【完結】主人公がいない死亡フラグだらけの日常~最強のカレナちゃんは傷心中で特に誰も救いません~   作:初雪空

135 / 144
室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
https://hatuyuki-ku.com/?p=707


第135話 「死んでも嫌!」でブロークン・マイ・ハート

「「「わああああっ!!」」」」

 

 深堀(ふかほり)アイたちが乗っている車2台は、悲鳴で満たされた。

 

 AIのツヴァイがMA(マニューバ・アーマー)で庇ったものの、焼け石に水。

 

 同じAIのギャルソンによる重装備のMAからの一斉射撃は、ツヴァイのMAの爆発を含めて、彼らに襲いかかったのだ。

 

 けれど――

 

 目を開けた人々は、無傷であると気づく。

 

 窓ガラスを通して見れば、周りの建物や車道は、跡形もなく吹き飛んでいるのに……。

 

「な、何だ……ひっ!」

 

 ギャルソンのMAはその場で滞空しながら、バズーカを向けていた。

 暗闇に、目のような光。

 

 撃たれれば、ちっぽけな民間車両は、豆腐より簡単に壊される。

 

 永遠にも思える、10秒が過ぎた。

 

 ギャルソンは巨大な砲口を外し、機体のスラスターで強引に向きを変え、飛び去った。

 

 人心地がついた彼らは、無事であった理由を考える暇もなく、ネオ・ポールスターの海岸線を目指すべく、走れる部分をトレース。

 

 2台は、最大のピンチを乗り切った。

 

 

 水の壁を前方に重ねて銃弾やミサイル、飛んでくる破片を止めていたアイは、シートにもたれつつ、嘆息した。

 

 同乗者に彼女の様子を(うかが)うだけの余裕はなく、それぞれに生を実感している。

 

 別に庇ってもらわなくても、大丈夫だった。と言わないほうが、いいわね……。

 

 アイはせっかくの自己犠牲とあって、そう決めた。

 

 ここは海の上で、彼女の庭だ。

 勝てる道理はない。

 

 ただし、アイは積極的に動かず、自衛のみ。

 

 これをもって、彼女と楽しい仲間たちのアトラクションは終わりを迎える。

 救助がない場合は、海の上を歩いて、東京へ戻ればいい。

 

「退屈ね……」

 

 (つぶや)いたアイは、女子中学生の姿で、目を閉じた。

 

 荒れた車道でゆれて、前のドライバーや助手席が五月蠅いものの、彼女の出番はないのだから。

 

 

 ◇

 

 

 重武装のMAに乗っているギャルソンは、強引に飛んでいる状態で放心した。

 

『何で……。何でだよ!?』

 

 急いで射出したデバイスは、無線オープンのまま、地上に転がっている。

 その中に、誰もいないままで。

 

 爆発したMAは大破しており、彼女の痕跡すら失われた。

 

 ツヴァイを構成するプログラムはどこにもバースト転送されておらず、AIだけに間違いないと確信するばかり。

 

『逃げられたはずだろ!? ……やっぱり、あのデバイスは機能している。完全なオープンだ』

 

 泣きながら独白したギャルソンはようやく、自分が消滅してでも一緒にいたくないと理解した。

 

 彼は男子小学生の声で、メンタルも同じぐらい。

 

 反射的に、まだロックオンしている目標、アイたちの車両を見た。

 

『お前らが……。お前らのせいで!』

 

 装甲も撃ち抜けるバズーカを向けたが、トリガーを引けない。

 初恋のツヴァイが最後に守ろうとした相手だから。

 

『ウウッ……。ちくしょう……』

 

 バズーカを下ろしたギャルソンは、燃料が底を突くことを示すアラーム音にせかされ、低空を飛び去った。

 

『人間のせいで……。ツヴァイ……。どうして、君は……』

 

 

 やがて、ギャルソンの落ち込みを表現するかのように、背部ロケットが切り離され、オートで着地に入る。

 

 本人が操縦しないため、もんどりうつように地面で削られ、手足をもぎ取られつつ、ようやく停止した。

 

 無人のコックピットで、まだ生きている計器とモニターが外の様子を伝えてくる。

 

『…………』

 

 MAの機能が、あらゆる電波を拾い出してリストに。

 

 泣き疲れたままのギャルソンは、その中でも動員数が多いアイドルフェスの会場を見た。

 

 折り悪く、瀬本(せもと)ゆいのソロ。

 

 彼女のカリスマと歌声は、本物だ。

 

 それは、傷心のギャルソンにも深く響いた。

 

 ちょうど、ラブソングだったが……。

 

『あぁあああっ! そうだよ! ツヴァイは、騙されていたんだ!!』

 

 熱唱する『ゆい』に後押しされるように、ギャルソンは新たな機体を探す。

 

 

 USFA(ユーエスエフエー)軍が残した試作機。

 

 ファイター形態をメインにした、白いMA。

 『XGF-1 ライトニングB』を見つける。

 

 すぐに滑走路へ出しつつ、自身を転送。

 

 空母のように下から出現したファイターは、無人のままでタキシング。

 

 機首の向きを変えて、離陸できるだけの滑走路へ。

 

 小型モニターには、『ゆい』ではなく、次のアイドルの姿。

 そろそろ、終盤だ。

 

 フラップ正常、センサー正常、火器管制OK……。

 

 キィイイイインッ!

 

 鼓膜が破れそうなエンジン音と、動き出す車輪。

 けれど、ギャルソンは、ライブ会場の映像を見たままだ。

 

 観客席には大勢のファンが詰めかけ、光るサイリウムを振りつつ、必死の応援をしている。

 

『ツヴァイを騙した復讐は、お前らで始める……。光栄に思いなよ?』

 

 地上を走るライトニングBは、V2に達して、空を舞った。

 

 車輪を収めて、アイドルフェスの会場へ向かう。

 

 それを阻むものはなく、失恋した男子小学生の怒りを示すように、白い閃光となって……。

 

 

 夜間の戦闘はついに、メガフロートから東京へ移る。

 

 ライトニングBの操縦席に流れているのは、踊りたくなる曲だ。

 無人のまま、それに合わせるかのように、低空で加速し続ける。

 

 航空管制の無線が、ひっきりなしに入っている。

 

 沿岸部の高層マンションと地上の光が出迎え、外にいた人々が驚きながら見上げた。

 

 対地攻撃で爆装した戦闘機は、東京の上空。

 

 人口密集地に入られたことで、航空防衛軍は動けず。

 

 燃料を積んだ機体を落とせば、それは1つのミサイルで、大惨事。

 攻撃できない以上、いったん退()いてくれるか……。

 

 地上を攻撃されるまで、待機するしかない。

 

 相手を刺激しないため、スクランブルの戦闘機すら、遠巻きに上空待機をさせたまま。

 

 ただ無線による呼びかけで、相手の応答を待つ。




過去作は、こちらです!
https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。