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自転車二人乗りの表現がありますがあくまで小説内であって現実では法律で違反とされています。決して推奨しているわけではありません。真似しないように。
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昨日の華々しいサクラの活躍から一転して今日は人生で最悪の日となった。
なぜか?それはある朝の出来事から始まるのだ―――。
しっかりとエリオルに報告することは忘れずに昨日は就寝した。エリオルからはくれぐれもバレないようにと釘を指された事は言うまでもない。
今日はサクラが日直ということで朝早いということは知っていた。いつも通りに起きて準備をし朝食を食べコモコナに見送られて玄関を出て木之本家の前を通りかかった時偶然にも玄関を出たばかりの桃矢氏と接触した。
「おはよ」
「おはようございます」
ペコリと頭を下げてそのまま通過しようとしたところ、「待てよ」とのお声がけが背後からした。待てというなら止まるしかない。私は振り返って自転車を引いて現れた桃矢氏に用事を尋ねた。
「何か用だろうか、桃矢氏」
「お前その桃矢氏とかやめろ。変だろ」
「敬意をもって氏を付けるのはおかしなものだろうか」
小首傾げながらそう返すと桃矢氏は呆れたような顔をする。
「おかしすぎだから」
「だがこれがもう慣れてしまっているからそう簡単に変えることは難しいと思うが」
「……ハァ……、いいや。乗れよ後ろ。送ってく」
そう言って親指でクイッと自転車の後ろを示される。桃矢氏はいつもマウンテンバイクに乗っているが私を乗せてくれる時はママチャリを選んでくる。その時は後ろに乗ってもいいという合図みたいなものなのだが、いまだに私は慣れない。
「いいのだろうか」
「悩んでる間に遅刻するぞ」
「それは困る」
ありがたく乗せてもらうことにした。横乗り状態でしっかりと桃矢氏の制服を掴んで発進し心地よい春の風と並木道の桜を眺めながら雪兎氏と合流。
「おはよう。天姫ちゃん」
「おはようございます。雪兎氏」
にっこりと微笑まれ自然と私も笑みを浮かべる。なぜか桃矢氏は私たちのやり取りをじとーっとした視線で見ていた。
「お前オレと雪とで態度違うだろ。さっきは仏頂面だった癖に」
大の男が拗ねるというイベントが朝から発生したが、私には関係ないと思い適当にあしらった。
「遅刻するのは勘弁願いたいのでひとっ走りよろしく」
「生意気な」
とか言いつつこぎ出す桃矢氏に続いて雪兎氏も自転車をこぎ出した。クスクスと雪兎氏は私たちのやり取りを微笑ましいもののように言った。
「二人は本当に仲がいいね」
「それは違うと思いたい」
否定すれば桃矢氏は「生意気なやつ」と呟いた。
無事学校にたどり着くことができた。しかも結構早く着いてしまった。
自転車から降りて礼を言うと桃矢氏は私の頭をぐしゃぐしゃにして満足して去って行った。雪兎氏からは私とサクラと知世にと飴玉三個をくれた。今日も餌付けされている私。癖になりそうである。
「おはよう」
クラスに入ると早速サクラと知世がいたので挨拶しながら近づくと、サクラはビクン!と肩を震わせて、
「おおおおはよう!」
と声をどもらせながら挨拶をしてくれたが顔がひきつっていて変だとすぐに丸わかりである。知世は反対にいつも通りのにっこりと微笑んで挨拶をした。
「おはようございまいます。ちょうどよかったですわ。天姫ちゃんにも『ぜひ』見ていただきたいのですが」
そう言ってサクラの机に置いていたビデオカメラを操作して何やら映像を再生し始める。私は帽子を取りながらその映像を何気なしに見ると、あるものが映しだされた途端に全身の血の気が引いた。
「なっ!」
「………」
サクラはすでにその映像を見てしまったのか撃沈している。
「これが拡大したものです」
そう言って知世はその人物を拡大し始めた。三日月を背に空の散歩を楽しんでいるサクラとケルベロスの映像がクッキリハッキリと映し出されていたのだ。
だがまだ終わりではないらしい。
「それとこんなのもありました」
そう言って知世はまた映像を切り替えて別のものを再生した。
「うげ!」
つい蛙が潰れたような声が自分の口から反射的に出てしまう。
「こちらどうみても天姫ちゃんに見えてしまうのはわたしだけでしょうか?」
「え、天姫ちゃん?」
小首傾げながら言う知世と撃沈していたサクラが反応して映像を見ている横で私はダラダラと冷や汗をかいていた。
確かにその映像に映し出されているのは一般家庭の屋根の上に立っている自分であり、まぎれもなく#name#天姫。言い逃れもできないほど綺麗に撮れている。くそ、失念していた!やはりコモコナのようにサングラスをしておけばよかった!
