宇宙戦艦ヤマトⅢ ReBoot!〜銀河中心部の混迷〜   作:箕理 田米李

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『3199』第五章を楽しんだ箕理です。巷では『3199』版ヤマトのメカコレが発売したりして私も一個確保しました。このままメカコレが続いていって欲しいところですね。では「バース星編」スタートします。


第三章『二大星間国家の脅威』
第11話『バジウド4到達 氷に包まれた衛星国』


宇宙空間...どこまでも続きどこかの恒星系や星雲などがなければただ黒き果てない深淵...そしてそこを航行する艦にはいつが朝で昼で夜なのかの判断は時計でするしかない。

時刻はお昼を回っている。≪ヤマト≫の艦内食堂は当直の交代や訓練を終えた乗員達が自動配膳装置で盛り付けられた昼食のトレーを持ち各々(おのおの)自由に席に着き、素直に食事を楽しんだり相席した相手と談笑しながら味わったりするなど様々だ。

そんな中の席に一つに座り一人黙々と味わっているは航空隊の新入り 揚羽 武だ。そこにトレーを手に持ち脇にファイルを挟んで持っている土門が側に寄って来た。「隣空いてるか?」と尋ねる。

 

揚羽「あぁ、お前も交代になったか。」

土門「そうだ。そっちは早かったんだな、シミュレーターでの訓練だっけ?」

 

揚羽の隣に座りトレーを置き、脇のファイルも側に置く土門。

 

揚羽「そうだ。坂本先輩とペアになってから大忙しさ。あの人、パイロットとしての腕は良いけど所謂(いわゆる)"天才肌"タイプって人だから教え方はあまり上手じゃないかな...。ただ技量に関しては本物だから学ぶことは一杯あるよ。」

土門「苦労してんだな。こっちも色々纏(まと)めることがあって忙しいや。」

 

そう言いながら手元に置いたファイルを開きながらロールパンを口に頬張(ほおば)る土門。

 

揚羽「なんだそのファイル?」

土門「【ガルマン帝国】の艦艇のデータさ。ノーザンクロス星域で出会った新型艦のことを急いで纏めたんだ。倒すのに手こずったからな、今度はそうはいかないようにしないと。」

揚羽「へぇ〜お前もすっかり戦闘指揮長が板に付いたんだな。」

 

前回のノーザンクロスM-61星域突破後の【ガルマン帝国】重装甲艦隊との遭遇戦で大型重戦闘艦に苦戦し今尚その戦闘で≪ヤマト≫が負った傷を樫野応急修理長が率いる応急修理班が修理している。

今まで出会ったガルマン艦の中でも特に手強い相手でこれからも対することは明白。その為にも備えて置くのが艦戦闘指揮長たる土門の役目なのである。

 

平田「椎名!スープの具材が切れたらしい倉庫から缶詰の箱を持って来てくれ‼︎」

椎名「は、はい!」

 

厨房の方から大きく聞こえた声に土門と揚羽は目をやると奥で調理を担当している平田が椎名に指示を飛ばしていた。

どうやらスープの具材が切れてしまったのでそれに使う缶詰を食糧倉庫から持ってくるよう言われていた。

 

土門「椎名さん、よく働くな〜。まだ治ってないんだろ?」

揚羽「そうなんだ。無理してないといいけど...。」

 

可愛がっていた後輩からそんな心配の声を漏らしていたことなど露知らずと椎名は今日も生活班という新しい職場でせっせと働く。

食糧倉庫からスープに使う具材の入った缶詰が詰まっているダンボール箱を二箱分重ねて運ぶ。

前が見えないので廊下ですれ違う通行人とぶつからないようにゆっくりと時折(ときおり)横から顔を出して前方を確認しながら歩く。

 

椎名「よっと...おっ...ッ!...くっ...⁉︎」

 

荷を落とさないようにバランスを取っているとまた胸の痛みが再発し荷を落としそうになり「しまっ...」とバランスを崩す。

 

山本「おっと危ねぇ!大丈夫か椎名?」

 

そう言って椎名の前から荷崩れしそうなダンボール箱を持って支えたのは航空隊隊長で恋人の山本だった。

そのまま上に重なった方のダンボール箱を一つ持ってやる山本。

 

椎名「あ、隊長...。」

山本「無理すんなよ。」

椎名「すみません...訓練でお疲れでしょうに...。」

山本「バカ、なに言ってんだ。佐渡先生から聞いたぞ。お前こそノーザンクロス星域の時、えらく無理して走ったそうだな?」

椎名「ッ!」

山本「お前の方がよっぽど身体のこと気に掛けなきゃいけねぇんだよ。特にこういう力仕事の場合はな。」

 

