宇宙戦艦ヤマトⅢ ReBoot!〜銀河中心部の混迷〜 作:箕理 田米李
【ガルマン帝国】
第18装甲師団
旗艦:主力中型戦闘艦≪ダーゴルンⅢ≫
艦橋
オペレーターA「≪ヤマト≫に複数命中!しかし効果はイマひとつのようです...‼︎」
オペレーターB「ダゴン司令!敵のエネルギーシールドで致命打を与えられません!そればかりか、敵の電子妨害により衛星カメラの照準装置も上手く作動せず正確な射撃に支障が...!」
オペレーターA「ッ!さらにダミーバルーンを展開!撹乱されました‼︎」
ダゴン「ぐぅぬぅぅっッ!≪ヤマト≫め...次から次へと小癪(こしゃく)なぁ...‼︎」
自分達の基地のあるバーナード星を背に≪ヤマト≫率いる第1特派隊を迎え撃つべく艦隊を展開させるダゴン。オペレーターから次々と芳(かんば)しくない報告を受け苦虫を噛む様な表情を浮かべている。拠点防衛用に配備した新兵器「改主力中型級反射衛星砲搭載艦」が思ったほどの成果を挙げていないからだ。まず波動エネルギーバリアの鉄壁の守り、いくら強力なビームを出せ尚且つ新型の反射衛星砲でも基地固定型と艦搭載型ではその出力に大きな差が出る。次は電子妨害、【暗黒星団帝国】の十八番(おはこ)で≪ヤマト≫も度々やられていたのを応用し防衛軍方式に加え(※1)ガミラス式さらに(※2)彗星帝国式も織り交ぜた≪ヤマト≫技師長 真田が開発した新型電子妨害装置はバーナード星周辺に情報・監視・偵察そして反射衛星砲艦の照準システムも兼ねる監視衛星を狂わせているせいで精密射撃に支障をきたしている。さらにさらに豪華特典として≪ヤマト≫の爆雷投射機からダミーバルーンがばら撒かれたことによりさらに見え狙いにくくもなってると来ているのでダゴンが腹立つのも無理はない。
※1:【イスカンダル】を目の前にして受けた電波妨害のデータを参考
※2:【テレザート】からのテレサの通信を妨害していた電波を解析し参考
ダゴン「こうなれば数を撃ちまくって弾幕を張れぇい!そうすれば妨害は意味を為さず掠っても当て続ければエネルギーバリアも消える‼︎」
一見理に適(かな)っている様に見える手だが、要は「下手な鉄砲数撃ちゃ当たる」である。確かにそれも一理(いちり)はあるが相手は≪ヤマト≫である。そんな場当たり的且つもっと悪く言えばちょこざいな手でやれる相手ではないことを思い知らされるのに時間は掛からなかった。「ダ、ダゴン司令!≪ヤマト≫が‼︎」のオペレーターの驚愕(きょうがく)なリアクションの報告にダゴンも「なにご...ッ!」と最後まで答える間もなくそれは訪れる。なんと≪ヤマト≫は単艦で亜光速を出してこちらに急速接近して来たのだ。慌てて距離を取る間もなく18装甲師団の懐(ふところ)にまんまと入られる。
≪ヤマト≫
第2艦橋(戦闘指揮艦橋)
太田「敵艦隊のど真ん中に入りました!ひゃあ〜すごい大胆さだ‼︎」
古代「島、敵と離れないよう気を付けてくれ!」
島「付かず離れずだろ?任せておけ。」
古代「真田さん!この間に...‼︎」
真田「分かっている...なんとしてでも反射衛星へ送る電波の傍受と反射衛星砲搭載艦の位置を割り出してみせる!」
古代「雪、相原!味方艦隊と能登艦長率いる航空隊の位置を逐次(ちくじ)把握と状況の報告を‼︎」
雪、相原「「了解!」」
古代「南部!土門!攻撃はしても良いが沈めるなよ!沈めない様にやるんだ‼︎」
南部「任せてください!土門!ここからは手動(マニュアル)操作だ!いいか⁉︎致命打を避けるんだぞ‼︎」
土門「は、はい!難しいですが、やります‼︎」
≪ダーゴルンⅢ≫
艦橋
ダゴン「何をしている!さっさと≪ヤマト≫を仕留めんか‼︎」
