【完結】主人公がいない死亡フラグだらけの日常~最強のカレナちゃんは傷心中で特に誰も救いません~ 作:初雪空
ネオ・ポールスターの査察で九死に一生を得た、
彼らは、生存者の寄せ集め。
沿岸警備隊の特殊部隊がリードしつつも非常用の通路を歩き、手動でドアやハッチを開けつつ、ようやく地上へ辿り着いたのだ。
そこは、AIのギャルソンが片思いをしている相手、ツヴァイを誘い込むために準備したゲートだった……。
久々に、灯りがある場所。
秘密基地のようだが、表示によれば、ここはもう地上だ。
せまくて非常灯だけの通路で、歩きっぱなし。
精神的にも疲れ切った面々は、それぞれに腰を下ろした。
外の攻撃による振動が、断続的に伝わってくる。
艦砲やMA(マニューバ・アーマー)の戦闘は、ここにいても分かるほど。
特殊部隊のリーダーは、ため息を吐いた。
「まいったな……。地上に出たら、砲撃やミサイルに巻き込まれる」
システムエンジニアの男が、泣き言を漏らす。
「もう嫌ですよ! 地下に戻るのは……」
特殊部隊のメンバーですら、同意する雰囲気だ。
「隊長……。自分も、地上を移動するべきだと思います! 地下に電気が通っていなければ、暗闇で閉じ込められる恐れが」
部下ですら、この有様だ。
民間人となれば、もう限界を超えている。
今までの暗く、せまい場所でパニックが起これば、自滅するか……。
「そうだな! 地上を移動する方向で、検討しよう!」
「ハッ!」
リーダーは、反射的に敬礼した部下を見つつも、この合同演習を知っていた人物を見た。
「深堀さん? あなたは最初に、『
「ええ、そうよ……」
1人だけ、自然体のアイ。
それは、女子中学生として、異常の極みだ。
泣き叫び、感情的に
リーダーは腰のホルスターに手をやりながら、尋ねる。
「ここのシステム管理室に入れて、マスター権限を与えられる……。あなたは何者ですか!? そもそも、あの迎撃にもかかわらず、我々が上陸した時に平然といた」
全員の注目が集まる中で、本人が答える。
「日本に住んでいる外国人……。会った時に言ったけど、それ以上は水掛け論よ? 思っていたよりも攻撃が早く、待ち合わせの相手が来られないの! 私たちで脱出するしかないわ」
誰と、待ち合わせていたのか?
気になるが、今は脱出方法を決めるべきだ。
そう思ったリーダーは、頭を切り替えた。
「あなたは、どうするべきだと思いますか?」
「このゲートで動く車両を見つけて、地上を走りましょう! ……その視線をやめなさい。理由なら、ちゃんとあるわよ?」
呼吸を整えたリーダーが、改めて問い直す。
「聞きましょう!」
「理由は、このネスターがもうすぐ沈むから」
沈黙が支配した。
アイは、パニックが起きる前に説明する。
「詳しいことは、後で! 今から地下で別ルートを探したら、間に合わないわ!! まだ動く車両を見つけなさい!」
リーダーは、いずれにせよ必要だ、と考えた。
「
「了解」
「はい!」
3人が動き出したのを後目に、リーダーはアイを見た。
「どこへ向かえば?」
アイは、筆記用具を見つけた。
車両を探している3人を除き、円陣を組んだ。
黒マジックで、キュキュッと、ネスターの
「本当は、船舶がある港か、最初のゴムボートに戻りたいんだけど……」
リーダーが、すぐに否定する。
「無理でしょうね? 港は狙われやすい拠点だし、仮に船があっても、我々では動かせません」
別の人間も、同意する。
「動かせるとしても、こんな暗闇じゃ、朝までかかりそうだ」
アイは、結論を述べる。
「とにかく、海岸線を目指す! これなら最短距離の移動で、混乱しないわ」
不承不承だが、リーダーは納得した。
「ネスターが危険であれば、それしかないでしょう……。海沿いなら、非常用のボートや小型の船舶を見つけやすいですし。戦闘が終わった後で、ライトを使ってのSOS信号か……。朝になれば、自力での脱出も」
方針は、決まった。
アイを信じるのならば、地下への逆戻りは自殺行為。
「2台、準備完了!」
「理由は不明ですが、外に通じる隔壁も開いています!」
「だ、脱出するのなら、今しかないですよ!?」
今まさに、ツヴァイを追い込んでいる最中。
わざと開放されたゲートと、その周囲は、ギャルソンの手で一時的に安全だ。
手早く、外を確認したリーダーは、決断する。
「よし! 今のうちに、移動するぞ!!」
分乗した後で、真っ暗な車道へ。
ゲートから漏れる灯りが、なくなる。
それでも、彼らは生き延びるために――
ジェットエンジンのような轟音。
全てを吹き飛ばす強風が、その2台を歓迎した。
「くそっ!」
「他でやれよ!?」
ツヴァイのMAは、開放されたゲートへ追い込まれていく。
さらに、ギャルソンが空中から一斉射撃をして……。
場面は、絶体絶命のツヴァイへ戻る。