提督に転職したら想像以上にブラックだった件 作:Sh1Gr3
日々読んでいただいてありがとうございます!
そういえば、ゲームの方は秋刀魚イベが始まりましたね。
48尾で銀河江草がもらえるので、なんとしても集めきりたいと思う今日のこの頃です。
現在、俺と叢雲さんは突発的な会議(オンライン)に呼び出されている。
なんなんだよいきなりと思ったが、呼び出された相手が大本営の大淀さんともあれば、文句は言えない。
逆に何かやらかしたのかなと考えもしたが、思い当たる節がないので、絶賛ヒヤヒヤ中である。
『お疲れ様です。急な呼び出しで申し訳ありません』
「いえ、全然大丈夫です!」
緊張するなぁ……いったいなにを言われるんだろうか。
身構えていると、大淀さんが早速、本題について話し始めた。
『今度第7鎮守府に、新提督が着任することは既にご存じかと思います』
はい、知ってます。いい人であることをお祈りしてます。
『それに伴い、今そちらにいる陽炎さんを第7に戻すべきか否かについて、ご相談させていただきたくこの場を設けさせていただきました』
「な、なるほど……そういうことですね」
とりあえず、叱責のための呼び出しではなかったようで、少しばかり安心した。
とはいえ、そうきたか……それはそれで困る話題だな。
「随分と急な話じゃない」
不意に、秘書艦席の叢雲さんが会話に加わった。
なんかちょっと不機嫌そう。
「まだ改二にもなってないし、大した戦果もあげてないんだけど」
『それが、今度着任される方から進言を受けまして』
「へぇ……なに、陽炎を返せって?」
『まあ、似たようなものです』
そっか、そりゃそうだよな。
こんなトーシロ提督のいる鎮守府に、優秀な陽炎さんを預けてなんかいられないよな。
……本人は戻る気ゼロだけど。
「でも今はうちの所属でしょ」
『それはその通りです。なので、決定権は神城少佐にあります』
なるほど。ここで俺に話が飛んでくるのね。
『いかがでしょうか。神城少佐の目から見て、陽炎さんは第7に戻っても問題ないと思いますか?』
大淀さんの問いかけに、俺は黙考モードに入った。
さて、なんと答えたものか。
本来であれば問題ない以外の回答などないのだが、当の本人に戻る気がないことを知ってしまった以上、できればその希望を叶えてやりたい。
……本当はここにいるよりずっと良いんだろうけど。
「もし陽炎が戻ったら、うちの任務量減らしてもらうわよ」
俺が黙考していると、先に叢雲さんが口を開いた。
「ただでさえ人数不足なんだから」
『それにしては、あなたの力を借りずともこなせているようですが』
「ギリギリね。でも陽炎がいなくなったら、流石に厳しいことぐらい分かるでしょ?」
確かに、もし青葉さんだけになったら厳しいだろうな。スケジュール遅延の嵐になりそう。
「ま、私が出ていいってんなら話は別だけど」
『……わかりました。任務量については調整をお約束します』
おお、さっすが叢雲さん。つくづく頭が下がりますわ……。
俺は心の中で叢雲さんに感謝しながら、大淀さんに質問する。
「陽炎さんて絶対に戻らないといけないんですか?」
『いえ、そういうわけでは。先ほども言いましたが、決定権は神城少佐にありますから』
ふむ……それなら、このままここにいてもらってもいいかなあ。
そう考える俺に、大淀さんが付け加えるように言った。
『ただ陽炎さんが戻らない場合、少々面倒なことになるかもしれません』
「えっ、そうなんですか?」
『はい。……神城少佐にとってはですが』
困惑する俺。急に物騒な話になってきたぞ……?
