聖少女暴君   作:うお座の運命に忠実な男

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3-4 四八のトラウマを持つ女

【鳴海千尋 視点】

「おふたりにそんな馴れ初めがあったんですね」

 わたしこと鳴海千尋は折笠さんのバースデーパーティーで彼女の家に招待された。そして姫川さんとの出会いを教えてもらった。

 

「あのころのあたしたち、若かったよね」

「お互いに老けたわね」

 姫川さんと折笠さんは夫婦漫才をしているかのようだ。

 

「そういえば、姫川さんが中学のとき生徒会長をしていたという噂を聞いたことがあるのですが」

「わぁーわぁーわぁー!」

 

 わたしの質問に姫川さんは血相を変えて空中をかき消す動作をした。

「どうしたヒメ⁉」

 折笠さんも目を丸くする。

 

「そのことは言うなし! あたしの過去に触れるもの、死の翼に触れるべし!」

 

 半狂乱になった姫川さんはわたしにクッションを投げつけた。よっぽど触れられたくない過去があるのだろうか。

 

「あたしは四八のトラウマを持つ女! ちーちゃんはあたしのトラウマに触れた!」

 

「痛いです」

「中学時代になにがあったのですか?」

 村雨さんも驚きながら質問を投げかける。

 

「持病の記憶喪失が……」

 姫川さんは意味不明なことをいってごまかした。

 

「持病の記憶喪失ってなんですか!」

「ヒメがご乱心あそばれた! 者ども取り押さえろ!」

 

 折笠さんが叫んだ。まくら投げならぬクッション投げで一○分くらい騒々しく遊んでしまった。

 

 折笠さんのパパさんが様子を見に来る。

「きみたち、ちょっとお静かに」

「は~い」

 女子高生四人はすっかり仲良くなっていた。

 

「ふざけるのもこれくらいにして中間テストの勉強しましょうか」

「ヒメ。まっさきにふざけていたあんたがそのせりふ言う?」

 

「わたくしは楽しかったです」

「わたしも」

 

「そうだ。みんなに言っていないことがある。いままでひた隠しに隠してきたけどあたしって純粋な日本人じゃないの。ロシア人クォーターなの」

 

「隠してないし。気づいてたし。ときどきロシア語言ってたし」

 

「ええっ! さすが詩乃。洞察力がふつうの人間の十倍ですね」姫川さんは本気で驚いている。

 

「わたしも気づいてました」

「わたくしも」

 

 姫川さんの告白はわたしたちにとって周知の事実だった。

 

 なんだかんだでぐだぐだな女子トークをわたしも楽しんでいた。まったく意味のない時間は若さゆえの特権ではなかろうか。

 こんなことを考えるわたしって、哲学者だな。

 

 

 日が暮れるまで真剣に勉強した。パパさんがおやつを差し入れてくれた。

 

「きみたち、もうお風呂入っちゃいなさい。一番風呂だよ」

「みんなで入るんですか⁉」

 わたしは大声をだしてしまった。

 

「うちのバスルーム、一〇畳あるから」

「格差―‼」

 

 うちはユニットバスなのに……! ぶくぶく……

 わたしは泡を吹いて倒れてしまった。

 

「ひとりずつ入りましょうか……」

 折笠さんが倒れたわたしを見下ろしながらつぶやいた。

 

 

 その数日後。

 姫川さんと折笠さんの提供した中間テストの過去問の効果は絶大だった。

 

 わたしははじめて成績でクラス上位に立つことができた。

 一緒に勉強した村雨さんに至ってはクラスで一番の成績である。

 

 学校生活における『人脈』の大切さを痛感することとなった。

 姫川さんに振り回される毎日が楽しくなりはじめていた。

 

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