オペレーターA「ダメです!これだけ近付かれては味方が邪魔で同士討ちになってしまいます‼︎」
ダゴン「ならば反射衛星砲艦だ!遠くから狙い撃てば...‼︎」
オペレーターB「そちらもダメです!妨害されてるうえに密集されては狙いが付かないと...!」
そう≪ヤマト≫の狙いはまさにこれだった。単に無謀に単艦突入を図ったのではない。敵のど真ん中に入るのは一見自殺行為に見えてもそうではない。敵は≪ヤマト≫を狙い撃とうにも友軍同士が近過ぎて味方を誤射する危険性があり、また反射衛星砲搭載艦でのピンポイント射撃を行おうにも味方が密集してるだけでなく≪ヤマト≫が行う各種妨害が働いているせいで精密さを欠かされているのだ。≪ヤマト≫は≪ダーゴルンⅢ≫まで迫り反撃のビームをギリギリで掠み避けると左舷のロケットアンカーを放って≪ダーゴルンⅢ≫の艦体に突き刺し引っ張りながら18装甲師団の布陣の中を駆け回る。まるで犬の散歩で愛犬に振り回される飼い主の如くだ。
第18装甲師団本隊とは離れた宙域
改主力中型級反射衛星砲搭載艦≪シュピゲロンⅡ≫
艦橋
艦長「えぇい!なんとか狙えんのか‼︎」
オペレーターA「ダメです!友軍が邪魔で狙いが付けられません!」
同B「あぁ!て、敵の艦隊が‼︎」
艦長「なにぃっ⁉︎」
同宙域
第1特別派遣調査隊
副旗艦:戦闘空母≪たいほう≫
第2艦橋(戦闘指揮管制艦橋)
戦闘班長「いました!敵艦捕捉‼︎」
副長「よぉし!真田副長が解析した通りだ!全艦!ウイング隊形!逃すなよ!撃てぇーっ‼︎」
ダゴンら【ガルマン】第18装甲師団本隊に陽動・攪拌を続けながら反射衛星砲搭載艦の位置を解析していた≪ヤマト≫からの連絡を受け戦闘空母≪たいほう≫他第1特派隊の艦艇群がその撃破に向かう。≪ヤマト≫副長 真田からの報告ではどうやら3隻はいるらしいが発見したのはその内のまだ1隻というとこだろう。見つかると思ってなかったのか護衛は1隻もいない、「今がチャンス!逃がさへんでぇ‼︎」と艦長の能登から戦闘空母≪たいほう≫の指揮を引き継いだ副長が単艦別行動中の旗艦≪ヤマト≫以外の全艦艇に対しウイング隊形を命じ反射衛星砲艦を挟んで取り囲む様にして砲撃を浴びせる。突然のことに回避運動が一足遅れた反射衛星砲艦は瞬く間に衝撃砲(ショックカノン)の雨霰の砲撃で一瞬の内に蜂の巣となり爆散した。
反射衛星砲搭載艦≪シュピゲロンⅢ≫
艦橋
オペレーターA「≪シュピゲロンⅡ≫がや、やられました‼︎」
艦長「狼狽えるな!」
オペレーターB「あぁ!こちらに航空機多数が飛来!て、敵です‼︎」
艦長「な、こちらも位置がバレただと...⁉︎」
友軍で同型の僚艦がやられたと聞き動揺する≪シュピゲロンⅢ≫の艦橋。だがこちらにも"死神"が現れる。戦闘空母≪たいほう≫艦長の能登が乗るコスモタイガーⅡとそれに率いられた同航空編隊のことだ。
能登「敵艦コンタクト!こちらも真田副長の予想がピッタリね!全機!直上急降下でミサイル飽和攻撃!力を見せる時よ!アターック‼︎」
隠れてる反射衛星砲艦の2隻目≪シュピゲロンⅢ≫の直上の位置に着けた能登の率いる航空隊が一気に反転、急降下のポジションに入る。ターゲットをコクピットの照準器に合わせ「ロックオンした」と表示が示されると引き金を弾く。機体下部の対空対艦対地兼用の多用途ミサイルが数機編隊分のが一斉に発射される。ゆっくり面舵を切って回避しようとする反射衛星砲艦だがあまりに遅過ぎた。高速で降り注ぐ槍の数々が艦体に次々と突き刺さり連鎖爆発し爆沈する。
≪ヤマト≫
第2艦橋(戦闘指揮艦橋)
森雪「≪たいほう≫率いる艦隊【Aグループ】及び能登艦長の航空編隊が敵予想潜伏ポイントにて反射衛星砲艦をそれぞれ発見、撃沈しました!」
ピピーッ!×2(電子音)
