【完結】主人公がいない死亡フラグだらけの日常~最強のカレナちゃんは傷心中で特に誰も救いません~   作:初雪空

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室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
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第102話 裏で何があったのか?(後編)

 『川奈野(かわなの)まどか』が、耐えきれずに叫ぶ。

 

「だったら! どうして、あの高級料亭で話してくれなかったんですか!? そうしたら、私だって……」

 

 『瀬本(せもと)ゆい』は、素直に謝る。

 

「ごめんなさい。言い訳になるけど、いつもの癖で……。私、『仕事の付き合いで、よく料亭に連れていかれる』と言ったわよね?」

 

「え、ええ……」

 

 ゆいは『まどか』が誤解しないよう、丁寧に説明する。

 

「彼らは政治家やサラリーマンで、上の立場! もちろん、芸能界の監督、プロデューサーもいるわよ? だから、『他で埋め合わせをする』という条件で、事前に話を決めておくことが多いのよ。私は場を和ませるため、ニコニコしながら、同席するだけ! 険悪な雰囲気になったら、わざと馬鹿なことを言うのも、お仕事ね……。そっちに慣れ過ぎてて」

 

 彼女は彼女で、苦労しているようだ。

 

 その料亭は、れっきとした老舗。

 

 お酌はあっても、エロい行為はなし。

 

「そういうわけで! ビジネスライクに話したの……。ゆっくり考えて、信用できる人間に相談したことで、ようやく理解したわ! 結論から話すべきではなかった」

 

 女子同士の話し合いは、相手に共感することが大事。

 

 それが抜け落ちていたのだ。

 

 ため息を吐いた『ゆい』は、淡々と続ける。

 

「あなたが通っていた公立高校。そこにも、私のファンがいて……。念のために、見ててくれるよう、お願いしたの! 数人の女子に……。それと、ウチの社長にも、悠月(ゆづき)くんの実家へ仲介をしてもらった」

 

 その社長である綾小路(あやのこうじ)桔梗(ききょう)が、口を挟む。

 

「ああ……。瀬本くんから依頼を受けて、実行した。今更だが、川奈野くんには、多大な迷惑をかけたな? 私のせいで、すまなかった」

 

 恐縮した『まどか』は、同じく頭を下げる。

 

「いえ! 社長に助けていただいたおかげで、こうやって、安全な場所にいますから……」

 

 ポテチを食べていた室矢(むろや)カレナが、総括する。

 

「事実の確認は、これで済みました……。まどかも混乱しているでしょうし、お開きに! あとは、私と皐月(さつき)が相談に乗りますから」

 

 

 それぞれに退室する中で、『まどか』はジーッとこちらを(うかが)う『ゆい』に気づいた。

 

 まだショックを受けている『まどか』が、向き直る。

 

「えっと……。せ、瀬本さんにも、お世話になりました……」

 

 ゆいは、こくりと(うなず)いた。

 

 当事者の1人である悠月史堂(しどう)も、残っている。

 

 霊体化している槇島(まきしま)如月(きさらぎ)は踊り出さんばかりに、ウキウキしている。

 

 まどかは、自分の気持ちを伝える。

 

「正直なところ、まだ……あなたを信用できません。全てが終わった後で辻褄を合わせたストーリーを聞かせただけ、という可能性もありますから! あなたは、それだけの演技ができる人」

 

 目を伏せた『ゆい』に、『まどか』が話を続ける。

 

「だけど……。私も、招待された高級料亭で自己完結をしました! あの時に、きちんと話し合っていれば……」

 

 深呼吸をした『まどか』は、決断する。

 

「今は同じ学校に通うクラスメイトですし、改めて友達になりましょう。その上で、あなたを判断していきます」

 

 

 ◇

 

 

 新しい環境では、前の高校のような騒ぎとは無縁。

 

 ようやく落ち着いた『川奈野まどか』は、ふと気になる。

 

水口(みずぐち)さん! ちょっと聞きたいことが……」

 

「ん? 何かしら?」

 

 振り返ったのは、自分のマネージャーである若い女。

 

「前に、気をつけろって……。結局のところ、何だったんですか?」

 

 『瀬本ゆい』についての、警告だ。

 

 ため息を吐いた水口は、周りを見た後に、まどかの耳元で(ささや)く。

 

(私が教えたとは、言わないでよ? ……女の子も好きらしいの)

 

 ゆいが『まどか』を気にかけて、これだけ親切だったのは――

 

 思い返せば、妙にしっくりくる。

 

 恋愛感情があったから、これほど……。

 

「あああ、あの! 私、瀬本さんとの仲直りで、今度ホテルで食事をすると約束しちゃって……」

 

 察した水口は、両手をグッとした。

 

「頑張れ♪ ……私は、打ち合わせがあるから!」

 

 余裕の芸歴だ。

 トラブルの回避力が違いますよ!

 

 焦った『まどか』は、カレナと皐月に助けを求めた。

 

 霊体化したままの如月は最高のテンションで、踊り続けている。

 

 

 ――どこかの現場

 

「いいねえ……。このまま、次のシーンもいただいちゃうよ~!」

 

 責任者の上機嫌な声を聞きながら、チェアに座っている『ゆい』は自分のスマホを見る。

 

“室矢さんと槇島さんも、参加したいそうです”

 

「じゃあ、そろそろ……あれー!? ゆーちゃん、どうしちゃったの!」

 

 次の撮影を始めようとした責任者は、選挙で落ちた直後の候補者のような『ゆい』を見て、思わず叫んでしまった。

 

 

 

 ――数日後のホテル

 

 1人1万円ぐらいのレストラン。

 

 バイキング形式で、女子高生4人がテーブルを囲む。

 

 引きつった笑顔の『まどか』は必死に、ゆいのアピールを(かわ)し続ける。

 

 その一方で、『まどか』の奢りでやってきたカレナと皐月は、暢気に食べていく。

 

「やはり、美味しいです」

「値段が違うからね……」

 

 

 川奈野まどか。

 

 彼氏よりも先に彼女ができるかもしれない、お年頃。




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