「では、こちらが今回の報酬になります。お納めください……」
冒険者
「タルホ、やったね。これから大変だけど一緒に頑張っていこうね」
受付で一緒に並んだ少女は自分と同じように嬉しそうにしていた。彼女とは幼馴染と云った関係に当たる。黒色のローブを羽織り頭には大きなとんがり帽子。その大きなとんがり帽子には大きな猫の目が赤い糸でしっかりと刺繍してある。まるで、そう魔術師と云ったらこのような恰好。そして、琥珀色の魔鉱石が組み込まれた杖を携えている。
「ああ。これからバリバリ頑張っていくぞ! 目指すはS級だ」
握りこぶしを天に活き良い行く掲げるとクスクスと周囲から笑い声が聞こえる。二人そろって表情に出た恥ずかしさを隠しながら駆け足で冒険者
冒険者ギルドを出ると、様々な音色が僕の耳に飛び込んだ。ここは公国領第一中核都市フォルスハラ。公国領最南端に存在する。四つ目の大きさを有する
「なぁ、リンネ。腹減ったから飯食い行こうぜ。もう、お天道様が真上だからよ」
「うーん。そうだね。あたしもお腹すいちゃった。タルホ、いつもの処でいい?」
彼女の提案に同意しいつもの大衆食堂にの暖簾をくぐる。暖簾をくぐると同時にいつものように「ヘイ、イラッシャイ」と大将の大きな声が聞こえる。筋骨隆々の
「おう。今回も怪我無く帰ってきたな。よくやったぞ坊主たち!」
その大きな手でオレやリンネの頭をぐりぐりと大笑いしながら撫でてくる。リンネは嬉しそうにしているが、オレはその大きな手を払いのけて云ってやる。
「大きなお世話だって! もう、ちゃんとした冒険者なんだから当たり前だろう!」
「ガハハハッ。何を云ってるひよっこがそう云うのはCランクになったら云うんだな」
払いのけたはずの手がまた、オレの頭をガシガシと先ほどよりも強い力で撫でてくる。今回も逃れそうになかった。
「ねぇ、アーノルドさん。なんか今日はみんな凄いね。何かあったの?」
食堂のテーブルに着き注文したジュースを飲んでいるとふと、店主であるアーノルドにリンネは質問をしていた。オレは周囲を見渡し確かにと思った。普段から騒がしい食堂がさらに今日は賑わいを見せていた。それも誰もかれもがまるで子供のようにだった。
「おん? なんだお前たち知らなかったのか? 何でもよ、魔鉱都市ゼレランドで出たって話だ」
「何か出たんですか?」
そう、アーノルドのにやけ顔に質問したリンネ。
「守護竜ティアマト」
彼のその言葉を聞いた瞬間オレは、
そんな、様子を見ていたリンネが呆れた様に聞いてきた。「ねぇタルホ? その本は何?」と
「なにってお前……そんな決まってんじゃん。見て慄け! 聞いて戦慄しろ! 超怒涛超超究極魔物列伝Vs2だ!」
決まったと云わんばかりにオレはリンネに向かいサムズアップを向ける。
「………ねぇ、アーノルドさん。守護竜ティアマトって、確か伝説上の存在じゃないの?」
「ああ、俺もなその話を聞いた時は何をバカなって思ったさ。最初は荒くれどもの噂ばなしと鼻で笑ったもんだが、ある程度信頼を置ける情報屋がその話を
「なぁ、リンネ…この本……た、高かったんだ。それにね、作者、冒険者究極把握列伝と同じなんだ……凄いだろ……それに頁数も凄いんだぜ……なぁ、リンネぇ。聞いてくれよぉ」
「タルホ…それって伝説上の生物のことも載ってるの?」
「えっ」
唐突にリンネにそんなことを云われたけど……「(そんなのあたりだろ。だって、超怒涛超超究極魔物列伝Vs2なんだぜ)」と思い目次の頁を捜索する。
数ページにも及ぶ目次をゆったりと丁寧に検索していく。まるで、新品の本を捲るかのように昔のことを思い出しながら。そう、アレは雨のひどい日だった。
小さな村の本屋で見つけた、若干だが埃をかぶった超怒涛超超究極魔物列伝Vs2。値段は張ったけど買って貰うことが出来たオレの宝物。抱き枕にしてしまい若干涎や垢で汚れてしまったがオレの大切な相棒。しかし、しかしだ。手を進めど、進めど守護竜ティアマトの項目は見当たらない。苦しい日も悲しい日も嬉しい日もすべて共にした相棒が……。
「の、ノオオオオオォォォ………」
大量の大粒の涙を流しテーブルに伏せる。周囲がどのようにオレを見ていようが関係ない。
「オ、オイ。リンネ……タルホのヤツ、大丈夫か?変な薬草とか拾い食いねぇよなぁ?」
「え、大丈夫ですよ。あの本関係が関わるとああなることが多いので、ほっといても大丈夫です。少しすれば元に戻るはずです。たぶん……」
「の、ノオオオオオォォォ…………………」
その日、その時、珍しくその大衆食堂では客の声が全く聞こえなかったと云う。
聞こえはのは、あまりにも哀しみに塗りつぶされた音だった。
ちなみに、超怒涛超超究極魔物列伝Vs2のお値段はタルホが5年ほど汗水流し雑用で得た値段。
更に余談、超怒涛超超究極魔物列伝Vs2は現在、Vs10まで発行されている。