筆が進みません。
かっこつけたぽい題名とかも考えるのも頭悩ませるし(一周回ってダサい)、誤字脱字はなくならないし……
誤字報告、誠に真にまことにありがとうございます。そんで、作者は思ったより読んで下さる方が多くて非常にビビってます。面白い話作るのって、本当に大変だと思い知らされてます。
では、始まります。
第7話:なくならぬ、誤字
訓練兵になって二日目。まだ日が昇り始めてまもないころ、朝食を食堂で済ませ朝一の走り込みが始まる。まだまだ体力がついてない訓練兵はみな死にそうな顔で一所懸命走っていた。
もちろん私は先頭で眉一つ動かさず独走状態。最初は昨日のことが悔しかったのか横でモーゼスやゲルガーが張り合っていたが、どんどんペースをあげる私に、5周目で絶望の表情をした二人の顔が後ろに流れていくのが見れた。
やっと走り終えて肩で息をしているリコに、井戸でくんだ水を渡しに行く。
「ありがとッ、ハァハァお前どんだけ速いんだよ」
それほどでも~と照れていると、地面に突っ伏したイアンとミタビは
「「マキマさんや、俺たちにも水をくれ~」」とゾンビのような声をだしている。
――――ったく、しょうがないなぁ
走り終えた後、休憩はほどほどにすぐに次の授業がはじまる。
「おい、家畜ども。もう疲れたのか? 休憩は終わりだと伝えたはずだが、そんなに開拓地に行きたいのか」
教官から愛のある発破を頂き、整列する訓練兵たち。
「次の訓練は対人格闘訓練だ。兵士たるものどんなものが相手でも対処できる方法を学ぶ。今日学ぶ徒手格闘術は今後学ぶ逮捕術やナイフ格闘術、銃剣術の基本になってくるものだ。憲兵や駐屯兵を目指すものにとっても犯罪者から自分や市民を守るために必須な項目である。こころしてかかれ」
そうして徒手格闘の基本技を教官が例を見せて説明し、各自二人一組に分けられる。どうやら訓練最初の今日はできるだけ同性で組まされるみたいだ。マキマは短髪の色素の薄めな金髪の女子と組まされた。中性的でかわいいというよりカッコいい、同じ女子にモテそうな雰囲気の子だ。
「世界ちゃんだっけ、噂のアンタと組まされるなんてね」
「・・・・・・君の名前覚えてないんだ。よければ教えてほしいな」
「昨日のバカな二人のせいで、私まで自己紹介の番が来なかったからね。いいさ、バカな二人の内一人は知り合いだし。私はナナバ・シュミット。ゲルガーとは同じ地区の出身だから、昨日はあいつが迷惑をかけたね。あいつの分まで謝るよ」
あんまり謝っている感じにはみれない笑。気が強そうにお見受けする。
「あれはあれで面白かった」
「そうかい、あの手捌き、アンタこっちも強いんだろ」
そういっってナナバはシャドウボクシングの体で軽く腕を振るった。
「う~ん、それなりには自信はあるけど」
「フッ、それなりね。私も〝それなり”に経験があるから、遠慮なくいかせてもらうよッ」
ナナバは少し笑った後、いきなりフックを私の顔面に繰り出してくる。結構するどい。私は左手でナナバの拳の軌道をそらし、そのまま彼女の腕を脇に絡ませて彼女の体勢をくずし足技をかけようとする。
しかし欲張りすぎたようでお互いの距離が近くなった状態でナナバの膝蹴りが今度は迫ってきた。
私は瞬時に頭突きをくらわす。ナナバが痛みで『ェギィ』と喘ぎ声をあげる。さらに脇で固めていたナナバの右腕を急に離すと、ナナバはバランスを失い膝をついてしまった。
一端対局はしきり直しとなる。
「ッ痛った……やっぱり強いね。だけど頭突きのあと、私の膝蹴りを受けていたら私をすぐに倒せたんじゃないの?」
「受ける傷は少ない方がいいよ。それにせっかくだしもっとやろ」
「……ふーん、本気じゃないんだ。じゃあこれはどうかな?」