相原「【Bグループ】基地攻撃編隊より入電、基地への奇襲成功!そちらへ帰還すべく向かっていますが、敵の生き残りの航空隊追撃されているそうです!」
古代「そうか!これで反射衛星砲艦はあと1隻...目的を果たした後の航空隊を回収する為にも全艦やらないとダメだ...。」
真田「古代!ダゴンの乗艦を切り離して敵艦隊から離れるんだ。」
古代「真田さん、それでは敵の反射衛星砲艦の格好の的になってしまいますよ!」
真田「大丈夫だ。考えがある!」
古代の懸念をよそに真田の決意の表情にハッとする。こういう時に「大丈夫」と言う真田の勘というか確信は当たるのは古代をはじめ皆よく知っている。
古代「南部!ロケットアンカーを解除!土門!攻撃止め!ただし対空警戒と後方からの追撃に備えておけ‼︎」
南部/土門「「了解!」」
≪ヤマト≫はダゴンの乗艦≪ダーゴルンⅢ≫に突き刺して引っ張っていたロケットアンカーを切り離し去り際にエンジンノズルを破壊して推力と航行能力を奪う。離され撃たれた衝撃で横にロールするも直様(すぐさま)姿勢制御スラスターを噴かして体勢を立て直してダゴンは「≪シュピゲロンⅠ≫に狙い撃ちさせろ!逃すなぁ!必ず仕留めろ‼︎」とオペレーターに怒鳴りながら命じる。それに応えるべく生き残りの最後の反射衛星砲艦≪シュピゲロンⅠ≫は照準を合わせ直す。なぜか電子妨害も止み狙いをつけ易くなった為、予想針路を割り出して反射衛星に指令の電波が送られ反射板が角度を合わせ始める。艦長の指示で紫色の極太高出力なビームが放たれる。ピュインッ!ピュインッ!またピュインッ!とテンポよく反射に反射を繰り返していく。≪ヤマト≫も危うしか...?と思われた時だった..,
反射衛星砲艦≪シュピゲロンⅠ≫
艦橋
オペレーターA「ッ!艦長!反射衛星で中継してるビームが‼︎」
艦長「どうした⁉︎」
オペレーターB「ビ、ビームが徐々にこちらに向かってきます‼︎」
艦長「な、なんだとぉ⁉︎」
なんと反射に反射を重ねてリレー中の反射衛星砲のビームが何かおかしいというオペレーター。確かにビームの中継リレーは続いている。だが、そこに問題があるわけではない。問題はその中継してるビームがもうとっくに≪ヤマト≫に到達して良い頃合いなのだ。だがしかしそれが到達し着弾しないのだ。それどころかそのビームの中継反射が回り回ってなぜか発射した艦自体に戻って来ているのだ。それに気付いた頃には時は既に遅し、回避も断末魔(だんまつま)を挙げる間もなく≪シュピゲロンⅠ≫は消滅する。
≪ヤマト≫
第2艦橋
太田「おぉ...⁉︎」
相原「て、敵艦が爆発しましたよ...?」
南部「一体何が...?」
古代「真田さん...これは...?」
真田「たぶんこんなこともあろうかと冥王星基地の反射衛星砲との戦いで傍受・記録・解析していた反射衛星の信号のアルゴリズムが役に立ったよ。」
山崎「なるほど、アッハハハさすがは真田技師長ですよ。」
森雪「ダゴン艦隊、混乱しているもよう。追撃してくる気配はありません。」
古代「よぉし!艦隊全艦集合!基地攻撃隊の【Bグループ】を迎えに行く‼︎」
島「≪ヤマト≫、発進!」
≪ヤマト≫らが反射衛星砲艦と激戦を繰り広げている時、≪ヤマト≫と≪たいほう≫の合同航空隊の【Bグループ】はバーナード星の敵地下基地とは別の場所に設けられた飛行場らしき場所から発進したであろう【ガルマン】側の航空機編隊に追撃されていた。【ガルマン】の航空機を見るのも戦闘するのも今回が初めてでありコスモタイガーⅡにも引けを取らない加速度で追撃してくる敵機に対し≪ヤマト≫航空隊隊長の山本は通常型に比べ鈍足な雷撃型を母艦である≪たいほう≫に帰還させる為に先に行かせて自分達≪ヤマト≫航空隊が※殿(しんがり)を務めると言い反転して敵編隊との空中戦(ドッグファイト)に突入した。
