マキマさん顔で行く、進撃の巨人   作:トロマグロ将軍

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やっと進撃っぽい話が始まります。
誤字報告して頂いた方、ありがとうございます。

本作品に掲載している挿絵はあくまでイメージです。
作者が画像生成AIで色んなマキマさんをニヤニヤしながら作って出来た副産物の一部を掲載しています。

それでなのですが本作品の描写と少しズレがある場合があります。
例えば、兵団のブレザーが調査兵団のものしかなかったり・・・。
どうしても訓練兵団や憲兵団の制服を着たマキマさんを生成出来なかった。
画像のマキマさんは頑なに自由の翼を背負ってます。
AIの中では、調査兵団以外存在しないようです(笑)
なので、ある程度脳内補完して下さると助かります。


YOU ARE (NOT) A SOLDIER.
6:新鮮なシチューの、匙加減


841

 

 

「貴様は何者だ? 」

 

 

「トロスト区出身 マイク・ジョーダンです」

 

 

「ふん、冗談みてぇな名前だな」

 

 

 一列に並ばせられた、兵士になったばかりの者が教官にどやされていく。

 

 

その者たちの多くは緊張で肩を震わせ、顔には涙さえ浮かべるものもいる。仕方もない。ここにいるのは10歳を少しすぎた者でしかいないのだから。

 

 壁の外の巨人から人類を守るための軍隊。だが100年間壁は破られたことがなく、壁の外に出なければ巨人との戦闘は生じない。体力に自信があって、家業を継げない子供はとりあえず兵士に挑戦する。憲兵団にいければ内地の勝ち組、駐屯兵は埃の被った武器を磨き、壁の上を酒を飲みながら散歩する。調査兵団は巨人に食べられたい自殺志願者集団。市井で語られた壁内の兵団像だ。

 

10代の若者が兵士を目指す。

 

その光景にどうしても思い出してしまう。ピチピチなエヴァスーツを着て、人類のために戦った、今は遠い記憶となるあのパイロットたちを。

 

シンジ君たちはエヴァのない世界で元気にしているだろうか。

 

 

「貴様は何者だ?」

 

 

そうしているうちに自分の番がやってくる。

おおっと、少し郷愁に浸りすぎたようだ。いけない、いけない。

 

 

「シガンシナ区出身 マキマ・ランスです」

 

 

私には目的がある。そのためにここに来たのだから。

 

 

「何をしにここに来た?」 

 

 

「私は……」

 

 

周囲の訓練兵や教官たちの視線が自分に集まるのを感じる。

 

 

「私は世界を見極めるためにここに来ました」

 

 

********************************************

 

 

青空の下、入団早々に訓練兵が体力テストという名のシゴキが行われている中で、兵舎の窓からそれを眺める教官たちの姿があった。

 

 

「訓練兵団の団長としては、今期の子たちはどう思います?」

 

 

教官の一人が立派な白いひげをこさえた男に問う。それなりの期間教官をやっていれば[通過儀礼]を見て今年の新芽が不作か豊作かが分かるようになってくるからだ。

 

 

「ふん、小便くさい奴ばかりじゃ。それも年々匂いがきつくなっているときた。

君も聞いたじゃろ、『父親の様に立派に壁を修理できるようになりたいです』

いつからわしらは壁修理屋になったんじゃろうな」

 

 

「ははは、訓練兵団長殿は厳しいですな。ですが兵団の練度および意識の低下は全兵団が抱える問題ですからね。市井でも兵団の存在意義を疑問視する声は高まりつつある」

 

 

別の教官は苦笑をこぼした後、少々深刻な顔で言いたくないことを述べた。

 

 

「平和の世が100年続いて、民衆が不安を感じることなく暮らす。これは素晴らしいことじゃ。だが、もしもの時のためにある兵団が一緒になって浮かれてしもうたら終いじゃ」

 

 

訓練兵団長であるこの壮年の男は、数少ない信頼できる部下にそう愚痴をこぼす。

 

 

「そうですね、腐りかけた兵団も何とかもちちこたえている。それと同様に訓練兵の中にしかと覚悟が見受けられるのも数名ながらいるように感じました。崩れかけた屋台骨を新たに支えられるような人材を見つけ、適切に導く……それが我々の職務であると考えます」

 

 

