カードキャプターさくら 星屑の涙   作:サボテンダーイオウ

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サクラ、また会えたね。


※注意※

この作品は別作品【ツバサ・クロニクル】とのクロスオーバー傾向となっています。
主人公の謎の出自と以前の曖昧な記憶により今作だけ読むと理解できにくい内容となってます。
その点ご了承いただき次へお進みください。



10 ホットケーキ

冬に桜は咲かない。それは日本でも同じことだ。

だけど、私は綺麗な見惚れるほどのさくらに出会った。私が知るサクラではない。分かってる。彼女じゃないって。分かってるよ。でも彼女だった。魂が似ていたんだ。

だから声を掛けずにはいられなかった。引力に引き寄せられるように私は彼女の前に立ちふさがった。

 

 

この世に生じてから初めとなる土地で不安がないと言ったら嘘になる。以前の記憶で確かに私は日本に住んでいたことがあったとしても所詮それは記憶の中の話。この体では初めてなのだ。見知らぬ土地でキャリーバッグを引きながらとりあえず歩いてたどり着いた静かな公園にて私はベンチに腰かけて一時的に体を休めた。そういえば歩きがてら見つけた変なペンギンの滑り台があったなぁ。機会があれば遊んでみることにしよう。しかし今は駄目だ。イギリスと日本との時差ボケで体が追い付いていかないのだ。そこはいかな優秀な私と言えど勝てるものではない。

 

「はぁ、しかし。疲れた」

 

「意外に天姫は世間知らずなんだな。そういやあっちにいた時も破天荒なことばっかりしてたっけか」

 

自分で歩くことはない腕の中にいる生意気なコモコナにそう言われてついムッとしてしまう。

 

「ぬいぐるみの振りしてただけのコモコナに言われたくない」

 

「オレはコナーだ!」

 

全然コナーって感じじゃない。

 

「コモコナで十分だ」

 

「なに!?」

 

ギャーギャー喚くコモコナを無視して私は随分遠くに来たなと考える。痛!髪引っ張っるな!

まったく、自分で創っておいてなんだがコレが私の従者なのかと疑いたくなる。イラスト通りとはいえ性格はまるで正反対。可愛いどころか口やかましい。

 

「天姫と足して二でちょうどいいコンビだと思うぜ」

 

「人の思考を読むな」

 

「読んでねーよ。丸わかりなんだよ」

 

私はこれでもあまり表情に出ないらしいがコモコナは手に取るように私の考えが分かるみたいだ。これも従者と創造主との繋がりなのだろうか。

 

私は以前の人生を含めると決して小学生という歳ではおさまらない。見た目は小学生、中身は大人というよくある設定とも言える。そして相棒は喋るぬいぐるみ。コモコナ。略してコナーと呼べと偉そうに言うのできゅっ!と締めといた。

そのコナーは日本行の飛行機の中で物珍しそうに辺りを動きまくろうとしたのでぬいぐるみの振りさせている私としてはドキドキハラハラであった。だが子供一人でぬいぐるみを後生大事そうに抱えている姿は大人達からしてみれば一人で心細いのだろうと勘違いされても仕方ない。実際そう見えるだろうと私も考えていたが、一人で偉いと隣に座る老夫婦から褒められたり何処まで行くの?と心配して尋ねられたり、到着した空港内で迷子になりそうだった時これも見知らぬ女性に親切にも友枝まで行き方を教えてもらったり大人の親切に手助けされて無事に友枝町入りを果たしたのである。

 

事前にエリオルからこの友枝町で起こることは大体教えてもらっているが如何せん実感がまだない。サクラは無事にクロウカードを集めることができるのか。エリオルの話では香港からもクロウ・リードの血筋を引く少年がやってきて共にカードの選定を受けると聞いている。私はサクラたちの成長の邪魔にならない範囲での行動を許されている。出来れば『最後の審判』でサクラが傷つくのは見たくないものだ。

 

と物思いに耽っていると私はそこで運命的な出会いをしたのだ。

 

「はう~~!寒いよ~」

 

濃いピンク色のローラブレードを装着してやってくるのは私の見た目と同い年ぐらいの少女。まだ雪も降っていないので走れることは走れるが危ないとも言えよう道を颯爽と走らせてくる。どうやら急いているようだ。白い息を吐きながら腕にビニール袋を携えている。そんな活発的な少女に私は目を奪われた。

 

心臓を鷲掴みされた感覚に陥り、その少女だけに視線が釘付けとなる。

 

