新エリー都に黄色いおじさん現る   作:へか帝

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ゼンゼロで二次創作するのムズすぎワロタ
黄猿で二次創作するのムズすぎワロタ


わっしは加減が効かなくてね~~

 

「覚悟ッ!」

 

 色付きサングラスに、黄色いストライプのスーツ。そして、3mはあろうかという、異様な長躯。

 見るからに尋常でない壮年の男性目掛け、白い毛並みの人狼が怒涛の蹴撃を叩き込む。 

  

「こりゃあ、参ったねェ~……」

 

 目にも止まらぬ足技の連撃を、スーツの男はひらりひらりと紙のように躱していく。

 

「素人では、ないようですねッ!」 

「ちょっと物を訊ねただけで、ここまでされる謂れはないと思うんだけどねェ~……」 

「うっさい! とっとと観念しろっての!」

 

 更にサメの尾をもつ黒衣のメイドが、挟撃するようにトゥーン調のサメの象られた枝切りバサミを叩きつける。

 

「おォ~。"冷える"ねェ」

 

 たちまち地面に氷河のごとき氷結が広がる。槍のように突き上げる氷柱。

 完全な死角からの一撃でありながら、男は一瞥すらせず身軽に飛び退いて躱してみせた。

 男の間延びした独特の喋り方には、何かを懐かしむような色はあれど、危機感を感じた素振りはまったくない。

 

「避けんな! ムカつく……!」

「驚きましたね。エレンの『急凍』を初見で捌くとは……」

「早いところ、矛を収めてくれねェかい」

 

 戦いの最中でありながらも男は呼吸さえ乱さず、ポケットに手を突っ込んだまま余裕を崩さない。

 しかしその表情は、この状況への困惑が浮かんでいた。

 

「でしたら、あなたも反撃したらよろしい。我々は目撃しているのですよ?

 あなたの体が"光"へと変じ、移ろいゆくのをね」

「おっと……見られちまったのかい」

 

 白狼の指摘に、初めて男が表情を崩す。

 しかし大きな色付きサングラスによって目元の表情は隠されており、得体の知れなさが助長されるばかりであった。

 

「トラブル避けるために、見せねェようにしようと決めたばっかりだったが……すっかり忘れてたねェ~」

 

 メイドや人狼がスーツの男を付け狙う理由はそれだった。

 遥かなる遠方から一条の閃光が瞬き、そしてこの男は前触れもなく出現した。

 しかも、『ホロウ』の内部でのことである。彼らヴィクトリア家政は、特殊な情報網を持つ。

 『未確認の人型』に関する知識を持っていればこそ、人間離れした所業を目にすれば危機感を感じ攻勢に出るのは当然でもあった。

 

 いや、その情報がなかったとしても対応は変わらなかったであろう。

 相対するだけでビリビリと肌を打つほどの威圧感を持ち、極めて目立つ容姿でありながら、過去に名を上げた人物ではない。

 これほどの実力者が表に出ることなく潜伏していたというだけで、彼らからすれば警戒に値する。

 

「しっかし、無辜の市民をいたぶるわけにもいかねェでしょう。

 "殺害"はもちろん……"怪我"もさせねェとなると、とんと難しい。わっしは加減が効かなくてねェ」 

「だったらここでくたばれ!」

 

 メイドの少女が氷を纏い鬼気迫る表情で詰め寄る。

 だが、命が狙われていると一目で分かる闘気が迫ってなお、男は呑気に眉を上げるのみ。

 

「おォ~……防戦一方ってのも、神経を逆撫でしていけねえかい? 素人でもないみたいだしねェ」

「ッ、眩し……」

「──天叢雲剣(あまのむらくも)

「エレン! 退いてください!」 

 

 男が両手を正面にかざすと虚空に光が集中し、次の瞬間には男の手に光で象られた巨剣が握られていた。

 

「大した危険察知能力だねェ。野生の勘かい?」 

 

 その大剣が振るわれる前に、黒いメイドの少女はすばやい身のこなしによって剣の間合いから飛び退く。

 

「チッ。眩しくて眠気覚めた。だいたいビームサーベルって、映画じゃないんだからさぁ」

「エレン、映画の知識でも構いません。あの光の剣の性質を予測できますか?」

「まぁ高熱で触れたものを焼き熔かすってのがベタなとこかな。手足でガードはしない方がいいと思う……」

「それは。真であれば厄介極まりませんね」

 

