宇宙戦艦ヤマトⅢ ReBoot!〜銀河中心部の混迷〜   作:箕理 田米李

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バレンタインデーに『3199』第三章の予告が発表され盛り上がってるヤマト界隈に私も負けじと小説書きます❗️ではどうぞ↓


第二章『未知なる外宇宙での攻防』
第6話『波乱のケンタウルス座アルファ星系 故郷に別れを告げて』


「はぁ...!はぁ...!はぁ...!」

 

「ま、待って...!」

 

「行かないでぇッ‼︎」

 

暗闇の中、前に進む一人の男の背中を一人の女性が必死に声を出して追い掛けている。でも届かない、振り向いてもくれない。それでもと追い縋(すが)ろうとする。

 

藤田「行かないで幹夫さん...‼︎... ...はぁ...はぁ...はぁ...」

 

第1特別派遣調査隊 新型汎用駆逐艦≪すずつき≫の艦長室。悪夢に魘(うな)され汗だくで目を覚ましたのはネグリジュ姿の艦長 藤田咲希だった。よく見る悪夢...それは恋人で婚約者であった三木幹夫を失う夢。

荒い呼吸が少し落ち着くとピピーッ!×2とベッドの側にある艦内電話が鳴っているのに気付き受話器を取る藤田。

 

藤田「はい。」

副長「艦長、艦橋にお上がり願います。艦の修理状況についてご確認を。」

藤田「...分かったわ。」

副長「いつもの夢ですか?」

藤田「...よく分かりますね。」

副長「落ち着かない声色(こわいろ)と息遣いで分かりますよ。何年の付き合いだとお思いです?三木艦長とも知り合いの私ですよ?」

藤田「...そうでしたね。」

副長「ご無理なら私が引き続き指揮を...」

藤田「いえ、10分後にはそちらに行きます。」

副長「了解です。お待ちしておりますよ。」

 

通話を終え受話器を置く藤田。両手で頭を抱え「大丈夫、大丈夫よ幹夫さん...私ちゃんと守るから...」と息を殺す様な声で少し苦しんだ後、言われた通り10分で身嗜みを整え艦橋へと足を運んだ。

 

≪すずつき≫

第1艦橋

 

参謀「艦長上がられます。」

藤田「報告って何です副長?」

副長「前回の戦闘により軽微ですが左舷に損傷が見られます。さらに波動エネルギーバリアを全開にした為に波動エンジンの方にも負荷が掛かったせいか不調だと先程機関長から。」

藤田「修理はできそうですか?」

副長「舷側部分ならなんとかできますが機関系となると...現在修理待ちで今は≪ヤマト≫が受けております。」

 

そう報告を受けた藤田は右の方を見やる。第1特別派遣調査隊、通称「第1特派隊」旗艦≪ヤマト≫が同隊所属の高速戦闘支援艦≪まみや≫を左舷に接舷し航行しながら修理と補給を受けていた。尚、≪すずつき≫の同型で姉妹艦の≪ふゆづき≫は既に応急修理を終えパトロール艦≪いすず≫、戦闘空母≪たいほう≫と共に警戒に当たっている。

 

≪ヤマト≫

中央作戦室

 

島「真田さん。修理と補給はどんな感じですか?」

真田「うん、樫野応急修理長の報告では≪まみや≫から資材の提供と消耗品の補給を受けて応急処置程度は済ませてある。だが、波動エネルギーバリアを使用した時の機関への負荷がデータでシミュレートしたよりも高かったようだ。」

太田「まだ航海も始まったばかりなのにあそこまでの戦闘をする事になるとは思いませんでしたよ。」

南部「ダゴンの野郎も取り逃したわけですからね。今度あったら絶対に逃しませんよ!」

古代「ハッハハ、熱くなり過ぎは良くないがその時は頼むぞ南部。しかし、その様子じゃ一度どこかに立ち寄って念入りに修理と補給をする必要があるな。これから先、我々にとってはまた未知の宙域を進む事になるんだしな。」

 

第1艦橋で現在の修理・補給状況と今後の航海の方針を決める≪ヤマト≫艦橋クルーの面々。そこにピピーッ!×2と通信の電子音が響く。相原がコンソールの側に立ち寄りヘッドセットを身に付けて機器を操作する。

 

相原「ッ!艦長、SOS(救難信号)を受信しました。防衛軍緊急標準コード999(スリーナイン)。」

古代「なに⁉︎相原、どこからの通信だ?」

相原「ケンタウルス座アルファ星系の第4惑星...本艦の針路上です。」

山崎「真田技師長、ケンタウルス座アルファ星といえば確か...。」

真田「えぇ、我々の担当区域に入っていた【地球連邦】の開拓圏最辺境の星です。万年筆のペン先の先端等に使用される"オスミウム"と呼ばれる希少な金属資源が豊富に含まれている惑星でその採掘基地とそれを守る小規模な防衛軍の基地と守備隊も駐留している。だが居住には適さない星だ。そうだったな副長?」

島「えぇ、自然環境が厳し過ぎるからだそうです。」

雪「艦長、SOSを発信してるなんてただ事じゃないわ。きっと何かあったのよ。」

真田「うん、雪の意見には同感だな。それにその惑星には確かこちらも小規模だが宇宙船用のドックもあった筈だ。修理と補給も受けられるかもしれんぞ。」

古代「そうですね。よし、急行しましょう。念の為、総員配置!相原、全艦にもそう伝えてくれ。」

 

第1艦橋クルーが全員持ち場に戻るべくエレベーターから出てくる。その中には交代の為に来た操舵手の北野の姿もあった。

 