教官たちの視線の先は体力を測るために走らせている訓練兵たちに向かう。

 

 

「お主も生意気な口を利くようになったもんじゃな。……まったくのう。じゃが……確かにそれなりに良い目をする者もいたのう。モーゼス・ブラウン、トラウテ・カーフェン、ナナバ・シュミット、ゲルガー・シュルツ……

まだまだ甘たれじゃが見どころがまったくないわけでもない、というところかの」

 

 

「そうですね、でも一番の目玉は――マキマ・ランス――彼女でしょうね。まさか教官に問いを投げ返す子がいるとは」

 

 

教官たちは思い出す。通過儀礼で緊張した様子を一切見せず、最もしっかりとした受け答えをした訓練兵を。

 

 

*回想中*

 

「私は世界を見極めるためにここに来ました」

 

 

「見極める?見極めて何をするのだ」

 

 

「分かりません。ただ世界は50mの壁に囲まれ、外には巨人の世界が漫然と広がっている。世界は閉塞されすでに停滞ししつある。さて我々の世界はこのまま漫然と続いていくでのしょうか。教官殿、あなたはどうお考えですか?」

 

 

教官は訓練兵の吸い込まれるようなまなざしにたじろぐ。彼女の深く黄金色に光る瞳はまるでその終末を映してきたようで、教官は返す言葉を浮かべることができないでいた。

 

 

「私はただ見極めたいだけです。この世界の結末を。とりあえずはそれを見極められるそんな立派な兵士になるのが目標です」

 

 

真面目そうな顔で長々と説明をした後、最後に兵士への抱負を彼女は微笑んで述べた。

しばらく呆気に取られていた教官だったが、一人で喋りすぎということで罰として腕立て50回とその後のランニングを他より2倍彼女に課した。

 

そして彼女はしばらく同期の一部から[世界ちゃん]というあだ名をつけられることになったという。

 

***********************************

 

 

 進撃の巨人の世界観はドイツがモデルになっているのは有名である。ともすれば壁内で食べられているのはもちろんドイツ料理である。でも勘のいい人はお気づきなのではないだろうか。そうサシャが上官から肉を盗むエピソードがあった。そして肉が結構貴重である事実が。ウォールマリアが破れていない今でもそれなりに肉が貴重なはず。そうポンポンと訓練兵団の給食には肉は出ない。

 

ソーセージ、ハム 肉がでないドイツ料理に価値があるのか?

ソーセージ、ハム、アイスバイン、サワークラフト、ビール、ワイン、燻製、チーズ・・・

 

 前世の友人だった茶髪のツンデレハーフ“姫”ご自慢の手料理を思い出す。彼女の作るドイツ料理は美味かった。WILEEの指令室でやる日独の異文化交流と評した飲み会はそれは楽しいものだった。彼女は自己のプライドと反比例して自己の評価は低い所があったけれど、端から見れば勉学や運動、料理などあらゆるものを類まれな努力によって完璧に習得できるのだ。もっと自分の下を見た方がいいよ、伝えると、「あんたにだけは言われたくないんだけど」と返されてしまったが、、、

 

そんな風に一人でくだらない“前世”回想をしていると、実に美味しそうに食事をしている向かいの二人の男の子、その話し声が聞こえる。

 

 

「シチューってこんなに美味かったんだな」

 

 

「ああ、疲れた体にシチューが満ち満ちていくようだ」

 

 

(じゃがいもが溶けすぎてのっぺりしたこのシチューを美味しいかぁ……あ、二人を見つめすぎて二人と目があっちゃった)

 

 

【挿絵表示】

 

 

二人の男の子と見つめ合う私。小さい子に接するのは久しぶりで、どういう対応をすればいいかわからない。なんていうのだろうか。あーあれだ。入学式のあと教室に入るのに緊張するのと同じ感じだ。そうしているうちに隣の女の子が場を取り持つ一声を発する。

 

 

「二人とも大げさだろ、アンタもそう思うだろ」

 

 

一秒かけて自分に同意を求められていることに気づく。それもそれなりの美少女からだ。よし、気合を入れろ。美少女の友達を逃がしてはいけない。

 

 

「おーい、おーい、だめだ、急に下向いて反応しなくなったぞ、ミタビ、リコ」

 

 

「やっぱりちょっと頭がおかしい子なんだ、リコあんまり関わらない方がいい」

 