 フィクションの作品に類似するものを知っていたのか、メイドの少女が光の剣を観察に所感を語る。

 非現実的な現象を前にしても動揺を最小限にとどめ、即座に冷静な分析を始められるのは二人の能力の高さをうかがわせた。

 

「私がどうにか隙を作ります。有効打は任せますよ」

「今日は散歩するだけの楽な仕事だと思ったんだけどな……!」

 

 白狼がまっしぐらに駆け出し、メイドの少女は鋏を肩に担いで死角に回り込む。 

 

「ちぐはぐだねェ。戦い慣れてる割には、対人に秀でた動きじゃない。あのエーテリアスってえのを始末するのに特化したやり方かい?」

「その余裕を崩しますッ!」

 

 白狼の機械義足が展開し、青い光と共に冷気が噴き出る。

 床を蹴る足に霜が伴い、青色の残光を伴って苛烈な回し蹴りが繰り出された。

 

「武器を持った相手に一息に間合いを詰める。判断は間違っちゃいねえが、わっし相手にすることじゃないよォ」

 

 まるであらかじめ蹴りの軌道が分かっていたのように、寸でのところでひらりと躱される。

 そしてバットをスイングするように振り抜かれた光の剣が、白狼の腹を捉えた。

 

「ぐゥッ!!」

「当たっても死にやしねぇよ。刃、潰してあるからねぇ~……」

 

 遠方に吹き飛ぶ白狼。

 そして入れ違うように現れるのは、黒衣のメイドの少女。

 

「観念しろッ!」 

 

 ぐるりと身体を捻り、引き絞られたサメの尾が氷結を伴ってしなり男へ襲い掛かる。

 ほぼ同時に大ハサミが手裏剣のように回転しながら風切り音を上げて飛来し、男を挟撃する。

 

「しっかし、そもそも見られてるなら話は早かったねェ~……」

 

 けれど男は、それを避けもしなかった。

 

「は!?」

「見せていいなら、避ける必要もなくなる……」

 

 回避行動をとらなければ、どちらも命中は必然。

 だが、肉を打つ手応えもなければ、血しぶきも出なかった。 

 丸太のように太い尻尾が胴を芯にとらえて通過し、人体を切り裂くにあまりある大バサミは、あろうことか男の腹をそのまま通りすぎた。

 

「何? あたし、まだ寝ぼけてんの?」 

「戻りました! エレン、今のは……!?」

「わかんない。すり抜けた……」

 

 目を疑う光景に異常を感じたメイドの少女は、恐怖をにじませつつ飛び退いた。

 体勢を整えた白狼が彼女のもとに駆け付けるが、顔色は二人ともすぐれない。

 

「ホログラム、とか……」

「……我々の知識にないガジェットによるホログラムだとすれば、ひとまず遥か彼方から瞬時に姿を表したことも説明がつきますが……」

「いや。だとしても矛盾まみれだけど。ていうか傷、大丈夫なの」

「ええ、明らかに加減されていました。軽く体を打った程度です」

 

 攻勢の手を止め、正体不明の存在に対する考察を交わす二人。

 咄嗟に仮説を立てるも、辻褄の合わないことも多く正体を断ずるには情報が足りない。

 

「GYAAAAAAAッ!」

「エーテリアス!? こんな時にさぁ……!」

「上級個体です! 気を引き締めてください!」

 

 そんなタイミングで、瓦礫を隙間から人型の異形が渦中へと飛び込んできた。

 人間ではありえない肌の質感に、頭部が紺紫の球体と化した化け物。

 だらりと垂れた腕の先は、研ぎ澄ました錨のように変じている。

 

 識別名、タナトス。上級エーテリアスの中でも、奇怪な瞬間移動能力を持つ個体。

 ほんのひと時でも目を離せば、たちまち首を刈り取られかねない厄介な性質は、乱戦の中で遭遇するには最悪といえた。

 

 そして、エーテリアスの姿が消える。

 タナトスの持つ瞬間移動能力によって

 

 ──では、ない。

 

「話の邪魔だねェ~……」

 

