聖少女暴君   作:うお座の運命に忠実な男

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第三章 格差美少女! 折笠詩乃
3-1 姫川さんにも弱点があった! 学生カップルコンプレックス


 五月二一日

 折笠さんの誕生日パーティーをすることになった。

 集合場所はファミレスの『スターダスト』

 

 わたしこと鳴海千尋は一○分もまえにファミレスに到着してしまった。すると、村雨さんはすでに店内でカフェラテを注文していた。

 

「はやいね。村雨さん」

「鳴海さん、お疲れ様です。プレゼントはなににしました?」

 

「わたしはマグカップだよ」

「わたくしは万年筆です」

「えー! 高いんじゃないの?」

 

 たわいのない会話をしていると窓の外から姫川さんが手を振っている。彼女の私服をはじめて見たけれど、シンプルなコーディネイトが彼女に似合っていた。いつものパーカーは変わらなかった。彼女は店内に入ってきた。

 

「よろ~。みんな早いね。じゃあ、行こうか」

「お姉さま、私服可愛いですね」

 村雨さんが姫川さんを褒めたたえる。

 

「それは愛の告白と受け取って……」

「それはもういいです」

 わたしはたまらず突っ込みを入れた。

 

「折笠さんは来ていらっしゃらないのですか?」

「もうすぐ来ると思うよ。わたしが家を知っているから、途中まで歩こうか」

 

 わたしたちはくだらないことをしゃべりながら歩いた。女子高生である。話題はつきない。

 

 そのとき学生カップルが目の前を横切った。男子が女子の腰を引き寄せる。

「うっ! 心臓が!」

 姫川さんに異変が起きた。胸を押さえて苦しみだす。

 

「どうしたんですか。姫川さん」

「発作が……」

 

「発作ってなにか病気をお持ちなんですか?」

「学生カップルが……苦しい」

 

「学生カップルがどうかしたんですか」

 

 姫川さんは地面にうずくまってしまった。

「リア充、この世界からいなくなれ……」

「いまなんて?」

 

「大変! いま救急車を……」

「それには及ばない。発作は……収まるから」

 

「ヒメ。またやったか。あんたって人は」

 そのとき折笠さんがわたしたちを迎えに来た。彼女も私服だった。姫川さんとは対照的な可愛い系コーデだった。

 

「折笠さん! 大変なんです。姫川さんが発作を起こして」

「なにが発作だ。立てこら」

 折笠さんが蹴るまねをする。

 

「折笠さん!」

「こいつ、学生カップルを見ると、ジェラシーで行動不能になるの」

 

『えー!』

 わたしと村雨さんは異口同音した。

 

「恵まれた青春をむさぼっている有象無象のごくつぶし連中を見るとあたしのなかでなにかが疼くの」姫川さんは立ち上がった。

 

「言い方ね。自分もリア充になればいいじゃない」折笠さんの視線は氷のよう。

 

「女子校に男いないよ~」姫川さんは情けない声をだす。

 

「護国寺先生は?」

「先生はお兄ちゃんだよ。彼ピじゃないよ。リア充この世界からいなくなれ。あたしのまえで幸せをアピールするな」

 

「そんなこといって、自分がリア充になったらどうするのですか?」村雨さんが上目遣いに質問した。

「すべてを水に流すわ」姫川さんは真顔で答えた。

 

「ズコーッ」みんなそろって令和に昭和のずっこけをしてしまった。

 

 

 折笠さんのバースデー当日。姫川さんは倒れこんでしまった。

 折笠さんがいうには学生カップルのイチャイチャを目撃したのが原因だという。

 

「それじゃあ、中学で失恋したのが原因で女子校を選んだのですか?」

「うん。ついカッとなって。目の前が真っ赤になって、気が付いたら女子校に入学していた」

 

「やば……。殺人犯みたいな理由ですね」

 姫川さんを信奉している村雨さんも引いている。

 

「そんな理由で志望校選んじゃだめですよ」

「うん。いま思えばね。それで学生カップルを見ると羨ましくて発作が起こるの」

 

 姫川さんは中学三年生のとき片思いした男子に振られたショックで女子校を選び、まだ立ち直っていないという。それで学生カップルを目撃すると『発作』が起こるのだ。

 

 ばかみたいな症状だが深刻である。学生カップルを目撃すると発作が起こるのなら日常がままならない。

 

 でも姫川さんに弱点があったことを知ってわたしは嬉しかった。姫川さんって完璧な人間だと思っていたから。

 

 

 折笠さんに先導されてわたしたちは彼女のマンションに向かった。

「ここがわたしの家」

 

 彼女が立ち止まったところはタワーマンションまえ。

 見上げても屋上がどこにあるかわからない。

 わたしは三階建てアパートの1DKに住んでいるのに!

 

「格差―‼」

 わたしはまた泡を吹きそうになった。

 

「こんどは鳴海さんの発作が……」

「どうなってるのかしら。うちの天文部は」

 

 みんなに引きずられながら建物に入った。入り口で折笠さんがパスコードを入れる。

 建物への入室にパスが必要なんてわたしは映画でしか観たことがない。しかも入り口付近に警備員常駐であった。

 

 エレベーターに乗って上階へ。エレベーターは最上階の40階で止まった。一同エレベーターを降りた。

 

「このフロアは全部わたしの家になってるから」

「格差―‼」

 意識を取り戻したわたしがまた泡を吹きそうになる。立っていられなくて地面に横になった。

 

「わたしが死んだら死因は『格差』と書いてください」

 わたしは目を閉じた。

 

「死なないで! ちーちゃん! やだー!」

 姫川さんはわたしの体に覆いかぶさって号泣した。

 

「こんなに早くお別れがくるなんて……」

 村雨さんの反応はジョークではなく本気だろう。

 

「死ぬわけないだろ。いつまで続けるの。この小芝居を」

 折笠さんは学校では礼儀正しいがプライベートでは毒舌らしい。

 

つづく

 

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