北野「あ、島先輩...いえ副長。」

島「ハッハハ、そんなに畏(かしこ)まらなくていいよ。操舵をしっかり頼むぞ北野。」

北野「は、はい!」

島「北野!」

北野「はい...?」

島「いや、すまん。なんでもないよ。」

北野「...?」

 

何かを伝えるべく操舵席に走る北野を呼び止めた筈の島だったが、なぜか言うのをやめてしまう。不思議に思いつつも北野は席に着き、その様子を艦長 古代も見て不思議に思った。

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バーナード星系 第1惑星

【ガルマン帝国】前線基地 地下艦船ドック

主力中型戦闘艦≪ダーゴルンⅢ≫(第18装甲師団旗艦・前線基地司令部兼任)

艦橋

 

ガイデル(東部方面軍司令本部要塞からの映像通信)『なにぃ⁉︎師団の三分の一の戦力を喪失しただと⁉︎」

 

その頃、≪ヤマト≫率いる第1特派隊の調査対象の惑星バーナード星はなんと【ガルマン帝国】の前線基地であり第18装甲師団司令ダゴンは自身が所属する東部方面軍の司令ガイデルから師団の戦力喪失の叱責(しっせき)を受けていた。

 

ダゴン「はっ、誠に以って面目次第もございません...(汗)」

 

ガイデル『田舎惑星のたかだか6隻編成の艦隊と数十隻程度の増援に超近代装備の一個師団がしてやられた...これをもしデスラー総統のお耳にでも入ったらどうなることか...。』

 

ダゴン「あぁッ... ...!」

 

ダゴンの顔が一気に青ざめる...。それもその筈、いくら現在のデスラーが「恐怖の3回ルール」を適用したとはいえ失敗の内容次第で即処刑だったケースもなくはないのだ。どんな目に遭うのか想像もつかない。

 

ガイデル『まぁだが、ゔぅん(咳払い)!ラム艦長の≪ラジェンドラ≫率いる【バース共和国】旗艦艦隊を壊滅させた事に免じて総統に報告するのは勘弁してやる。とりあえず今はその≪ヤマト≫とか言う地球の艦と艦隊の事は放っておけ。今はまず【バース共和国】本星への侵攻・上陸作戦に備えよ。もうすぐ帝国本星から攻略用の空母機動大隊と揚陸師団それぞれ一個部隊が到着する。それまで師団の再編成を行え、以上だ。』

 

ダゴン「ははぁ...!」

 

ガイデルの温情により総統への報告を免れ内心少し安堵したダゴンであったが、同時にその胸中は≪ヤマト≫に対する激しい憎悪と敵意と殺意と執着心も同居していた。

 

ダゴン「さ、探せぇ!探せぇいッ‼︎≪ヤマト≫の予想針路的にこのバーナード星系を通る筈だ!偵察大隊を出して探し出し、この星に引き付けるのだぁッ‼︎」

 

ダゴンは部下に悲鳴の如く恐怖に叫んでるような声で命令を下す。ガイデルの【バース共和国】本星攻略の命を無視し独断で≪ヤマト≫と率いる艦隊を撃滅すべく動き始めるのだった。

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≪ヤマト≫

第1艦橋

 

太田「ケンタウルス座アルファ星系に到達。右舷前方に第4惑星を肉眼で確認...。」

古代「雪、メインパネルに惑星周辺の映像を拡大投影してくれ。」

雪「了解...スクリーン出ます。」

 

≪ヤマト≫のメインパネルに第4惑星採掘・軍事基地上空の宙域の映像が表示される。そこには戦闘があったのであろう残骸が浮遊していた。

 

南部「酷い有様だな...!戦闘衛星が※デブリと化してるぞ...!」

 

※ゴミや破片を意味する単語。中世のフランス語が語源。

 

島「ん?戦闘衛星の残骸の中に見慣れないのがあるな...あれは...艦か...?」

真田「あれは無人艦隊だな...新型の無人迎撃艦隊指揮管制艦と半自動機動迎撃艦だ。防衛軍が戦闘衛星に代わる惑星防衛用の兵器として自動超弩級戦艦級と自動重駆逐艦級のデータを反映して作られたものだ。「デザリアム戦役」でコントロールセンターを破壊され行動不能になった事を反省し少人数だが有人の指揮管制艦が小型の機動迎撃艦を管制し防空任務に当たるというコンセプトだ。」

島「過ぎた事ですが、関わっていた身としてはもう少し早く実用化して欲しかったですね。

ん?艦長...戦闘衛星の残骸から左の方向...あれは【ガルマン帝国】と【ボラー連邦】もとい【バース共和国】の艦の残骸じゃないのか...?」

古代「ッ!」

 

古代が島の言った方向を見やると確かに破壊され一部は原型を留めてないとはいえシルエットや色は間違いなく緑色は【ガルマン帝国】青色は【ボラー連邦】及び衛星国【バース共和国】の艦だと判別できる。先の第11番惑星宙域の戦いでダゴン率いる【ガルマン帝国】第18装甲師団に執拗に攻撃され無念にも散った【バース共和国】ラム艦長の姿が脳裏に浮かび「きぃぃ...!」と握り拳をして悔しむ表情を浮かべる古代とその後ろ姿をこっそり心配する雪だった。

 

古代「...相原、第4惑星の基地と連絡を取ってくれ。この様子なら基地もやられているかもしれんが、SOSを発信してるなら繋がる筈だ。必要なら降りて救援に駆け付けるぞ。」

相原「了解です。」

 

