提督に転職したら想像以上にブラックだった件   作:Sh1Gr3

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陽炎さんの配属理由②

 第八基地と第七基地の区域の境目。そこに二人の艦娘の姿があった。

 

 「ここまでね」

 

 一人の艦娘が航行を止めて言った。

 

 「周りに深海棲艦の気配もないし、基地の方からあんたのお仲間も迎えに来てるみたいだから。ここからは一人で行けるでしょ」

 「はい。艤装も直してもらいましたし、大丈夫です」

 

 そう言ってもう一人の艦娘──不知火が頷いた。

 目の前の艦娘が、去る前に付け加えるように言う。

 

 「あ、そうだ。私のことは黙っておいてね。ばれると面倒だから」

 「……」

 

 不知火はじっと、眼前の艦娘を見つめていた。そして彼女の去り際、その背に向かってどうしても訊きたかったことを口にした。

 

 「叢雲、あなたはいったい何者ですか?」

 

 叢雲からの返答はない。そのまま去ろうとする背に、不知火は追加で言葉を投げた。

 

 「ソナーなしでなぜ敵潜水艦の場所がわかったのですか。あの煙幕の中どうやって命中させたのですか。艤装を修復したあの液は──」

 「ああもう、質問が多い! あんたそんなに饒舌なキャラじゃないでしょ!」

 

 気が付けば、不知火は叢雲の真横まで来ていた。不知火のあまりの熱量に押され、叢雲が声を荒らげたのである。

 不知火はこほんと咳払いをすると、叢雲から離れて言った。

 

 「失礼しました。確かに、不知火らしくありませんでしたね」

 「まったく……」

 

 呆れてため息を吐かれたが、不知火はあまり気にしていなかった。それだけ、叢雲との出会いが衝撃的だったのだ。

 不知火は第八基地の区域内にて、深海棲艦から必死に逃げ回っていた。大破寸前まで追い込まれており、逃げ回るので精一杯だったところを間一髪、叢雲が救ってくれたのである。

 

 その時の叢雲の戦いっぷりが、不知火の脳裏に焼き付いていた。

 ソナーも爆雷も装備せず──正確には爆雷は不知火からぶんどり、あっという間に不知火を追い回していた潜水艦を撃沈した。加えて目に入った水上艦も煙幕で翻弄しながらたやすくなぎ倒し、傷ついた不知火の艤装と身体を、謎の液体をぶっかけることで修復したのだ。おまけに燃料と弾薬までわけてもらった。

 

 不知火は基本的に感情を顔に出すことは少ないが、今回ばかりは驚きの連続であった。何度目を丸くし開いた口が塞がらなかったことか、もはや数えるのも面倒なほどだ。陽炎が横にいたら、確実に笑われていたことだろう。

 頭の中で先の出来事を振り返りながら、叢雲の言葉を黙って待つ不知火。しかし、望んだ回答は返ってこなかった。

 

 「もう行きなさい。あんたのお仲間、すぐそこまで来てるわよ」

 

 叢雲の目線の先、不知火も目をやったが特に何も見えなかった。ただ、彼女の言葉に対して疑いはなかったし、これ以上訊いてもこの駆逐艦に喋る気はないのだろうと悟った。惜しくはあったが、長居しても叢雲に迷惑だし基地のみんなも心配する。

 不知火は改めて、感謝すると同時に頭を下げた。

 

 「ありがとうございました。このご恩はいつか必ず」

 「はいはい。もう行った行った」

 

 しっしと手を振る叢雲。

 そんな叢雲を見て、不知火はふっと小さく笑うと、もう一度だけ頭を下げる。そして自分の基地に向かって全速力で滑り出した。

 

 

 

 

 

 叢雲の言った通り、基地へ航行し始めてすぐに不知火は陽炎たちと合流することになった。

 不知火の姿を確認するや否や、陽炎は不知火に思いきり飛びついた。

 

 「バカ不知火! どんだけ人を心配させれば気が済むのよ!」

 

 ぎゅっと力強く抱きしめる陽炎。

 普段の不知火であれば、海の上を理由に突っぱねるところだが、今回ばかりは受け入れた。

 

