」
「これ薬。調合したの」
「すまんのう。面倒を見てもらって……。マキマちゃんは本当に良い子じゃ」
「気にしないで。私は血の繋がりはないけどおじさんの娘だよ」
「本当にありがとうのぅ。……出て行った息子とは、大違いじゃ。ゴホッゴホッ、わしはもう長くない。わしが死んだら、この家を全部マキマちゃんが使ってくれ」
「そんなこと言わないで。ハルトおじさんには、いつまでも元気でいてほしい」
やっぱ、孤独な老人につけこむのが一番楽だ。このベッドに横たわる哀れな老人は、ラインハルト翁。今は引退しているが、薬の行商人をしていた人物。
“スラム街出身で身寄りのない”私を、養子として引き取ってくれた。私は多少薬なんかの調合もできるから、元薬師の老人に師事したいと言って近づいたのだ。世話をしてあげて彼の信頼を得た私は養子になることができた。つまり戸籍を得て、壁内での身分をゲットしたんだ。これである程度、自由に動くことができるようになった。
「今日も行くのか? ……ゴホッゴホッ、野盗や人さらいに、気を付けるんじゃぞ」
「うん、気を付けるね」
シガンシナ区の街並みを歩く私。向かっているのは内門だが、通り道に盛況な出店通りを選ぶ。顔見知りとなった出店の主人たちが話しかけてくる。
「マキマちゃん、元気かい?」
「もらったあの薬、よく効いたよ~」
近所には必要最低限の挨拶をし、規則正しい日常生活をしている……ように見せる。それが潜伏のコツ。こちらは一年前から急に現れたよそ者なのだ。愛想よく世間話に応じた。
「あ~そうなのかい。ハルト爺さん調子悪いんだね。……これ魚の燻製だよ。持って行きな」
「お代もないので、いただけません」
こういうのは、一回はちゃんと遠慮して見せるのが大切だ。
「いいの! いいの! 血の繋がりもないのに、健気に爺さんのお世話する女の子を見てられないのさ」
「……本当に、ありがとうございます。では今から薬草採取に行くので、帰りに頂いてもいいですか?」
「もちろんさ。ちゃんと帰りに寄るんだよ」
今日のご飯は、魚の香草焼きにしよう。愛想というのは、こんな風に役に立つ。目的を達成したので、出店通りを出る。シガンシナ区とウォールマリア領域を結ぶ、内門にたどり着いた。
内門には四人の守備兵が門を警備のために駐在しているのだが、、、
「マキマちゃんじゃないか、今日も薬草採取かい?」
「はい、ハンネスさん。今日はサックス平原まで行くつもりです。それと……これ身分証です」
「あーったく、もう顔見知りなんだから、毎回出さなくていいんだぜ」
「……っひっく、マキマちゃんは真面目なんだよ~。あ~そうだ、サックス平原、最近熊が出るそうだぞ」
「知らせて頂いて、ありがとうございます」
午前中だというのに、門の傍らのテーブルの上には、酒瓶が何個か置いてある。
「ガハハハ、無駄飯ぐらいの俺らでも、こんくらいはな」
「いつも御苦労様です。これ……酒酔いに効く薬です、良かったら使ってください」
「オイオイ! 聞いたか? 御苦労様だってよ。……マキマちゃんだけだぜ、俺たちを労ってくれるのは」
「……ホントにいい子だぜ。ありがたく貰っておくわ!」
「悪いな、マキマちゃん」
「練習がてら作った薬ですから、気にしないで下さい。それでは失礼します」
そうして内門をくぐっていく。だが後ろでおっさんたちの井戸端会議が聞こえてくる。
「ホントに健気で優しい子だな。親がいなくても、あんな器量の良い子に育つんだぜ。うちのガキンチョ達にも見習って欲しいもんだ」
「アハハ、……それになんたって、……一五歳っていうのに、スゲー美人だろ。将来が楽しみだぜ。きっと化けるってもんじゃないぜ、ありゃ」
「爺さんが亡くなったらよ~、酒場のウェイトレスになってくれないかな~。そしたら毎日通う自信あるぜ、なんてな。ガハハハッ」
「アハハ、カミさんに殺されるぞ!」
