清浦刹那の依存症   作:完結の陽炎

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3話

 学園の食堂へ入った世界は立ち往生。

 学生で混雑をして教室以上に賑やかだ。

 周りを見渡して座れる席を探してみる。

 

 髪の長いおとなしそうな女子の隣が空いていた。

 世界の情報網からして4組の桂である。

 その桂が食べているのはラーメンで鶏バージョン。

 現時点で面識はない世界だが、食事を優先するため平然と一声かけた。 

 

「隣いい? 他の席探す時間がもったいなくて」

「あ、はいどうぞ」

 

 世界が食べるのはきつねうどん。

 うどんの麺にお揚げ・かまぼこ・刻みネギ・わかめの具材。

 温かいつゆの香りが食欲をそそいでフーフーしながら食べる。

 世界のほうが後に来たのに、食べ終わるのは世界が先になった。

 桂はゆっくりと味わうタイプのようだ。

 でも世界には関係のないことである。

 

「ごちそうさま、お先に失礼」

「あ、はい」

 

 軽く別れの挨拶をしてから食器を片付けて去る。

 それ以上でもそれ以下でもない。

 偶然、隣の席で昼食をしたに過ぎない。

 

 しかし縁というのは不思議なものである。

 

 次は3組と4組の合同授業で体育だ。

 グラウンドで見学をしている桂。

 同じくあの日を理由に見学をする世界。

 その成り行きもあって隣に座ってしまう。

 

「お昼の後に体育って地獄だと思うんだけどね。横っ腹とか痛くなるよ普通」

「そうですね」

「あ、私は3組の西園寺。隣のクラスだよね?」

「はい。4組の桂です」

 

 見た目としては、綺麗な髪と胸が大きいことが印象的。

 いかにも男子にモテるであろう清楚なタイプ。

 人柄がおとなしく箱入り娘をイメージさせるが世界は気にしない。

 

「先ほどはどうも。普段は弁当で、あまり学食に行くことはなかったんだけど、すべてのメニュー制覇を狙って、これからは通い続けようかと考えてるんだよね」

 

 その場での思いつきである。

 世界は突発的な発想力に長けている。

 刹那と距離を置くのに丁度いいアイデアだ。

 

「そうなんですか。それじゃまたお会いするかもしれません」

「学食の席って探すの面倒だから、桂さんの隣が空いていたら、速攻でそっち行って食べていい?」

「いいですよ。いつも私の隣ってなぜか空いていることが多いですから、おそらく大丈夫だと思います」

「それはアレよ。桂さんは美人だから男子は近寄れないし、女子は……何となくわかる」

「なんとなく、ですか?」

「お察しするってヤツよ。桂さんは気にしなくていいから」

 

 美人でスタイルのいいお嬢様。

 そんな人の隣に行けば嫌でもコンプレックスを刺激する。

 男にはウケが良くても女からは嫌われやすい。

 

 世界は同じ女だから妬みの感情に理解がある。

 もっとも今の世界にとってはどうでもいいこと。

 優劣を意識することすら放棄してしまっている。

 

 開き直っているのか?

 ヤケクソになっているのか?

 それは世界自身もよくわかっていない。

 

 体育が終わった後。

 光たちに学食メニュー制覇の目標を伝えた。

 それにより当面は付き合いが悪くなる。

 光と七海の了解はもらったが、刹那が黙って見つめている。

 世界も負けじと見つめ返す。

 刹那が時折するピースサインもオマケで示した。

 

「世界、学食のご飯おいしい?」

「きつねうどん美味しかった。出来立てを食べられるから、そこは弁当にない魅力だと思うよ」

「ふーん」

「欠点は混雑することだね。刹那が学食に来ても、都合よく二つも席が空いてるってことはないから。バラバラの席で食べることになることは言っておくね」

 

 遠回しに学食で一緒にするのは難しいと伝える。

 決して不可能ではないが、毎回二人分の席を探す羽目になるので面倒だ。

 刹那と距離を置くつもりの世界。

 刹那が学食へ来ないように上手く立ち回る。

 

「そうなんだ……世界」

「ん?」

「学食、一人で食べてるの?」

「刹那たちが弁当だから、私一人になるに決まってるじゃん。なによ、寂しがってると思った?」

「別に」

「まったく、おひとり様を甘くみないように。バイト先のラディッシュだっておひとり様歓迎なんだから」

 

 刹那が寂しがり屋な性格であることを知っている。

 だが世界もそうだとは限らない。

 実際に学食で一人を体験してみると思ったほど悪くなかった。

 むしろ刹那への依存から自立という変化をするのにはちょうどいい。

 これは必要なことかもしれないと世界は思う。

 

「刹那、小さい頃、同じアパート内でお兄さんが病気で亡くなったことは覚えてる?」

「覚えてる」

「ゲーム沢山あって、珍しい写真もあって。そこのお母さんからお菓子やジュースもらって。まさにパラライスだったね」

「でも世界、ある日から行かなくなった。私が連れて行こうとしても嫌がって断ってた」

「刹那がお兄さんばっかりで意地を張ったのが半分、残り半分は無意識にお兄さんがこの世からバイバイするような気がして怖くなったから。段々と弱っていくのが私も見ててわかったし。ただのヒッキーだと言ってからかってしまったけどね」

「世界……何で今そんな昔話を?」

「さあ、何でだろうね? ふと思い出しただけなんだけど、天国にいるお兄さんが思い出させてくれたのかもね」

 

 小さい頃から我儘で刹那に迷惑かけたからかもしれない。

 今の関係をお兄さんが見たらどう思うだろうか?

 甘ったれてきた世界に呆れてしまうだろうか?

 それとも苦労してきた刹那に同情して労うだろうか?

 他界した故人で些か感傷的になってしまった。

 

 

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