 

「まあ……そうか、そっとしておいてや……」

 

 

リコと呼ばれる女の子がそう言おうとした瞬間、マキマはガバッと顔を上げてリコの両肩を二つの腕でしっかりとつかむ。

 

 

「友達は逃がさないタイプなんだ」

 

 

【挿絵表示】

 

 

しっとりとした空気を含んだ声が発せられ、聞いていた3人は思わずゾクッとさせられる。それでも、リコは声の重さが存在するような声に、負けじと顔をしっかりと見て答える。

 

 

「ならさっさと返事をしてほしかったな。あとまだ友達になった覚えはない」

 

 

「それはごめんね、同世代の子と話すのが久しぶりすぎて。今まで誰も話しかけてくれなかったの。よければ自己紹介してくれると嬉しいかな、リコちゃん」

 

 

「それはお前が入団式の時に教官に変なことを言ったりしたからだろ。みんな気味悪がってるんだよ。俺の名前はイアン・ディートリッヒだ、よろしくな変人!」

 

 

「そうだよ、周りの子も君のことを『世界ちゃん』なんて言って噂しているのを聞いたよ。僕はミタビ・ヤルナッハ。ミタビって呼んでくれ」

 

 

おかしいなリコちゃんにしか自己紹介を頼んでないのに、がうがうと子犬が割り込んできた。リコは話し続ける。

 

 

「あぁ、お前あの時のやつか。私は入団式の時後ろにいたから、顔まで分からなかった。私はランニングの時の涼しげな顔の印象のほうが先にあったからな。というか、あれみんなの二倍走ってあれなのか? かなりのペースだったろ」

 

 

やはり彼女は視点が違うようだ。子犬に礼儀を教えるのは今度にするとして、リコへの返答をする。

 

 

「体力には自信があるんだ。ここに来る前は薬師見習いだったから、薬草採集で長距離を歩くのは慣れているんだよ」

 

 

「へえー、ったく、兵士の子供なのにプライドが傷つくよ。あ~私たち3人同じ地区の出身で、三人とも父親がその地区の駐屯兵団の所属でさ。そのつながりの所謂、馴染みってやつさ。私の名前はリコ・ブレツェンスカ。これから長い付き合いになりそうだな。」

 

 

そう言ってリコは手を差し出す。私も手を差し出し、二人の手が重なる。

 

 

「よろしくね、リコちゃん」

 

 

「ああ、思っていたよりまともなやつだった、リコでいい」

 

 

うん、可愛い子は好きだ。この子多分ネームドキャラだよね。確かトロスト区攻防戦の駐屯兵団のキャラだったはずだ。駐屯兵団だったら長生きしてくれるかな? ちょうど握手した後、どこからか声が上がる。

 

 

「おーいみんな、僕の名前はモーゼス・ブラウン。妾腹だが一応田舎貴族の出だ。4年間同じ兵士を目指す者同士切磋琢磨しつつ、仲良くやろう。ということでみんな一人ずつ自己紹介していかないか?」

 

 

真面目でハツラツな印象の金髪の少年が提案すると、娯楽に飢えた訓練兵の少年少女たちいいぞ、いいぞと合いの手を打つ。

しかしながら、マキマの座る席のすぐ近くから声があがる。

 

 

「ケッ、真面目ちゃんのボンボンがよ。いい子ぶりやがって」

 

 

どうやらいかにも不良そうなリーゼントっぽい髪型の男の子が発したようだ。それに対し金髪君ではなくその隣が勝気な反応を見せる。

 

 

「何よ!そこの男子!せっかくモーゼスがみんなのために提案したっていうのに!協調性って言葉を知らないのかしら?」

 

 

手に持っていたスプーンで不良君のことをビシッと指して、勝気なブルーブラックのセミロングの子はかなりキテルらしい。しかし不良君はその勝気な女の子の様子を見ても、まだまだ油を注ごうとする。いいぞもっとツンデレを摂取させろ。

 

 

「おいおい、坊ちゃん!お付きの女を黙らせろ。テーブルマナーがなってねぇぞ。」

 

 

ドッと周囲の中で笑い声があがる。ちなみに前に座るイアンとミタビも声をあげて笑う。リコはため息を吐いて食事続ける傍観の構えのようだ。しかし勝気な女の子はもう顔が真っ赤。ここでやっと金髪君もといモーゼスのやや遅いフォローが入る。