「どうした。天姫?お、おい!?」

 

「………」

 

戸惑うコモコナの声も耳に入らない私はふらりと吸い寄せられるようにベンチから立ち上がって少女の行く手を遮った。

途端、「うわ!」と叫び声とぶつかりそうになる寸前で少女はキキィと甲高い音を出してローラブレードを止めた。

 

「びっくりした……!怪我なかった?」

 

突然見知らぬ者に進路を塞がれて怒ってもいいところ、逆に私の身を心配してくれる心優しい子。だが申し訳なくも私にその掛け声すら耳に届いていなかった。

 

ただ、自身でも理解できないほどの感情の高ぶりに支配されて想いのままを伝えた。

 

「………会いたかった」

 

会いたかったのだ。彼女に。言わずにはいられなかったのだ。

手を伸ばせば触れられる距離に私達は存在している。

 

「サクラ」

 

「どうして、わたしの名前……」

 

困惑気味に私を見つめるサクラと対照的に私は想い極まり瞳から涙が零れてしまう。泣きそうになった事はある。けど本当に涙を流したのはその時が初めて。生まれて初めて私は彼女の前で涙した。ぴょこんと伸びている特徴的な二本の癖っ毛と愛らしい声。温かさを宿す深緑の瞳。

 

間違いない様がない。

 

あぁ、サクラだ。以前の私が眠りについてから彼女は涙を瞳に溜めて私の手に自分の手を重ねてこう約束をしたのだ。

 

『天姫さん、必ず、また、会えますよね?私、絶対信じてます。…絶対』

 

絶対と何度も彼女は呟いた。

 

私もまた会いたいと願った。そう伝えることは叶わなかったけどこうして会えたんだ。

 

アタフタとサクラは慌てふためいた。

 

「ほ、ほえぇぇ―――!?ど、どうしよう。あ、あの大丈夫?」

 

「胸がすごく痛い」

 

出会えたことによる一時的興奮からだろうか。私の体は少し異常をきたしたようだ。立っていることもできずにその場にしゃがみ込んでしまう。するとサクラも共にしゃがみ込んでは心配そうな顔で私に寄り添ってくれた。

 

「どこか痛いのかな?怪我したの?そうだ!わたしの家。良かったらすぐそこだから一緒に行こう!」

 

「え、いやそんな」

 

どうせすぐにおさまるはずだと言おうとしたが、其れより先にサクラに手を掴まれた。

 

「いいから!」

 

あれよあれよと言う間にサクラに手を引かれて私は見知らぬ御宅にお邪魔させてもらうことになった。ガラガラとキャリーバッグの音がやけに耳に鮮明に残っていて少女に言われるまま玄関で靴を脱ぎリビングへと案内された。寒いだろうとすぐに暖房をつけてくれてぼうっとする私の世話を買って出てくれる。コモコナは隙をついてソファに座りまったりしている。

何処か怪我をしたのかと心配してくれる少女に私はただ首を横に振っては大丈夫だとジェスチャーで伝えるしかない。

未だ涙は収まらず、慌てて差し出されたタオルを頬にあてがい感情の高まりがおさまるのを待つしかない。

 

自分で制御できない感情なんて初めて私はいつもよりも平常心というものを失っていた。彼女に会えた事が嬉しいこと。なぜその嬉しいという感情に反応して涙が出るのか。自分が記憶していたはずの人物とは年齢も立場も違うはずなのに。だが平和の中で育った少女は確かに、サクラだ。

 

サクラは見ず知らずの私に優しくしてくれ、あまつさえおやつを共に食べようと誘ってくれたのだ。自分のお小遣いで買ってきたというホットケーキミックスをビニール袋から取り出しては私をキッチンへとおいでと手招きする。私はタオルを手に持ちながら誘われたキッチンへと向かう。ダイニングテーブルの上にはホットプレートと材料が並べられておりサクラは自分専用のエプロンを準備してこう言った。

 

「あのね。今日ホットケーキ作ろうと思ってたの。良かったら一緒に食べようよ」

 

「いいのか?」

 

目を瞬かせる私にサクラは笑って頷いた。

 

「うん。一緒に食べてくれたら嬉しいな」

 

「………作るの、見てていいか?」

 

「うん!」

 

サクラは頷いて早速準備に取り掛かった。その手際は私がほうほう~と見惚れるほど手際の良いものだった。……決して自分の料理下手とか気にしていない。断固として言っておくが気にしていない。