『今度着任される方は、前任に対して相当お怒りでして。理不尽な異動を命令された陽炎さんを、連れ戻したいと考えているようなのです』
「へー、いい人なんですね」
『……そうですね。提督に相応しい方だと思います』
ん? なんか今、微妙に間があったような……。
「それで? 戻らなかったらどうなるのよ」
叢雲さんの質問。
『特にどうもなりませんよ。ただ、色々と難癖をつけてくる可能性があるというだけです』
「なによそれ。しょーもな」
『言ったでしょう。神城少佐にとっては、と』
大淀さん、俺のこと理解していただいて感謝します……。
大淀さんの言う通り、面倒ごとは勘弁だ。
とはいえ、実力行使で取り戻しに来るとかを想像していたので、それよりは全然マシなんだけどね。
俺はふと気になったことを訊いてみた。
「その人って、軍の人ですか?」
『はい。海軍所属の方になります』
うわぁ……俺と同じ民間からの転職者だったら、仲良くなれるかもとか思ったのに。
『まだお若いうえに女性ですが、提督として不足はないと上層部も判断しています』
「そ、そうなんですね……」
おわた。そんな人に目つけられるとか、まじ勘弁なんだが……。
叢雲さんが、ふんと鼻を鳴らして言う。
「また面倒そうな奴を選んだものね」
『それは叢雲さんにとって、神城少佐は面倒ではないと──そう捉えてよろしいですか?』
「……少なくとも、そいつよりはマシでしょうね」
『そうですか。それはなによりです』
ほんのわずかだが、大淀さんのクスッという笑い声が聞こえてきた──そういう話は、本人のいない前でやってほしいなぁ……。
二人の会話がひと段落したところで、俺はこの会議を終わらせるべく言った。
「ちょっと陽炎さんと会話してみます」
まずは何事も報連相! 社会人の常識だ。
『承知しました。よろしくお願いいたします』
幸いなことに、大淀さんはすんなり了承してくれた。
こうして、また後日こちらから連絡するということで会議は終了したのだった。
さてと、陽炎さんが帰ってきたら一応確認してみますか……確認するまでもない気がするけど。
その後──。
訓練から戻ってきた陽炎さんに、先ほどの話を訊いてみた。
「陽炎さんて、第7に戻る気ないんすよね?」
「ないわよ。前も言ったでしょ、当分戻る気ないって」
「……了解っす」
はい、これでこの話はおしまい。やっぱり確認するまでもなかったな。
それにしても、上からは返せと言われ、現場で働く人からはそれを拒否されてって……まるで中間管理職の気分だ。前職の中間管理職の方々の大変さが、提督になってから少しだけわかった気がする。
「急にどうしたんですか?」
ソファーに寝転がる陽炎さんの向かいに座る、青葉さんの質問。
「まさか、陽炎さんに帰還命令が?!」
「えっ?! ちょ、うそでしょ?!」
「あ、いや……ちょっと違うっすね」
さすが青葉さん、妙に鋭い。帰還命令というのは、当たらずと
「今度第7に着任する人が、陽炎さんを連れ戻したいらしいんすよね。それで一応、訊いとこうかなっていう」
「なるほど、そういうことですか」
「嫌よ! あたし絶対帰らないから!」
納得した様子の青葉さんに対し、ふんとそっぽを向く陽炎さん。
そんなに嫌なのか……。
「どうするんですか? こんな調子ですけど」
青葉さんが、陽炎さんを見て訊いてくる。
どうするも何も、このまま「はい、さようなら~」なんてことできるわけもなく──。
「まあ……断るしかないんじゃないすか」
「おー、強気ですねえ」
「やった! それでこそあたしの司令!」
そっぽを向いていた陽炎さんの顔が、嬉しそうにこっちを向く。
青葉さんからまた質問が飛んできた。
「でも、大丈夫なんですか? 断ってしまって」
「たぶん……決定権はこっちにあるらしいんで」
青葉さんの疑問に答えると、寝転んでいた陽炎さんが勢いよく起き上がった。
「大丈夫よ! もし何か言ってきたら、あたしに任せて!」
やけに自信あり気な陽炎さん。
……何をする気だろう?
「その司令にハッキリと言ってあげるから! 戻る気はありませんって!」
「はあ……」
この陽炎さんの言葉を聞いて、もし何か言われても、陽炎さんには絶対に言わないと心に決めたのだった。
だって、もっと面倒なことになりそうだからね……。
陽炎「ていうか、異動させたり急に戻って来いとか言ったり、艦娘だからってなんでも言うこと聞くと思ったら大間違いよ」
青葉「青葉はちゃんと異動申請を出してここに来たので、連れ戻される心配はないです!」
陽炎「いいなぁ……あたしも異動申請叩きつけてこようかしら」
提督「はぁ……提督って大変すね」
叢雲「今更でしょ。これに懲りたら軽い気持ちで転職なんかしないことね」
提督「うっす……」
※転職先の情報収集大事。