 タナトスがいた場所には、"蹴り終えた"姿勢の男が身を翻し着地する姿だけがあった。

 周囲を黄金に照らす一条の閃光が彼方へと走り、光の先では遠方の廃ビルが轟音とともに爆散する光景が広がっていた。

 

「ッ……」

「ヤバ。やっぱホログラムなわけないよね」

 

 絶句。冷や汗を滲ませながら呆然と崩れ行く廃ビルを眺める二人の横顔は、鮮烈な逆光によって暗い影が落ちていた。

 

「どうかな。お二人さん……そろそろわっしの話を聞いちゃもらえねェかい」 

「よし。ライカン、この人の話聞いてみよ」

「……それが賢明なようですね」

 

 瓦礫の塔と化したビルの崩れ落ちる音をバックグラウンドミュージックに、二人は顔を見合わせ、構えを解いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういうわけで、ヴィクトリア家政見習い、ボルサリーノ。今後、お見知りおきをなすって」

「ライカンさぁーんっ! なに!? この人!!!」

 

 新エリー都の片隅、六分街のビデオ屋で、店長のリンは素っ頓狂な驚愕の声を上げた。

 理由は言わずもがな、目の前に聳える体長3mのサングラスをかけた変な黄色いおじさんのせいである。

 

「すごい身長だな……ライカンさんやベンさんよりずっと背が高いぞ……」 

 

 声を荒げずとも、隣で静かに目を見張り驚きを隠せずにいるのは、このビデオ屋のもう一人の店長、アキラ。

 ビデオ屋を営む兄妹は、白狼ライカンの連れて来た謎の男を見上げながら、頬に冷や汗を浮かべていた。

 

「プロキシ様。お気持ちは痛いほどわかりますが、まずはどうかこのライカンめの説明に耳を傾けていただけますでしょうか」

「はい! 聞きます!」

「ありがとうございます。実はかくかくしかじかというわけでして……」

 

 滔々と語り始めたライカンの説明によると、故あってこの男性は身寄りのない立場にあるという。

 しかし彼は常軌を逸した戦闘能力を保有しており、そして決して力任せに乱暴を働いて私欲を満たす野蛮な人間性をもった人物ではない。

 そこで偶然知り合ったライカンが彼の戦闘能力と人柄を買い、ほんの一時身柄をヴィクトリア家政の見習いという形で預かっているのだという。

 今回彼をビデオ屋に連れて来たのは、彼を紹介するのはもちろん、彼の力量のほどを体験してみて、フィードバックを受けたいからということらしい。

 

「なるほど。それで、この人を僕たちのエージェントとして使ってみてほしいというわけか」

「そういうことなら、そのお話、ぜひ受けさせて!」

「まことでございますか。このような不確定要素の多いお話ですから、前向きに検討頂くことも難しいと思っていたのですが……」

 

 恐る恐るといった風に話を進めていたライカンも、二人の好意的な返事を聞いてホッと胸を撫で下ろしていた。

 

「あはは、ライカンさんも大げさだよ」

「ライカンさんが目を掛けているような人を、エージェントとして使わせてくれるんだろう?こっちが感謝したいくらいさ」

「それにウチは荒事もいっぱいあるからね!試金石としては絶好だよ!」

「過分なお言葉、ありがとうございます。もちろん、我々の方でも彼の実力のほどは確認しておりますから、プロキシ様を失望させるような事態にはならないかと」

「よろしく頼むよォ、お二人さん」

 

 好意的に進行する会話に、黄色い男が会釈とともに参加する。

 

「よろしく、えーっと、ボルサリーノさん!」

「これからよろしく」

「誠心誠意、仕えるよォ。こういう主人なら、わっしも世話ァ焼いてくれたライカンくんの顔に泥を塗らずに済みそうだ」

「よし、じゃあ早速出かけようか!」

「どちらまで向かうんで?」

「隣のラーメン屋さん!」

「お昼、まだだろう? 奢るよ、ささやかだけど、歓迎祝いみたいなものさ」

 

 

 

 かくして。

 新エリー都一のプロキシに、強力なエージェントが加わることとなったのであった。

 

 




軍艦の上でラーメン食ってたあたりで一気に得体の知れなさが払拭されたとは思っていましたが、彼の想像上の人間味に面食らったのは私だけではないはず
解釈違いだと言う人もいますが、私には魅力がぐっと増したように感じました
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