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サックス平原に行く前に、少し寄り道をする。内門から少し歩いた場所、そこに一本の木がある。
「……あーあ」
しゃがんで、木の根元に手を当てる。やっぱりこの下にあるんだよな。説明できないけど、感覚で分かる。
エヴァンゲリオン四号機。
どんなに離れても、私と絆みたいなのもので結ばれているのだろう。まさに牛丼とエヴァクリアファイルのような惹かれ合う関係なのだ。本当にマリちゃんとアスカのことを考えると、牛丼が頭にふと湧いて離れないのはなぜなんだろう。深くは思い出せない。
ともかくも前世からの“相棒”なのだ。それがこの木の地下深くに埋まっている。これを探すこと。私が壁内に来た理由の一つだ。マーレにいた時からずっとこのパラディ島にあることが分かっていた。
私には前世と前々世?の記憶がある。
一番最初の前々世の記憶は、おそらく現代日本で暮らしていたもの。私個人が何者であったかは、分からない。男であったのか、女であったのか。ただ治安が良くて、飽食と娯楽にあふれる世界。そんな世界で暮らしていた知識がぼんやりとあるだけ。もはや知識があるだけなので、深くは述べない。
そしてそんな私が次に転生したのが、エヴァの世界だった。今の一個前の前世はエヴァの世界であり、その世界で私はエヴァ四号機パイロットだった。
ある時、私は気づけばロボットの中にいた。私には知識からこのロボットが、現代日本のアニメ映画の物であると気づく。エヴァンゲリヲン四号機だと。原作の四号機は物語の過程で、事故消滅する試作機体。だから、エヴァ四号機パイロットも物語として登場しない。ところが私の前世では、その事故はあったらしいのだが、その後事故跡地でなぜかエヴァ四号機は復活しており、気がついたら私がその中に搭乗してたのだ。今世の転生同様、転生した当時の私は困惑したものだ。そのまま、私はWILLEに保護されることになる。
その世界は幸運にも新劇場版の時空で、ハッピーエンドが約束された世界であった。だから、私という存在以上の原作改変が起こらないように、私はWILLEに所属しながら、登場人物たちと物語を紡いだ。
時は流れ、物語のフィナーレに近づくと、私はシンジ君たちより一足先に、四号機をお供にゴルゴダオブジェクトに到達した。
新劇場版ヱヴァンゲリヲンの終着点である、マイナス宇宙のゴルゴダオブジェクト。
碇ゲンドウ曰く、『人ではない何者かが、アダムスと6本の槍とともに神の世界をここに残した。――――全ての始まり 約束の地。人の力ではどうにもならない。運命を変えることが出来る唯一の場所』
私はただ知りたかっただけなのだ。
私というイレギュラーには、マイナス宇宙がどんな風に見えるのか。
そして私の存在とは何か。
ヱヴァンゲリヲンのエンディングを、間近で観測することの意味を。
だから、バチが当たったのかもしれない。私はただの知的好奇心という理由だけでその場所に行ってしまったのだ。
虚構と現実が複雑に混ざり合うその世界で、……私は自我を保てなかった。イマジナリーの世界で一人漂流しながら、薄れゆく意識の中で、私は……“死”を意識した。
(あーあ、私は何のために転生したんだろ。……エヴァの世界……とても楽しかった。でも……結末を知っていた私。最後まで私は“彼ら”と一緒の立場で、心の底までノる事はできなかった。
……これで死ぬのかな。心残りは…………う~ん、……あ。
そういえば……進撃の巨人のアニメ、最後まで見れてなかったな~。前々世の知識では、シーズン3までなんだよね。だから次転生するとしたら……結末を知らない、進撃の世界がいいかな
……なんてね)
「うぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
――――あえぇ? 私叫んでる? 巨人? 母様?
