【完結】主人公がいない死亡フラグだらけの日常~最強のカレナちゃんは傷心中で特に誰も救いません~   作:初雪空

41 / 144
室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
https://hatuyuki-ku.com/?p=707


第41話 超新星(スーパーノヴァ)の爆発

 真っ暗なグラウンドの中央。

 

 山吹(やまぶき)色のロングであるセーラー服のスティアは、女の子座りをしたままの春花(はるか)を見ていた。

 

 スティアが、手の平を耳に当てる。

 

「はい……カレナ? ……え? 重遠(しげとお)はまだ生まれ変わっていないの!? じゃあ、何で……ハーッ! そういうこと……うん、大丈夫。それはないから。じゃ!」

 

 虚空に話していたスティアは片手を下ろしつつ、ため息を吐いた。

 

 声をかけようとした春花は、いきなり出現した黄金の台座のような物体に、え? と絶句する。

 

 幼い女子中学生は、逃げ出してきた高等部の校舎を見た。

 春花も、釣られる。

 

 復活したのか、ドシンドシンという足音に、ウサギの着ぐるみの姿。

 

 春花はスティアのほうを見て、叫ぼうとするも――

 

 一筋の光が走った。

 

 ウサギの着ぐるみは後ろの校舎を突き破り、中へ叩き込まれた。

 その左右で、すさまじい突風が吹き荒れる。

 

 春花が見れば、スティアは前に突き出した(こぶし)を下ろすところ。

 その幼い顔に、怒りを示す。

 

「重遠がいないのに戻ってきた私の哀しみを知れ!」

 

 黄金の台座が複数の光となって、幼いスティアに降り注ぐ。

 胸部、腰、両手、両足、頭部と、黄金の鎧へ。

 頭のヘッドギアを最後に、全身が黄金に包まれた。

 

 ブーツと一体化した両足を動かせば、地面が削れる。

 拳法の構えのように、両手を動かす。

 周囲に神威が広がり、黄金のオーラが辺りを満たした。

 

 座ったまま、目を見張る春花。

 

 

「コズミック……エクスプロージョン!!」

 

 黄金の騎士となったスティアは、ガントレットで保護された拳を動かす。

 

 右拳がアッパーのように動き、彼女は上へ振り切ったままのポーズに。

 すると、彼女たちが見ている校舎に変化が起こった。

 

 高等部の校舎が下から(まばゆ)い光に包まれ、天に昇っていくかのよう……。

 

 コンクリートや中の鉄筋までも、瞬時に溶かされていくように姿を消す。

 ウサギの着ぐるみと巣くっていた食屍鬼(グール)どもは、状況を理解する間もなく、消滅した。

 

 もはや、この世の物とは思えない光景だ。

 

 それを見守っていた春花は、思わず(つぶや)く。

 

「超新星(スーパーノヴァ)の爆発……」

 

 星を砕くか? と思われた光がおさまれば、高等部の校舎は影も形もなかった。

 その地面すら、大きく(えぐ)れたまま。

 

 ガキィンッ! という金属音に、スティアを見れば、元のセーラー服だった。

 

「あなたは……いったい?」

 

 真っ暗なグラウンドに、グリーンの瞳。

 

「知らないほうがいいわよ? 『金星の女神』と言っても、どうせ信じないだろうし……」

 

 冗談なのか判断がつかずに、困る春花。

 

 立っているスティアは再び、エア電話を始めた。

 

「……ええ! 私も、別に面倒を見る気はないし、あとは本職に任せましょう!」

 

 片手を下ろしたスティアは、すたすたと歩き出す。

 

「あ、あの!?」

 

 地面に座ったままで片手を伸ばす春花に、スティアは立ち止まった。

 

 振り向きながら、告げる。

 

「もう大丈夫なはず……およ?」

 

 パパパと、軽い発砲音が続いた。

 

 マズルフラッシュか、小さな光も見える。

 

 場所は……中等部と初等部の合同校舎。

 

 別れた先輩2人の行方もあって不安になる春花だが、スティアは無責任に言う。

 

「今のは、よく分からないけど……。まあ、大丈夫でしょ! 残りの女子大生2人と合流したければ、ここで待ちなさい。それが嫌なら、あっちで警察に保護されるといいわ!」

 

 一方的に告げた後で、スティアは春花に背を向けて、歩き出した。

 

 さっきの今で、話しかけられる雰囲気ではない。

 

 

 発砲音があった暗い校舎を見ていたら、もう彼女の姿はない。

 

「……何だったのかな?」

 

 まるで、夢を見ているようだ。

 

 座り込んでいた春花は、ようやく立ち上がる。

 

 この世の地獄と思われた高等部の校舎は、すでに消えた。

 そちらを見るも、さっきまで存在したとは思えず。

 

 ふうっと、ため息を吐く。

 

「どうしようかな……」

 

 鉛のように、体が重い。

 走りっぱなしだから?

 先輩たちの安否は確認したいものの、また襲われるのは、嫌だ……。

 

 その場で座り込んだ春花は体育座りになって、中等部と初等部の合同校舎を眺める。

 

 真っ暗なグラウンドの中央に、ポツンといる女子大生。

 

「無事だと、いいな……」

 

 彼女が外から見守る中で、別行動の2人は危険に晒されていた。

 

 多冶山(たじやま)学園を巡る、一晩のバトルはいよいよ、佳境を迎える。

 その先に待つものは、いったい何だろうか?

 

 春花が命懸けで庇った、先輩2人。

 彼女たちは思わぬ人物と出会い、行動を共にしていた。

 

 女神であるカレナ、スティアには、ただの暇潰し。

 動画配信の女子大生3人も、招かれざる客。

 

 けれど、それとは違う人物が1人いる。

 

 現在が過去の積み重ねであれば、その清算も必要だ。

 突入する部隊がやってくるのは……早くて、明日の午前中。

 

 ここの県警が、決定的な場面に立ち会うことはないだろう。




過去作は、こちらです!
https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。