 

 

「エリー、ああいう人種はどこにでもいるだろう。気にするな。さぁ、次はエリーが自己紹介する番だよ」

 

 

それでも女の子の怒りはなかなか収まらないようで、スプーンを持つ手をブンブン振っている。鼻目立ちがすっきりとして、高くてツンとした鼻が高飛車なイメージとよく合う。

 

彼女をみた周囲から『今度は立体機動の練習か?気が早ぇなー』とヤジが飛ぶ。

 

あぁ、たぶんこれはやっかみの一種なんだろうなとマキマは思う。兵士を目指す当環境の中で、地球の軍やマーレの軍ほどではないが、自然と男女比は男の方に傾いている。男性兵士にとって女性との出会いは貴重だ。その中で可愛い女性兵士と初っ端から仲良くしているのは鼻につくのかもしれない。あとは単純に可愛い子の気を引きたいってのもある感じかな。

 

私も女性だからてって舐められないようにしないといけないね。お、モーゼスはなだめ続けて、ようやく彼女の流涎を下げるのに成功したようだ。

 

 

「ふん、エリザベス・マイヤーズよ。さっきのモーゼスと同じ領地から来たわ。

好きなことは生意気な奴をこらしめること。嫌いなのは下品なオスの豚よ。対人格闘術があるって聞いたわ。私にヤジを飛ばした奴覚えてなさい」

 

協調性がなんだと言っていたが、彼女もまた協調性に欠けるタイプなようだ。仲良くできそうだね。次に真面目で理知的そうな男子がおずおずと手をあげる。その表情は苦笑いだ。モーゼスの向かいで座っているので空気を読んだのだろう。

 

 

「……あはは、僕の番かな、モブリット・バーナーだよ。牧場を営む家の末っ子なんだ。

進路はまだわからないけど、憲兵になれたらいいな。好きなものは動物、特に馬かな。僕はどっちかというと、誰かを支えるのが好きなタイプだからみんなで支え合って行きたい思っているよ」

 

****************************************

(リコ視点)

 

 

 自己紹介は進んでいき、当然私たちのテーブルにも順番が回ってくる。私、リコも無難に自己紹介を終えた。そして馴染みであるイアンとミヤビのテキトーな紹介の後、マキマの番が来た。何を考えているが分かりづらいマキマは、再び小難しいこと言うつもりかもしれない。隣に座っているから目立つのはやめてほしいものだ。少し高い彼女の声が発せられる。

 

 

「……こんばんわ、私はマキマ・ランス。少し前は薬師見習いをしていました。養父が死んでしまったのを機にここに来ました。今のところ憲兵団志望です。好きなものは料理、楽器……かな。仲良くしてくれると嬉しいです」

 

 

最初の強烈な印象に対して、経歴に際だつものはない。器用なヤツなんだなと思うだけだ。だが仲良くというところで、チラッと私のことを見てきた。なんてあざとい奴なんだ。男に興味はないが、その男受けしそうな顔の隣にいては、今後めんどくさいことこの上ないだろう。

 

 

「あの子可愛くないか? 入団式でも目立ってたけどさ。俺今完全に惚れちまったかも」 

 

「マキマちゃんだろ? 表情たまんないよな」

 

「俺は隣の白い眼鏡の子に……いや、やっぱ赤い子にアピってからだな」

 

 

ほらな、自己紹介を聞いてあちらこちらで盛り上がっている。いかんな、目にしわが寄ってしまう。すると、一人の男が自己紹介を終えたマキマに近寄る。

 

 

「なぁ、君、入団式のとき教官に言ったのはあれは本気かい? いや、からかうつもりつもりじゃないんだ。君のあのスピーチはとてもよかったからさ。・・・・・・この世界についてあんなことを考えている人が自分と同じような年齢でいるなんて思わなくてね。自分の考えをなかなか言語化できなくて悩んでいたけど、まるで君に代弁してもらった気分だよ」

 

 

たしか、モーゼスだったか。彼はさらに続けて話す。

 

 

「だからこそ、僕は疑問に思うんだ。なんで憲兵団志望なのかって? やっぱりこの世界を知るには調査兵団だろ? 調査兵団だけがこの閉塞された壁内環境を打ち破れる存在だよ。君も僕と調査兵団に入るべきだ。君に最近の調査兵団の進歩を……」

