【完結】主人公がいない死亡フラグだらけの日常~最強のカレナちゃんは傷心中で特に誰も救いません~   作:初雪空

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室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
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第80話 人の話を聞かない面々

 室矢(むろや)カレナは興味なさげに、USFA(ユーエスエフエー)陸軍のマーサーを見た。

 

 外国人の女は緊張した様子で、カレナを見返す。

 

 上官を相手にしているような、直立不動だ。

 

私共(わたくしども)は、今回のMA(マニューバ・アーマー)暴走を重く見ています! こちらの方々……陸上防衛軍にも、他人事ではありません。どうか――」

「私は、ユニオンにいた『ブリテン諸島の黒真珠』。そちらに(くみ)すれば、周りが五月蠅いでしょうね?」

 

 鼻白んだマーサーは、必死に説得する。

 

「ユ、ユニオンに関しては、US陸軍、あるいは外交チャンネルで、対応いたします!」

 

 首を横に振ったカレナは、(さと)す。

 

「意見を述べるだけ……。それでも、あなた方は『便宜上』と称して、陸軍の階級に当てはめます。となれば、『USFAに協力した』『US陸軍の指揮系統に組み込まれた』という事実だけ、一人歩き……。失礼ですが、あなたの所属と階級は?」

 

「USFA陸軍、システム開発部のマーサー技術中尉です! その……原因追究で私たちが槍玉に上がっておりまして」

 

 どうやら、暴走したMAのシステムエンジニア。

 

 無人であれば、統括しているOSや制御プログラムの異常を疑って、当然だ。

 

 マーサーは、ここぞとばかりに喋る。

 

「オープンチャンネルで、女子の声がありました! 有人では不可能な機動と併せ、遠隔のハッキングだと思いますが……」

 

「結論が出ているなら、勝手に調べてください」

 

 呆れたカレナは、近くのソファーに座った。

 

 しかし、彼女は諦めず。

 

「いえ! (くだん)のMAは、プログラムの履歴が意味不明な羅列で埋め尽くされていて……。電子回路は焼き切れていないものの、分析できません! 通信経路も特定できず」

 

 履歴がなくても、暴走したことは事実。

 

 担当のシステムエンジニアは、進退(きわ)まったのだ。

 

「ミズ室矢に、お越しいただけないでしょうか? 今回の模擬戦は、USと日本の友好を確認するためで……」

 

 チラッと陸防の男を見るも、援護はなし。

 

 嘆息したマーサーは、座っているカレナを向いた。

 

「室矢の血族は、我が国にもいます! あなたがそのファミリーネームを冠していて、あの『室矢カレナ』ならば――」

「私は……」

 

 本人が話したことで、マーサーは黙る。

 

 カレナは注目されたまま、自分の意見を述べる。

 

「今の室矢家に、全く興味がありません……」

 

 焦ったマーサーは、言葉を並べる。

 

「あなたは、室矢家の初代当主だった室矢重遠(しげとお)のパートナーでしょう!? その子孫は、彼の血を引いていますよ? 彼らは両国の架け橋になろうと――」

「重遠に、どれだけの子供がいたと? キリがないです……。そもそも、私はシステムをよく知らず、お役に立てません」

 

 マーサーは、切り札を出したつもり。

 

 それが相手にされず、呆然としたまま、尋ねる。

 

「と、当時の室矢家に……情報担当がいた、という話があったのですが?」

 

 笑顔のカレナは、とぼける。

 

「しばらく、世間から離れていたので……。ああ、そうそう!」

 

 その言い方に、マーサーは期待するが――

 

「私は、自宅を襲撃されまして……。その件で、バタバタしているのですよ」

 

「は、はあ……。それは、大変でしたね?」

 

 脈絡のない話に、マーサーは戸惑った。

 

 それに対して、カレナが伝言を託す。

 

「あなたが戻ったら、こう伝えてください! 『金星は、よく見えますか?』とね……。話は、以上です」

 

 スティア強奪のため、自宅にIGU(イグー)(無限の剣の部隊)を突入させたことは忘れていないぞ?

 

 そういう意味だ。

 

 下手に喋れば、目の前の哀れな技術士官が、グラムいくらのミンチに。

 だから、遠回しの伝言。

 

 スティアは、金星の地表で寝ている……。

 

 カレナは視線を外し、もう話す気がないことを示した。

 

 ため息を吐いたマーサーが、別れの言葉。

 

「伝言は、上官に伝えます……。気が変わりましたら、いつでもUS大使館や陸軍にご連絡ください。失礼します!」

 

 バッとお辞儀をしたマーサーは、ラウンジから立ち去った。

 

 

 残っている男が、口を開いた。

 

「私は、陸上防衛軍の『試作人型戦車』評価隊の指揮官である――」

「あなた方も、帰ってください。今の話を聞いていたでしょう?」

 

 うんざりした様子のカレナが、切って捨てた。

 

 けれど、評価隊の指揮官は話を続ける。

 

三宅(みやけ)少佐です……。先ほどは他国の話ゆえ、当然の結論だと理解しております! 室矢は、日本を守っている一族です。かつての初代当主も――」

「私は『今の室矢家に興味がない』と、言いました」

 

 驚いた三宅は、おずおずと尋ねる。

 

「それは……本気で言っているのですか?」

 

「ええ、真面目に……」

 

 カレナは、いつになったら本題に入れるのかと、嘆いた。




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