「また気を遣わせてしまった」とシュンッとなる椎名。

自身の隠していた負傷が原因で航空隊を引退しもう迷惑を掛けまいと思っていた椎名。

元上官であり恋人でもある山本には特にだった。

 

山本「椎名。」

椎名「は、はい。」

山本「必要な時は頼っていいんだ。たとえ部署が変わっても、お前は俺たち航空隊の仲間には変わらないんだからな。」

椎名「は、はい‼︎」

 

不器用ながらも元部下であり恋人に気持ちを伝える山本。それを聞いた椎名の表情が少し明るくなり、二人は並んで廊下を歩いた。

 

≪ヤマト≫

第1艦橋

 

太田「まもなくバジウド星系に入ります。」

島「いよいよ来たな。探査計画の中でも一番の第二の地球最有力候補の惑星があるバジウド星系だ。」

古代「あぁ、ここまで色々あったがようやく辿り着いたな。太田、調査目標の第4惑星"バジウド4"は映せるか?」

太田「えぇ、ちょうど我々の正面にあるのでバッチリ映せますよ。メインパネルに拡大投影します。」

南部「う〜ん...水色だけど若干白っぽく薄い色でどこか寒そうな星だな。」

真田「そうだな、我々の太陽系で例えるなら土星の衛星タイタンに似ているな。もしかしたら氷を張った寒い星なのかもしれん。」

 

メインパネルに映し出されるバジウド4を見る≪ヤマト≫クルーは真田が例えたタイタンでの出来事を思い出す。

コスモナイトを採掘したこと、氷漬けになった駆逐艦≪ゆきかぜ≫を見つけたこと、その≪ゆきかげ≫を掘り起こし無人化した"トチロー"こと大山歳郎に出会ったことなどこれまでの航海の出来事がまるでつい昨日のことのようにクルー全員は思い出せた。

 

古代「相原、先行して警戒している≪いすず≫から何か報告はあったか?」

相原「いえ、今のところは何も...警戒飛行中の早期警戒コスモタイガーからも異常なしとの報告です。」

 

前方警戒のパトロール艦≪いすず≫、艦隊上空及び下方警戒中の戦闘空母≪たいほう≫所属の早期警戒型コスモタイガーからも異常なしとの報告に古代は「そうか、引き続き警戒を続けるよう伝えてくれ」と返す。

現状は何事もないことにとりあえずは安堵すべきか、これを「凪いだ海」として用心を強めるべきか迷うところである。

そう考えれるようになったのも古代が艦長代理として長く務めてきた故であろう。

そしてその予感は的中してしまう。

 

ピピーッ!×2(通信音)

相原「ッ!艦長!≪いすず≫より入電です!艦隊と遭遇したそうです。」

古代「艦隊だって⁉︎...所属は⁉︎【ガルマン帝国】か?」

相原「いえそれが、【ボラー連邦】の艦の艦隊だそうです。」

古代「なんだって⁉︎」

 

古代が相手の正体に驚いている中、第1特派隊より前方で警戒(ピケット)を務めその事態に直面しているパトロール艦≪いすず≫の第1艦橋では警報が鳴り警告灯がチカチカと赤い色を点滅させていた。

 

≪いすず≫

第1艦橋

 

砲術長「艦長どうします⁉︎こちらから撃ちますか⁉︎」

井口「バーカ、≪ヤマト≫からの指示を受けてからだ。それにまだ何もされてないのにこっちから撃てねぇよ。とりあえず主砲をそれぞれ相手に向けとけ。」

 

艦長 井口から指示を受けると砲術長は主砲二基を左右それぞれの艦に向ける。以前、海王星宙域で遭遇し救援の手を差し伸べた際に記録した【バース共和国】もとい【ボラー連邦】のA型艦隊装甲艦とB型戦列装甲艦の二種のボラー主力艦それぞれ一隻ずつ計二隻の艦隊にだ。

【バース共和国】の艦隊旗艦≪ラジェンドラ≫...ラム艦長が乗っていた赤い装甲艦は損傷を負っていた逃亡の身とはいえ臨戦態勢を取らずで砲門を向けずと戦う意志を示さず助けを求めて来た。

【ガミラス】...【白色彗星帝国】そして【暗黒星団帝国】とこれまで数々の星間国家は無警告や無通告と問答無用で攻撃を加える地球の国際常識の範疇(はんちゅう)で言えば「野蛮」の一言で表すに相応しい所業をするところばかりであったから珍しいのだ。