 

 

まくしたてるように言われても、マキマは微動だにしない。だがマキマの返答を待たずして、さっきのリーゼントが参戦してしまう。よっぽどモーゼスが気にくわないのだろう。私も気に食わないが。

 

 

「オイオイ、この女が可哀想だろう。あんな自殺志願者集団に勧誘されちゃ迷惑ってもんだ」

 

 

「調査兵団が自殺志願者集団だって!? 人類の解放者たる彼らをなんて言い草だ! 君さっきからいい加減にしてくれよ! さっきから僕やエリーに突っかかって」

 

 

段々と声が大きくなる。リーゼントの野次はモーゼスにクリティカルヒットしたようだ。

 

 

「俺はゲルガー・シュルツだ。まったく笑えるぜ。御貴族様が物見遊山で訓練兵団に来て、とうとう調査兵団に入りたいとぬかしやがった。俺はな、お前みたいな世間を知らないガキが大嫌いなんだ。ここにいるのは家業を継げない次男坊、三男坊、他で食っていけなかった才能のないごく潰しが大半だ。なあみんなそうだろ? そいつらの考えることは一つだ。憲兵になり内地に行って見捨てた奴らを見返すことだ。兵士になれずとも実家に戻れば居場所があるお前とは違うんだよ。だから遊びにきた坊やはくじけて泣き帰る前に、自主除隊するんだな!」

 

 

「ッ、僕だって戻っても居場所があるわけじゃない。目的のためにここにいるんだ。貴族の倅だからってバカにするな!!」

 

 

「口論で負けたら今度は素手の喧嘩か。ヘッ、買ってやんぜ!」

 

 

口論は完全にヒートアップしている。発端のマキマは黙って言い争う二人を興味深そうに見ている。喧嘩が始まりそうな雰囲気に、周りもはやしたてる。

 

 

「行けぇ、モーゼス! キモいリーゼント野郎なんて、やっつけてぇ!!」

 

 

モーゼスと仲が良いのだろうエリザベスも騒ぐ。もうなんでもいいから静かに飯食わして欲しい。

 

 

 

「仕方ないね。男の子は」

 

 

 

 初めてマキマから声が出た。微笑したままだが、呆れているらしい。しかし当の二人には彼女の声が聞こえていない。もみ合い始めた男二人を抑えるのは、私やマキマのような女にとって荷が重い。かといってここにいる大多数は、面白がるか、呆れているかのどっちかだ。もう教官が来ない限り収集がつかない。

ま、勝手にやってればいいんだ。進路選択はまだまだ先だ。入団初日にこんな言い合いなんて、馬鹿だとしか言いようがない。

 

 

 幼馴染のバカ二人ははどちらが勝つか、互いの朝食をかける相談中だ。そんな中、どつき合った二人が私たちのテーブルと椅子にぶつかる。そのおかげでイアンが持っていた皿が揺れて中身が零れる。

 

 

「おいおい、こぼしたじゃねぇか!」

 

 

イアンがぶーぶーと文句を言う。幸い私の皿は無事だった。だが、、、私は気づいた。マキマの特徴的な虹彩が眼の中央になくなっていたことを。

彼女の皿に突っ込まれていたスプーンが、皿から落ちている。そしてスプーンが古めかしいテーブルの上でほんの僅かな染みを描いていた。

 

綺麗に揃えられた眉毛と、大きな目、黄色の瞳、すべてがシチューの芸術的な染みと一直線に結ばれる。彼女はスプーンをつまんだ。口の中でスプーンをしゃぶる。無の表情で。

 

 

スプーンを再び皿に戻すと、マキマは立ち上がった。すると向かいに座るイアンとミヤビのスプーンを手に取る。何をするつもりだろうか。

 

 

「おい、俺らのスプーンだぞ」

 

 

「イアン。明日の朝食じゃなくて、どっちかの攻撃が当たるかどうかにしようよ。一回ごとにスプーン10杯分のシチューを賭けるとかどう?」

 

 

「おー! 面白そうだ! マキマもやるか? 俺の親父曰く、賭け事が一番人間関係を変化させるって話だ」

 

 

「おい、バカ! もうやめろ! すまん、マキマ。こいつらはバカで悪気は……少し……しかないんだ」

 

 