って違うだろ私!と自分にセルフツッコミしている辺り私は相当混乱している。
やばい。やばいぞ、この流れは。サクラだけならまだしも私までバッチリ知世のビデオカメラに撮れてるとかどんだけなのだ!もはや言い逃れも許されない状況。
サクラは色々な意味で驚いて声を上げてしまった。
「ほえぇえぇえええ―――!?」
「どないしたんやさくらー!」
と、突然の大阪弁に黄色いぬいぐるみがサクラの鞄から飛び出た。
「「あ」」
「あら」
私とサクラは同時に声をはもらせて知世は目を丸くして口元を両手で覆った。
「クロウカードか?ワイが相手や!かかってこーい!……てありゃ?」
呆けるケルベロスと映像に映っているケルベロスを比較した知世は目を輝かせて、
「まぁ、そっくり!」
と興奮したように頬を染めた。私はその隙をついてこっそりと逃げようとしたが、すかさずガシッ!と知世に腕を掴まれた。
「ご説明、していただけないのですか?副会長」
「……」
「していただけますよね?副会長」
「イエッサー」
所詮私も強者には勝てない弱者な女なのだ。微笑みながらの威圧感に屈し敗北の涙を流しながら事の詳細を説明させられるのだった。
※
お昼時、外で三人仲良く昼食をとりながらピクニック気分の中、私と知世との間でブリザードが発生していた。
「なるほど。天姫ちゃんの趣味は人様の屋根に上って夜空を眺めることなのですね」
「そうだ」
「ほほほ。中々楽しそうな趣味ですわ」
「そうだ」
徹底的に誤魔化す。これしか浮かばなかった私は全力でそうだと言い切った。だが知世は小首傾げながら不思議そうな顔をした。
「でも天姫ちゃんは確か、そう―――【高所恐怖症】だったのでは?」
「いや【今】の私はそのような症状に陥った事はないが……ん?知世、どうして私が【高所恐怖症】だと思うのだ?というかその情報は何処から【入手】したんだ」
そう尋ね返すと知世はにっこりと笑みを深くし口元にお嬢様らしく手を当てた。
「ほほほほ。『なんとなく』ですわ」
「そうか。『なんとなく』じゃ仕方ないな」
「はい。それで天姫ちゃんの趣味は中々にアクティブですわね」
「まぁな。私以外に中々いないと思う」
普通な会話のように思えるが知世の冷ややかな視線が刺さる刺さる。びしびし刺さるがそれでも私は全力で乗り切るしかないのだ。だがそうは問屋が卸してくれないらしい。
「ってんなわけあるかーい!」
ビシッ!と容赦ないツッコミをするケルベロス改めケロちゃん。(命名知世である。)
「ちょっとケロちゃん!天姫ちゃんに失礼だよ」
「さくらもおかしい思うとるはずやろ!?だってこの嬢ちゃん……名前、なんちゅーたっけ?」
「神崎天姫だ」
「そう、天姫や!絶対怪しいて!」
「そんなことないよ。だって天姫ちゃんだし」
ハッキリ言い切るサクラだが私もツッコミ入れさせてもらった。
「それは私に失礼ではないだろうか」
「それよりも、さくらちゃんの方が優先ですわ!」
だがそれは知世によって軽く流されてしまった。その後ケロちゃんの語り節によってやや誇張されたカードキャプターさくらの活躍に人一倍感動した知世はケロちゃんを褒めると同時に
「クロウカードの災いからご町内を守るカードキャプター!カッコいいですわ~!」
と感動に身を震えさせていた。サクラは苦笑しながら「そんなことできないよ」と否定するが知世はそうは思っていないらしい。というかこれはサクラを愛でるファンクラブの会長として見逃すはずがない。
「よろしければ魔法を使うところを見せていただけません?」
「え、でも」
両手で手を握られじりじりと寄られてタジタジになるサクラ。視線で助けを求められるが今の私にそんな力はない。知世の前では下手に動けないのだ。
「えーどえーど!やったれー」
乗り気なケロちゃんによってサクラは人気のない校舎裏にて魔法の杖を披露することになった。封印の鍵を取り出してサクラは自信なさげであるが呪文を唱え始める。
「闇の力を秘めし『鍵』よ。真の姿を我の前に示せ。契約のもとさくらが命じる『封印解除(レリーズ)』!」」
するとサクラの足元には金色の魔法陣とそれに伴う風が生じた。見惚れている知世の前で無事に封印の鍵を解くことができたサクラはほっと息をついた。
「この杖で魔法が使えるんですね」
「カードがいるけどね」