今回も同じである。現に≪いすず≫に正対している【ボラー】の二艦は砲門は開いていないしレーダー/通信手からの報告ではエネルギー兵器のチャージ反応もないという。

ただお互い睨(にら)み合いの時間が過ぎていく...何分経っただろうか...一秒一秒が長く感じる。

 

ピピーッ!×2(通信音)

レーダー/通信手「ッ!艦長、相手側から≪ヤマト≫に用があるとのこと...。」

井口「なに?よし、中継させろ。」

 

返答が威嚇やそれに準ずる攻撃ではなかったのは良いが、≪ヤマト≫を名指しでというのが気になりつつも井口は回線を中継するよう言い「了解」と言ってレーダー/通信手は機器を操作する。

 

≪ヤマト≫

第1艦橋

 

相原「≪いすず≫から通信回線のリレーを確認。艦長、映像通信開けます。」

古代「そうか、よしパネルに回してくれ。」

相原「了解。」

 

カチャカチャと機器を操作しメインパネルに映し出されたのはラム艦長と同じ肌が緑色で長身の痩せ型の男性だった。

 

???(映像通信)『貴艦が宇宙戦艦≪ヤマト≫とお見受けする。』

 

古代「はい。こちら【地球連邦】防衛軍所属 宇宙戦艦≪ヤマト≫です。私は艦長の古代 進。」

 

レバルス(映像通信)『やはり...おっとこれは失礼を。私は【バース共和国】宙域警備隊司令のレバルスです。』

 

古代はレバルスと名乗る男の肩書きに驚く。彼は間違いなく"バース共和国"と言ったからだ。

艦長席と副長席に座る古代と島は互いに顔を合わせ驚く。

 

古代「と言うと...ラム艦長はこの星の...?」

 

レバルス(映像通信)『左様(さよう)。我らが同志ラムの故郷はここだ。貴艦≪ヤマト≫とその艦隊のことは彼から聞いている。無用な緊張を与えて申し訳ない。』

 

古代「い、いえ。そうとは知らずに無断で宙域に入ってしまいました。こちらこそ失礼をお詫(わ)びします。」

 

互いにこうべ垂れ謝罪する2人。どうやらラム艦長らと同じく穏やかな雰囲気で敵対する意思はなさそうだと艦橋クルーの皆は少し安堵(あんど)する。

 

レバルス(映像通信)『どうだろう?これも何かの縁(えん)だ。我らがバース星に貴艦と艦隊をご招待したい。同志ラムの最期も聞きたいところだ。』

 

古代「... ...本艦乗員と艦隊各艦の指揮官と話し合ってから決めたいと思います。」

 

レバルス(映像通信)『よろしい、賢明な判断だ。しばし待とう...良い返事を期待している。』

 

そう言い映像通信を切るレバルス。とりあえず戦闘にはならない為、古代は「戦闘態勢を解除、各艦にも伝え。」と相原に命じる。

「バジウド4...いやバース星...ここがラム艦長の故郷...人が住んでいたんだな」と島が語り「あぁ、思わぬ発見と出会いだな」と古代が返す。

その後、≪ヤマト≫の中央作戦室にて各班班長と第1特派隊各艦が集まり協議が行われた。

先のノーザンクロスM-61星域の強行突破と【ガルマン帝国】重装甲艦隊との遭遇戦による損傷が未だ癒えておらず≪ヤマト≫技師長 真田からも「どこか一旦腰を据えて修理をする必要があるのでこの申し出はちょうどいいかもしれん」と言う意見が出たのを皮切りに「乗員達の休息を与えたい」という≪ふゆづき≫艦長の水谷の言(げん)に他艦の艦長達も概ね賛同した為、古代はレバルスの提案を受けることにした。

レバルスの乗るA型艦隊装甲艦が水先案内を務める形で≪ヤマト≫ら第1特派隊は後に続く。住人を驚かせてしまわないよう首都から外れた基地とそのドックに案内され各艦がそれぞれに入渠(にゅうきょ)する。

≪ヤマト≫艦長 古代と技師長 真田 生活班長 森雪そして土門と揚羽が護衛の5名が代表として降り立ち整列して待つレバルスらバース兵に迎え入れられそれぞれその国独自の敬礼で応対する。

そのまま基地司令部に向けホバークラフト式の兵員輸送車に乗せられその最中(さなか)、雪はふと目を外に向ける。

 