※自軍の撤退を援護すべく味方の一部が残り最後尾で追撃を防ぐ役割を担うこと
坂本「うひょお!加速度だけじゃなく機動性までコスモタイガーに負けない敵機ですよ隊長‼︎」
山本「どうやらそのようだな...全機!相手は同格だ!数は少ないからって油断するんじゃねぇぞ‼︎」
【ガルマン帝国】の格闘宇宙戦闘機<ゼーアドラーⅢ>は所謂「マルチロール機」で空母の艦載機としてや基地航空隊などに配備されているガルマンの新型機である。元々は基地運用を想定した迎撃重戦闘機とした開発された後継機でそこに戦闘機としての空戦能力をバランスよく付与されている。そんな新型とコスモタイガーがどちらも一歩も引かずな攻防を繰り広げている。そんな中、隊長の山本が珍しく背後に一機食いつかれている。敵機の機銃の射線に入らぬよう上下に左右に斜めに激しく動きながら撒こうとするも引き剥がせない。それを見かねた坂本が無線を繋げ山本とコンタクトを取る。
坂本「隊長!珍しく手こずってますね、助けが必要では⁉︎」
山本「余計なお世話...って言いてぇとこだが、そうも言ってられねぇみたいだ。お前は俺の正面に出て攻撃できるように備えろ!俺はそれまで軽くこいつをあしらってやる‼︎」
坂本「へっへへ、さすがこんな時でも隊長は隊長っすね!じゃあ行きますよ‼︎」
こうして2人は"返り討ち"の準備に入る。山本は敵機一機をさらに激しい機動で回避運動を行う。だが、ただ逃げているだけではない。それを追い掛けるゼーアドラーとそのパイロットは知らない。そしてその時が来る。坂本が「ポジションに着いた!」と報告を受け山本はスリーカウントを始める。3...2...1...と数え0のタイミングで山本は機首をグッと上げると同時に機体下部の姿勢制御スラスターを噴き上方へフワッと浮いて追撃機の背後に回る。前世紀の空戦機動の一つ「コブラ機動」である。驚いたゼーアドラーのパイロットは釣られて視線をそちらに向ける。が、すぐさまそんな場合ではないことに気付くももう遅かった。先回りし真正面の位置に着いていた坂本機のコスモタイガーから機首のパルスレーザーの攻撃を受け爆散する。山本機と揚羽機が交差し互いにサムズアップをした。
続いては椎名と揚羽の方に視点を移そう。揚羽はこれが初めての敵機とのドッグファイトである。追っかけるのも一苦労で自機に匹敵する機動性を持つ相手である。なかなか照準器での狙いが定まらない。右へ左へ機を反復横跳びみたく激しく動かしてフラフラになりそうになりながらもやっと真ん中に収めトリガーを弾く。ゼーアドラーのエンジン部に弾痕が走り火と煙を上げ高度を下げながら爆散する。なんとか一機撃墜した揚羽は周りを見るとベテランの先輩達は自分が一機の敵に何分も掛けてる間に既に2〜3機さ軽く堕としていることに気付く。自分も頑張らなくてはと意気込んでいるのも束の間、銃声と思われる衝撃と金切り音が聞こえてくる。背後に敵機が来たのだ。考え事をしててあっさりとケツを取られたなんて知れたら隊長の山本には叱られ、坂本にはからかわれるだろうなというのは容易に想像できた。そして直属の上司で教官の椎名には...とそういえばさっきあんなに苦しそうな状態だった先輩は今どうしてるのか、まさかまた身体に異変を起こしたせいでその隙にやられたりとかは⁉︎と考えた一瞬、ガガゴッ!と衝撃が連続する。どうやら被弾したようだ。だが損害は軽微のようだと計器類に異常を知らせる表示はなくキャノピー越しからの肉眼で確かめ分かる。すぐさま煙が出てるところは自動消火装置のスイッチを押して消火に務め、回避運動に入る。「クソッ!油断して撃たれた!こんなとこ先輩に見られたら...」と思った矢先、後方の敵機が爆発した。「えっ...?」と何が起きたか分からなかったが、下方から斜めにビュンッ!と突き抜けてった存在を見て納得する。