苦笑するサクラに対して、「これやな」と用意周到なケロちゃんはウィンディのカードを持ち込んでいたらしくこれ見よがしに見せつけサクラはぎょっとしていた。
しかしこうやって見ているとやはり物足りなさが感じる。知世も私と同じ考えだったらしくウキウキした様子でサクラに決めポーズなど決まっているのかと尋ねてはサクラを「ほえ?」と呆けさせた。知世はテンション上昇中でくるっとサクラから体の向きを変えて
「決めポーズと呪文は魔法少女のお約束ですわ~!」
と妄想の世界へと旅立った。だが一人で行かせはしない。私もすかさず名乗りをあげた。
「さすが知世。私もそう考えていたところだ」
「ええ。天姫ちゃんもそう考えていると信じてましたわ」
「……これは私達が全力でサポートするしかないな」
「ええ!」
会長と副会長が全面的にサクラをバックアップする。これほど力強いものはない。
ガシッと固い握手を交わした私達はカードキャプターさくら可愛くプロデュース作戦を決行したのである。
「ほえぇぇ」
「なんや別次元やなー、あの二人」
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次の日、学校でクラスの机が山積みにされたりする不可思議な事件が起こり後片付けに追われる中放課後サクラの家に集まりクロウカードの仕業ではないかとの結論に至った。私は気づいていたが当然言うわけはない。
そして夜、校門前に集合した私達はもろもろの準備(サクラのお着換えとか)を経てグラウンドへと向かった。そこにはすでにクロウカードの気配が満ちており、夜の学校が大の苦手なサクラは私の腕にしがみ付いてはプルプルと震えていた。
「はぅぅ、怖いよぉ」
「知世、怖がるサクラはバッチリ映しているか!?」
「万事抜かりはありませんわ」
ナイスだ、知世。
「二人とも今はそれどころやない、ってぇ!?来たでぇ――!」
ケロちゃんの叫びにハッと意識を真面目モードに切り替えて迎え撃つは輪っかを持った銅像だった。ものすごいスピードで襲い掛かってくる。
「「きゃあぁ!!」」
私達は横に走って逃げるが銅像は諦めずに追ってきては地面にめり込ませていく。アレで潰す気か。あんなのまともにくらったらひとたまりもない。
パニックに陥ったサクラは涙目で知世としがみ付いて「浮いてる!浮いてる!」と連呼する。割と冷静な知世が銅像を抱え上げる影を指摘した。
「さくらちゃん、あれ!」
「え」
「誰もいないのに影が!」
「さくら!シャドウのカードや!」
ケロちゃんの読みはズバリ当たった。校舎中から生徒たちから盗んだ影たちが集結し、集合体となって私達に襲い掛かろうとする。サクラは先ほどまで混乱した様子が嘘のように凛々しい表情で、
「ケロちゃん、知世ちゃんと天姫ちゃんと一緒にいて!」
と叫ぶとシャドウを対峙すべく封印の鍵を取り出した。
「おう!まかしとき」
ケロちゃんに守られるというのは不本意であるがここは疑いを晴らすためにも大人しくしておくことにした。いつでも駆けだせるチャンスは見逃さずに。
「闇の力を秘めし『鍵』よ。真の姿を我の前に示せ。契約のもとさくらが命じる『封印解除(レリーズ)』!」」
サクラはウィンディのカードを使い奮闘するもいまいち上手くいかずにフライのカードを使って空へと逃げたが、結局影を失くさないことに意味はない。私は知世にそのままビデオを回し続けて欲しいとお願いして一人校舎内へと侵入する。ライトを使えばシャドウは消える。だがまだ今のサクラにはない。そこで代用として校舎内にあるブレーカーで全部の灯りをつければいいのだ。
迅速な行動により無事シャドウ以外の影を消すことに成功したサクラはウィンディのカードを使ってシャドウを捕縛し、昼間練習した成果を存分に見せつけた。
「汝のあるべき姿に戻れ。クロウカード!」
力ある言葉にシャドウは抗えず元のカードへと無事収まったようで、知世と合流したサクラは私がいる方に気づくと嬉しそうに手を振った。私もそれに手を振り返して応える。
「これで三枚目も無事に手元へ戻した、か」
直接的な介入は難しいがこういう補助も悪くないと私はサクラたちの元へ行く為、ブレーカーを元に戻して部屋を後にした。懐疑的な視線を向けていたケルべロスには気づかないふりをして。
【まだ話すわけにはいかないのだ。】