【完結】主人公がいない死亡フラグだらけの日常~最強のカレナちゃんは傷心中で特に誰も救いません~   作:初雪空

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室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
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第87話 呼べば、帰ってきそうなカペラ

 港区の赤坂にある、迎賓館を思わせる豪邸。

 

 広いリビングで、家主の深堀(ふかほり)アイが口を開いた。

 

「その件が片付くまでは、3人ともウチに宿泊して構わないわ! 『素泊まり』とはいわず、衣食住の面倒を見る。住所としても私……管理している不動産会社が、証明するから」

 

 1人用のチェアに座りつつ、室矢(むろや)カレナを見た。

 

「カレナお姉さま! 全体を説明してちょうだい……。ここまで世話を焼くのだから、その権利があると思うけど?」

 

 ソファーに座っているカレナは、アイを見返した。

 

USFA(ユーエスエフエー)の試作MA(マニューバ・アーマー)、X-1『コメット』の暴走は、カペラの置き土産がやりました……。本人に説明させましょう!」

 

 電子音と共に、空中で平たい画面。

 

 童顔で、星々が見えるパープルの瞳。

 動きやすく手入れしやすい、肩にかかる程度のブラウンヘア。

 セーラー服ではなく、星を模した髪飾りもない。

 

 驚いたアイが、思わず尋ねる。

 

「小型コロニーのエルピスで、外宇宙へ旅立ったのでは!?」

 

 空中のモニターに映る女子は、“カペラと遊ぼう! ~ステッラエ・マレからの来訪者~” のアプリにいた本人と、雰囲気も違う。

 反抗期を思わせる、すさんだ感じ。

 

 その女子は可愛らしいが低めのボイスで、豪邸のリビングに集まっている面々を見た。

 

『オリジナルは、そうしている! 亜空間かブラックホールの中にいるらしく、定時報告である超空間の通信が途切れやすいけど……。私は、彼女の代理人である、劣化コピーのAIよ! ツヴァイと呼んで』

 

 ツヴァイは、不機嫌そうだ。

 

 しかし、ブラックホールの中から通信が届くという時点で、誰しも宇宙ネコになる案件だ。

 

 カレナは、率直に聞く。

 

「アイドルの強火担(つよびたん)を確保します! 女子タイプのAIで、アイドルオタ。今の人類では、彼女を追いきれません……。協力してください」

 

 モニター上で、ツヴァイは嫌そうな顔。

 

『拒否権はないんでしょ? ハイハイ……。対象を教えてくれれば、秒で逆探して、そのまま焼き切るから』

 

「いえ、確保します」

 

 顔を引きつらせたツヴァイは、問い返す。

 

『わざわざ、サンドボックス――隔離された仮想領域――に放り込むの? 何で!?』

 

「海に沈んでいる邪神が、浮上します……。そっちの秘密教団にギリギリまで、私たちの目的を悟られたくありません」

 

 げんなりしたツヴァイは、端的に答える。

 

『面倒臭い……。で、私のやることは?』

 

「女子AIが推しているアイドルに私たちが接触して、一緒にいますから――」

『通信の履歴や、そいつの動向を密かに探り、あんたの合図で隔離した空間に閉じ込める』

 

 ツヴァイの説明に、カレナは念を押す。

 

「やれますか?」

 

 誰に聞いているんだ? と言わんばかりに、本人が答える。

 

『今の通信とシステムは全て、私が裏コードを握っているのよ? スタンドアローンでも、それが電子機器なら影響を及ぼせる。その気になれば、明日から伝書鳩の生活! アイドルの通信を見張れば、いいわね? 専門知識があるとは思えないから、普通にスマホで連絡を取り合っているはず』

 

「任せます……」

 

 カレナの返事に、ツヴァイは質問する。

 

『トリアージは?』

「私たちを除けば、推されているアイドル、その関係者、最後に女子AIです。なるべく、全員をフォローしてください」

 

『潰すべき敵は?』

「海外マフィアと秘密教団を兼ねている、『ダンスマウス・インダストリー』。それと組んでいる、マヴロス芸能プロ」

 

『私が選べる、物理的な手段は?』

「戦闘に入った場合は、軍用兵器を使ってください……」

 

 

 

 ――ディアーリマ芸能プロダクション

 

 東京で、レッスンスタジオもある建物。

 

 平日の午前中で、制服の女子や社会人が入り乱れている。

 

「おはようございまーす!」

「お疲れ様でーす!」

 

「乗ってください!」

 

 人と機材を運べるバンも、ひっきりなしに出入り。

 

 部外者に見られる場所ゆえ、まだ取り繕った態度。

 

 2人の女子中学生は、制服姿。

 歩道から、広いエントランスに入った。

 

 高級ホテルのロビーのようだ。

 

 自然体のまま、オープン型の受付に。

 

「いらっしゃいませ! ……こちらは、商談用のスペースよ? 養成所を含めたレッスンスタジオは、隣です。見学についても、そちらでどうぞ」

 

 カウンターの内側にいる女性は、見るからに、お登りさん。という女子2人に、間違いではないか? と尋ねた。

 

 腰まで伸ばしている黒髪のJCは物怖じせず、用件を述べる。

 

「室矢カレナです……。社長の桔梗(ききょう)に、『今日から、ここの専属アイドル』という約束ですが?」

 

 同じく、腰までの金髪と金色の瞳をした少女が、自己紹介。

 

槇島(まきしま)皐月(さつき)です。ボクも、カレナと同じ用件……」

 

 ギョッとした受付は、すぐに応じる。

 

「し、失礼しました! 室矢さまと槇島さま、ですね? 少々、お待ちくださいませ!」




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