椎名「大丈夫⁉︎揚羽君!」
揚羽「せ、先輩⁉︎助か...」
椎名「何してるの被弾して!昼寝でもしてたのかしらッ⁉︎」
揚羽「ッ!」
やはり見られていて説教を受けたしまった揚羽だったが、驚いたのは説教受けたことだけではなくなんと椎名自身も敵機に追われてたことだった。そんな状況なのにも関わらず自分を追い回していた敵を撃墜してくれたという事実だった。先輩の技量を改めて感じつつとりあえずは元気である先輩の姿と声を見て聞いて安心した揚羽だった。しかし実際は追われてるので手放しで喜んでる場合ではない。椎名機が小刻みにそして時に大胆に機を上下に横に振って敵機に射撃の機会を与えないようにしている。しかし薬の効果が段々切れてきたのかまた胸の痛みがジワジワと滲(にじ)み出る。早めにケリを着けようと機を急上昇させる。直線の動きになったのを見た追っかけのゼーアドラーはロックオンしミサイルを発射する。距離を詰め向かってくるミサイルに対しタイミングを合わせて機にブレーキを掛けて失速させふわっとくるっとまるで木の葉が落ちるが如く落下した後、敵機に迫りつつそんな不安定な状態からちょうど敵機の真上で機首のパルスレーザーを掃射し敵機を撃墜する。
揚羽「※クヴォチュル・ベルだ!すごい!さすが先輩‼︎」
※ロシアのテストパイロット アナトリー・クヴォチュルが考案した曲技飛行。映画『トップガン マーヴェリック』にて第五世代戦闘機(ロシアの最新鋭ステルス戦闘機 Su-57"フェロン"がモデル)がマーヴェリックとルースターの乗るF-14のミサイル攻撃を回避するのに行った機動がそれである。
身体への負荷を考慮して負担の大きいコブラ機動を避けクヴォチュル・ベルを選ぶ椎名の判断力とそれを可能にする操縦センス、そして隊長の山本曰く「≪ヤマト≫航空隊一(いち)と言ってもいい射撃の腕」と圧倒的な技量に感服する。それとは逆に椎名の方は息も絶え絶えで喜ぶ暇などなかった。
それからは航空隊の戦闘は終結に向かい、残りの敵機は撃墜されるか戦線を離脱し恐らくはダゴンら18装甲師団に合流していったと思われた。バーナード星の宙域の外縁に到達した≪ヤマト≫ら第1特派隊はダゴンらの追撃を警戒しつつ帰還する航空隊の収容を行っていた。≪ヤマト≫もそうだが、先に着艦し帰還した山本らから古代は椎名のことを聞き驚く。
≪ヤマト≫
第1艦橋
古代「えっ⁉︎椎名がまだ帰還してない⁉︎」
山本「そうなんだ。アイツ、また体調を崩して...。」
揚羽「自分は隣にいたんですが、"追いつくから先に行って"と言ってそれで...。」
ピピーッ!×2(電子音)
相原「艦長!椎名から入電です!」
古代「読んでくれ相原!椎名は無事なんだな⁉︎」
相原「はい。しかし身体、機体共に不調だそうです。」
古代「なんだって!」
山本「まさか、敵機の追撃をかわそうとして使った回避機動で...」
坂本「ッ!機体が歪んだってことっすか⁉︎」
揚羽「そんな...!」
真田「マズイな。そんな状態で≪ヤマト≫に着艦すれば大事故に繋がりかねんぞ!」
島「≪たいほう≫に着艦させるようにしたらどうだ...?」
古代「いや、今の≪たいほう≫は自身の航空隊を収容するのに手一杯だ。とても余裕があるとは思えない。」
椎名の危機にどうしたものかどうしようと話し合う中、またもや通信機器の電子音が鳴り相原が応答する。
相原「艦長!≪まみや≫の堀江艦長から通信です。」
古代「堀江艦長から...? 相原、パネルに回してくれ。」