馴染みたちの馬鹿さ加減が心底恥ずかしい。マキマは私たちをガン無視して、片手に一本ずつ持ったスプーンを一振り。付着した汁を飛ばした。その間に男どもの取っ組み合いを観察しているようだ。

スプーンを片手に一つずつ、宙に軽く投げくるくると回す。二つの匙の重さを確かめるようなそぶりだった。そして宙のスプーンを彼女がつかんだ次の瞬間。

 

 

その二つのスプーンは、モーゼスとゲルガーの喉元に添えられていた。

気づけば二人の間に入っていた彼女は言う。

 

 

「二人とも仲が良いんだね。おもしろい見世物だった」

 

 

本当に刹那だ。流れるように動いたマキマによって、気づけばもう二人は動けなくなっていたのだから。その異様な光景に、騒いでいたみなが驚いてしーんと押し黙る。

 

その場を支配したマキマはゆっくりと話す。

 

 

「でもこれ以上は冗長かな。どちらがいい? このまま教官の前で続きをやるか。静かで優雅な食事の続きをするか。……私はどっちでもいいよ」

 

 

スプーンを突きつけられている二人は喋らない。い、いや喋れないのか? 見るからに苦しそうにしている。

 

 

「あ、ごめんね。喉ぼとけに当てちゃった……はい。もう喋りなよ」

 

 

 

「「ガハッ、ガハッ。コヒュー、ハァハァ、コヒュー……」

 

 

「はい」の合図でスプーンから解放された二人はそのまま崩れ落ちる。体の自然な反応なのだろう。涙を流して、唾液を口から床に吹きこぼして、必死に呼吸する。とても喋ることができる様子ではない。そんな彼らをただただじっと見下ろすマキマ。

 

 

「私ね、昔犬を飼っててね。……だから聞いたことがあるの。無駄に吠える犬はね……声帯を切り取っちゃうんだって」

 

 

 

私も含めてただ唖然とするほかない。この時訓練兵全員が考えていたこと一つだ。ドン引きである。入団初日の皆の心がこんなことで一致するなんて。それでも赤色の暴走はまだ止まってはいない。少し落ち着いてきた哀れな被害者たちに、マキマは優しく話しかける。

 

 

「静かにできる?」

 

 

 

「「......グズゥ、ぅあい」」

 

 

 

「うん、息ぴったり。仲がいいのはいいことだけど、はしゃぎすぎないようにね。さぁ、ごはん、ごはん」

 

 

そうしてマキマは何事もなかったように席に戻るのだ。スプーンをくるくると回して、イアンとミヤビに差し出した。

 

 

「イアン君、ミヤビ君。これ。ありがとう。……さっきの私への悪気はこれでチャラにしておくね」

 

 

そうこうして、皆の心が一つになった訓練兵団の初日は、終わりを迎えた。

 

 

ちなみにマキマさん、夜はリコのベッドに忍び込んで、一緒のベッドで仲良く寝ましたとさ。その朝リコはスプーンで声帯をほじくられる夢を見て、飛び起きたらしい。

 




いきなり訓練兵に就職するマキマさん。
今からマキマさんの兵団キャリア邁進RTA始っまるよ~。
マキマ「教官、私は優秀な兵士です。勿論飛び級とかありますよね?」
教官 「飛び級? そんなものはない。新兵は3年間みっちり訓練だ」
マキマ「えっ?」

*あれ、エレンとかミカサどこ?
 シガンシナ区で一年間薬師見習いしていたので、主人公とイェーガー一家は面識はあります。
エレンやグリシャのことは一応偵察済みです。
主人公の頭の中では、自身がエレンのお姉さんポジとなり、進撃主人公を幼いころから洗脳していく、光る源氏ならぬ光るわんこ君作戦が計画されていました。
しかしながら、、、
841年においてエレンは五歳という幼さ(そういやエレン記憶いい方じゃないし、今粉かけても将来ワンチャン忘れられる?)、いつもくっついていた初期のミカサは割とエレンにうざがられてた(自分もうざがられるかも)、そもそも今の子供エレンは何の力もないパンピー(正直愛でるぐらいにしか役に立たん)という諸々の理由で遠くで観察する程度でした。

とりまマキマさんは壁内における行動半径を広げるために、兵団組織でのキャリアアップをまず優先しようという感じです。
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