すると立ち上がったナナバから同じようにまたフックが飛んでくる。さっきと同じじゃんと思い、対応しようとすると、彼女の手が開かれた拳から何かがマキマの顔にぶちまかれる。口の中に異物が入ったことでマキマは砂利を投げつけられたことに気づく。してやられた。
どうやら広範囲にぶちまけられた砂は反射的に閉じた目にも少し入ってしまったようだ。
口の中がじゃりじゃりする。目にも少し入ったみたい。目潰しか、なかなかえぐいことをする。油断したな。かっこ、かわいい顔の原作キャラだから可愛がってあげようと思ったのに。
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ナナバの幼少期は、普通の子供の幼少期ではなかった。蝶よ花よと普通の女のコが目一杯愛されるようなことは、彼女の親から受けることはなかった。
ナナバの父親は賞金稼ぎ。彼は若いころは相当腕が立つ賞金稼ぎで、何人もの犯罪者を手にかけ、または絞首台送りにしていたらしい。だがある人攫いの犯罪組織を追っていたとき、被害者の女性と恋に落ち、そして彼女との間にナナバが生まれた。母親はさらわれた経緯で酷い人間不信だったが恩人である父親にはべったりで、父親はそんな母親のことを滅多に外に出さないほと大層大事にしていた。
ナナバが6歳のころ、父親は血生臭い前職から足を洗い、鉱山労働者として働いていた。町から少し離れた場所に一軒家を建て、母親は二人目の子供を妊娠しており、幸せな3人の家族は新たにもう一人が加えられようとしていた。
そんな家族の幸せの絶頂期に悲劇は起こる。父親が若いころ捕まえた犯罪者の仲間の一人が報復にやってきたのだ。父親が不在の時に狙われたその襲撃に、身重の母親は何もできずに弄された挙句、お腹の子どもと一緒に惨殺された。ナナバは運よくそのとき馬小屋で遊んでいた。ただの子供でしかなかったナナバだが、母親が犯罪者に襲われていることだけは理解できた。だがそのあと自分が何をするべきかわからなかった。
母親を襲う犯罪者を奇襲する、いや6歳の子供でしかないナナバに何が出来よう。奇跡でも起こらない限り返り討ちに合うだけだ。そんなことをぐるぐる考えて母親の叫び声を聞きながら、ナナバは馬小屋の藁の中で隠れてブルブル震えるしかなかった。藁の中で座り込む自分に何度も『立て、母と弟を救うんだ』と言い聞かせたが、恐怖で足が言うことを聞かなかったのだ。
翌朝母親を診療に来た医者によってナナバは保護された。
事件から三日後仕事に出ていた父親が帰ってきた。そして愛していた妻とお腹の子供をいっぺんにを亡くしたことを知った父親は絶望した。すべての余裕をなくした男は、残されたたったひとりの愛娘のナナバを抱きしめるのでもなく、決して言ってはいけないことを言ってしまう。
「お前は母親を見殺しにした」と。
「なぜ立ち向かわなかったッ? なぜ助けを呼ばなかったッ? そうしたら助かったもしれないのに! 答えろッ!」
男にはわかっていた、ナナバが一人立ち向かったところでどうこうなるものではなく、まだ馬の乗り方も知らないナナバが助けを呼ぶのも限界があることも。だが自身の暗い経歴から起こった、この悲しい現実に男は耐えきれず、隠れていたという娘を一方的に責めることでしか、彼の無力感を支えられなかったのだ。
「ごめんなさいッ、ごめんなさい.....ッヒック、わ、わたし、が、よわ、かった、から.....、こわ、くて、みて、みぬ、ふりを.....した、から」
優しかった父親が豹変して自分を責める姿にナナバは耐え切れずに泣きじゃくりながら、父そして死んだ母親とお腹の子に謝り続けた。