森雪「古代艦長、あれはなにかしら?」

古代「ん?なんだ、あの建物は...?」

 

横に伸びた黄緑色のレーザー光線で張られた柵、高い塔にライフル銃を持った見張りらしき兵士の姿、浮遊型の荷台に鉱物をたくさん載せ加工場かどこかへ手押しで運んだりくわやスコップで伐採した木の根株を抜根する作業など過酷な環境下で労働をしている人達の姿を見かける。

 

レバルス「あそこは強制労働施設とその兵士と見張りです。この星は収容所惑星としての役割を担っていましてね。政治犯等はここバース星に運び込まれてきます。」

 

「まぁ!」と口を手で覆い驚く森雪に「歴史の教科書で読んだことのある光景だな...まさか宇宙の他所(よそ)の星で見られるとは思わなかった』と土門と揚羽。古代と真田はさして驚かず真顔のまま聞いている。

たとえ星や文明や文化が違っても犯罪者や反政府運動を行った者への弾圧は違う星でも変わらないものだとある意味では達観(たっかん)しているような感じだ。これも長年の経験故だろう。

しかし、中には強制労働に従事している者達だけでなく膝を折り両手を合わせたり何かペンダントらしき物を天に掲げ何か言葉を発しながら祈っている集団を見かける。

 

古代「レバルス隊長、あの人達は?」

レバルス「ん?あぁ"シャルバート教"の信者共です。ちょうど祈ってるところみたいですね。」

古代「シャルバート教...?」

レバルス「そうですか、あなた達地球のある太陽系までには信仰は届いていないのですね...。それはなによりです。

かつて現在の我々【ボラー連邦】や対立している【ガルマン帝国】とは比較にならないレベルの科学力と軍事力を持ち武力を以(もっ)て銀河中心部の星々を支配したという【シャルバート】という惑星国家があったという伝説がありましてね。その頃の強大な力を信奉する人々が作った宗教なのですよ。」

真田「そのような人達がなぜこんな収容所に...?」

レバルス「彼等の実態が信奉者とは名ばかりの"過激派集団"だからですよ。」

古代「過激派集団...?」

レバルス「信者達は我ら【ボラー連邦】と【ガルマン帝国】の争いの大きさに恐れ慄(おのの)き、かつて銀河を支配した【シャルバート】の力を信じてある者達は「争いをその力で治めてほしい」と祈りを捧げ、ある者はその星を探して宇宙を彷徨(さまよ)い、ある者達は「武力を以て」というのを実行し我々の星間戦争を妨害し思想やプロパガンダへの反対運動を行っているのです。酷い時には自爆行為で命を落とす殉教者の巻き添えを受け我が国の市民にも被害が出たこともありました。」

森雪「...ッ!...そんな...。」

レバルス「それ故に彼等の罪は大きく対処にも苦労しているのです。皆さんもどうか気を付けてください。」

 

銀河中心部にかつてそのような強大な力を持つ惑星国家があり、それを讃(たた)える宗教が根付きそれを利用した暴力や破壊行為が蔓延(はびこ)っている事実に驚愕(きょうがく)する古代たち...「だけど何もこんな極寒の地であんな痩せこけるまで働かせなくたって...」と思う土門と揚羽だったが、地球にも似たような歴史があることやここは他国の土地でその問題ということもあり口を出すことができなかった。それは艦長 古代も同じである。

そうこう話をしている間に基地司令部施設に到着する。そこの客間に案内され、この星を統治する総督ボローズが椅子に深く腰掛け足を組んで待っていた。

 

ボローズ「ようこそ我がバース星へ、≪ヤマト≫乗組員諸君。私は総督のボローズ。」

古代「【地球連邦】防衛宇宙軍所属、宇宙戦艦≪ヤマト≫艦長の古代進です。」

 

ボローズは椅子から立ち上がり古代と握手を交わす。先程まで尊大な座り方をしていた割には丁寧な応対である。

 

ボローズ「遠路はるばるよく来られた。艦の修理には我が軍の技師に力を貸すよう言ってある。諸君ら乗員はゆっくりしていってくれたまえ。」

古代「ご配慮ありがとうございます。」

ボローズ「その間に、同志ラムのことを聞こうか古代艦長?」

古代「... ...はい。」

 

ボローズと対面する形でテーブルを挟み椅子に腰掛けた古代はラム艦長と≪ヤマト≫の事の顛末(てんまつ)を語り始める。

ボローズは時々頷(うなず)きながら静かに話を聞く。

 