 「ご心配をおかけしました」

 

 不知火もぎゅっと抱きしめ返す。そんな二人を霰と霞は、顔には出さないがほっと胸をなでおろしながら見つめていた。

 唐突に陽炎が不知火から離れる。

 

 「そうだ、あんた怪我は?! 被弾してるんじゃない?!」

 「そうですね……今の陽炎のタックルで小破しました」

 

 真顔で答える不知火。陽炎は憤慨しそうになったが逆に安心した。これだけ悪態をつけるのなら大丈夫だろう。

 

 「もう、ほんっと可愛くない妹!」

 

 そう言ってもう一度、不知火を抱きしめた。

 ふと、霞が不知火を見て言った。

 

 「それにしても、よく無事だったわね。被弾もゼロみたいだし」

 「……運が良かっただけです。不知火の力ではありません」

 「なによ、そこは自分の力を誇るべきでしょ。みんなを逃がすために囮になったんだから」

 「……」

 

 不知火はそれ以上、何も言わなかった。いや、言えなかったというべきか。叢雲との約束で、彼女のことは話さないと決めていたからだ。

 だからこそ不知火は、こうして称えられることに納得がいかなかった。自分が無事なのはすべて叢雲のおかげであって、自分の力ではない。彼女がいなければ、今ごろ自分は海の底だったというのに。

 いつの間にかぎゅっと握りしめていた拳を、不知火は開放した。陽炎から離れ、ゆっくりと基地の方を見据える。

 

 「帰りましょう。早く帰らねば、また司令にどやされます」

 

 今にも航行しだしそうな不知火に対し、三人──特に陽炎がばつの悪そうな表情を浮かべた。

 それに気付いた不知火が訊く。

 

 「どうしたのですか。あまり遅いと独房に叩き込まれますよ」

 「いやあ……」

 

 陽炎は露骨に目をそらしながら、頭を掻いていた。霰と霞も同様、明らかに視線が明後日の方を向いている。

 不知火は嫌な予感がした。陽炎はともかく、霰と霞もなんて珍しい。絶対に何かやらかしたのだと思えてならなかった。

 

 「陽炎……」

 

 ドスの利いた声で呼びかける不知火。これには三人同時に肩を震わせた。

 やがて観念したかのように、陽炎はため息を零して言った。

 

 「あたしたち、司令に無断で出撃しちゃったのよ。だから言われるまでもなく、厳罰対象ってわけ」

 

 肩をすくめる陽炎。それを聞いた不知火は、ぎりっと歯を食いしばった。

 正直そんなことだろうとは思っていた。あの男がわざわざ自分を救出するために、艦隊を出撃させるとは思えなかったからだ。そして自分が行方不明だと知れば、陽炎たちなら絶対に助けに行こうとすることも。

 しかし、それで陽炎たちが罰せられるのは、不知火にとって許せることではなかった。無理な出撃が重なっていたとはいえ、自分が発端なのだ。罰せられるのは自分だけでいい。

 

 「不知火がなんとかします。もとはといえば不知火のせいですから」

 

 あの男がなんと言おうと、自分がなんとかすると心に決めた。自分の落ち度に三人を巻き込むわけにはいかない。

 今度は霞が口を開いた。

 

 「それだけじゃないでしょ」

 

 その言葉は陽炎へと投げられていた。ぎくりとする陽炎。

 不知火が目を細める。

 

 「他にも何かしでかしたのですか?」

 「まあね。あのクズに飛びかかろうとした挙句、島流しだろうが解体だろうがどんとこいって啖呵きったのよ」

 

 呆れ口調で説明する霞。途端に不知火は、鋭い視線を陽炎へ突き刺した。

 当の陽炎はというと、あからさまに視線を泳がせている。口笛さえも吹いていた。

 

 「どういうことですか、陽炎」

 

 不知火が陽炎に詰め寄る。が、陽炎も負けじと反論した。

 

 「し、仕方ないでしょ。あんなこと言われて、耐えられるわけないじゃない」

 「まさか、手を出したのですか」

 「未遂よ未遂。あと少しだったけどね」

 