次の日から父親は以前の優しさが一切なくなり、しつけと称してナナバに戦い方を教え始めた。それは六歳の女の子には厳しいものだった。たまに訪ねた人が女の子に厳しすぎる言えば、こいつは女として育てないと言い、女のものの洋服やおもちゃをすべて燃やした。その姿勢に人は『あんなことがあったから.....』と心配そうにしていただけだった。
ナナバが少しでも訓練に気を緩めると、激しい折檻がナナバを襲った。
「この世は残酷だ。この事実をまたお前は見て見ぬふりをするのか?(バシッ) また隠れているのか?(バシッ)見ただろう、身を守る術がなければああなると。(バシッ) さぁ立て、もう忘れたのか? お前が母さんを見殺しにしたことを(バシッ)」
「お父さん、やめて!ごめんなさい..... ごめんなさい!もうしません!いやっ、ごめんさい」
「謝るだけかッ? 恐怖に立ち向かえ!」
三年ほどたったある日、ナナバは父に連れられて、父の弟の家に預けられようとしていた。そして父は去り際になんとあの日以来二度としてこなっかた抱擁をナナバに行ったのだ。驚きのあまり硬直するナナバにこう言った。
「ナナバ強くなったな。お前には身を守る術を最低限教えた。これからも精進を忘れるな。父さんは母さんを殺させた俺の過去と決別しにいく。ナナバ、お前は兵士にでもなれ。そうすれば母さんたちを殺した犯罪者に追われることもなくなるだろう。それまでは叔父さんを頼れ」
「兄さん、この子はあんたの家族だろ。兄さんが守ってやればいいだろ」
「家族なんてのはあの日消えてしまったよ。妻が死んで絶望した俺自ら粉々に壊したんだ。残ったのは生きる目的が復讐のみの男と哀れな娘だけだ。俺から復讐心が取り上げられたら、父親という責任すら放棄して自死を選んだだろう。俺は弱い男だ。妻を失ってその絶望を受け止められず、守るべき娘をおいて復讐の旅に向かおうとしているのだからな。・・・ナナバには謝りきれないほど酷いことをした。だからッ、すべてにケリををつけたら.....もう一度本当の父と娘になりたいんだ。虫が良すぎるのは分かっている。どうかこんな弱い父を許してくれ。愛している、ナナバ」
父親は泣きながら最後にもう一度強く抱きしめた。ナナバは父親が去っていくのを叔父と一緒に呆然と眺めていた。
一か月後、一人の憲兵が父によって殺されたのを知った。父の手紙から、三年前、町で唯一父親の前職を知っていたその憲兵が付き合いのあった医者を脅して家を聞き出し、賄賂のためにそれを襲撃犯に伝えたらしいことが書いてあった。憲兵を殺して追われる立場になったが、襲撃犯の手がかりをその殺した憲兵から聞き出したので、必ず襲撃犯を追い詰めるとも。
それ以来父から手紙が来ることはなかった。ナナバは13歳になった。父の言いつけどおり、護身術の訓練はつんでいる。住んでいる町の同じ年頃のガキンチョの中では敵なしだ。父のことは今でも全部、整理がついているわけじゃないが、昔より心が成長した彼女は、父が壊れてしまっていたことを理解できるようになっていた。恐ろしい父親は壊れていながらも、確かに自分のことを愛していたらしいと。
(だから私はもう逃げない。隠れない。父親とちゃんと向き合う)
(今でも父に折檻されていたあの恐ろしい記憶が夢にでる。夢の中の私は母を見捨てた罪悪感と父の恐ろしさにただ泣いているだけだ。でも現実のわたしはもう泣かない。強くなって、帰ってきた父親をボコボコにするのだ。そして……あの父を許してやる)
もう一度家族になるために。
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あ、なんで寝てんだ?
……青い空が見える。清々しいほど雲一つない晴天。太陽が眩しい。
……んあ、何してたんだっけ、私?