 

「……上手くできた!」

 

「……綺麗だ」

 

まさにパッケージと並んでも見劣りしない美味しそうなホットケーキだ。

 

「ありがとう。これでもホットケーキ焼くのは得意なんだ。一緒に食べようね」

 

「……ありがとう」

 

「涙、止まったね。良かった」

 

「そういえば、確かに」

 

ふんわりとした食感のホットケーキにたっぷりとはちみつをかけてぱくりと口に放り込んだ。

 

「おいしい」

 

「良かった!」

 

優しい味が口の中一杯にしみ込んで自然と笑みが浮かんだ。

 

ある程度食べ終わった所でようやく自己紹介をする流れとなった。

 

「……名前を教えてもらってもいいだろうか」

 

「わたし、木之本桜。さくらって呼んでくれると嬉しいな。あ、そういえばどうしてわたしの名前知ってたの?」

 

今更その質問なのか。ちょっとサクラの天然さに心配になってしまった。そこが可愛い所なのだが他の人に対してもこれだと少し心配になりそう。

 

「……えーと。勘だ。私の勘は鋭くて有名なんだ!」

 

適当に嘘をついたが、サクラは目をキラキラと輝かせて尊敬のまなざしで私を見つめてくるじゃないか。

 

「すごい!勘でわたしの名前を当てたんだね!」

 

うっ。良心がグサリと痛む。人を疑うことを知らないのか、それともそれがサクラであるからだろうか。若干、私が知るサクラよりも純粋すぎるような気がする。謙遜しつつ話の流れを変えてみる。

 

「いやそれほどでも。……私は、神崎天姫。天姫と呼んで欲しい」

 

「天姫ちゃん。うん、よろしく。可愛い名前だね」

 

「サクラは、日本の……桜の名前だな」

 

「うん」

 

「いい、名前だ」

 

「ありがとう」

 

私はサクラと無事会うことができた。エリオルへの報告もあるがまず何よりも先に自分が住まう住宅を探すことを優先させねば。名残惜しくも私はサクラの家をお暇させていただくことにした。それにサクラのお兄さんと鉢合わせする前に出なければ、彼と顔を会わせた時にどんな事態が待ち受けているか想像できない。彼はエリオル曰く、魔力が高いそうだ。まだ力に目覚めていないサクラには分からないだろうが、敏感なお兄さんには気づかれる可能性もあるのだ。

玄関で靴を履き終えて見送りに出てくれたサクラは名残惜しそうな顔をしていた。

 

「また会える?」

 

「勿論。友枝小学校に転入する予定なんだ」

 

その辺は上手くエリオルが手を回してくれたから私は制服着て学校に向かえばいいだけ。テストとか受けなくてもいいらしい。ラッキー。

 

「ホント?じゃあ一緒の学校なんだね」

 

「ああ。サクラと同じ学年だからこれからよろしく」

 

「こちらこそ。天姫ちゃん!」

 

バイバイと手を振って木之本家を後にした私はとりあえず我が家となるべく家を探す為、交番を目指すことにした。あーだこーだとコモコナと言い合いをしながら街の中を捜し歩くも疲労だけが蓄積されていく。土地勘がないからだろうか、目指すべき交番さえも見つからず商店街の中を歩いては途方に暮れていた時、見ず知らずの自転車に乗った青年に声を掛けられた。時間も夜になりかけていたし冬の寒空は身に染みる時になんてタイミング!

 

「……君、もしかして迷子か?もう時間も遅いしそんな大荷物でふらつくもんじゃないぞ」

 

「………失礼ながらその、交番を探しているのだが教えていただけないだろうか」

 

仏頂面だが鋭い瞳が印象的な中々のイケメン。身長も高いし体形もすらっとしていてかなりモテそうなタイプと判断する。私の言葉に怪訝そうな顔をした。

 

「交番?……何、家、この辺なのか」

 

「ええ。引っ越してきたばかりで地理に疎くて……」

 

理由を説明すれば青年は面倒くさそうに髪を掻きながらため息をついて自転車を端っこに移動させてから私の方へやってきた。

 

「住所は?」

 

「あ、これなのだが」

 

エリオルから教えてもらった住所が書かれた紙を青年へ手渡すと彼はその住所に目を落とし「………これ、家の隣だし」と驚いたように言った。

 

「はぁ?」

 

「教えてやるよ。オレも家に帰る所だったからな」

 