その後、基地の司令官と連絡を取り「突如二つの所属不明勢力がワープアウトして来て戦闘になり、その際に超長距離タキオン通信衛星及びその中継衛星も破壊された為、防衛軍司令部に繋がらなかった」こと「基地も軌道爆撃を受け一部が破壊され死傷者も出たが、幸い艦船ドックは無事だ。修理に使ってくれて構わない」との報告を受け先の戦闘で傷付いた≪ヤマト≫、≪ふゆづき≫、≪すずつき≫が入渠(にゅうきょ)することになり、残りの艦は惑星の軌道上で警戒任務に就くことになった。負傷者の治療、基地及び通信設備の応急処置など作業は約半日続いてようやく落ち着くことができた。

 

≪ヤマト≫

艦長室

 

古代「総員に告ぐ。本艦は修理のため補修要員以外の半舷上陸を許可する。また、地球に残っている者達に連絡を取りたい者は申し出てくれ。通信を許可する。以上だ。」

 

古代の計らいに乗員達が歓声を上げる。久々の上陸に加え地球に残して来た親兄弟息子に娘に恋人夫妻に連絡を取って良いと言うのだ。普段個人的な通信は固く禁じられている軍艦勤務においてこれは嬉しくない人はそういないだろう。

 

雪「良い配慮ね、古代君。皆んなも喜ぶと思うわ。」

古代「ここは地球の勢力圏内ギリギリだからな。ここから先へ行くともう地球との通信はできない。最後になるかもしれないからここで皆に残して来た者達の顔を見て言葉を交わしてもらいたいんだ。」

雪「(古代君...)」

 

かつての「イスカンダル航海」に於いても≪ヤマト≫初代艦長 沖田十三の計らいで地球との通信を許可された時のことを思い出す雪。古代を何度も探し呼び出しても通信をしないのを不思議がっていたあの時、両親を亡くし唯一の肉親の兄・守(後に【イスカンダル】にて生存したいた事が判明)のことを思い出しなぜ古代が通信を拒んでいたのかそれまで忘れていた自分は酷いことをしていたと涙したのことは昨日の事のようだ。そんなことがあったからこそ、古代は「今が自分がそれをやる時だ」と艦長の使命として命じたことに雪は複雑な想いであった。そんな彼を背後からそっと優しく抱き締める。

 

航空隊控え室

 

椎名「って訳だそうだけど、あなたは行かないの?揚羽君。」

 

艦長の艦内放送を聞いていた航行隊の椎名は後輩の揚羽に質問する。

 

揚羽「自分は退路を絶ってきましたから。どうせ父は会社を継げという話しかしません。それ以前に≪ヤマト≫に乗るのを反対されて反発して家を出てったんです。今更何を話せば良いか...。」

椎名「私の両親ね。「ガミラス戦争」の時の遊星爆弾で死んだの。」

揚羽「...ッ⁉︎」

椎名「その時、進路の事でちょうど喧嘩してたの。謝るどころか「さよなら」も言えなかったわ。だからね、顔を見れる時は見て、喋れる時は喋って、会える時は...会っておいて...。」

 

そう先輩に言われたんではしないわけには行かないと、手に持ったジュースの紙コップを置き、一礼をして通信室に向かう揚羽。後輩がその気になってくれたのを見て「良かった」と微笑む椎名だった。

 

訓練シミュレーター室

 

北野「くぅっ!...急速反転...!」

 

その頃、北野は操舵訓練のシミュレーターを操作していた。外見的にはゲームセンターにあるレーシングゲームの筐体(きょうたい)である。これも揚羽コンツェルンが開発したものらしいが、本筋にあまり関係ない事柄な為、詳細は省かせていただく。たまたま近くを通っていた島が訓練に精を出す後輩の様子を見て足が止まり、そのまま部屋に入る。

 

島「おう、やってるな北野。」

北野「あ、先輩!いた副長‼︎」

島「敬礼は良いよ。お、もう少しで俺と太田のスコアも抜けそうだな。」

北野「いえ、ブランクがあるせいかこの先のモードがかなりハードでして進めないんです。僕は島先輩の様な繊細な操舵能力や太田先輩の様な大胆なエンジン操作の才能はありませんから...。」

島「ハッハハハ、そう謙遜(けんそん)するなよ。【イスカンダル】でのゴルバとの戦いで俺の代わりに操舵してみせた時の様にやってくれればいいさ、それに俺の見た所その時よりかは練度が上がってるとは思うぞ。その調子で頑張れよ。」

北野「は、はい!ありがとうございます‼︎」

 

元気よく返事をし再びシミュレーターに没頭する北野の後ろ姿に、島は後輩の成長と共に少し寂しさも感じつつ部屋を後にした。

場所を移して艦内廊下。特に目的の場所もなどなく見回りも兼ねて歩く古代。歩く視線の先に土門の姿がある。なんだか浮かない顔だ。悩みがありそうかな?と声を掛けようとした時、「古代艦長?」と背後(うしろ)から声を掛けられ振り向くとそこには藤田艦長の姿があった。

 

藤田「巡回、お疲れ様です(通常軍式敬礼)。」

古代「あぁ、これは藤田艦長(ヤマト式敬礼)。」

 

廊下でバッタリ会う二人。藤田は先の戦闘と修理状況の報告の為に≪ヤマト≫に乗艦していたのは古代ももちろん知っている。

 

藤田「古代艦長...先の戦闘では、申し訳ありませんでした!」(深々と頭を下げる)

古代「どうしたんですかいきなり?何も謝られるようなことは...。」

藤田「いえ!敵の陽動に危うく引っかかり、護るべき≪ヤマト≫に大きな損傷を与えるところであっただけでなく、それを防ぐべく自艦を損傷させお手間を取らせてしまったことです!」

古代「ど、どうか頭を上げてください!あなたの落ち度では...それに≪すずつき≫がちゃんと守ってくれたのは私を含め皆も知っていますから...。」

藤田「いえ、今後この様なことがないよう一層用心し努力して参らなければ...でなければあの人に...」

古代「あの人...?」

藤田「ッ!い、いえなんでもございません!失礼致します‼︎」

 