 少しも悪びれる様子もなく喋る陽炎に、不知火は苛立ちを覚えた。

 

 「何を考えているのですか。上官に手を出して、ただで済むと思っているのですか」

 「だから未遂だって。殴れなかったの」

 「同じことです。なぜそんな馬鹿なことをしたのですか」

 「もう終わったことよ。それより、これからどうするか考えた方がいいんじゃない?」

 

 ごもっともな台詞であった。だが、不知火の苛立ち──もはや怒りは収まらない。

 そんな不知火の肩に、霞がぽんと手を置いた。

 

 「陽炎の言う通りよ。あんたがキレたってどうにもならないんだから」

 

 霞の言葉に霰も続く。

 

 「逆の立場でも同じだった……」

 「……」

 

 これには不知火も返す言葉がなかった。不知火が沈黙したことで、陽炎が「ナイス二人とも!」などと調子に乗り出す。

 

 「はい、この話はここまでにして。どうしたらみんなでハッピーエンドを迎えられるか考えましょ!」

 

 ぱんと手を叩いて強制的に話を変えた。

 不知火は俄然として楽観的な陽炎に、まだ怒り足りなかったが、霰と霞の言うことももっともであったため、仕方なく切り替えることにした。「ふう」と深く息を吐いてから口を開く。

 

 「では、このまま北方へ向かいましょう」

 

 三人の視線が不知火に集中する。そのまま続けた。

 

 「司令に言われた任務を完遂させるのです。そうすれば、司令の怒りも多少は軽減できるでしょう」

 

 不知火のいう任務──それは元々、第十八駆逐隊がキラ付け後に出撃するはずだった、北方海域での哨戒作戦であった。しかもこの任務は、第十八駆逐隊の他にもう二人、一緒に出撃する予定であり、難度もそれなりに高いと推察されていた。

 確かにこの任務を四人で完了できれば、希望はないこともない。むしろそれしかないと、不知火以外の三人も思った。

 しかしながら、懸念事項もあった。陽炎が真っ先にそれを口にした。

 

 「ちょっと待ってよ。あんた燃料も弾薬もすっからかんでしょ」

 「……」

 「一度、基地に戻りましょ。それからこっそり出撃すれば──」

 「それはだめです。行くなら今しかありません」

 

 陽炎が言い終える前に、不知火が断言した。それから三人を安心させるように続けて言った。

 

 「大丈夫です。燃料も弾薬も、すでに補給済みですので」

 

 これには三人とも眉をひそめた。揃って「何言ってんだこいつと」言わんばかりの目を向ける。

 霰が静かに訊ねた。

 

 「どこで補給したの……?」

 「……詳しいことは言えません。ただ、不知火が無傷なのもその方のおかげなのです」

 

 遠い目をして語る不知火。補給のことはさておき、無傷なことについては三人も気になっていた。

 囮になってみんなを逃がしたのだ。いくら不知火とはいえ、少なからず被弾しているものだと考えていた。だが実際に合流してみれば、不知火は何事もなかったかのようにけろっとしていたのである。しかし、それもタネがあったとなれば納得できた。

 今度は霞が不知火に訊いた。

 

 「誰かに助けてもらったってこと?」

 「はい。だから言いました、運が良かったと」

 

 目を伏せて不知火は喋っていた。

 

 「ぼろぼろで燃料も底をつきかけていたところを、助けてもらいました。艤装と補給もその時に……」

 

 三人は何も言わない。そんなことができる艦娘がいるなんてにわかには信じがたかったが、それ以上に不知火が嘘を吐くわけがないと確信していた。そのため、これ以上の追及は誰もしなかった。

 しばしの沈黙の後、陽炎が口を開いた。

 

 「そういうことなら、感謝しないとね」

 

 そう言って、陽炎は不知火の頭に優しく手を乗せた。

 目を伏せていた不知火の顔が、陽炎へと向く。

 

 「陽炎……」

 「だって、あたしたちの不知火を助けてくれたんだから」

 

 その台詞に霰が頷く。霞もそっぽを向いてはいるが、二人と同じ気持ちだった。

 不知火は一瞬だけ目をつぶり、心の中で固く誓った。絶対に任務を成功させて、全員無事に帰る。そして、陽炎を島流しも解体もさせないと──。

 

