【完結】主人公がいない死亡フラグだらけの日常~最強のカレナちゃんは傷心中で特に誰も救いません~   作:初雪空

133 / 144
室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
https://hatuyuki-ku.com/?p=707


第133話 深堀アイにとってはアトラクション

 ネオ・ポールスターの査察で九死に一生を得た、深堀(ふかほり)アイと楽しい仲間たち。

 

 彼らは、生存者の寄せ集め。

 

 沿岸警備隊の特殊部隊がリードしつつも非常用の通路を歩き、手動でドアやハッチを開けつつ、ようやく地上へ辿り着いたのだ。

 

 そこは、AIのギャルソンが片思いをしている相手、ツヴァイを誘い込むために準備したゲートだった……。

 

 

 久々に、灯りがある場所。

 

 秘密基地のようだが、表示によれば、ここはもう地上だ。

 

 せまくて非常灯だけの通路で、歩きっぱなし。

 

 精神的にも疲れ切った面々は、それぞれに腰を下ろした。

 

 外の攻撃による振動が、断続的に伝わってくる。

 艦砲やMA(マニューバ・アーマー)の戦闘は、ここにいても分かるほど。

 

 特殊部隊のリーダーは、ため息を吐いた。

 

「まいったな……。地上に出たら、砲撃やミサイルに巻き込まれる」

 

 システムエンジニアの男が、泣き言を漏らす。

 

「もう嫌ですよ! 地下に戻るのは……」

 

 特殊部隊のメンバーですら、同意する雰囲気だ。

 

「隊長……。自分も、地上を移動するべきだと思います! 地下に電気が通っていなければ、暗闇で閉じ込められる恐れが」

 

 胡坐(あぐら)をかいたまま、腕を組んだリーダーは、思案する。

 

 部下ですら、この有様だ。

 民間人となれば、もう限界を超えている。

 

 今までの暗く、せまい場所でパニックが起これば、自滅するか……。

 

「そうだな! 地上を移動する方向で、検討しよう!」

 

「ハッ!」

 

 リーダーは、反射的に敬礼した部下を見つつも、この合同演習を知っていた人物を見た。

 

「深堀さん? あなたは最初に、『USFA(ユーエスエフエー)と防衛軍による一斉攻撃が行われて、屋内にいても吹き飛ばされる』と言いましたね?」

 

「ええ、そうよ……」

 

 1人だけ、自然体のアイ。

 

 それは、女子中学生として、異常の極みだ。

 

 泣き叫び、感情的に(わめ)くか、自閉症のようにふさぎ込むのが、当たり前なのに……。

 

 リーダーは腰のホルスターに手をやりながら、尋ねる。

 

「ここのシステム管理室に入れて、マスター権限を与えられる……。あなたは何者ですか!? そもそも、あの迎撃にもかかわらず、我々が上陸した時に平然といた」

 

 全員の注目が集まる中で、本人が答える。

 

「日本に住んでいる外国人……。会った時に言ったけど、それ以上は水掛け論よ? 思っていたよりも攻撃が早く、待ち合わせの相手が来られないの! 私たちで脱出するしかないわ」

 

 誰と、待ち合わせていたのか?

 

 気になるが、今は脱出方法を決めるべきだ。

 

 そう思ったリーダーは、頭を切り替えた。

 

「あなたは、どうするべきだと思いますか?」

 

「このゲートで動く車両を見つけて、地上を走りましょう! ……その視線をやめなさい。理由なら、ちゃんとあるわよ?」

 

 呼吸を整えたリーダーが、改めて問い直す。

 

「聞きましょう!」

 

「理由は、このネスターがもうすぐ沈むから」

 

 沈黙が支配した。

 

 アイは、パニックが起きる前に説明する。

 

「詳しいことは、後で! 今から地下で別ルートを探したら、間に合わないわ!! まだ動く車両を見つけなさい!」

 

 リーダーは、いずれにせよ必要だ、と考えた。

 

原田(はらだ)伊藤(いとう)! 松浦(まつうら)さんと一緒に、全員が乗れるだけの車を探せ!」

 

「了解」

「はい!」

 

 3人が動き出したのを後目に、リーダーはアイを見た。

 

「どこへ向かえば?」

 

 アイは、筆記用具を見つけた。

 

 車両を探している3人を除き、円陣を組んだ。

 

 黒マジックで、キュキュッと、ネスターの輪郭(りんかく)を描く。

 

「本当は、船舶がある港か、最初のゴムボートに戻りたいんだけど……」

 

 リーダーが、すぐに否定する。

 

「無理でしょうね? 港は狙われやすい拠点だし、仮に船があっても、我々では動かせません」

 

 別の人間も、同意する。

 

「動かせるとしても、こんな暗闇じゃ、朝までかかりそうだ」

 

 アイは、結論を述べる。

 

「とにかく、海岸線を目指す! これなら最短距離の移動で、混乱しないわ」

 

 不承不承だが、リーダーは納得した。

 

「ネスターが危険であれば、それしかないでしょう……。海沿いなら、非常用のボートや小型の船舶を見つけやすいですし。戦闘が終わった後で、ライトを使ってのSOS信号か……。朝になれば、自力での脱出も」

 

 方針は、決まった。

 

 アイを信じるのならば、地下への逆戻りは自殺行為。

 

「2台、準備完了!」

「理由は不明ですが、外に通じる隔壁も開いています!」

「だ、脱出するのなら、今しかないですよ!?」

 

 今まさに、ツヴァイを追い込んでいる最中。

 

 わざと開放されたゲートと、その周囲は、ギャルソンの手で一時的に安全だ。

 

 

 手早く、外を確認したリーダーは、決断する。

 

「よし! 今のうちに、移動するぞ!!」

 

 分乗した後で、真っ暗な車道へ。

 

 ゲートから漏れる灯りが、なくなる。

 

 それでも、彼らは生き延びるために――

 

 ジェットエンジンのような轟音。

 

 全てを吹き飛ばす強風が、その2台を歓迎した。

 

「くそっ!」

「他でやれよ!?」

 

 

 ツヴァイのMAは、開放されたゲートへ追い込まれていく。

 

 さらに、ギャルソンが空中から一斉射撃をして……。

 

 場面は、絶体絶命のツヴァイへ戻る。




過去作は、こちらです!
https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。