頭を上げまた敬礼をし去っていく藤田。その顔には悔しさが目には若干涙が見えたのは一瞬だったとはいえ古代も分かった。

 

古代「藤田艦長...。」

水谷「?どうかされましたかな?古代艦長。」

古代「あ、水谷艦長。」

 

古代はいつの間にか背後(うしろ)に立っていた水谷艦長に声を掛けられ、こちらにもヤマト式敬礼し水谷も通常軍式敬礼で応対する。

水谷「なるほど、藤田艦長のことですな。う〜ん、少し話をしませんか?ここではなんです。士官室にでも。」

古代「は、はい。」

 

士官室

 

平田「では、ごゆっくりどうぞ。」

古代「ありがとう平田。」

平田「いいえ。」

 

場所を移して士官室。平田は2人に紅茶を入れ退室する。古代はいつも通りのレモンティーにし水谷はストレートでそのまま、まず一口(ひとくち)を口に運び飲む。

 

水谷「あぁ、美味いもんですな。≪ヤマト≫は紅茶も一流とみえます。」

古代「水谷艦長、早速お聞かせ下さい。藤田艦長のことです。」

 

水谷は紅茶の味と香りを少しの間だけ楽しんだ後、古代が話を聞きたいと言うと表情を変え手に取ったカップを皿の上に置く。

 

水谷「うん、君は巡洋艦≪すくね≫を知っているね?」

古代「ッ!」

 

古代はその艦名を知っている。防衛軍〇一(ゼロイチ)式巡洋艦 冥王星基地駐屯艦隊所属 日本艦籍 ≪すくね≫。4年前、所謂「テレザート航海」に於いて叛乱の疑いが晴れた≪ヤマト≫に対し藤堂長官が同行させるよう命じた艦だ。宇宙気流帯に強制ワープアウトした影響で波動エンジン等に損傷を負って戦闘不能に陥った≪ヤマト≫を【白色彗星帝国】のゴーランド提督が率いる第1戦闘艦隊 特殊ミサイル艇師団の攻撃から庇うべく同じく損傷を負っていた≪すくね≫はミサイル攻撃を身を挺して守り爆沈した。

 

古代「...はい、それでその≪すくね≫と藤田艦長がどう繋がるのですか?」

水谷「うん、実は艦長の三木幹夫と彼女は恋人同士でね、婚約者でもあったんだよ。」

古代「ッ!(三木艦長と...藤田艦長が...⁉︎さっき言っていた"あの人"ってのは三木艦長のことだったのか...)そうだったんですか...。」

水谷「プライベートな事ですからな。私は2人の教官だったから知っていたわけではなく、2人の同期達もその仲の良さは皆周知の事でした。彼が亡くなったと聞き言葉にできないような悲鳴を上げて綺麗な黒髪が真っ白に染まっていく姿は今でも思い出せます。」

古代「なら我々の事を...」

水谷「憎んでいると...?いいえ、彼女は三木艦長がどういう人か知っていました。戦闘及び航海レポートをちゃんと見なくても任務を果たそうとしたことは理解しています。だからあなた方≪ヤマト≫を恨んではいません。

そうでなければ藤堂長官に直談判までしてこの調査艦隊に配属させるよう頼んだり、身を挺(てい)して≪ヤマト≫を守ったりしませんよ。」

古代「あ、えぇ...そうですね...。」

 

なんだかどエライ話を聞いてしまったと感じずにはいられない古代。だが同じ艦隊の仲間である。プライベートの事とはいえ、知っておくに越したことはない。なにしろ≪ヤマト≫を救ってくれた人の関係者ともなれば尚更だ。

 

水谷「そんな事もあったし、元来(がんらい)彼女は実直過ぎる所があるのは古代艦長もご存知だとは思います。時折声を掛けてやってください。彼女の為にもなる筈です。」

古代「分かりました。話してくださってありがとうございます。」

 

古代と水谷が士官室で話をしてる頃...島の姿は≪ヤマト≫の艦内食堂にあった。訓練シミュレーター室を出た後、特に当てもなくぷらぷらとしていたら何やら騒がしい声が聞こえて来たので立ち寄ったのだ。すると数人の戦闘班の面々が佐渡先生じゃあるまいし勤務中だと言うのに酒瓶を開け宴会紛いなことをやっていたのだ。艦内にいる者は非番以外は任務に就かなければならない。これは副長の自分が注意せねばと歩み寄る。

 

島「コラァッ!酒を飲んで良いとは艦長は許可してなかったぞ‼︎」

戦闘班員A「なんでなんでぇ副長兼航海長さんじゃねぇですかい⁉︎」

同B「お堅ぇこと言わねぇでどうれす一杯?」

 

既に出来上がってるらしく明らかに呂律が回っていない口調だ。副長としてこれを許すわけにはいかないと「いいかげんにしろ!」と差し出された酒瓶を取り上げる。

 

戦闘班員A「な、なにしやがんだよ⁉︎」

島「今すぐ自身の持ち場に戻れ!」

戦闘班員A「けっ!連れねぇやっちゃなぁ‼︎」

同B「艦長の命令は聞くが、「腰巾着」のあんたの命令は聞けねぇな!」

島「なっ⁉︎おま...」

???「おいちょっと待て、聞き捨てならねぇな今の言葉...。」

 

と声を上げたのは島と酔っぱらい戦闘班コンビの話を側で休息しながら聞いていた航海班員達だった。

 