 「さてと、それじゃそろそろ行きますか。あたしの解体回避のために!」

 

 陽炎が元気よく言い放つ。その言葉を皮切りに、四人は北へ向かって一斉に滑り出した。

 

 

 

 

 

 辺りがすっかり暗くなった頃、第十八駆逐隊は帰投した。

 全員、重い身体を引きずってそのまま提督室へ向かう。各々どこかしら被弾しており、服もその身もぼろぼろ。疲労もとっくに赤疲労であったが、不思議とその足取りは早かった。

 

 本当はこんなぼろぼろの状態で、提督室に入りたくはなかったが、一刻も早く戦果を報告せねばという想いが、その気持ちをどこかへ吹き飛ばしていた。

 提督室の前に着くと、四人はいったん立ち止まった。不知火がノックしようと手を伸ばす。

 ふと陽炎が呟くように言った。

 

 「司令、まだいるかな……」

 

 提督は業務時間を終えると、あとはすべての執務を秘書艦に任せて、自分は早々に退勤するような男であった。なので、いない可能性の方が充分高かった。

 

 「いなかったらどうしよう。あたしたちの頑張り無駄になっちゃうかな」

 「いなければ、朝一で報告すればいいだけの話です」

 

 と不知火。ノックしようとした手を引っ込めていた。

 

 「それよりも、陽炎は余計なことを言わないように気をつけてください。司令の言葉に反応しないように」

 「むっ……わかってるわよ」

 

 不知火に釘を刺され、陽炎は口をへの字に曲げた。

 これには霰と霞も同じ意見で、二人は陽炎を間に挟むようにして立った。

 

 「また暴れられたら大変だから……」

 「今度暴れたら、おもいっきり引っ叩くからね」

 

 二人のあまりの物言いに、陽炎は口だけでなくへそまで曲げそうになった。

 

 「あんたたち、あたしをなんだと思ってるのよ……」

 

 そんな陽炎の呟きには反応せず、不知火は扉をノックした。「失礼します」と告げて、不知火を先頭に提督室へと入って行く。

 中には提督と秘書艦の名取がいた。提督は椅子に座っており、机の上はやたらと書類で散らかっていた。床にまで散乱している始末だ。名取はその傍らに立っている。

 名取はともかく提督がまだいるなんて、明日は大嵐でもくるんじゃないかと陽炎は思った。

 提督と名取の目が四人へと向く。四人は横一列に並んだ。

 

 「駆逐艦不知火、ただいま戻りました」

 

 不知火が敬礼しつつ帰投を報告した。三人も合わせて敬礼する。報告を受けた提督は、睨むように四人を見渡していた。

 そんな提督の様子に、四人──特に陽炎と霞は首を傾げそうになった。いつもなら第一声に怒鳴り声か、嫌味たっぷりの言葉がマシンガンのように飛んでくるというのに。これは大嵐ではなく、季節外れの大雪かもしれない。

 しばしの間、だんまりだった提督が舌打ちをしてから口を開いた。

 

 「無事でなによりだったな」

 

 提督の台詞に、陽炎と霞は「どの口が言ってんだ」とつっこみそうになったが、なんとかこらえる。

 

 「第八基地の艦娘に助けられたんだろ。要請をしたのは俺だ、感謝するんだな」

 「……ありがとうございます」

 

 一瞬の間の後、不知火は頭を下げた。間があったのは内心驚いていたからであった。まさか救援を要請していたとは、思っていなかったのだ。それは不知火以外の三人も同じだった。

 今初めて聞いたそれに、陽炎と霞は同時に「はあ?!」と声をあげた。

 

 「救援要請って、あたし今初めて聞きました」

 「なんで言わなかったのよ!」

 

 とうとう我慢の限界に達した二人は、提督に言葉を投げかけた。

 それに対し、提督は平然として言った。

 

 「お前らが勝手に出て行っただけだろ。俺のせいにするな、間抜けどもが」

 

