【完結】主人公がいない死亡フラグだらけの日常~最強のカレナちゃんは傷心中で特に誰も救いません~   作:初雪空

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室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
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第50話 駐在所の巡査長は死亡フラグを立てた

 女子高生の外間(ほかま)朱美(あけみ)と他の巫女たちは、奉納演舞を終えた。

 呼吸を整えながら、待つ。

 

 明山(あけやま)神社にある板張りの舞台で立ったままの彼女たちに、見物客の拍手。

 

 (まつ)られている咲耶(さくや)は父親と同じく、山の神様になるケースが多い。

 ともあれ、朱美の見せ場は終わり、司会役のアナウンスで今の奉納演舞を解説する。

 

『ただいまの踊りは、当神社で祀っている神々に対する――』

 

 

 同じ境内の末社(まっしゃ)である槇島(まきしま)神社。

 

 その御神体(ごしんたい)となっている槇島睦月(むつき)が、美須坂(みすざか)町を練り歩いた神輿の上で跳ね続けながら、戻ってきた後だ。

 

 山奥にある限界集落の神社にしては、手際がよい進行。

 

 以前に、睦月が槇島シスターズを呼び、ダンスショーを披露。

 その教訓を活かし、SNSの告知と併せて、大勢を受け入れられる体制に……。

 

 山の石段を上った先にある境内。

 

 屋台が並び、制服の警備員や北稲原(きたいなばら)署の警備課(非番の有志を含む)による警備を実施中。

 

 

 ◇

 

 

 地元の駐在所――警察官が自分の家族と住み込む――にいる巡査長たちは、交番と同じオフィスでひっきりなしに電話を受け、訪問者と向き合う。

 

「はい、美須坂駐在所です! ……分かりました。その件は――」

 

「次の方、どうぞ!」

 

 

 応援の警察官は、だいたい格上。

 

 彼らに気を遣いながら、自分の家族と総出で乗り切ろうとする巡査長。

 

「悪い! 母さんに、昼メシは10人分ぐらいでサッと食えるやつを頼む! コーヒーと洋菓子の準備もな?」

 

「うん、伝える!」

 

 (うなず)いたのは、巡査長の息子。

 

 まだ幼児で、すぐに奥へ引っ込む。

 

 

 ド田舎だけあって、昔ながらの平屋で、塀が囲む。

 

 2階がない戸建てで、玄関は交番と同じ構造だ。

 今の子供は、住宅のスペースに。

 

 駐在所は地元密着で、家族ごと住む。

 間違っても、自分から望んで勤務する場所にあらず。

 

 

 駐在所のドアが開かれ、警察官や高そうなスーツを着た連中が入ってきた。

 狭いオフィスは、さらに狭く。

 

 グループの1人を確認した途端に、お疲れ様です! と叫んだ警官が、直立不動で右手の敬礼。

 気づいた警官たちも、それに(なら)う。

 

 目を丸くする駐在所の中にいた市民に構わず、偉そうなスーツ男は近くの警官に話しかける。

 

「ここの担当は?」

「は、萩原(はぎわら)巡査長であります!」

 

 視線の先を見れば、まだ驚いている様子の警官。

 

「君か……。落ち着いて話せる部屋は?」

「ハッ! こ、こちらに取調室があります!」

 

 20代半ばの萩原一吾郎(いちごろう)は緊張しながら、駐在所のオフィスから繋がっている部屋に……。

 

 

 無機質な部屋には、中央の事務デスクとパイプ椅子2つ。

 壁ぎわに、様々な物品が置かれている。

 

「散らかっておりまして……。申し訳ありません!」

 

 言われる前に、一吾郎が謝罪した。

 

 壁に立てかけていたパイプ椅子を運ぶ。

 

「椅子は4人分だ。……諸君は、先ほどの場所で待機してくれ」

「「ハッ!」」

 

 警察キャリアの言葉に、警官やスーツ姿の男たちがバッと会釈した後に、部屋から出ていった。

 

 バタンと、閉められる。

 

 一吾郎がパイプ椅子を並べた後に、立っていようと――

 

「ああ、君も座りたまえ! ……今回は、USFA(ユーエスエフエー)の大使館にいる武官の方が依頼してきた」

 

 事務デスクをはさみ、パイプ椅子に座った一吾郎は、無言で(うなず)いた。

 

 外国人の男は高級スーツを着たままで、微笑む。

 

「私は、ウォリナーと申します。……さっそくですが、本題に入ります。これを見てください」

 

 握手のあとで事務デスクに置かれたのは、1人の少女の写真だ。

 

 赤みがかった黄色で、長い髪。

 グリーンの瞳と、童顔。

 低身長で、胸もないことから、余計に幼く見えた。

 

 けれど、大人びていて、女子中学生と思われる。

 

 一吾郎は、顔を上げた。

 

「彼女は?」

 

「我々は、スティアと呼んでいます。先日の多冶山(たじやま)学園の事件に、彼女がいたようで……。USの人間ゆえ、保護したいのです」

 

 行方不明者の捜索か……。

 

 納得した一吾郎は、すぐに返事をする。

 

「分かりました! 彼女を発見したら……ご丁寧に、ありがとうございます」

 

 差し出された名刺を受け取った一吾郎は、ひとまず事務デスクの上に置く。

 

「えっと……。ウォリナーさんに連絡するか――」

「US大使館でも、構いません。私から、話をしておきます」

 

 首肯しつつも、他のパイプ椅子に座っている警察キャリアたちへ視線を移す。

 

 ……何の指摘もない。

 

 それを確認した一吾郎は声に出して、確認する。

 

「この写真に写っている少女、スティアを見つけ次第、ウォリナーさんかUS大使館に連絡する。……間違いありませんね?」

 

「はい。その通りです」

 

 ここで、警察キャリアが発言する。

 

「応援で警備している部隊には、こちらで通達しておく! 君は駐在所の責任者として、彼女の発見にも留意するように!」

 

「ハッ! 全力を尽くします!」

 

 

 それにしても、何だ、これは?

 いくらVIPの娘だろうが、これだけゾロゾロと、山奥まで……。

 

 ――我々は、スティアと呼んでいます

 

 呼んでいます?

 

 呼んでいますって、何だ!?

 

 背筋が寒くなった一吾郎は、目の前にいるキャリアたちが早く出て行ってくれるよう、心の中で願った。




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