清浦刹那の依存症   作:完結の陽炎

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7話

 プールの施設に一同が向かった。

 更衣室で桂のナイスなボディーを妬ましく見る。

 どうあがいても勝てない。

 そんな光の絶望感に対して刹那が助け船を出す。

 

「光、七海から借りたエアーパッド使う?」

「いらない。そんなのに頼っても虚しくなるだけじゃん」

「うん。光はそれでいい」

「ちっとも慰めになってなーい!!」

 

 そんな刹那の対応を他所に世界は身だしなみを整える。

 独特な触覚のクセ毛が相変わらず健在だ。

 そして水着に着替えてから桂に尋ねる。

 

「桂さんって泳ぎはどうなの?」

「じ、実は泳げないです」

「わかった。光は澤永、刹那は伊藤と組んで遊んでね。私は桂さんに泳ぎ教えるから」

「く、組むって言われても」

「世界……」

「光ったらなに照れてるの。きっかけが欲しいなら、澤永に泳ぎ教えてとかおねだりすればいいじゃない。刹那は伊藤とウォータースライダーでもやれば楽しめるでしょ」

 

 各自で水着となりプール施設内へ移動をする。

 そこで待つ伊藤と澤永の前にお披露目をした。

 男子二人のエロい目が実にいやらしい。

 世界がツッコミの一撃を入れるのはご愛嬌。

 光がアドバイスに従い、澤永に泳ぎを教えてもらう名目で連れていく。

 

「伊藤、私は桂さんに泳ぎ教えるから刹那をよろしく。ウォータースライダーにでも連れていってあげて」

「世界……」

「さっきから私を気にしてるみたいだけど、せっかくプールに来たんだから、今は伊藤との時間を楽しみなよ」

 

 半ば強引に伊藤へ押し付ける。

 残った桂にプールへ入ってもらい、手をとってバタ足の使い方を教えた。

 足を曲げないようにアドバイスをする。

 顔を上げてる時に口から息を大きく吸って、水をつける時には息を止める。

 基本ができれば長く泳いでいられるが、ここが不慣れだと途中で息切れが起きてしまう。

 焦ってしまう心理はわかるので、肩の力を抜いてもらい、自然と呼吸を繰り返せるように練習あるのみだ。

 

「きゃっ!!」

 

 ふと水中で足を滑らせてしまう桂。

 世界にもたれかかってしまう。

 それをしっかりと支えて受け止める。

 

「桂さん、足元に気を付けてね」

「は、はい。すみません西園寺さん」

「それにしてもホント胸が大きい。こりゃあ光も嫉妬する訳だよ」

「えっと……」

「ここだけの話。光って澤永に片想いしてるから。そして刹那は伊藤に片想い中」

「そ、そうなんですか」

「私はそんな友達を静かに見守って応援という立場だね」

「なるほど。西園寺さんはお優しいですね」

 

 今までのやってきたことを考えると優しいとは思えない。

 特に刹那に対しては申し訳ない一心に尽きる。

 せめて今の時間だけでも伊藤と一緒に楽しんでほしい。

 

 区切りのいいところで食事タイム。

 自由に使える椅子とテーブルがある。

 ドリンクは施設内で注文し、食べ物は桂が籠のケースで用意したサンドイッチがある。

 これには澤永が大喜び。

 両手にサンドイッチを持って食らいつく。

 伊藤はガチガチに緊張したままで静かに食べる。

 桂を遠くから眺めるだけだった伊藤には贅沢すぎる事だ。

 

「どお刹那、桂さんの作ったサンドイッチの味は?」

「世界が作るサンドイッチのほうがおいしい」

「え、そうなんですか?」

「サンドイッチは世界の得意料理」

「それは是非食べてみたいです」

「機会があればね――って澤永慌て過ぎ、喉つまらせるよ」

「んぐっ!!」

「ほら言わんこっちゃない。光、飲み物渡してやって」

「まったくもう世話が焼けるんだから」

 

 ドタバタしながらの食事は実に騒々しい。

 こういった事が一度もない桂には貴重な体験だ。

 その桂を意識して緊張が解けない伊藤。

 そんな彼を想うであろう刹那の視線は世界に向けられていた。

 

「いやそこは伊藤でしょ?」

「なにが?」

「なんでもない」

 

 刹那の辞書に高望みという文字はない。

 近くにいるだけで満足だ。

 わざわざ見なくてもいいぐらいに。

 しばらくして澤永から何気ない一言があった。

 

「そういえばクラスの噂で聞いたんだけど、誠って清浦と付き合ってるのか?」

「あ、私もその噂は耳にしたよ。誰が言ったのかは知んないけど、隣の席だからよくある話なんじゃない?」

 

 澤永に加勢するように光が続く。

 伊藤からすれば思いもよらなかったのだろう。

 驚きを隠せずに決め付けのような言い方をする。

 

「でも清浦は別に、俺のことなんて何とも思ってないだろ?」

「こらこら伊藤、勝手なこと言わないの。刹那の気持ちは刹那自身が決めることなんだから」

「世界……」

「ま、その手の噂って別に伊藤たちだけじゃないよね。学祭で盛り上がるコイバナのひとつってことで。だから光にも夫婦漫才コンビとしての噂が流れてるよ」

「なっ!! 誰が夫婦じゃあ!!」

「私に怒ってもしょーがないってば。あくまで噂なんだから」

 

 刹那と伊藤との間は、教室で座る席と似たような距離。

 誰かが割り込もうと思えば出来るだけのスペースがある。

 しかし刹那と世界との間はそれだけの余地がない。

 手の届く位置まで接近をしている。

 長年に渡り無意識でやっていることだ。

 世界は逆だと内心でツッコミを入れる。

 好きな人と友達の距離感を間違えていると言いたい。

 

「刹那、これぐらいでいいの?」

「なにが?」

「誰かさんともっと近づきたいとか思わないの?」

「誰かさんって誰のこと?」

「例えば桂さん」

「別に」

「澤永」

「全く」

「光」

「普通」

「……伊藤」

「ちょうどいい」

 

 正直に返答をしてくれた。

 刹那らしい素っ気ない一言だが内容の差はわかる。

 もはや何も言うまいの心境となる世界。

 だが刹那から余計な一言が入る。

 

「世界、わざとなの?」

「なにが?」

「さっきの例え、全員訊いてない」

「充分に訊いたからね。刹那は答え足りない?」

「足りない。肝心な所が抜けてる」

「その肝心な所、ちょうどいいと言った相手に向けるべきなんだよ」

 

 言わせないよと世界はプールの再開宣言をする。

 この時の刹那は何を思ったのだろう?

 いつものクールな表情からは何も読み取れない。

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