 嫌味たっぷりの台詞に、二人はぎりっと歯を食いしばった。

 そんな二人を見て、あざ笑うかのように提督が続ける。

 

 「無断で出撃することが、どれだけ重罪かわかってるよな?」

 

 ぎくりとする陽炎と霞。

 そこへ、不知火が横から口を挟んだ。

 

 「司令、その件ですが……北方での任務を完遂しました。三人が出撃したのは、任務のためです」

 「……」

 

 提督は黙ったまま、ちらっと名取に視線を移す。

 

 「そういえば、そこの秘書艦も似たようなことを言っていたな」

 「っ……」

 

 目を伏せる名取。陽炎は心の中で名取に感謝した。どうやら、本当にうまいこと言ってくれたらしい。

 ふんと鼻を鳴らしつつ、提督が四人に視線を戻す。

 

 「まあいい。もう俺にはどうでもいいことだからな」

 

 吐き捨てるように提督が言った。そういう提督の目は、どこか遠い目をしているように四人には見えた。

 四人が頭の中で疑問符を浮かべていると、視線が陽炎へと向いた。

 

 「お前、島流しでも解体でもなんでも来いだったよな」

 「えっ……」

 

 急に話を振られ戸惑う陽炎。しかし事実なので何も言えない。

 

 「異動だ。お前の所属は明日から第八基地だ」

 

 戸惑う陽炎に、提督は唐突に第八基地への異動を命じた。それを聞いた陽炎以外の三人が、目を丸くする。

 横須賀鎮守府第八基地──そこは問題を起こした艦娘ばかりが在籍するという、噂の窓際部署であった。陽炎自身その噂にあまり興味はなかったが、霞が時々耳にしていたのでそれぐらいは知っていた。

 

 陽炎は意外に思った。もっと海外の泊地に飛ばされるか、最悪解体も覚悟していたので、この異動命令は陽炎にとっては充分温情であった。もっとも、明日というのは相変わらず無茶苦茶だなとも思ったが。

 しかしながら、陽炎を除く三人はこの異動命令に納得がいくはずもなく。不知火を筆頭に待ったをかけた。

 

 「待ってください。もとはといえば不知火の落ち度で招いたことです。陽炎に責任はありません」

 「こういうのは連帯責任でしょ! なんで陽炎だけ異動なのよ!」

 「司令官、霰たちにも……」

 

 各々の想いを言葉にして、提督へと返す。

 だが提督は、そんな三人の言葉を踏みにじるかのように鼻で笑って言った。

 

 「残念だったな。もうこいつの異動を俺に取り消す権限はない」

 

 提督の物言いから、すでに決定事項のようだったが、三人はなおも食い下がろうとしていた。

 しかしこれ以上は危険だと感じた陽炎が、咄嗟に口を開いた。

 

 「承知しました! 司令の温情に感謝します!」

 

 びしっと敬礼し、三人に部屋からの退出を促す。

 三人は未だ納得がいかない様子であったが、これ以上何を言っても無駄なことは理解していたので、陽炎に続いて部屋を出ようとしていた。

 と、そこへ提督が言葉を投げかけた。

 

 「仲間意識ってやつか。実にくだらないな」

 

 四人の足が止まる。中でも不知火と霞は、後ろを振り返っていた。

 二人を見て陽炎がどきっとする。

 

 「兵器にも人にもなれない、中途半端な存在の分際で。だからお前たちはいつまで経っても弱いままなんだよ」

 「はあ?! ふざけんじゃないったら!」

 

 瞬間、霞が大きな声をあげた。どうやら相当頭にきたらしい。

 それは不知火も同じようで、不知火は拳を強く握ったまま前へ進もうとすらしていた。その眼光はまさに戦艦クラスである。

 陽炎は「まずい!」と瞬時に不知火の腕を掴み、目元を隠した。そして霰には霞の口を塞がせた。

 

 「第十八駆逐隊、退出します!」

 

 提督にこれ以上何かを言われる前に、陽炎は声を張って言った。

 それから陽炎は不知火を、霰は霞を引っ張って提督室を後にした。

 

 

 




長くなってしまったので区切ります。

次で終了予定です。
テンポ悪くて申し訳ございません。
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