航海班員A「相原通信長と並ぶ「≪ヤマト≫の良心」たる我が副長兼航海長を「腰巾着」扱いとはいただけねぇな!」

同B「お前ら「無鉄砲」の戦闘班が戦えるように舵取りしてんのは俺たちなんだぞ!」

戦闘班員A「俺らが"無鉄砲"だと⁉︎」

航海班員A「そうだよ!下がってろよボケナス‼︎」

戦闘班員B「テメェらこそ引っ込んでろよッ‼︎」

 

大砲屋である戦闘班に対し「無鉄砲」とは気の利いた悪口だなと感心してる間もなく。言い争いがヒートアップした挙句殴り合いの大乱闘に発展する≪ヤマト≫食堂。島はやめさせようとするも乱闘の規模は食堂全体までに大きくなりとても1人では手がつけられずですぐに止めるのをやめてしまう。側を通りがかった佐渡先生が乱闘の余波で投げ飛ばされた流れ弾ならぬ流れテーブルをぶつけられ壁にぶつかって倒れる。彗星帝国との戦いの時も当時乗艦していた空間騎兵隊の面々がよく艦内でクルー達と喧嘩沙汰になっていたのでもう慣れなのか怒る気力もなくやれやれという感じで立ち上がる先生。乱闘のど真ん中でポツンと同じくやれやれしてる島を見かける。止めんかと言おうとしたが、その顔にどこか寂しげな雰囲気を感じた為、言うのを止める。

 

士官室

ピピッー!×2(艦内電話の電子音)

 

古代「(ガチャッ)艦長だ。あぁ太助かどうした?...なに⁉︎食堂で乱闘騒ぎ⁉︎分かったすぐ行く!(ガチャッ)

水谷艦長、申し訳ないがここで失礼致します。お話ありがとうございました!」

水谷「あぁいえいえ、こちらこそお話できて良かったですよ。艦の大事です。私に構わずどうぞ行ってきてください。」

古代「はい!」

 

互いに敬礼を交わし、古代は走って士官室を飛び出して行った。

 

水谷「(沖田さん...あなたの育てた息子は大した艦長に成長しておいでですよ...)」

 

水谷は帽子を被り直し、心の中で亡き先輩に報告するのだった。数分後、古代は食堂に到着する。廊下からでもその喧騒さは伝わる程のどんちゃん騒ぎだ。廊下には佐渡先生があぐらをかいて一杯やっていた。「すまんがありゃ手出しできん。島の奴なら食堂のカウンターにおるよ」と言われ喧嘩の中を掻き分けてカウンターを目指し抜け出すとそこには瞼を閉じてカウンターテーブルにもたれかかってる島の姿があった。

 

古代「おい島!なんで止めないんだ⁉︎副長だろう!」

島「止めれるならとっくに止めてるさ...。」

古代「やめ...」

島「古代!」

 

古代が止めるよう言いかけた時、島が静かな声でそれを止める。見つめる2人...そこにそれぞれ戦闘班と航海班所属の人間がそれぞれ古代と島の下に飛ばされてくる。

 

古代「島、しばらく振りのストレスとエネルギーの発散だ。大目に見るか!」

島「古代!お前...」

 

次の瞬間「そぉらぁ!」と同じタイミングで自分達の下に飛んできた乗員をそれぞれ殴り飛ばす古代と島。互いに全く同じことをして見やり「アッハハハハ!」と笑い出す2人。そこにドォンッ!と艦全体を揺れ動かす程の衝撃が走る。それを感じ取った古代と島そして喧嘩真っ最中のクルー達がそれに驚き止まる。その次は警報。♪ピロピロピロプゥイ~ン!といつもの特徴的なのが鳴り響く。

 

島「な、なんだ⁉︎敵襲か⁉︎」

古代「艦橋に戻ろう島!みんなも総員配置だ‼︎」

その場にいる乗員達「は、はい!」

 

食堂から一気に人が出ていき、それまでの喧騒振りが嘘の様に静かになった。そんな中、1人取り残された佐渡先生は廊下でまだ酒を飲んでおり「今回はわしの出番はなかったようじゃの、感心感心」と一言と溢し、またグラスに酒を注いだ。

 

艦橋に駆け足で戻ってきた古代と島。それを見て「艦長、続いて副長上がられます!」と告げる雪。

 

第1艦橋

 

古代「相原!状況は⁉︎」

相原「あ、艦長!本惑星の軌道上に敵が現れました!エネルギー及び通信パターンは【ガルマン帝国】ダゴンの18装甲師団のものですよ‼︎」

古代「なんだって⁉︎」

島「以前の戦いの雪辱戦を挑みに来たんだな⁉︎」

太田「現在、軌道上に待機している≪いすず≫、≪たいほう≫、≪まみや≫が生き残った戦闘衛星と無人迎撃艦隊と共に交戦中です!」

 

アルファ星系・第4惑星軌道上

戦闘空母≪たいほう≫

第2艦橋(戦闘指揮艦橋)

 

副長「こちらを叩くには戦力は少ないように思えますな。」

能登「そうね、でも今相手してるのはどうやら囮みたいよ。」

 

【ガルマン帝国】軽型戦闘艦6隻からなる艦隊がいきなりワープアウトをしてきて攻撃を仕掛けて来た。第1特派隊副旗艦≪たいほう≫艦長として指揮を執る能登。だが、これが威力偵察で今相手してるのは囮だとすぐに気付く。なぜなら敵艦隊に積極性がなくその後方からミサイルが飛んで来ている。軽型戦闘艦でこちらを引き付け本命の艦隊がミサイルで遠距離攻撃...実にシンプルだ。

 