赤髪女と戦っていはず……だけど……
そう、余裕綽々のすまし顔野郎に砂をかけて目を潰して……
それから目を失ったあいつに寝技をかけようと組み付いて……
それから……それから……
……そ、そうだ、なぜか逆に取りつかれて逃げようとして、それで馬鹿みたいな力で、びくともしなくて
そのまま首をヘッドロックされて……?
「大丈夫?」
急に逆さまの顔が現れた。とてつもなく整った顔、綺麗な黄色の瞳は無邪気でまったく悪気がなさそう。彼女は心配そうにこちらを見ている。
「ごめんね、目が見えなかったからちょっとやりすぎちゃった」
「……嘘つけ、こっちのタックルをあんな風にいなされて、見えてなかったは嘘だろ。気が付いたら絞められてたんだぞ」
「人間には視覚以外にもたくさん感覚器があるよ」
「……ふ、なんだよ、それ」
答えになってそうで、なっていない返しをされ、思わずナナバは笑ってしまう。
「見えてなかったのは本当。君が気を失った後、顔洗ってきたもん」
そんなことを聞きたいのではない。
「私、自信あったんだけどな……」
私の口から弱弱しく言葉がこぼれる。
だって……喧嘩で負けるにしても、普通はどうして負けたか分かるもんだ。さっきの闘いでは目潰しを仕掛けてから、奴の雰囲気が一変して……その後は訳もわからず敗北していた。
負けた理由がなくては、次勝つビジョンを浮かべることができない。
圧倒的敗北。これでは……父に勝つどころではないでないか……。
「……っ、悔しい」
「泣いてるの?」
「……っ、泣いてない!! 泣いちゃダメなんだ!」
一方マキマにとっては自分の方が精神年齢が上であり、十代の少女を泣かせたのは、なかなか心にくるものがあった。
(かぁぁいいー! 強さの自信を粉砕されて、思わず泣いちゃったんだ)
マキマのそんな思いをいざ知らず、ナナバは自分がもう泣かないと決めたことを思い出す。
「……っ、私はどうしたらもっと強くなれる?」
「もっと楽しんでやりなよ」
「楽しむ?」
「闘って感じたんだけど、強さに貪欲な感じはいいと思う。でも余裕のなさも感じたよ。こういうのは、ゆっくり上達していくもの。これは訓練なんだから力を入れすぎず、もっと楽しくやったらどうかな」
楽しむか……。面白いことを言う。このマキマという女には、私が余裕がないように映ったらしい。確かにそれはそうなのだろう。たかが一度の闘いで見透かされてしまったか。ここまであっさり負けたのだ。舐められてムカついて目潰しなんて戦術とったはいいものの、お返しと言わんばかりに何も出来ずに気絶させられた。
そのため悔しいという気持ちとともに、ナナバには頭上の晴天のように清々しいような心持ちも確かに存在していたた。
「それとあの何でも使う意地の悪い攻撃は私嫌いじゃないよ。だけど格上相手に使うと、変にイラつかせてしっぺ返しを喰らうだけになるかもしれないから気をつけてね」
なんだよ、悔しいのか、胸がすいたのか、わからない……。
「もっと相手の視線をずらす、例えば・・・・・・こんな風にやるといいよ」
だから自然と、自分より強いマキマに尋ねていた。
「……なぁ、もっと強くなれると思うか?」
「強くなれるよ」
躊躇なく答えが返ってきた。
「……そうか」
「訓練で練習すれば強くなれるよ。もっと楽しみながらね」
「……そうだな。……あんたと闘っていたら楽しそうだね。これからもお手合わせお願いしてもいいかい」
そういってナナバは立ち上がる。まだ少し頭がふらふらするが、マキマに向かい合う。
「手合わせなら、もちろん」