「了解」と言い機器を操作する相原。メインパネルの巨大スクリーンに高速戦闘支援艦≪まみや≫艦長の堀江の顔が映し出される。
古代「堀江艦長。」
堀江(映像通信)『古代艦長、状況は理解しています。椎名機は本艦に着艦させるよう誘導致します。』
古代「え、しかし...。』
堀江(映像通信)『ご心配には及びません。今は補給艦ですが元の空母としての飛行甲板も機能も健在です。それに本艦には最新の医療設備もある病院船でもあります。お役に立ちますよ。』
古代「了解しました。椎名に≪まみや≫に向かうよう指示します。相原!頼む‼︎」
第1特派隊の兵站・補給面担当艦である≪まみや≫の後部飛行甲板では甲板作業員達が椎名のコスモタイガーⅡの受け入れ準備を整え始める。緊急着艦に備え緊急用のネットもスタンバイする。一方の椎名は再び悪化した体調と無理な機動で歪みアラームという名の悲鳴を上げる機体を持ち前の忍耐と精神力でなんとか制御していた。≪まみや≫の飛行甲板が見え着艦誘導灯が視界がぼやけてはいても赤と緑のランプが見える。
椎名「くぅ...!あと...少...し...あっ!...」
「帰る母艦は違ったが必ず生きて戻ってやる...!」と思っていた椎名の意識は限界を迎えそこで途切れる。急な意識の消失は機を急ではなく比較的緩やかではあるが下降させる。しかし辛うじて飛行甲板にタッチダウン...衝撃で出した引き込み脚が塁に出てる野球選手が盗塁のヘッドスライディングをするがごとく機首からズザザザーッ!機を滑らす。緊急用のネットがそれを受け止め絡まり機体が止まる。なんとか火災は免れ飛行甲板で待機していた作業クルーが機体に駆け寄る。作業員の1人がコクピットのキャノピーの側にある強制解放レバーを引くが作動しない。不時着した衝撃で機体が歪んだせいかもしれないと電動の丸ノコギリを準備しキャノピーを切断して作業員と同じく待機していた医療班員が掛けより椎名をゆっくりコクピットから引き摺り下ろす。担架に乗せられそのまま集中治療室に入り手術に入った。先に≪まみや≫に来ていた佐渡先生が執刀医を務め数時間が経過した。
高速戦闘支援艦≪まみや≫
集中治療室:室外
山本「椎名...。」
坂本「大丈夫ですよ隊長...3年前だって一度あの世に行っても戻ってきた椎名じゃないですか...。」
揚羽「先輩...」
≪まみや≫の集中治療室前のベンチで座りヒジを膝に付け、手を合わせ椎名の手術の成功を祈る山本とそれを宥める坂本そして同じく心配で胸一杯な揚羽...そして手術中の赤ランプが消え扉が開き佐渡先生が手術手袋とマスクを外しながら出てくる。それを見た3人はベンチから立ち上がり佐渡の下に駆け寄る。
山本「先生...っ!椎名は...?」
佐渡「一命は...取り留めたよ...。」
坂本「はっ...良かった...!」
揚羽「先輩...。」
安堵する三人に対し、佐渡の表情がまだ曇り優れない事を悟る山本。「先生...?」と尋ねる。
佐渡「じゃが... ...」
山本「じゃが...ってなんなんですか...⁉︎」
佐渡「... ...。」
山本「先生!」
佐渡「椎名はもう...パイロットとしては... ...。」
揚羽「えぇッ⁉︎」
坂本「そんな...!」
山本「椎名... ...。」
