【完結】主人公がいない死亡フラグだらけの日常~最強のカレナちゃんは傷心中で特に誰も救いません~   作:初雪空

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室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
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第6話 室矢カレナは海外の神様(ローカル認定)

 室矢(むろや)カレナの新しい自宅。

 それは避暑地に建つ、洋風のペンション。

 

 趣味でやっている規模とはいえ、畑、田んぼ、鶏小屋により、1つの世界と言える場所だ。

 

 

 女子高生の佳鏡(かきょう)優希(ゆき)は、そのリビングに招かれ、カレナと向き合う。

 

「――というわけで、この区画の組長である(さかき)さんは納得させた! 前の美須坂(みすざか)商店街でも、『睦月(むつき)の友達』として認められたよ! だから、今後はウチ……美須坂町でなら大丈夫だと思う。何かトラブルがあった場合は、私に連絡して! 顔役の佳鏡家が出て行けば、ゴネる奴はいない」

 

「その榊さんに、私が挨拶する必要は?」

 

 首を横に振った優希は、真剣な顔で言う。

 

「いらない。……むしろ、やらないで! 今のあんたは、『人間と距離を置いている、海外の神様』という認識だ。いきなり態度を変えたら、『馬鹿にしていたのか!?』と逆上されるよ? ……そういう路線に変えても、いいけど。その場合は、もう面倒を見ない! 普請(ふしん)の草むしりや婦人会にも強制参加だし、行かないと今度こそ村八分」

 

「なるほど……。せっかく穏便に片付いたのに、また販売拒否などのトラブルは嫌です。優希の言葉に甘えて、『お互いに不干渉』とさせていただきます。ゴミ捨ても自分でステーションへ運んでいるため、ご心配なく」

 

 カレナの返事に、優希は何か言いたげな表情。

 

「まだ、名前で呼んでいいとは……あー、もう! じゃ、私たちの間では『お互いに名前で呼ぶ』ってことで、いい?」

 

「はい。よろしくお願いします。……これ、皆さんでどうぞ」

 

 デパートに入っている名店の包装を見て、優希は一気に脱力した。

 

「あのさあ……。この対応を榊さんに……。いや、もういいよ! カレナが自分勝手じゃなかったことを喜ぶ!」

 

 高い和菓子のセットが詰められた箱を手に取り、優希は自己完結した。

 

 次に、カレナのほうを見る。

 

「これは、佳鏡家の親に渡すから! そうすれば、『あんたがウチに挨拶した』となり、一応は丸く収まる」

 

「いいですよ。ところで、町内会費は? ……払う気はあります」

 

 優希の雰囲気により、言葉を付け足した。

 

 それを聞いた優希は、少し考える。

 

「どっちみち、私がカレナの面倒を見るから……。集金は、それでいいけど。問題は、あんたの名前を出すのかどうか!」

 

「佳鏡家の名義で、町内会に渡してください。私は、ここでスローライフを送るだけです。お祭りといった祭事でも、それに見合った額を包みましょう。佳鏡家の取り分も、付け加えて。代わりに、共同作業を免除してくれるように……」

 

 長考した優希は、同意する。

 

「分かった……。親には、その方向で話してみる」

 

 

 カレナは、ふと疑問に思う。

 

「そういえば、睦月(むつき)は? ここでは、長いのでしょう?」

 

「あー、それね! 私も気になって調べたら、あの子は商店街の手伝いとか町のあちこちで活動しているんだって! 神様といえばもっと気難しいと思っていたけど」

 

 ちらりと見てきたので、優希に教える。

 

「睦月は人懐っこいので……。槇島(まきしま)の女神でも、外見は女子中学生だけど、ぶっきらぼう、マイペースと色々ですね。面識はあるんですけど、しばらく会っていないから……。まあ、自分の機嫌だけで危害を加えるタイプはいないはずです」

 

「じゃあ、ウチは当たりってことか……」

 

 自分の感想を述べた優希は、とりあえず納得した。

 

 

 優希が自分のスマホを持ったことで、カレナが応じる。

 

 お互いの連絡先を交換。

 

「んで、SNSのグループを作っていい? 私がすぐに対応できるとは限らないから……」

 

 廃墟に入り込んだ4人は、仲が良いようだ。

 

 反対する理由はなく、こちらも快諾。

 

 

 ホッとした優希は、カレナに提案する。

 

「お金のことは佳鏡家で話し合うから、また後で! もうすぐ、カレナも高校に通うよね? 色々と説明しておきたいんだけど……」

 

 時間がないか、聞くつもりがなければ、別にいい。

 

 言外で、そう伝える。

 

 

「ええ、いいですよ! ぜひ、お願いします」

 

 カレナは返事と同時に、立ち上がった。

 

 食べ終わった2人分の洋菓子の皿とティーカップを運搬用のトレイへ。

 

「お菓子とドリンクは、取り替えます」

「悪いね。……あ! 広げたいから、ダイニングテーブルのほうでいい?」

 

「はい。どうぞ……」

 

 家主の承諾を受けて、優希は持ってきたトートバッグをつかむ。

 

 

 

 今度は、食べやすいスナック菓子と炭酸ジュース。

 

 それらを(すみ)に置きつつも、ダイニングテーブルに広げた新聞紙の上の地図を見下ろす女子2人。

 

 優希は赤ペンを持ちながら、1つの川をキュキュッと示す。

 

「これは、麻田川(あさだがわ)! 昔はここの生命線で、田んぼに水を引くことで争いがあったとか。今も山からの水脈として、馬鹿にできない」

 

 ポテチを(かじ)ったカレナは、率直に言う。

 

「海のほうへ抜けているんですね?」

 

「うん。ここは見ての通り、山の間にへばりついている村だよ! 今は御田木(みたき)市に吸収されたことで、『町』と名乗っているけど……。外へ通じる幹線道路は1つ。電車も同じく、1つの路線だけ。ここと……ここだね」

 

 説明している優希は、それぞれをマジックで囲みつつ、浮かない顔に。

 

「ウチは、人が減っている過疎地でさ? 川を挟んでのニュータウン、いわゆる新市街と仲が悪い」

 

 

 どうやら、この地域に特有の、対立構造があるようだ……。




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