「じゃあよろしく。目潰し悪かったよ、マキマ」
ナナバはマキマに和解の握手をするために手を出そうと思ったが、その前にマキマに抱き着かれる。
「うん」
「//……あのさ、初めましてで、普通ハグはなくないか? 握手しようと思ったんだが」
「……私たちは前よりお互いのことを理解することが出来た。そして相手と触れ合うことでもっと理解できる、私はそう思うんだ」
二人の美少女が激しく抱き合っている。
「//あのいつまでハグしてるんだ? 周りがすっごい見てるんだが」
二人が激しいハグを見て隣の適当に訓練中だった男子たちがもてはやす。
「オイオイ、お熱いね~! お二人さん、俺も混ぜてくれよ!」
「ねぇねぇ、俺も気を失ったらハグしてくれんの?」
点数にならない対人格闘の時間で暇を持て余しているのだろう。
「……殴られたいなら、そういいなよ」
ナナバは少年たちに気を悪くしたようで睨み付けて威嚇した。女だからって舐められるのがナナバは一番嫌いだからだ。それに対してマキマはハグをやめ、彼らを見てしれっと言う。
「私に勝てたらハグしてあげる」
二人の男子たちはただの冗談で言ったつもりだが、マキマの返事はお気軽なものだった。マキマは何気なく男たちを見る。少し笑っているようにも見えるその様子に、誘われているとボーイズたちは期待を持ち始める。
マキマは強いことは皆知ったが、それでもなお随一な美貌をもつ彼女と少しでもお近づきになれるなら……なんて。
「いいのかよ?」 「バカ! 俺とやるんだよね、マキマちゃん?」
無垢な少年たちはノリ気になってしまう。
「オイオイ、何してんだ? 俺たちも混ぜてくれよ」
もう隣りの一組も盛り上がっているのを聞きつけ、便乗してきた。
「で何をしたら勝ちなんだ?」
「私に一発いれたら、勝ちでいいよ」
随分とシンプルなルールがマキマから設定された。
「いいな、分かりやすくて」「俺もやる気出てきた」
「そうだな、やっぱり合褒美があるんだからな」「じゃあ、俺からでいいか?」
御褒美に涎を垂らしてたぎる四人の少年たち。そんな彼らにマキマは表情を変えずに答える。
「四人同時で来なよ」
「「「「「え!?」」」」」
首を振って全員同時でいいとマキマが言うのを、傍観していたナナバも含めて驚く。
「いやいや、ちょっと強いからって、それは……舐めすぎだろ」
少年たちは不機嫌だ。強いのは分かるが、ここまで舐められたら男の沽券に関わる。
「なあ、マキマ。大丈夫か? 私も加勢するが」
ナナバもさすがに不安がる。
「ナナバちゃんは気絶したばかりなんだから、まだ無茶しちゃダメだよ」
マキマはナナバの加勢を断り、続いて四人の男子たちに言う。
「やめるの? ……私より強い男性とならデートしても良かったんだけどな」
「やるぜぇぇおめぇらぁぁ!!!」「「「おう!!!」」」
少し残念そうな顔をするマキマを見て、男子たちのやる気は最高潮に達する。四人は拳を構えてマキマと相対した。
「やっぱ嘘ってのはなしだぜ、マキマちゃん!」
「そうだ、そうだ!」「女にも二言はないんだぜ!」
「じゃあ始めなよ」
「「「「行くぜ!」」」」
合図で四人が襲い掛かる。二人が正面から、もう二人がマキマの裏に回る。挟まれつつあるマキマだったが……。
ふっとマキマの姿がぶれた。正面の少年にはそう見えた。直後視界の下から、腕が現れ少年の顎を打ち抜く。なんのこともない、目に止まらぬ速さで低姿勢で飛び出し、一番近い少年に掌底撃ちをしただけだ。少年の体は衝撃で浮きあがった。既に脳を揺らされ白目になっているが。One Down!