ほらと紙を返され私はいきなりの展開に呆けるしかない。だがすぐにこれは何かしらの罠なのではないかと少しだけ青年を疑ってみた。

 

じとーっとした視線を送ると青年は苦笑して「別に変なことしねぇよ」と私の頭を乱暴に撫でてきた。

 

「うわ」

 

「お前みたいな妹いるからさ、オレも。親御さんも心配してんだろう?」

 

「……まぁ、たぶん」

 

髪がぐちゃぐちゃにされる前に青年の手を押し上げ密かに抵抗しつつ、気づかれぬようこっそりと観察してみた。人を疑う事は日常茶飯事の生活を送っていた以前の私は人の観察を怠ったことはない。目の動きやちょっとした仕草にその人物の考えや狙いが潜んでいたりすることがある。

簡単に説明すると、疚しいことを隠している人は表情こそ変わらぬものだが瞳の動きが違うという。目は口程に物を言うとはこのことを言うのだ。

 

だが一通り見た限りでは嘘をついているようにも見えない。何よりコートの中に隠れているコモコナも賛成しているようだ。

 

『多分大丈夫だと思うぜ』

 

『んー。コモコナがそう言うなら。……なら案内していただこうか』

 

『おう。何より腹減った!天姫がホットケーキ食べてるの死ぬほど我慢してたんだぜ』

 

『そっか。それはすまなかった』

 

相談を無事に終えた私はコホンと咳払いをして「お礼になるものも用意できないがそれでもよろしいのか」と改めて青年に尋ねた。

 

「いい別に。これくらいで礼なんていらない。それにしてもなんか古風な喋り方だな」

 

彼は可笑しそうに笑った。揶揄っても意味ではないはず。きっと本心から思ったことをそのまま口にしただけなのだろう。不愉快になるものではない。大体私は自分の喋り方を気にした事はない。自分らしさというものが抜けている分、人からどう受け止められようと気にする性格でもないらしい。その点はストレスとは無縁そうなので良かったと思っている。

 

「これは元々こういう風になっているというかなんというか」

 

「なんだそれ」

 

他愛もない会話をしながら青年に連れられてやってきたのは………。

 

「……住所だとここだぞ」

 

見知った住宅街に先ほどまでお邪魔していた見慣れたお家。そこは。

 

「……ここは、サクラの家では?」

 

「ん?なんだ。さくらの友達だったのか」

 

ついぞ友達になったばかりの少女の名が青年の口からさらりと出た。

 

「え。………もしや、つかぬ事をお聞きするがサクラのお兄さん?」

 

「ああ、そうだけど」

 

さらっと肯定してくれるが、こちらとしては予想外の展開につい逃走を計りそうになった。たとえ魔力を抑える術を学んでいるとはいえ、相手はそんじょそこらの青年ではないことはよくよく知っている。

 

サクラの魔法少女っぷりをずっと知らぬ存ぜぬでも実は影で見守ってる、で通し続ける猛者なのだ。

一瞬の隙でも見せたらあっという間に私の正体など彼に知られてしまうだろう。それでは困る!

あくまで私はサクラの邪魔をしたくない。影でサクラの活躍を楽しんで愛でたい!あ、本音がぽろりした。

 

だがどうやら私はサクラの兄とは知らずに案内を頼んだらしい。というか、私が住む家は木之本家の隣だったのか!

 

それなりに高そうな住宅が並ぶ中、私が住む予定の家も一人と一匹が住むにしては広すぎる家に思えた。庭、車庫付き一戸建て。毎朝ラジオ体操をしても家の周りを走り回っても十分な広さだ。イギリスの屋敷も大きいとは思っていたが贅沢すぎる気がする。

 

「ここが、私の家……」

 

「しばらく空き家だったがお前の家とはな」

 

衝撃でしばし放心状態に陥ってしまった私は再び兄の勧めで木之本家にお邪魔することになり、パタパタと玄関からスリッパ音を響かせて出迎えたサクラをまた驚かせてしまった。

 

「あ、ども。隣に越してきた神崎天姫です」

 

「ほ、ほぇ~~!?」

 

サクラの愛らしい悲鳴が夜の住宅街に響いた。

 

うん。サクラ愛でるファンクラブとか作ろうかな。

 

 

無事に自宅にたどり着いた私は荷物を整理することもそこそこにエリオルへと連絡する為魔術を用いた連絡をすることにした。だが魔法陣を創りだすために積み上げられた段ボールを端っこへと追いやるしかない。小柄な体で必死に周りの段ボールを端に押しまくった。