能登「レーダー、ミサイルを撃ってる敵の位置は掴めてるの?」

電探員「はい、≪いすず≫が既に捉えています。さすがですね井口艦長。」

能登「そうね。≪いすず≫と≪まみや≫そして戦闘衛星と無人迎撃艦隊は引き続き目の前の敵を相手にしつつミサイルを迎撃!本艦は航空隊発艦!後方のミサイル攻撃艦隊を攻撃します‼︎」

 

≪ヤマト≫

第1艦橋

 

島「能登艦長、さすがの対応の早さだ。軌道上の敵の相手は任せて良さそうだぞ艦長?」

古代「そうだな。こっちは≪たいほう≫達が撃ち漏らしたミサイルを迎撃するぞ!南部!土門!やれるか⁉︎」

土門「もちろん!やってやりますよ‼︎」

南部「ですが艦長...≪ヤマト≫や同じくドックに入渠してる≪すずつき≫と≪ふゆづき≫はまだ修理を終えてませんから動けませんよ!」

 

(艦内無線)

真田『こちら機関室!技師長 真田だ!』

 

古代「真田さん!」

 

真田『まだ≪ヤマト≫は修理を終えていない!今は樫野応急長と共に修理を続けているが波動エンジンが動かせない!スーパーチャージャーの動力も点検のため切っている。補助エンジンの出力でどうにか艦の機能が動いてる状態だ!』

 

古代「そんな...それじゃあショックカノンが撃てないじゃないですか!」

 

真田『大丈夫だ...こんなこともあろうかと思って用意していた新兵器を試す時が来たようだ。「コスモ三式弾」だ!』

 

古代「コスモ...三式弾...?」

 

真田『そうだ!波動カートリッジ弾の技術を応用し対航空機や対地の軟目標等を攻撃する為の実体弾形式の散弾だ。既に≪ヤマト≫の砲塔には回してある。いつでも装填できるぞ‼︎』

 

古代「分かりました!南部!さっそく射撃用意だ‼︎」

南部「了解!主砲!コスモ三式弾装填!煙突ミサイルは近距離防空ミサイルを装填して待機‼︎土門!パルスレーザーの方は任せたぞ‼︎」

土門「は、はい!」

 

主砲と副砲を左舷に向け砲身の仰角を上げる≪ヤマト≫とそれに続く同じく入渠中の≪すずつに≫と≪ふゆづき≫。≪ヤマト≫の砲塔内ではモードを実弾装填式に変え、装填機がコスモ三式弾をガシャンコンッ!と薬室に装填していく。

 

南部「照準よし!」

古代「コスモ三式弾!てぇーッ‼︎」

南部「発射!」

バヒューンッ!ババババババヒューンッ!!と放たれるコスモ三式弾。信管は近接信管となっており弾頭内のセンサーが飛来する敵ミサイルに反応して至近で爆発圧縮された波動エネルギーが拡散し青い礫(つぶて)となってミサイルの束を一気に命中爆発四散させる。

 

南部「すごい!さすが真田さんだ‼︎」

古代「油断するな!まだ飛んでくる!土門!撃ち漏らしたのはパルスレーザーで頼むぞ‼︎」

南部/土門「了解!」

 

高高度はコスモ三式弾、撃ち漏らしたのは煙突ミサイルで、さらに外せば最後の砦は対空パルスレーザー砲群で残らず叩き落とす。対空兵器が充実している≪ヤマト≫だが≪すずつき≫と≪ふゆづき≫はそうもいかない。主砲は対艦戦を意識した戦艦クラス並みの物である為に速射には向かず、パルスレーザーも格納固定式であるので仰角がそう取れない。そういうわけで速射は利かないが頼れる主砲と六連装ミサイルランチャーでなんとかやっている訳だ。そんな手数の問題を抱えた1隻≪すずつき≫が危機に陥る。主砲そしてミサイルで落とし損ねた敵のミサイルが≪すずつき≫の艦橋に向かう。「しまった...!当たる...‼︎」と艦長の藤田を含む艦橋クルー皆が直撃し死を覚悟した。しかし済んでのところでそのミサイルは破壊された。どうやら≪ヤマト≫のパルスレーザー砲の掃射によるものだった。「ふぅ...間に合った...(汗)」と安堵する土門に「よくやったぞ土門!」と南部から称賛される。

 

≪すずつき≫

第1艦橋

 

副長「艦長!≪ヤマト≫がやってくれましたよ‼︎」

藤田「え、えぇ...そうみたいね...。」

 

また守るべき相手の手を煩わせてしまったと感じ少し落ち込む藤田。そこに「艦長、≪ヤマト≫より通信。古代艦長から個人通話の要請です。」と通信長から報告が来る。「古代艦長が私に?回線を回して、ヘッドセットを用意します」と藤田は艦長席の側にある引き出しからヘッドセットを取り出し回線を繋げる。

 

(個人無線通信)

古代『藤田艦長。艦に被害はありませんでしたか?』

 

藤田「え、えぇはい。損害はありません。援護、感謝致します...。」

 

古代『藤田艦長。」

 

藤田「は、はい...なんでしょうか...?」

 

古代『我々≪ヤマト≫は守られるだけの艦(ふね)ではありません。あなたとあなたの艦も守られるべき大切な存在だというのを忘れないでください。あなたと≪すずつき≫は良くやっています。』

 

藤田「...ッ!...は、はい!ありがとうございます...。」

 

古代にそう言われ表情を明るくし返事をする藤田。副長や他の≪すずむき≫艦橋クルーもそれを見て「良かったですね」と内心言い微笑んだ。

 