古代「以上が我々が見たラム艦長の最期です。」

ボローズ「そうでしたか...いやありがとう古代艦長そして≪ヤマト≫の皆さん。私も同志ラムから最後の通信を聴いてはいたがそれ以降はどうなったかは分からずにいた。」

 

少し間が空き沈黙が流れる。瞼(まぶた)を閉じたボローズは一拍(いっぱく)置いてから古代に言葉を掛ける。

 

ボローズ「古代艦長。」

古代「はい、なんでしょう?」

ボローズ「これも何かの縁です...どうでしょう?我々と同じく【ボラー連邦】の傘下に入りませんか?」

古代「ッ!」

 

突然の申し出だった。驚く古代。島ら他の面々も各々顔を合わせている。

 

レバルス「総督...いくらなんでも話が早いのでは...? 彼らも困惑しています。」

ボローズ「分かっている。無論あくまで可能性であり提案だ。しかし、我々は互いに【ガルマン帝国】が脅威という認識は同じの筈だ。ならば共に手を取り合って協力し戦う道もあるのではないか。どうだろう古代艦長...?」

古代「それは...」

島「古代...。」

 

答えを出そうとする古代に島が待ったをかけるかのように名を呼び止める。島と真田の真剣な、そして心配な表情を浮かべる雪、土門、揚羽を見て古代は思い留まる。

 

古代「ボローズ総督。少し時間をいただけないでしょうか?皆と話し合って決めたいんです。」

ボローズ「よろしい。こちらこそ突然こんなことを言って申し訳なかった、まだ時間はあります。じっくり話し合ってください。」

 

古代を含め6人は≪ヤマト≫に戻り中央作戦室にて会議が行われた。今回は第1特派隊全艦はドック入りしている為、各艦長の皆が集まっている。

 

≪ヤマト≫中央作戦室

 

島「第二の地球探しの任務はまだ続いてる。バジウド4...いやここバース星がそれに適さないと分かった以上、修理が完了次第すぐにここを立ち去るべきだと思う。」

古代「分かってる。だが... ...」

真田「副長の言うとおりだぞ艦長。我々はもう既に【ガルマン帝国】と【ボラー連邦】との争いに充分過ぎるほど巻き込まれてはいるが、これは高度に政治的な問題なんだ。こちらで勝手な判断をしてはいけないし、第一(だいいち)地球と連絡を取り判断を仰ごうにも距離が離れ過ぎてしまっている。ボローズ総督には悪いが今はそんなことに構っている暇はないんだ。」

井口「でも真田技師長...話を聞いた限りじゃあ彼等はラム艦長と同じく温厚な感じだったそうじゃないですか?傘下に入るかはともかく、なんとか同盟関係にまで漕ぎ着けるよう交渉に応じてみるのも悪くないんじゃないですかね?」

能登「確かに...「敵の敵は味方」と理屈を言うわけじゃないけど、友好的に接してくる相手の提案を無碍(むげ)にするのは良くないかもしれないわね。地球はまだ復興途上ですし、わざわざ敵を増やす必要は無いと思います。」

藤田「私は反対です!」

古代「藤田艦長...?」

 

声を荒げて反対を唱えたのは≪すずつき≫艦長 藤田だった。皆(みな)が視線を彼女に向け驚く。

 

藤田「すみません...あの収容所の囚人達...直接見たわけではありませんし彼等がどのような罪で囚われたのかは知りませんが、あのような仕打ちをする者達を簡単に信用するのはどうかと...。」

堀江「僕も藤田艦長に賛成ですね。ラム艦長の事はともかくこれまで≪ヤマト≫が相対してきた星間国家たちのことを考えると...【ボラー連邦】も同じではないとは限りません。」

 

能登、井口が比較的前向きにボラー傘下を検討すべきに対しまず藤田が続いて堀江が異議を唱える。藤田の場合は過去に婚約者を奪われた経緯から、堀江は≪ヤマト≫のファンとして過去の交戦記録等を参照して語る。想定外の事案の発生により意見が割れてしまったことに古代はどう答えを出し皆を導くべきか下を向いて考え込んでしまうのだった。

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ビーッ!ビーッ!ビーッ!と鳴り響く警報、回るオレンジ色の警告灯。ドカドカと地鳴らす靴の音と怒声に罵声に咆哮...その屋内は現在回っている警告灯以外の灯りは少なくて薄暗く無機質で冷暖房の類もなく屋外が元々雪に覆われて寒いせいもあって冷え冷えとしている。

