スキル《花粉症》で無双を目指す 作:杉野檜
『アンタ、何で私の元に来た。と言うか何で私の家を知ってるんだ?』
「酒場のマスターに教えて貰いました」
『成程、あいつか。アイツは私の弟なんだ。それで、私の元に来たのはその魔法スキルのせいかい?』
「はい、このスキルで魔王を倒してみたいなと思いまして」
『アンタが頭おかしいのは分かったよ。結論から言おう。無理だろうね』
無理、か。そう聞いて俺は動く事が出来なかった。結論は出た筈なのに。
『最後まで聞きな。今のままでは、一生を掛けても無理だろうね。いくら三日三晩寝ずに魔法を打つ体力があったとしてもだ。だからスキルの強化を繰り返して強くなるしか無い。その日々は、きっと地味で辛くて耐えられないだろうね。アンタにその覚悟はあるのかい?』
最強と呼ばれた魔法使いは、俺の目を真っ直ぐ見てそう言った。
「どんな辛い事よりも辛い事を味わっています。花粉症に比べれば、大抵の事は我慢できます!」
俺は師匠の元で弟子として正式に働く事にになった。その日は疲れ切ってすぐに寝てしまった。
それから数日後。目が覚めればやる事は変わらない。自分に花粉症のスキルを連射。そして、師匠にも連射。その後は身体を改めて鍛え。モンスターが出やすい狩地に行き、そのモンスターが花粉症になるまで花粉を蓄積させる。効果が出たら殺して、次のモンスターへターゲットを変える。
それをひたすら毎日休まず繰り返した。師匠が言った通り、地味で飽きが来そうな単調な作業だったが俺は諦めずに頑張った。
そんな日々が五年続いたある日の朝。師匠は言った。
『そろそろ、一回の花粉症の適量が分かってきた頃じゃないかい?最近は一回で花粉症にする事が多くなってきた。お陰で目が痒いよ』
「何と無くですが、分かってきた気がします」
大体の感覚と言うかコツは掴めた様な気がする。と同時に、これ以上はどうにもならない気がする。こんなんじゃ魔王には勝てないだろう。もっと頑張らないとは思う物の、無理なんじゃないかとも思ってしまう。
「お師匠。俺はもう強くなれないのでしょうか。これが俺の限界なんでしょうか」
『はぁ、良いかいヒノキ。限界と言う物は無いんだ、人が勝手に作った妥協点なだけさ。こんなんで良いだろう、もうこれ以上は……と諦めた物を限界と言っているだけさ。ヒノキは、もう魔王を倒すのを諦めたのかい?』
「いえ、諦めてません。魔王を倒せば、ほんの少し皆が褒めてくれるんじゃないかって。よくやったって言って貰えるまで、俺は諦めません」
『人間臭い、邪な感情だね。でも、それぐらいが良いんだよ。変に真面目ぶるよりは少しアレな方がね。よし、私からヒノキに目標を出そう。この目標を達成するまでは帰ってくるんじゃないよ。無事帰ってきたら沢山褒めてやるからね』
そう言って、師匠はその達成すべき目標を教えてくれた。のだが、かなりびっくりしてしまった。何故なら、それは。
『四天王の誰でも良い。一人倒してきな』
そう子どものお使い感覚で言って述べたのだから。