その後、敵のミサイル攻撃は止み囮役に徹していた艦隊も撤退したのを軌道上で戦っていた≪たいほう≫らが確認したという。再び基地に損害が発生し負傷者が出た為、病院船機能も持つ高速戦闘支援艦≪まみや≫が基地に降り基地と負傷者の応急処置を施した。一通り済ませた後、基地司令の厚意により補給品をたんまり頂いた堀江艦長は「こんなにいただけません(汗)」と断っていたが、「≪ヤマト≫と皆さんの旅は遠大でしょう。持てる限りお持ちなさい」と言ってお言葉に甘えて物資を満載し基地を後にした。修理を終えた≪ヤマト≫、≪すずつき≫、≪ふゆづき≫も同じくドックから発進し基地要員に敬礼をして別れを告げたのだった。

現在、第1特派隊はケンタウルス座アルファ星系を離脱し、探査航海再開すべく目的のバーナード星に向かっていた。

 

≪ヤマト≫

中央作戦室

 

真田「全員揃っているな?これを見てくれ。」

 

足下のモニターに何かしらの波形パターンと座標データらしき物が表示される。

 

真田「≪いすず≫が観測した敵の撤退方向と※空間歪曲のエコーを分析してみた結果...敵はバーナード星方向へと向かったことが分かった。」

古代「ッ⁉︎島、バーナード星は確か探査目標の惑星だったよな?」

島「あぁ、まさか...既に【ガルマン帝国】の基地と化していたのか...?」

真田「そこまではまだ分からん。だが空間歪曲のエコーから算出されたワープ距離からみて、まず間違いないだろう。」

 

※宇宙船等がワープアウトをする際に前方に放出される波紋状のエコーのこと。そのエコー形状はワープの距離によって左右され、これを分析する事によってその宇宙船が「どこからどのくらいの距離を飛んできたか」を導き出す事ができる。3年前の「デザリアム戦役」で≪ヤマト≫がこれを用い防衛軍第7艦隊旗艦(当時)≪春藍≫が観測したエコーを解析し地球から約20万光年にある【暗黒星団帝国】の中間補給基地を発見し、そしてさらに20万光年先の二重銀河、敵本星へと至る事ができた。

 

自分達がこれから向かい探査すべき星が既に敵の基地になっているのに驚く一同。さらに気になることがあると古代はその事に言及すべく口を開く。

 

古代「真田さん。あの攻撃、そして空間歪曲のエコーをわざと残したような感じを考えると...」

真田「うん...罠の可能性は十分にあるだろう。」

島「どうする艦長?航路を変更してバーナード星を探査予定から外すこともできるが...」

古代「いや、せっかくここまで来たんだ。移住可能かどうかはちゃんと確認しておきたい。それに、地球への侵攻を意図しているような基地をみすみす見過ごすわけにはいかない。艦隊の針路はこのままで行く。相原、アルファ星系第4惑星基地に連絡して生き残った無人迎撃艦隊指揮有人艦に通信の中継をお願いして防衛軍司令部の藤堂長官に繋ぐよう言ってくれ。もしバーナード星に基地があるなら、まだ通信ができる内に叩く許可を頂かないとな。」

相原「了解です。こういう時、【暗黒星団帝国】の通信能力の高さが羨ましいと思えます。」

真田「まぁそういうな。技術を得られてもデザリアム戦役が終わった後、地球はまた復興優先になったんだ。最新の通信衛星等の普及や敷設が進まんのは仕方ないだろう。」

土門「ま、待ってください!わざわざ罠に飛び込むんですか⁉︎もし敵がわんさか待ち構えていたら...」

太田「アッハハ、≪ヤマト≫なら日常茶飯事なことだよ。」

南部「心配するなって、その時は俺とお前がまとめて蹴散らせば良い話だよ。」

土門「は、はぁ...。」

先輩方の状況への慣れっこぶりに困惑する土門。

 

古代「土門の心配は分かるが、これは避けては通れないことだ。地球への脅威を見過ごすのは≪ヤマト≫の使命に反することだからな。」

土門「は、はい!ご期待に応えれるよう頑張ります‼︎」

古代「ハッハハ、その意気だ。では以上だ、解散!」

 

会議を終えると皆部屋を出て各々の行きたいところへ向かう中、古代は島に呼び止められる。

 

島「なぁ古代。」

古代「ん?なんだ島。」

島「俺はお前に謝らなければならないことがある。」

古代「なんだよいきなり。」

島「さっきの食堂での喧嘩でお前は俺と同じ立場になってくれただろ?お前があの場で喧嘩を止めてそれで収まっていたら副長としての俺の立場がなかったよ。お前が一緒に笑ってくれて助かった...やっぱりお前は艦長の器(うつわ)だよ。」

古代「島...そう言ってくれるのはありがたいが、他に話したいことがあるんじゃないのか...?」

 

それを聞いて島はハッとする。もしかしたらアルファ星系第4惑星に立ち寄る際に、北野に何か話そうとした時にやめた時の自分の表情を見て何か感じ取ってくれていたのかと「さすがだな」と思う島は瞼(まぶた)を閉じた後、またすぐ開いて話し出す。

 

島「古代...実はな、俺は自分自身、副長に向いていないんじゃないかと思うんだ。」

古代「え...?どうして...?」

島「いや、別にお前の指揮下で働くのが嫌ってわけじゃないんだ。だがな、今回の任務で操舵を北野に譲ってからなんというか...今まで居るのが当たり前だった場所に自分がいないのがどうにも落ち着かなくて、北野の成長は同じ班の先輩としてもちろん嬉しいし喜ばしいことでもある。だが同時に...寂しくも感じてる。そんな自分がいるんだ...。」

 

今まで苦楽を共にして来た唯一無二の親友がそんな事を思っていたのかと内心驚くと同時に「もっと早く気付いてやれば...」と悔しがりまだ艦長として自身の詰めが甘いと自省する。

 