その寒空を拝める窓は一つしかなくまた一部屋一部屋を区切り阻む鉄格子(てつごうし)は掴めばさらに冷たさを感じるだろう。そう、ここはバース星の強制収容所の中...何かしらの罪を犯した、あるいは根拠も何もない冤罪(えんざい)か、はたまた濡れ衣を着せられ突然逮捕・収監そして過酷な労働を強いられている。

だが、今彼等は外へ出ることを阻む鉄格子に囲われた独房から出て暴れ回っている。突然のことに警備兵は「システムの誤作動か、または何者かが操作を...」と原因は分からなかったいや考える暇もなく囚人達に向けレーザー銃をぶっ放したり警棒で叩いたりして鎮圧に掛かるもその数が多過ぎて一向に減らない。

 

脱走する囚人「おい!そこの嬢ちゃん...‼︎早く出た方がいいぜ‼︎」

 

一人の囚人がまだ独房から出ず壁際の椅子に座り壁の上の方にある鉄格子をこしらえた窓を見上げる一人の少女に話しかけまた脱走すべく駆け出していく。

少女はその囚人と顔を合わせ彼が立ち去っていくのを見届けるとまた窓の外から空を見上げる。

 

???「抑えられた思念が溢れ出すきっかけ...あの艦(ふね)が来たから...?...ッ⁉︎...それとも...」

 

少女の視線は窓から自分の膝に置いてある食事トレーに向けられる。そこにあるのは囚人用のクソ不味い配給食ではなくレーザー拳銃だった。

恐らくさっきこれを渡してくれた配膳係の人間がこの騒ぎを引き起こしたのだろうというのを彼女は悟るよりも前に分かっていた。

いや"感じた"というべきか...再度、窓の外の景色...視線のその先にいる艦...≪ヤマト≫を見つめた少女は決意して銃をその小さな手に握る。

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水谷「少し良いかな皆の衆(しゅう)?」

古代「水谷艦長...?」

 

≪ヤマト≫の中央作戦室の【ボラー連邦】の傘下入るか否かの論争は未だ続いていた。白熱はしていないが中々決着が着かない...それを見かねてか終止符を打つべく≪ふゆづき≫艦長 水谷が手と声を挙げる。

 

水谷「一旦ここで議論はやめにしよう。どうですかな古代艦長?これまでの意見を聞いてみて整いましたかな?

難しいことなのは承知です。しかし今のあなたは≪ヤマト≫の艦長だけでなく第1特派隊全体の司令でもあります。あなたの決断に従います。皆(みな)異論はないな?」

 

「水谷のおやっさんが言うならしょうがないな〜」と今まで意見が対立していた各艦長達も顔を合わせやれやれする。それは≪ヤマト≫の乗員達も同じで視線が古代に集まる。これまで艦長代理として長くやってきた古代...この手の決断なら散々してきたし慣れた筈だったが内容が内容だけにいつもより握り拳に力が入るし背筋から汗が滴(ひたた)る冷えた感覚を覚える。

 

古代「...俺は...ッ⁉︎」

 

突然警報が鳴り響き赤色灯が点滅を始める。「古代艦長!」と第1艦橋にいる椎名から連絡が入る。

 

古代「どうした椎名⁉︎」

 

椎名(艦内無線)『先程、レバルス警備隊司令から収容所で囚人達が脱走・反乱を起こしているとのことです!』

 

古代「なんだって⁉︎」

 

椎名『囚人の一部がこちらに向かってるとの報告です!それとバース星宙域に【ガルマン帝国】の大規模な空母と揚陸艦の大艦隊を探知したそうです‼︎」

 

古代「ッ!...艦橋に戻るぞ皆!各艦長は急いで戻ってください!全艦!直ちに戦闘配置に着け‼︎」

≪ヤマト≫乗員と各艦長達「「「「「「了解‼︎」」」」」」

 

≪ヤマト≫ら第1特派隊が入渠(にゅうきょ)しているドックでは囚人達が艦を奪うまたは乗せてもらおうと看守から奪ったレーザー銃を撃ちまくりそうはさせまいと各艦乗員達及びバース人の港湾作業員が応戦していた。

≪ヤマト≫の第三艦橋のハッチ付近の守備は土門と揚羽他数名の戦闘班や航空隊員が行っていた。囚人達の様子を見て半(なか)ば同情めいた気持ちになっている土門と揚羽は彼らを殺害するのを躊躇(ためら)っていため他の者が容赦なく相手を射殺する中、コスモガンを最低出力のパラライザーモードにセットし麻痺(まひ)させている。

