先生のお手伝い始めました。え?女装?趣味ですが何か? 作: 俺は人間をやめるぞぉ!
それはそうと誤字報告助かります!!これからもよろしく!!
しばらくして、先生がイロハと入れ替わるように戻ってきた。
俺は即座に駆け寄って、先生の両肩に手をやる。
「それで先生!?あの羽沼マコトからは何を言われたんですか!?全部吐いて貰いますからね!?」
「お、おお、おち、おちつつつついてシノンンン」
先生の肩を掴み、ワッサワッサと揺する。
まさか奴の甘言に釣られて変な約束事とか取り付けてないだろうな!?好きなだけプラモデルを買ってやるなんて言われたら肯首しかねない!!それはマジで洒落にならねぇ!!
「と、特に何もなかったよ??」
「何もなかっただぁ?口外禁止とか言われたのかぁ!?やっちまったなアンタ!プラモの亡者め!!」
「なんの話!?」
「という冗談は置いておきましょう」
俺は先生の肩から手を離す。
「ヘァッ!?冗談!?完全に両肩を砕き振動で首と胴がさよならしちゃう勢いだったけど!?」
「特に何もなかった、そうおっしゃいますが。もう少し詳しく聞いても?」
「あ、はい(諦め)」
そうして先生は、話し始めた。
・・・
「キキキ、どうだ先生?悪い話ではないだろう?私の味方に付けば、莫大な力と財を手に入れることが出来るのだ!」
「私は別に、そんなものなくたってマコトの味方だよ?先生だからね」
「んなッ!?ちが、そういうことじゃない!」
「マコトにもし困ったことがあったら、私はいつだって手を貸すし、責任を取るよ?」
「だ、だからそういうことじゃない!手を貸してくれと言っているのだ!」
「だから、貸すよ?いつでも」
「そうじゃなぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!」
・・・
「っていうやり取りを数十回繰り返して、帰されたね。なんだったんだろ」
「...っぷ」
「え?」
「なんでもないです」
「笑ったよね今!?」
「なんのことですか??」
いやぁ、流石は先生だ。御見それしました。敵いませんよそりゃ。
天然と言うかなんというか、それとも、大人の余裕ってやつ?
きっとマコトは、生徒として先生の力を借りたいわけじゃない。対等な関係で、お互いの利益を交渉して、そういう取引がしたかったんだろう。先生の力を独占するには、そうするしかないからだ。
けど先生は、あくまでも先生として、マコトと言う生徒に力を貸すと言いうスタンスを貫いていた。だから話が噛み合わない。
まぁ、先生を、大人をコントロールしようだなんて、そもそも無理な話だったのだ。
「それじゃあ...次はトリニティに向かいましょうか」
「そうだね」
そうして俺と先生は、次なる目的地へと足を動かし始めた。
・・・
「申し訳ないのですが...二葉シノンさん。貴方は席を外して頂けませんか?」
「.......」
思わずため息が零れそうになる。けれど、目前には羽沼マコトとは違い、まさにトップとして相応しい気品を感じさせる少女、桐藤ナギサがいた。
トリニティティーパーティー現ホスト代行、そんな彼女に対して溜め息などと...礼節を欠くような真似は出来なかった。
「...承りました。では私はしばらく校内を散策していますので、後ほど合流しましょう、先生」
「うん、了解」
いや、
しかし誤解しないで欲しい。彼女は万魔殿のマコトとは違う。先生を利用することの意味。それはシャーレを、連邦生徒会直属の機関の力を借りるに等しい。そのリスクを理解していないはずがない。
故に...そう心配の必要はないだろうというのが、俺の結論だ。
「では、失礼します」
俺はナギサに頭を下げ、その場を後にした。
・・・
「...それにしても、まさにお嬢様学校と言った具合でしょうか。煌びやか華やか、目がチカチカしそうですね」
お嬢様か...そう言えばこれまで、まだ試したことのなかったコンセプトだな。
やりたかったけど、やれてない女装だ。
まず衣装の用意に金が掛かる。そして、それを着こなすための知識も浅い技量も拙い。
テーブルマナー、だっけ。あれ難しいんだよなぁ。
けどあの程度はマスターしなければ、お嬢様など到底不可能。
やはり、まだまだ俺はお嬢様を憑依させる実力に達していない。うむうむ、日々精進だな。
けど、やってみたいなお嬢様...絶対俺に似合うもん。ぐへへ....
