聖少女暴君   作:うお座の運命に忠実な男

27 / 58
4-9 七瀬一葉VS村雨初音

「わたくしが先鋒なのですね。緊張します」

 村雨さんはうつむいて前髪に瞳が隠れてしまった。

 

「よろしくっす! わたし、七瀬一葉(いちよう)」

 握手を求める彼女の指は絆創膏だらけ。

 

「お怪我をされているのですか」

「えへへへ。ネコちゃんがね」

 

「七瀬さんはネコ好きなのですが、なぜかネコから好かれない性格でして」

 九条さんが憐れみを込めて補足説明する。

 

「そうだったのですね」

 会場が温まったところで対戦がはじまった。

 

 七瀬さんの持ちキャラクターはアサシンのヴェスミランだ。原作小説では第三巻に登場。主人公たちと死闘を繰り広げた。

 

 対する村雨さんはアークメイジの紗良(さら)・ファーレイ。原作小説では第四巻に登場。東方の守護者とも云われる世界に三人しかいないアークメイジのひとりである。原作では戦闘シーンはなかったが、このゲームでプレイアブルキャラクターに昇格した。

 

 ヴェスミランは接近戦を得意とするテクニカルキャラクター。

 

 紗良は式神を駆使して戦ういわゆる設置系キャラクターだ。

 

※設置系キャラクターとは格闘ゲームにおいてヨーヨーや糸などのアイテムを設置して、連係必殺技を発動するキャラクター。

 

 わたしたちは普段携帯型ゲーム機にダウンロードしたMODをプレイしているけど鳳女子茶道部は据え置き型ゲーム機をテレビに接続して対戦しているらしい。

テレビモニタは大迫力だ。

 

 第一ラウンド。開始三秒。七瀬さん操るヴェスミランのジャンプ強キックからのコンボ(連続技)が極まった。

 

 立ちパンチからまったく隙なく必殺技『シャドウエッジ』が発動する。

 

「いまのは……?」

 わたしこと鳴海千尋は姫川さんを振りかえった。

 

「キャンセルよ。ほとんどの格闘ゲームでは通常技のモーション中にコマンドを入力すると通常技のモーションをキャンセルして必殺技をだせるの。これをキャンセルと呼ぶ。コンボにはキャンセルが必須」

 姫川さんが説明する。

 

「わたし、できません」

 わたしは思わずつぶやいた。

 

「鳴海さんたち一年生組との対戦ではあえて見せなかったの。自分には無理だって思ってほしくなかった」折笠さんがわたしを気遣った。

 

 防戦一方の村雨さん。一ラウンド目はとられてしまった。

 

「ああっ、このままじゃ……」

 わたしは情けない声をあげたが、姫川さんたち上級生は試合を静観している。

 

「村雨さん、目が死んでない」

「なにか狙ってるわね」

 

 二戦目。七瀬さんは開始直後に一ラウンドと同じ連続技を狙ったが、村雨さん操る紗良は確実にガードした。村雨さんのガード効率が上がっている。接戦になった。ライフは互角。

 

 そして確実に式神を設置していく。気がつけば四つの式神がヴェスミランを囲っていた。ヴェスミランはたまらず宙に逃げる。その隙を村雨さんは見逃さなかった。

 

 超必殺技『四神降臨』発動。画面が暗転する。式神の設置数に合わせて威力が上がる技だ。最大数の式神を設置したのでガード無効化される。直撃したヴェスミランのライフは残り数ドット。そのとき紗良のライフも残りわずか。

 

「やった!」

 わたしは思わず叫んだ。

 

 その刹那。吹っ飛ばされたヴェスミランが地面に着地する瞬間。

 ヴェスミランはダウン回避(AB同時押し)から猛ダッシュで距離を詰める!

 

 たまらず村雨さんがガード方向にレバーを入力すると七瀬さんは不敵に笑った。

 ヴェスミランの投げが紗良に極まる。投げはガード不能なのだ。KOだった。

 

つづく

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。