土門が一人また一人と倒していくが、その倒した一人を押し除ける形で囚人の一人が飛び出してきたところを気付いた揚羽がフォローし倒すもその隙(すき)を突いた囚人が揚羽を狙おうと銃を構える。反応が遅れ「やられる!」と思ったが、その囚人は「うおっ⁉︎」と言って撃たれ倒れる。それはヘルメットを被り新型のボディアーマーを着込んだ古代たち戦闘班員複数名が土門達に加勢し馳せ参じてきたからだった。

その手には防衛軍の正式レーザー自動突撃小銃であるAK-01をこれまで≪ヤマト≫が経験した白兵戦での戦訓を受けて改良したAK-01改一型を装備している。

古代が装備してるのはオプション装備を搭載可能なアタッチメント式に改造されたハンドガード下部にショットガンユニットが取り付けた接近戦仕様で弾種は暴徒鎮圧用のゴム弾だ。先陣を切って突っ込む古代は防衛線を張る土門達の前にあっという間に飛び出すと直ぐさまショットガンユニットに切り替え腰だめ撃ちで一人ずつゴム弾で吹き飛ばしてたり折り畳まれたストックを展開して殴り付けたりする。

艦内等の狭い場所での運用を想定して銃身は短くカービン化され折り畳み式ストックを採用しているだけでなく軽量化されつつもしっかりと鈍器としても扱える剛性も兼ね備えているのだ。

「前列は俺がやる!後列は催涙ガスでやれ‼︎」と命じ古代の後に続いていた戦闘班員達はグレネードランチャーユニットを装備したAK-01改一型を構えレシーバーにこれまたオプションで取り付けられたホログラフィックサイト(光学照準器)をグレネードランチャー仕様の照準線に変え狙いを定め集団で迫る囚人達に向けてポンッポンッポンッ!と目や鼻などの感覚器官を麻痺させる催涙ガス弾を放つ。

煙は囚人達の方に流れていき目の痒(かゆ)み、止まらない鼻水やくしゃみ、咳(せき)を引き起こし銃撃戦どころではなくなる。

 

古代「今だ!皆退くぞ!こっちだ!土門!揚羽ッ‼︎」

土門/揚羽「は、はい‼︎」

 

そう古代が声を掛けると土門と揚羽は発砲しながら後退し置き去りがないのを確認した後、第3艦橋のハッチを閉じる。

 

古代「土門!揚羽!」

土門/揚羽「「は、はい⁉︎」」

 

初めての生身の人間との撃ち合いによる命のやり取りの緊張感と駆け足の疲れで息切れしていた二人に古代の一喝(いっかつ)が響く。すぐに姿勢を直し気をつけをする。

 

古代「お前たち二人...相手をパラライザーで麻痺させていたな...?」

土門「か、艦長...その...」

古代「バカやろぉ!向こうは本気なんだぞ⁉︎お前達のその躊躇(ちゅうちょ)さが自分自身や仲間を殺す時もあるんだ‼︎白兵戦は一瞬でも躊躇ったら終わりだというのをよく覚えておけ‼︎」

揚羽「申し訳ありません...!」

古代「...お前達の気持ちも分かる...だが、お前たち2人や乗員達の命が大事だ...。」

土門/揚羽「「ッ!...は、はい...‼︎」

 

古代は言うべきことは言わなければならない立場にあるため間違ったことを言っているつもりはなかったが、言い過ぎてしまったとも思っている。

なにしろ土門と揚羽ら新乗組員は今回が初めての白兵戦なのだ。宇宙戦士訓練学校の紙や木材またはシミュレーターでできた標的を撃つのとはワケが違う。相手も同じ生きている人間なのだ。相手を殺すのに迷いや躊躇いがあるのは当たり前であるしそれがない人間は異常者だ。

それに土門と揚羽の場合は自分と同じく収容所の囚人達の姿を見ていたから尚更だろうというのは古代も分かっていた。そんな2人の優しい心をいつまでも持っていて欲しいと思いつつ古代は土門を連れ第1艦橋に、揚羽は格納庫へと駆けて行った。

第1艦橋のエレベーターの扉が開いた瞬間思いいっきし自分の持ち場へ向けてダッシュする。「艦長上がられます!」という雪の報告が入る。

 

≪ヤマト≫

第1艦橋

 

