深紅の武人がダンジョンに居るのは間違っているだろうか?   作:真紅の旗

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妖精の復讐者

 振るわれる一撃、全て剛撃。

 振るわれる一撃、全て絶技。

 

 2年前の大抗争に出てこなかったのが不思議な程の手練れ。

 大気が切り裂かれ、巻き込まれた全てが破壊される。

 

 『力』だけならリューよりも上!

 『敏捷』も自身に迫る。少なく見積もってもLv.4。付け入る隙があるとするなら………

 

「…………?」

 

 最近ランクアップしたのか、己の動きに精神が追いついていない。しかし一振りごとにその差も埋まっていく。戦いの中で成長する天賦の才。

 

 それが余計にリューを苛む。

 

「それだけの力が、ありながら…………!」

「……………?」

「何故道を違える!!」

 

 解っている。これは八つ当たりだ。今だけは復讐ですらなかった。彼女を思わせる深紅の髪をした闇派閥(イヴィルス)の少女の存在が受け入れられない。

 

「レンと、お前……最初から、違う道歩いてる」

「────!!」

 

 何を当たり前のことを首を傾げる少女に、リューは歯が砕けんばかりに噛み締める。

 その頭蓋を砕こうと駆け出し、しかし怒りに任せ『駆け引き』の損なわれた一撃など同格の少女に通じるはずもない。

 

 小柄な体躯に似合わない純鉄製の方天画戟が振り上げられる。

 ハルバード同様、戦斧の如き刃が石畳を削り砕きながら振り上げられ、礫がリューを襲い、動きを止める。

 

「ぎっ……!」

 

 動きが鈍ったリューに叩きつけられる方天画戟。

 服の中に仕込んだ鎖帷子が切り裂かれ、脇腹を抉られながら吹き飛んだ。

 

「ヒャアァ! すげぇぜ! やっちまえ!」

 

 自身の眷族が【落ちた正義】を圧倒する姿にゲラゲラと楽しそうに笑う邪神。

 

「……………!」

 

 少女は頰から流れた血に気付く。あの一瞬で、反撃されていたらしい。

 

「【今は遠き森の空。無窮の夜天に鏤む無限の星々】」

「! 魔法か、発動させるな!」

「……ん」

 

 邪神の言葉に即座に駆け出す少女。上級冒険者すら容易く肉塊に変え、数多のモンスターや盗賊であり神の眷族を一撃の下葬ってきた一撃が、逸らされる。

 

「………おお」

 

 攻撃はしない。詠唱以外、残った余力は回避と防御に専念する。少しでも防御に隙を見せれば、そこから食い破られる確信があった。

 

「【愚かな我が声に応じ、今一度星火(せいか)の加護を。汝を見捨てし者に光の慈悲を】」

 

 詠唱と共に装填されていく魔力。発展アビリティに『魔導』を持たぬリューが、長文詠唱の使い手でありながら前衛で叩き続けて得た異質な平行詠唱。

 

「【来れ、さすらう風、流浪の旅人(ともがら)。空を渡り荒野を駆け、何物よりも()く走れ】!!」

 

 ピリピリと少女の肌を震わせる魔力の圧。冒険者ならぬ身でも神はそれを感じ取っていた。

 Lv.4の魔法種族(マジックユーザー)にしても多い。恐らく、スキルによる強化。

 

「【星屑の光を宿し敵を討て】」

「ちっ! 仕方ねえ、レン! 唱えろ! 【劫炎】だ!」

「【劫炎】」

 

 短く、それだけで完成する長短分詠唱。赤黒い炎が方天画戟を包み込む。

 

「【ルミノス・ウィンド】!!」

「【レンゴク】」

 

 放たれる緑風を纏った光弾。相対するは、業火を纏いし剛撃。

 遠く離れた街の反対側まで夜闇の静寂を破る轟音が響き渡った。

 

 

 

 

「………びっくり」

 

 吹き飛ばされ泥と血だらけになりながらも立ち上がる少女。複数の球を一つの魔法で放てる利便性から、一度の魔法に見せた二重爆撃。

 

 一度目は薙ぎ払われたが、続く第二群はまともに当たった筈なのに。見た目からしてアマゾネスのようだが、その防御力や怪力はドワーフを思わせる。

 

「続き、しよ?」

「!!」

 

 構えを取る少女にリューは忌々しそうに立ち上がり……

 

「そこまでだ!」

 

 女の声が響く。先程の打ち合い………ではないだろう。元々騒ぎを聞きつけた者達がこちらを放置したようだ。

 リューは聞き覚えのある声に顔をゆがめ、駆け出す。

 

「と、止まれ!?」

「フッ!」

「ぐああ!!」

 

 包囲の中で穴を見つけこじ開ける。

 大きな怪我をさせない程度に吹き飛ばす、そのまま夜闇の中に消えていった。

 

「…………リオン」

 

 集団のリーダーらしき女性はその背を見て悲痛な表情を浮かべ、しかしすぐに少女に向き直る。

 

「【キュウキ・ファミリア】。お前達の悪行も此処までだ、大人しく捕縛させろ! 抵抗するならば、容赦はしない!」

「…………悪行?」

「ははは!  しっかたねぇなあ!」

「……神様?」

 

 神キュウキは笑いながら手を挙げ投降する。その光景に首を傾げる少女。

 

「だがよぉ、こいつは見逃してもらうぜ。家に入ったばっかでなぁんも悪い事してねえからよお」

「神様、悪い神様?」

「極悪ってほどじゃねえとは思うがなあ」

 

 少女の言葉に邪神はゲラゲラと楽しそうに笑った。




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