古代「島。」

島「ん?」

古代「艦長として命じる。島副長はただいまを以て副長兼航海班長の現職に加え、操舵手の任を与える。」

島「ッ!...古代...‼︎」

古代「俺もお前が操舵席にいないと落ち着かないよ。北野と交代でどうかよろしく頼む。」

 

そう言って手を差し出す古代に「あぁ、もちろん」と島も答え手を出して固い握手を交わす2人だった。そんな美しき2人の友情の再確認を実はまだ部屋の外で残っていた雪はチラ見しながら微笑んでいた。

それからしばらくして場所と話は同じ≪ヤマト≫だが艦橋後方の展望室に移そう。そこには土門が居る。ケンタウルス座アルファ星系第4惑星からはもう随分離れた為、何もない宇宙の虚空を1人眺めている。静かな時間を終わらせるかのような調べが聞こえる。ドアの開閉音だ。ふと見やるとそこには古代艦長が居た。

 

土門「あ、古代艦長。」

古代「敬礼はよせ、今は非番だろ?」

土門「は、はい。」

 

「こんな所に何しに来たのだろう?」と疑問に感じる土門。古代は展望室にあるドリンクサーバーで紙コップを置きドリンクを注ぐ。それを手に土門に「飲めよ」と言って手渡す古代。

 

土門「あ、ありがとうございます。...あの艦長、どうかされたんですか?」

古代「ん?あ、いや、廊下で浮かない顔をしたお前を見かけてな。あっちこっち歩いていたとも聞いた...たぶんお前も俺と同じことしてるなと感じてな、様子を見に来たってところさ。」

土門「ッ!」

 

土門は前に古代が自分も両親を亡くした孤児(みなしご)と聞いており同じ境遇の者同士と親近感を感じていた。家族と通信してよしと言われてもその家族は自分にはもういない。故にその時は非番で特にすることもあてもなくただ艦内を彷徨(うろ)ついていた。「誰にもこの気持ちが分かるものか!」と思いただ1人で居場所がないように勝手に感じながら...艦長にはそれが分かるんだ。だからここに来たとようやく真意に気付く。

 

古代「土門、これから俺は地球に別れを告げるぞ。お前もやれ。」

土門「え?」

 

そう言った古代は手に持ったコップを台に置き、深呼吸をしてから地球がある方向であろう方向に向かって叫ぶ。

 

古代「さよーならぁーッ!必ず帰ってくるからなぁーッ‼︎」

土門「さ、さよーならぁ〜ッ!」

 

古代も比べればつたない感じではあるものの土門も目一杯叫び手を振り地球(ふるさと)にしばしの別れを告げ、再びここに帰ってくると胸に誓うのだった。

 

※最後はここで♪「真っ赤なスカーフ」を流してくださると助かります。




読了ありがとうございました。原作第7話に当たる本話。原作の矛盾や違和感を改変しつつ『初代』第10話と『2199』第7話の要素やオマージュを入れ戦闘よりもドラマパート強めでお送りしています。古代と島が揉める話も古代とのわだかまりではなく島が「自身が副長職に就いたが向いてないのでは?という事に悩み、北野の成長に喜ぶと同時に操舵手の任を離れてしまった事に寂しさを感じる」という風に改変し自身の悩みという事にしました。因みに戦闘班と航海班の喧嘩が始まる前のやりとりは海外ドラマ『ザ・ラストシップ』シーズン3でミラーとオコナーが紆余曲折あって協力関係となった日本人の海賊タケハヤ(演:真田広之)とその仲間を独房から救うべく看守から鍵を盗む為にワザと口論して喧嘩するシーンのオマージュです。
藤田艦長は冒頭からPTSDに悩まされてますね(汗)。私は本来こういう暗いとか重いのは苦手で嫌なんですが、『ヤマト』という作品も軍事に関係している以上は書かないとダメだと思うんです。水谷艦長から話を聞いた古代は気を利かせて藤田艦長を励ましています。少し明るさと周りを無理せずもっと頼る風になって欲しいですね。
【ガルマン帝国】側の話をすると原作だとガイデルは艦隊がコテンパンにされたことに対して怒ってばかりでラム艦長を仕留めたことを褒めてないし何より「≪ヤマト≫は一旦無視してバース星の攻略に注力せよ」となぜか厳命していないのが不自然なのでそこは直しダゴンが≪ヤマト≫への復讐を優先してそれを無視したという形にしました。
「コスモ三式弾」がここで登場です。オリジナルアニメでは設定のみで登場しなかった「対空戦闘用の波動カートリッジ弾」...リメイクでは「三式融合弾」として完全な実体弾になりましたね。原作だとミサイルの迎撃は通常のショックカノンでしたがそれだと非効率で尚且つ対艦戦と変わり映えせずこれまた不自然なのでそこはちゃんと切り替えました。
無人迎撃艦隊指揮管制艦と半自動機動迎撃艦は『永遠に』に登場した方の無人艦隊大型艦と小型艦です。リメイクの『3199』のグラディエーター級とエイジャックス級となり設定が大幅に変わりましたよね?そちらの設定を逆輸入してゲーム版っぽく直しました。『永遠に』の方の無人艦はPS版では登場せず自動超弩級戦艦級と自動重駆逐艦級にリデザインされましたが、本作ではそちらの技術を貰い戦闘衛星の後継という形にアレンジしました。島が「早くこれができてたらな」と言及させることで前作との繋がりも意識させて書いてます。
バーナード星に基地があるかもというのを探知するのも「空間歪曲のエコー」の事が言及されています。PS版を知ってる人なら聞いた事があるでしょう?これも本作が非公式ながらもPS版の世界観を意識してるというのが分かれば幸いです。お次はバーナード星攻略です。どんな戦いが繰り広げられるんでしょうね?ではまたお楽しみに。
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