今世の転生はこんな感じだったわけだ。本当に進撃の巨人の世界に転生してしまうとはね、、、
私は、木の根元に腰掛けて、バッグから手鏡を取りだして、今の自分の容姿を見る。鏡の向こうには前世の姿を幼くしたような少女が映っている。少し微笑んでみると、たちまち蠱惑的な雰囲気を醸す美少女がそこにいた。日本人は目で感情を表すというが、私のグルグルの黄色い瞳は、感情を表しにくい。うん、やっぱりそっくりというか、まんまだね。前世共々、私の容姿はチェンソーマンのヒロインである、マキマさんだ。今の私はまだ少し幼いが、成長すればあの姿になるだろう。
私がエヴァの世界から、記憶以外で引き継いだものは三つ。
容姿とそれに付随するフィジカル。
ここに埋まっているエヴァ四号機。
そしてこの……“赤い武器”
私は腕に付いている赤いバングルをさすった。“槍の形状”から、ある程度私の意思によって変形できる。エヴァと併せて、前世では切り札だったものだ。今世でも、巨人を戦ったり、壁を登るのに使ったりして役に立っていた。
話を元に戻そう。私の目的は、一つ。この“進撃の巨人”という世界で、安全に物語を見届けること。それが転生してからの願いだ。出来るだけ、物語に干渉せず、すぐそばで結末を見届ける。
進撃の巨人という物語の結末を知らないからこそ、今度こそ登場人物たちと共にハッピーエンドを紡ぎたいのだ。
だがら今の所原作改変するつもりはない。エヴァの世界でも、自分がイレギュラーであることを自覚していた私は、ハッピーエンドの結末を変えないように、気を遣っていた。進撃の巨人もおそらくエレン・イェーガーたち主人公がハッピーエンドに持って行ってくれるだろう。出来れば私は、それを影で支えるような、キャラクターになろうと思う。
とはいえ、原作の結末を今から予想するぐらいならいいだろう。進撃の巨人の結末。おそらく、それは始祖の巨人の力が大きく関わっていると推測される。私の今の母国、マーレでさえ、始祖奪還計画を綿密に練っていた様子だった。シーズン4以降は始祖の巨人の力が明らかになり、それを取り合うような話になるのではないだろうか。
だから、今は始祖の巨人の力の全貌を知るために動いていこうと思う。それに、万が一この物語がバッドエンドだった場合、介入するとしても、予想していた方が介入しやすいだろうしね。
そしてエヴァ四号機だ。私の性格上、何事も万全にしたい性分なんだ。万が一の不慮の事態のために、使える手札は多いに越したことない。だから可能ならエヴァ四号機を使用できる状態にしたい。
でも……そのエヴァは、なぜか知らないがこの地下深くに埋まっている。
「……うん、もどかしいね。場所が分かっているのに、掘り出す手段がないなんて」
そう掘り出す手段がないのだ。80mもの構造物であるエヴァを掘り出すためには、それこそ沢山の大型重機が必要。だが、もちろん近世程度の文明レベルである壁内ではそんなものは存在しない。自律制御が可能であればよかったのだが、起動できていない現状では掘り出して、エントリープラグに搭乗するしか操縦できないようだ。とはいえ、兵士や市民の前で汎用人型決戦兵器をコツコツと掘り出すわけにはいかないしな、、、
「ストーリーのタイミングを見計らって、知性巨人の一人を味方につけて、……掘ってもらうしかないか」
巨人の力ならば、発掘はそう難しいものではないだろう。今壁内にいる知性巨人は、フリーダ・レイスの始祖の巨人と、グリシャ・イェガーの進撃の巨人。
「主人公のお父さんと今から接触するのはちょっと早計な気がするんだよね。……どうせ始祖の巨人の力について知りたかったわけだし、フリーダ・レイスとの接触を目指そうかな。うん、大変だろうけど、この世界に私の味方なんて誰一人いないんだ。どんと構えて気長にやろう。エヴァは今すぐに必要ってわけじゃないし」
よし、そろそろサックス高原に薬草採取に行くとしましょう。
「あれ……ここにも咲いてる」
立ち上がろうとした時、木の側にあった花畑に、今日探しに行こうとしていた植物の存在を偶然見つけた。まだ花は咲いていないが、秋になれば紫色の特徴的な形の花を咲かす、この植物。優しく引っこ抜いて、その根っこを採取する。
「上々。これだけあれば十分だね」
この植物のためだけに作った保管袋に入れた、
「さて、行こうかな」
少女は地中に埋まった相棒に別れを告げて歩き始めたのだった。
主人公、まさかの前々世持ち。
エヴァの設定と併せて主人公の過去がかなり複雑化注意報。
エヴァ四号機が出てくるのはかなり後のことなので、ここら辺の設定は頭の片隅に留める程度で大丈夫です。
安心して! 次回から進撃っぽい話になるから……
あと、12歳ころの主人公の挿絵です。
茨姫マキマさんです。
【挿絵表示】