そんなこんな、未来への希望にルンルン気分で廊下を歩いていた俺は...ちょうど角を曲がった瞬間、向こうから駆けてくる気配に気づくことが出来ず、
「おわっ!?」
「ひゃっ!?」
酷くベタに、ぶつかってしまった。
勢いは小走りだった相手の方がずっと強くて、俺が一方的に倒れて、その上に覆いかぶさるみたいに、相手も転んだ。
「あたた...ついてないですね」
軽く打った後頭部を撫でながら、視線を胴の方に送ると。
走って来たその人は、俺の胸(偽乳)にすっぽり顔を埋めながらもがいていた。
ピンク色の綺麗な髪が小刻みに震え、小さな羽をパタパタさせる。
「ぷ、ぷはぁっ!?」
俺が彼女を持ち上げると、やっと念願の呼吸が出来たようで、貪るように酸素を取り込んだ。
かなり小柄だ。一年生の子かな?
「えぇと...怪我はありませんか?私はありますが」
「あ...あぅ...あ、あ」
目と目が合うと、途端にその子の顔が茹蛸のごとく真っ赤に染まる。さっきまで胸にハマっていた事実を思い出したのだろうか。気にしなくてもいいのに、どうせ偽物だし。
「え、え、えっちだぁぁ!!!!」
「ッ?????」
凄い勢いで飛び退かれた。
何だ急に...びっくりした。エッチ?どういうこと?
「え、えっと...エッチですか?私が...です?」
「ふ、不純!そんな恰好ダメ!えっち!しけぇ!!!」
「まさかの死刑宣告!?」
おいおいマジかよ、この学園独自の刑法でもあるのか?エッチ闊歩罪?判決は死刑?重すぎやしませんかね。
「異議ありです!一体この格好の何がエッチなんですか!!」
「た、谷間!見えすぎ!!しけぇ!あ、足出しすぎ!!しけぇ!もう全体的にエッチすぎる!しけぇしけぇしけぇ!!!」
俺何回死刑宣告受けた??ごめんねエッチで!!
「だ、だめ。私もえっちなことされちゃう...は、はやく逃げないと....」
その子はなにやらぶつぶつ呟きながら、走り出した。
けど上手く足が回らないみたいで、すぐにもつれて、また転びそうになる。
「危ない!」
間一髪、俺は彼女と地面の間に滑り込むことに成功。彼女のクッションになった。
そしてそれは、また始めと同じような体勢になったことを意味する。
「あ、ひ、はぅ....」
彼女の顔が、超至近距離に迫る。目と鼻の先とはまさにこのこと。
息遣いが伝わってくる。さっきより震えている、その振動も鮮明に感じ取れる。
(だ、だめだ、わたし...このままえっちなことされちゃうんだ...あ、あのえっちな本みたいに....)
「.....あ、あのぉ」
どう声を掛けたものか。下手に刺激すると、先の二の舞になってしまうのではないだろうか。なら、このまま彼女が落ち着いてから、また声を掛けるのが正解?
思考が堂々巡りになっていく。結論を出せないまま、彼女と見つめ合う時間だけが淡々と過ぎていく。
「...んっ!!」
「うん?」
すると突然、彼女がその両の瞳を閉じた。と思うが早いか、唇が突き出される。
え?どゆこと?キス待ち?なんで??
(う、うぅぅぅ...キスされちゃうよぉ...い、いやっ...そういうことはまだ早いからダメなのに....)
「...えっと...ていっ」
「んむっ!?」
考えあぐねた結果、俺は最適解を導き出す。これこそ、俺が先生から学んだことだ。
それは...大人の余裕。
つまり俺は、人差し指を突き出された彼女の唇に当てたのだ。そうすることで、安易な情欲には乗らない強い心、そして余裕を彼女に見せつけることが出来る、ということだ!!