衝撃の報せに驚く三人。あまりのショックに山本はガクッと膝を着いた。その後、第1特派隊はバーナード星宙域に敵影が消えたことを確認し『バ号作戦』は成功に終わった。第1特派隊は上陸班を編成し先の≪ラジェンドラ≫の一件で帰還命令を出した辺境宇宙調査船≪そうや≫から移された探査機器類を用いての本格的な惑星探査を行い極寒な自然環境を有するも大気成分に有害な物質はなく、また原住の知的生命体の反応がないため人類の生存と移住は可能と判明しそのデータを纏め防衛軍司令部に送信した。先のデザリアム戦役にてタキオン通信衛星通信網の復興が遅れている為、司令部に届くには数日を要するがこれで地球人類の生存に一つ希望が持てると特派隊の面々は少しホッとする。しかし先の戦闘での反射衛星砲の出現により【ガルマン帝国】が【ガミラス帝国】の後継国家ではという推測がさらに現実味を帯びてきてしまったことに古代ら≪ヤマト≫クルーの気は複雑な心境になった。しかし古代はデスラーとの友情を完全に諦めることはできない。されどその想いは胸にしまいつつ今後も【ガルマン帝国】からの攻撃に関しては「降りかかる火の粉は自分で払う」の方針では変わらずで行くことが中央作戦室での会議で決まり終わった。
容体が安定した椎名が≪まみや≫から≪ヤマト≫に移送され、医務室のベッドの上で目覚めたのは会議から少し経ったくらいだった。
≪ヤマト≫
医務室
山本「ッ!椎名...‼︎」
椎名「隊...長...?」
山本「はぁ!椎名!良かった...。」
目覚めに喜ぶ山本に対し右手を握られ頬(ほお)を赤くする椎名。思わず無自覚的に手を握っていたことに気付き急に恥ずかしくなって「す、すまない」と手を放す山本。恋人になったとはいえ互いにこの3年間は忙しく何も進展らしい進展はなくそれこそ二人きりの時間を作ることもままならなかったから無理もない。
椎名「隊長...その...」
山本「...佐渡先生から聞いたよ...お前の身体のこと...。」
椎名「ッ!」
山本「すまない椎名!」
椎名「そんな...隊長が謝ることでは...!先生にも私がワガママを言ってそうしてもらったんです...。」
山本「あの時から...なのか...?」
椎名「そうです...。3年前の負傷が実は治ってなくて、心臓の近くに...破片がまだ残っていたんです。当時は佐渡先生自身も気付かなくて...判明したのはデザリアム戦役から約1年後くらいでした。身体が機体の操縦に追いつきづらくなってきて...体力も落ちてきて...それから定期的な検査と痛み止めの薬を飲むのを条件に...パイロットを続けさせて...貰っていたんです...。」
山本「バカヤロウ!お前って奴は...あの時と一緒だ!なんで...なんで...黙ってたんだよ...‼︎」
椎名「ごめんなさい...それでも私はまだ飛びたかっんです...危なっかしい坂本の奴を制する為にも...そして...隊長...あなたとも...。」
山本「椎名... ...。」
負傷を隠し押してでも皆とそして隊長で恋人と飛び続けたいという椎名の想いと意志に山本はそれ以上言葉を返せなかった...二人は顔を合わせた後、互いに目を閉じ顔を近づけ唇を重ねた。医務室の外には坂本と揚羽が静かに中の二人の会話を壁に寄りかかって聞いていた。
≪ヤマト≫
艦長室
古代「そうだったのか...。」
森雪「椎名さん、かなり無理していたそうなの...私達全然気付いてあげられなくて... ...。」
生活班長である雪から椎名のことを聞いた古代もその経緯に驚いていた。椅子に深々と座り「【ガルマン帝国】=【ガミラス帝国】説」がますます濃厚になったり大切な乗員の一人が思いの外(ほか)重症であったりと艦長として調査隊(艦隊)を指揮する者として悩みの種を抱えて頭が痛い古代。がしかし椎名の件はガルマンの件に比べればまだ解決は可能ではある。だが、もうパイロットとして戦えないのは彼女の腕が良いだけに手痛い損失である。
森雪「古代君、椎名さんの件は私の方で任せて貰えないかしら...?」
古代「ん?雪がか...?」
森雪「えぇ、椎名さんにピッタリな役職があるの。」
それから少し経って≪ヤマト≫ら第1特派隊はとっくにバーナード星宙域を遥か遠くに離して再び銀河中心部へ向け第二の地球候補の惑星を探査すべく星の海原を進んでいる。