真田「艦長!土門!良かった2人とも無事で...。」

古代「真田さん、≪ヤマト≫の修理状況は⁉︎」

真田「整備は万全だ!樫野修理長が完璧に仕上げてくれたよ。他の艦はもう既にドックから飛び立ってお前の指示を待っている。」

古代「そうですか...山崎機関長!島!発進準備だ‼︎」

山崎「了解、波動エンジン内圧力上昇中...シリンダーへの閉鎖弁オープン!」

島「北野!微速前進0.5だ!ゆっくり急いでな‼︎」

北野「はい!微速前進...0.5...‼︎」(ゆっくりレバーを引く)

古代「これより第1特派隊は【ガルマン帝国】空母艦隊及び揚陸部隊を迎撃する!いいか⁉︎...これは我々自身とこの星の人達を守る戦いだ!各員各艦の健闘に期待する...‼︎」

北野「≪ヤマト≫...発進‼︎」

 

そう古代が命じるとゴォォォォッ!と音と推力を出して≪ヤマト≫はバースの凍(い)てつくドックと大地から飛翔する。

【ボラー連邦】につくか否かという結論を有耶無耶(うやむや)にして飛び立ってしまう古代と≪ヤマト≫...が、今は答えを出すよりも目の前の命を助けることを優先すべきと気持ちを切り替え戦いに赴(おもむ)くのだった。

 

同・ロッカールーム

 

???「...彼等は戦うのね...この星の生きとし生きるモノ達を守る為に...私はここで何をすべきか...」

 

≪ヤマト≫艦内に潜り込めた少女はロッカールームに忍び込みとりあえず自身のサイズに合う生活版の服を見繕(みつくろ)う。

艦の振動で飛び立っていくのは分かる...が、この先どうするべきか迷いかねていた。

そんな密航者が乗り込んでいることを≪ヤマト≫の乗組員達はまだ知らなかった。




読了ありがとうございます。冒頭の食物での会話シーンは原作にもありましたが内容を少し変えてとり土門と揚羽がそれぞれ役職に慣れつつあるのが感じられますね。椎名もすっかり生活班として慣れてきましたが負傷が完治したわけではないので今も薬を飲まないといけない身です。それを気遣う元上官で彼氏の山本。私の解釈ですが2人はとても清いお付き合いをするタイプだと思って三年間仕事に没頭しててキスもしたことがないような風にしました。前にコメントしたくださった読者さんから「椎名は妊娠してるのかと思ってた」なんて言っていましたが、椎名がもし子供が欲しいという願望があると考えるのも面白いですね。もしそうなら古代や雪よりも早く授かりそうな気がします。
バジウド4改めバース星に到着する≪ヤマト≫ら第1特派隊。原作では警告なしで発砲してきたレバルス達ですが、多くの惑星国家を従えてる国家としては野蛮過ぎて不自然と思いこれまでの星間国家と差別化を図るべくちゃんと通信をして応対するようにしました。またバース星は原作では後の『2199』のレプタポーダに繋がるような収容所惑星として登場し収容所と軍施設以外は何もなくて惑星国家という感じがしなかったので本作では都市部がありその外れに収容所と軍施設がある風にしました。
シャルバートの要素もようやくここで登場です。原作でも信者達の過激な面が出ていたので忌み嫌われてる風に描きました。「テロ」という言葉は松本零士作品的には言わないと副監督と話し合いその単語は使いませんでした。
ボローズとレバルスは原作ではボラー人のため肌は水色で瞳の色は赤いですが、本作ではリメイクと同じ緑色にしバース人設定に変更しました。PS版『遥かなる星イスカンダル』でのシュルツとガンツと同じことが言えます。
原作では≪ヤマト≫を【ボラー連邦】の仲間に入った入ってない論争はベムラーゼ首相とバチバチにやり合いますが本作ではその役目をボローズにして貰いました。しかし原作と違い穏便且つ強制したり直ぐに結論を出すよう要求しないのも「わりかしまともな星間国家」として表現させてます。
収容所の反乱は原作にありましたが、こちらは【ガルマン帝国】のスパイの仕業で艦隊がバース星へ侵攻する為の陽動作戦と一部『2199』のレプタポーダ回を参考にしています。囚人達に対し古代達が使うAK-01レーザー突撃銃の改良型が登場しています。あの世界では銃はあまり進化しないのは不自然なので副監督と話し合って折半したりして決めました。
収容所に収監され上手く≪ヤマト≫に忍び込めた謎の少女...現時点では???ですが、察しの良い人には誰だかもうお分かりかと思います。彼女の動向にも注目しつつ次回をお楽しみください。ではまた。
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