続いて正面のもう一人の脛をけり上げた。ちなみにさっき『行くぜ!』と言ってからほとんど時間が経ってない。少年の感覚では『行くぜ!』と言った瞬間に足に激痛が走った。蹴られたと認識する前に、もう片足を払われバランスを失い後ろに倒れこむ、終いに顔面を肘で小突いて意識を刈り取る。あんまり強くやると殺してしまう、ちゃんと加減はしているつもりのマキマさん。とりあえず Two Down! 次だ。
正面の二人が倒れた。裏に回っていた二人には辛うじてそれが認識できた。マキマが何をしたか分からないが、もう止まることはできない。前の二人を倒したマキマに背後から奇襲しようとした。だが少年は、後ろに目がついているかのように襟と腕を掴まれて、宙に飛ぶ。彼女は前を向いたまま、後ろから迫ってきた少年をまったく見ずに背負い投げの体で投げたのだ。マキマの優しさで辛うじて受け身を取らせたが、彼は強く背を打ち戦闘不能となる。Three Down!
残るのは一人だ。あっという間に三人が倒された。最後の一人はようやく気付く。これは端から彼女を侮辱した男たちの処刑ショーだったことに。やられることが分かって突っ込むバカはいない。足を止め、マキマに降参の意を示す。
「こ……降参、降参だ。ま……マキマさん、強いんだな。お、俺はもういいかな、アハハ」
マキマは向かってこない最後の少年の方を振り返る。
「男にも二言はないらしいよ」
マキマが向かってくることに怯える。
「ひっ、勘弁してくれ! わるk……ゴホッ……」
少年は咄嗟に両手で顔を守るが、逆に空いている鳩尾にいいのをプレゼントされ崩れ落ちる。Four Down!
「デートは出来そうもないね」
伸びて倒れている少年たちの真ん中で何事もなかったかのように、すまし顔でのたまうマキマ。一瞬で片がついた闘いに、見ていたナナバは絶句する。ほとんど何をしたのか分からなかったからだ。背負い投げと最後の鳩尾の一撃は辛うじて分かったが、正面の二人をどうやって仕留めたか、まったく分からなかった。
彼女の圧倒的なフィジカルとそれを支える技術。ナナバとの闘いで彼女は舐めていたのではない、手加減しないと勝負にさえならなかったのだ。
「……なぁ、マキマ。なんでそんなに強いんだ?」
「えーと、昔に色々やっていたからね、私生まれは貧しかったし」
彼女は強さの理由をすべて話してくれるわけではないらしい。まだ知り合って間もない。ナナバは無理やり納得する。
「そうか、それにしてもこっぴどく……やったな。まあ、こいつらの言うことには私も腹がたったけど」
「うん? 別に怒ってやったわけじゃないよ」
ならどうしてこいつらを挑発してまで、叩きのめしたというのだろうか。そう思うナナバ。
「じゃあどうしてだよ?」
「子犬が噛みついた時は、子犬のためにもちゃんと躾けてあげないといけないの」
伸びている少年たちを見て、伸びをしながら何気もなくそう言うマキマに向かって言う。
「……お前、変わっているな」
初めての対人格闘訓練で、五人も気絶させその内四人は救護所送りにしたマキマ。教官からは今後は手加減をするよう厳重注意を受ける。
そしてマキマの美貌に騙されて、不用意に粉をかけようとする者は絶滅した。彼女を無理に口説いたり、表立って変なあだ名を言ったりした場合、対人格闘訓練で躾けさせられるからだ。彼女のお気に入りの少女たち(リコやナナバ)を悪く言うのもアウト。マキマを侮辱すれば表面では全然気にしてなさそうだが、ちゃんと覚えられているのが怖いところ。それが同期のメンバーに周知されるのに時間はかからなかった。
ナナバの生い立ちを想像して書いてみました。
アニメ版のウトガルド城の戦いにおける彼女の最後の言葉を参考にしています。
「お父さん……止めて! お父さん! ごめんなさい! ごめんなさい……もうしません! やだ~!(パクリ)」
進撃屈指のトラウマシーン、ガクブル……。
ちな主人公、今世の幼少期は人とまともに付き合ってないため、人との距離感がバグる時がある。それも原作キャラだと尚更。
リコ&ナナバ「お前は偶に距離感がおかしい!! お前は一体何なんだ……?」
マキマ 「私? そうですね……私はあなたたちのファンです」
リコ&ナナバ「!?」