≪ヤマト≫
第1艦橋
南部「あれ?雪さん今日は遅くないか?」
太田「そうだな〜雪さんがレーダー員勤務の時間を間違えるわけもんな。」
相原「椎名さんのことで佐渡先生のところに行ってるのかな...?」
雪が珍しく勤務時間に現れないことに不思議がる「ヤマトの三羽ガラス」こと南部、太田、相原の三人。声を上げていない島や真田そして土門と北野も同様に不思議がっているが、一名のみ森雪不在の理由と事情を知る者がいる艦長の古代である。そうして皆が不思議に思う空気が漂う中、エレベーターの扉が開く音がする。「ようやく来たか」と皆が振り向くと確かにそこには生活班の黄色い隊員服を着た女性がいるのだが、それが雪ではなかったことに皆が驚いている。
島「ッ!椎名⁉︎」
真田「椎名⁉︎その格好は...?」
北野「椎名さんが...生活班に...?」
椎名「(敬礼)椎名晶!本日より戦闘班航空隊より生活班に移籍!レーダー員など森雪生活班長の業務の交代要員を務めます!よろしくお願いします‼︎」
古代「というわけだ。みんな!改めてよろしくな‼︎」
敬礼した後、深々とお辞儀をする椎名に皆が拍手や口笛を鳴らして歓迎する。一通りそれが終わると古代は「皆配置に戻れ!椎名はレーダー席に」と指示し「はい!」と言ってレーダー員の席に着く。
椎名「前方針路クリア、デブリ...アステロイド及び暗黒ガス雲等の反応ありません。」
古代「了解だ椎名。島、針路再設定任せる。」
島「分かった。北野、針路修正0.5、面舵10°!」
北野「了解。針路修正0.5、面舵10°!」
古代「≪ヤマト≫発進‼︎」
クルーの新たな門出を迎えつつ≪ヤマト≫と第1特派隊の艦艇群の航海(たび)はまだまだ続く...
読了ありがとうございます。『バ号作戦』が決着しました。最初の航海での戦訓を活かして見事反射衛星砲搭載艦を撃破した≪ヤマト≫と第1特派隊の満面の見事な連携プレーでしたでしょう?連携プレーといえば航空隊の面々もです。あの自称"一匹狼"な坂本が隊長の山本と共同で敵機を墜とすのは成長を感じますね。揚羽ここで敵と初のドッグファイト戦を経験しますが一機墜とすのが精一杯、対して直属の上司である椎名は自分が追われてるのにも関わらず揚羽を追っかけてる敵機を墜とし尚且つクヴォチュル・ベルをやるというまだまだ未熟な揚羽とベテラン椎名の差を表現しました。そして椎名はここでパイロットを引退です。実はこの展開は小説のプロットの段階で考えていたことで『二重銀河の崩壊』のあのエピソードを観た時にあの後一切椎名が映らなかったので「まぁ身体に破片が食い込むほどの負傷だしほんの数日じゃ治らんだろうし、もしかしたらもっと重い怪我かも?」と妄想してったらこうなった感じです。この辺りは『踊る大捜査線』の恩田すみれ(演:深津絵里)さんや『相棒』の出雲麗音(演:篠原ゆき子)、『マクロスΔ』のメッサー・イーレフェルト(CV.内山昂輝)をモチーフとインスパイアを受けました。そんな椎名さんは生活班として再出発することになりました。これもプロット制作時から考えていました。椎名はパイロットをやる前はパト艦≪うずしお≫でレーダー員をしており、医療コースの講習も受けていたのはps版を知ってる人ならご存じな設定を活かさない手はない!ということでそうしました。個人的にここは悩んだとこですが殺すのは嫌だったのでパイロットを降板という形にさせていただきました。まだまだパイロットとしての活躍や航空隊との絡みが読みたかった方は申し訳ありません。ただ彼女にはまた別の形で活躍していただくのでよろしければ引き続きお読み下さると嬉しいです。それではまた次回。