 

「んんっしょっと!」

 

なぜ家に着いてからも私は室内で汗をかかなくてはいけないのか。単純作業ながら段ボールの数がやたらと多い。生活に必要な最低限の物だけ送ればいいものを買い物に行かなくてもいいくらいに事欠かない物が勢ぞろいしている。娯楽ゲーム、所謂テレビゲームというやつだ。あははは、エリオル。甘すぎ。

 

子供一人と一匹に対しての荷物の量ではない。絶対に。

エリオルが私に甘いという認識はあるが、その影響がこんなところにも出てくるとは。コモコナは早速夕飯を作りにキッチンへ向かった。意外にコモコナは器用な腕前で家事炊事洗濯は任せろ!と自分のふわふわな胸を自信満々に叩いて宣言したのだ。その言葉通り向こうでの生活でもコモコナの腕前は目を見張るものだった。私が無能と感じるくらいにな。

 

さて、愚痴はこの辺にして頭の中で展開されていく複雑な術式と力ある言葉を紡ぐ。

 

『映像〈ビジョン〉開始』

 

陣の中に映し出されていくのはしっかり寛いでいる姿のエリオルだった。

 

『やぁ、天姫』

 

「やぁ、じゃない」

 

リビングに置いた私専用のソファにドカッと腰かけて今日の出来事をありのまま伝えた。するとエリオルは楽しそうにひじ掛けに頬杖ついて両目を細めて私の話に耳を傾けていた。

 

「どうしてサクラの家の隣だと言わなかったんだ」

 

『サプライズには楽しめただろう?それにそちらのほうが何かと動きやすいはずだ』

 

私に関して予知はできないと言っていたくせにこの踊らされている感はなんだ?

不承不承に私は頷いておく。

 

「………お陰でサクラの兄と出会う羽目になってしまったが今の所バレている様子は見受けられない。これも私の演技力の賜物だな」

 

少しぐらい私の冗談に付き合ってもいいというのにエリオルは爽やかに否定する。それだけに飽き足らず意味不明なことを口にしてきた。

 

『それはないな。しかし、彼と会うとは。日本に到着し友枝町入りをして天姫の目的であったさくらさんに早々会うことができたにも関わらずその兄とも数奇的な出会いをしたと。君が数々のフラグを建築してきたことは事前に知っていたがこうもあっさりとしてしまうとは。貴女の才能が妬ましいな』

 

「なんの話だ!?」

 

ツッコまずにはいられないとはこのことである。

 

どうしてフラグ建築などという技能が出てくる!大体私にそんな技能など将来社会人として就職面接する時にそんな技能恥ずかしくて履歴書に書けないぞ。

あ、路線がずれた。

 

しかし私の創造主であるエリオルなら以前の記憶に関する詳細を集めることはたやすいということなのか。それで妬ましいなどと嫌味ったらしく言うのか。そうなのかエリオル。

 

『浮気は許さないと言うことだ』

 

「浮気?恋仲というものになっていないのに浮気になるのか?」

 

『なるさ。貴女は自覚がなくともいずれはっきりとした形で証明するつもりだ。天姫もそのつもりでいてくれ』

 

「うーむ、なんかはっきりさせたくないような?」

 

どうもエリオルが与えようとしている好きという感情は厄介なものだと思う。別に知り合ったばかりの相手と話したくらいで浮気と言われてはこれから世間話もろくにできやしないではないか。大体浮気の定義が分からない。どこからどこまでがセーフなのだ?視線だけ交わしたとしても浮気になってしまうのか?それともこれはエリオルの中で決められた線引きなのか。それなら納得もできる。

 

『楽しみにしているといい』

 

「全力で遠慮しておこう」

 

嫌な予感しかしない。

こうして私はエリオルとの対話を終えて、コモコナから夕食の声がかけられたがその日は糸が切れたように自分の部屋に行きふかふかベッドへとダイブして眠ったのだった。

 

朝、目が覚めたので起きてみたら私の部屋が想像以上に少女チックだったことを初めて知った。

 

なぜだ。イギリスの自分の部屋はあれだけ落ち着いていたというのに。朝、国際電話ですぐにエリオルに問い訊ねればなんと奈久留が壁紙など全ての家具を選んだとのこと。

 

それか!と納得したので今更変更できるわけでもない。私は早々に諦めて朝のシャワーを浴びる為下に降りたのであった。

 

【今日はとりあえず片づけかな】

 

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