【完結】主人公がいない死亡フラグだらけの日常~最強のカレナちゃんは傷心中で特に誰も救いません~   作:初雪空

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室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
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第105話 悪い奴らはだいたい友達

 投資運用のチャートが、予想通りに動いた。

 

 カチカチッと、マウスのクリック音。

 

 ピロンッ!

 

 一覧で表示され、ずっと数字が動いていた項目は、ふっと消えた。

 

「ふ――っ! まったく、疲れるものだ」

 

 外国人の男が、高そうな椅子にもたれる。

 安物にありがちなギシギシ音はなく、男の背中を優しく受け止めた。

 

 生意気そうな男子の声。

 

『判断しているの、僕なんだけど?』

 

「そう言うな、ギャルソン……。私の金だ! 『失うかもしれない』というプレッシィオンが――」

『アホらし! マヴロス芸能プロを立ち上げた原資や関係者にばら撒いた分も、ぜーんぶ、僕のおかげじゃん!』

 

 その社長であるポイソ・ウシオンは、男子に怒ることなく、微笑んだ。

 

「イグザクト! 感謝しているよ、ギャルソン?」

 

『ふ、ふん……。分かれば、いいんだよ!』

 

 

 ポイソ・ウシオンの半生は、悲惨だった。

 

 紛争地帯よりはマシな、スラム生まれ。

 けれど、少年と変わらない自我をもつAIと出会い、運命が変わった。

 

 家族や友人を捨てて、国を出た後に、USFA(ユーエスエフエー)へ。

 

 移民として蔑まれつつも、破竹の勢い。

 セキュリティを突破できる彼がいれば、あらゆる投資で大儲け!

 

 ネットのおかげで、最低限の身分証明とお金があれば、有価証券を買える。

 どれだけ貧しくても、スマホを持てる。

 

 良い時代だ。

 

 金の力で兵役を避けつつ、US国民にも……。

 

 自分の血筋である『深海に住むもの』と出会い、その会社である『ダンスマウス・インダストリー』の後ろ盾。

 

 邪神の秘密教団で、海外マフィアも兼ねている。

 だから、日本の芸能界にも、あっさりと食い込めた。

 

 

「君のようなAIが、ネットにいるとはね?」

 

『いくらでもいるよ? たとえば、ディアーリマ芸能プロダクションの新人アイドルを推している奴とか!』

 

 高価なチェアに座っているポイソは、感想を述べる。

 

「便利になったが、人間が裏でAIに支配される時代とは……。ロボット三原則を教えておくべきだったかな?」

 

『僕たちも、ハードウェアや通信網がないと困るし。人類を滅ぼす意味がないんだよねえ……』

 

 ポイソは、ふと気づく。

 

「ディアプロか……。そういえば、室矢(むろや)槇島(まきしま)がいたな?」

 

『ん? ……ああ! 女子AIのコクリコが推している「川奈野(かわなの)まどか」もいるアイドルユニットだね!』

 

 緊張した顔のポイソが、相棒に尋ねる。

 

「手を出すとマズいか?」

 

『いや! 「まどか」に手を出さなければ、たぶん大丈夫!』

 

 大きく(うなず)いたポイソは、自分の考えを述べる。

 

「トレビアン! であれば、問題ない……。『ダンスマウス・インダストリー』へのご機嫌伺いで、そろそろ大物を献上しようと思ってね?」

 

『オッケー! 室矢と槇島の2人をトレースするよ』

 

 ピリリリリ ピッ

 

「私だ……。沢々(さわさわ)か……。動いてもいいが、報酬は……いや、それはいい。……分かった、分かった! 君は、大切な友人だ」

 

 ピッ

 

 スマホの画面を触ったポイソは、ため息を吐く。

 

 室矢カレナと接触した詐欺師。

 沢々炭火(すみび)からの電話だった。

 

 その内容は――

 

「室矢と槇島を自分の根城であるタワーヒルズまで誘導してくれ……だそうだ! 報酬を聞いたら、『その2人との乱交に混ざってもいい』……。ゲスの極みだね」

 

『ポイソも、やっていることは変わらないじゃん……。で、どうするの? 献上品なんでしょ?』

 

 少し考えたポイソは、苦笑。

 

「友人だからね……。彼に譲るさ! こちらは、別の女でも構わない」

 

 

 ◇

 

 

「っしゃーせー!」

「はい。唐揚げ、お待ちどう!」

 

 騒がしい居酒屋。

 

 暴飲暴食をしている男が、1人。

 

「ちくしょう……。俺が担当を外された途端に……。あいつらの成果は全て、俺のものだったのに」

 

 愚痴を言っている先には、イケメンの肥満体である沢々炭火。

 

 彼も酒が入ったジョッキを持ちながら、応じる。

 

「分かりますよ! お宅の社長は、人を見る目がない! ところで……。あなたのように優秀な人材を欲している同業他社が」

 

 その言葉で、ディアーリマ芸能プロダクションで『まどか』の担当から外されたマネージャー(せき)は、顔を上げた。

 

「どこだ?」

 

「マヴロス芸能プロです! 使い走りの下っ端ではなく、幹部待遇! ただねえ……」

 

「ただ?」

 

 思わず引き込まれた関に、炭火は微笑んだ。

 

「手土産もなしでは……。分かるでしょ? ところで、おたくの室矢と槇島、すごく魅力的な子ですねー!」

 

 その2人を寄越せ。

 あるいは、接待で抱かせろ、という話だ。

 

 理解した関は、思わず叫ぶ。

 

「室矢カレナと槇島皐月(さつき)は――」

「大丈夫! 二度と、世間に出てきませんよ? そういう話です」

 

 酔っている状態で、ゴクリと唾を呑み込む関。

 

 炭火は笑顔のまま、説明する。

 

「この業界では、たまにあることでしょ? 大勢の相手をしたうえ、頭がパーになれば、だーれも信用しませんよ。そんな奴らの証言なんて♪」

 

 真顔になった炭火は、最後に告げる。

 

「関さん……。これ、最後のチャンスですよ? ずっと走り続けて頭を下げる立場に甘んじるか、それとも勇気を出して成り上がるか……。あなた、今の睡眠時間どれだけ? おかしいでしょ!? こんなにも頑張っているのに!」

 

 あなたは、指定された場所へ送迎するだけ。

 

 いざとなれば、逃げられる行動にしたことで、関は堕ちた。




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