【完結】主人公がいない死亡フラグだらけの日常~最強のカレナちゃんは傷心中で特に誰も救いません~   作:初雪空

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室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
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第131話 君は誰のために頑張るの?

 アイドルフェスの会場は、注目されているグループに!

 

「ここからは、入賞しそうなアイドルばかり!」

「うおー! 燃えてきたー!!」

 

 歓声が鳴りやまない、ドームの中。

 

 熱狂の渦で、その中心にいるのは、『川奈野(かわなの)まどか』たち、プリムラの3人だ。

 ステージに張られたシールに従い、じっと待つ。

 

 センターは、室矢(むろや)カレナ。

 

 まどかは、その左側にいる。

 

 真っ暗な観客席が、不思議と、よく見えた。

 

(いない……)

 

 まどかの視線の先には、ゲストのための席。

 

 招いたはずの男子は、いない。

 

 悠月(ゆづき)史堂(しどう)の姿は……。

 

(仕方ないよね……)

 

 まだ暗いステージ上で、涙ぐむ『まどか』。

 

 『瀬本(せもと)ゆい』に言われた、住む世界が違う、という言葉を思い出す。

 

「「まどかちゃーん!」」

 

 自分の名前を呼ぶ声に、まどかは顔を上げた。

 

 暗闇に光る、サイリウム。

 

 名前も知らないファンが、必死に振っている。

 

(……歌わないと!)

 

 音響装置が、動き出した。

 

 プリムラの曲だ。

 

 同時に、ガシャッと、天井のレールに設置されている照明がついた。

 その出力で、ステージの温度が変わるほど。

 

 メロディーに合わせて、プリムラの3人も、ゆっくりと動き出す。

 

 彼女たちの数分間が、始まった。

 

 

 ――ネオ・ポールスターに近い、軍事施設

 

 巨大な人型が、うつ伏せになったまま。

 戦闘機に挟まれている。

 

 その後ろで噴射が始まり、滑走路で加速した後に離陸。

 

 整然と、次々に飛んでいくのは、第二波のMA(マニューバ・アーマー)部隊だ。

 

 帽子を振り回しつつ、整備員たちが激励する。

 

「頑張れよー!」

「頼んだぞ!」

 

『グラウンドコントロールより悠月特務大尉へ! R-1「りんどう」ブースターに、離陸を許可する!』

 

「R-1『りんどう』ブースター、了解!」

 

 地面と水平で、下を向いたまま。

 

 ほぼ自動で向きを変えて、同じように加速が始まった。

 

 ふわりと浮かぶ。

 

『サイファーリーダーより各機へ! 我々はこのまま、ネスターの中心部へ突っ込み、地上戦力を撃破する!! 以後は、無線封鎖!』

 

 死地へ運ばれていく、鉄の棺桶。

 

 中に詰め込まれた悠月史堂は、一足先に埋葬されたようなものだ。

 

(怖い、怖い……)

 

 先ほどまで、プリムラの曲を聞いていた。

 

 史堂は知らないものの、離陸のタイミングは彼女たちの出番とほぼ同じ。

 奇しくも、違うフィールドで死力を尽くすことに……。

 

 

 残された地上クルーは、MA部隊が飛び去った夜空を見ている。

 

 そこに、誰かが走ってきて、こう叫ぶ。

 

「おい!? 予備が1機、足りないぞ?」

 

 

 ◇

 

 

 暗闇で低空飛行をする、ブースター付きのMA。

 

 その1機は、無人だ。

 けれど、操縦する部分が動き、透明人間のよう。

 

 可愛らしいが、やさぐれた、女子の声が響く。

 

『いい加減に、決着をつけるわよ? ねえ、坊や?』

 

 AIのツヴァイは、ネオ・ポールスターを支配しているAI、ギャルソンとの決戦に向かう。

 

 ネスターが見えてきて、ブースター切り離しのタイミングを(うかが)うも――

 

『まだるっこしい!』

 

 Gと無関係なツヴァイは、緊急用のロケットまで使い切り、集団から飛び出した。

 

 ビー! ビー! と、機体の空中分解や、パイロットへの高負荷を示すアラーム音。

 

『サイファー8! 出すぎだ!!』

 

『うるさい! こっちはこっちで戦うから、そっちも好きにしなさい!!』

 

 初めて聞く、女子の声。

 

 あり得ない状態に、叫んだリーダーは言葉を失う。

 

 ネスターからの対空砲火は、有人では耐えられない機動で空振り。

 

 皮肉にも、先頭のツヴァイが(おとり)になって、後続は安全に……。

 

 うつ伏せからMAの両足が降りていき、降下態勢へ。

 

 ツヴァイは脚で逆噴射をしつつ、無理やりに、飛行形態のブースターを外す。

 

 ミサイルと化したブースターが、対空の指揮所を潰した。

 

 一時的に、そのエリアで、迎撃が不可能に!

 

『くっ! ……よっと!』

 

 機体のスラスターを操り、器用に減速したツヴァイは、市街地の車道に長い直線を作った。

 

 使い終わったスラスターは、すぐにパージ。

 

 全高4mの人型が、それに見合った艦砲のような口径のライフルを持ち、ジャキッと初弾を装填。

 

『さあ、遊びましょ?』

 

 言うや否や、横にジャンプしつつ、飛び出してきたMAに数発を叩きこむ。

 

 両足で着地しながら、機体のバーニアで動き続け、常に遮蔽をとる。

 

 角から出てきたMAに小銃の後ろをぶつけて、そのまま殴り倒す。

 間髪入れず、胴体を撃った。

 

 その爆発に押されるように、ツヴァイの機体は立体的に踊り続ける。

 

 

 やがて、男子小学生ぐらいの声が通信に入る。

 

『……お前、AIか? どうして、人間の味方を』

 

 相手は、重装備のMA。

 

 データで不明とされたまま、ツヴァイは、にやりと笑った。

 

『初めまして、クソガキ……。とりあえず、死ね!』

 

 ツヴァイの機体は、すぐに両手で構え、発砲した。

 

 衝撃波だけで、人が千切れる。

 

 それほどの銃弾は、左右のビルディングの窓を割りつつ、ゴングの代わりに。

 

 2人のAIも雌雄を決するべく、真っ暗な市街地で動き出した。




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