「え、え、え!?」
驚いたように彼女は目を見開いて、そして自分の唇に接したものが指だと分かると、
「あえ、あぅ...んみゅ」
「は?」
なんか咥えた。
いやなんでだ!!!!!!
そうはならんやろ!!!!!
「ん...んちゅ....」
「おい待て待て待て待て!!!ストップ!!カメラ止めろ!!!!!」
カメラなんてどこにもないけどね!!!!
・・・
オマケ「メイドとメイド」
「今日はメイドシノンでございますよ、ご主人様」
「おぉ、これはまた様になってるね」
本日のコンセプト、それはメイドだ。
白と黒を基調としたエプロンに、丈の長いひらひらなスカート。頭には可愛いカチューシャを付けて、二人称はご主人様。
完ぺきな仕上がりと言える...我ながら恐ろしいぜ....
「あ、メイドと言えば、今日の当番はネルだったね」
「...ネル?」
えっと...誰だったっけ。俺も全ての学校の全ての生徒を覚えてる訳じゃないから...でも、聞き覚えは確かにある。
というか、メイドと言えば?そのネルさん?もメイドなのだろうか。
ギヴォトスにおいての、メイド...と言えば、あの組織しか浮かんでこないんだけど....
「おーい!先生、来たぞ!開けてくれドア!!」
その瞬間、猛々しい声が、扉の向こうから響いた。
「おっと、噂をすればだね...開いてるよぉ!入っておいでネル」
「ん?おー開いてたのか、んじゃ遠慮なくお邪魔するぜ」
突然の来訪に呆けていた俺だったが、すぐに扉の方に視線を投げる。
するとすぐに、少々乱暴と言える勢いで開かれ、そして想像に反する小柄なシルエットが覗いた。
「C&Cコールサイン
「お、おぉ...おぉぉぉぉ!?」
C&C、流石に知ってるぞ。ミレニアム学園で活動する凄腕のエージェント集団。そのOOと言えば、リーダー。ただでさえ優秀なメンバーの中でも、突き抜けた戦闘力を持つ存在。
荒々しいスカジャンは勝利の象徴。ネルがまさか、あの美甘ネルだったとは....
「ん?なんだお前...」
ギロリと、彼女の両目が一斉に俺を射抜く。
なんて眼圧だ...一瞬怯みかけてしまった。
「こほん...
「んなぁっ!?」
俺の自己紹介に、ネルは目を見開く。
「先生!!私達を差し置いてメイドを雇ったのか!?」
「え?いやいやいや?待って?シノンは違うよ!?」
「何が違うってんだ!メイド服着た奴がメイドですって自己紹介してきたんだぞ!?どこをどう間違えようがあるんだこれ!」
「し、シノンさん!?弁明してよお願い!!」
「はい、承りました、ご主人様」
(弁明する気ないなこの子....)
俺は再び咳ばらいを一つ。そして、彼女の元に歩み寄る。
「...あぁ?私の間合いに入ってくるたぁ...良い度胸してるじゃねぇか」
ニヤリと、ネルは不敵に笑う。
「美甘ネルさん...貴方は、メイドですか?」
「は?メイドだろ...多分」
「ですが私には到底...貴方がメイドのイロハすらも嗜んでいるとは思えないのです」
「...んだと?」
ぴきぴき...と、青筋が浮かび上がる。
「その粗暴な態度、メイドとして型外れな衣装...その姿、真のメイドと言ってよいのでしょうか?」
「...何が言いてぇんだ」
壮絶なメンチが切られる。触れれば切れてしまいそうなほどに、緊張した空気。
俺は、フッと思わず笑みが零れる。
「勝負をしましょうか」
「勝負だぁ?」
「どちらが先生のメイドとして相応しいのか...白黒はっきりつけようじゃないですか!!!!」
「あぁ上等だやってやる!!!!」
「メイド勝負です!!!!」
「メイド勝負だな!!!!!」
「審判は先生...お願い致します!!!!」
「...なんかもう...うん。やろうか、メイド勝負」
「「絶対まけねぇ」!!!ないです!!!」
そうして...戦いの火ぶたは、切って落とされたのだった。