妾が二代目と共にと寝食を過ごすことになって5年近くが経過したと思う。二代目との出会いは妾にとっては昨日の出来事だった。元より人の子とは理が違うのだ時間の流れもすべてが違う。
「ふん。情けない奴め。ささっと割り切ればいいだろうに。命あるものに死は訪れるのだ。この大馬鹿者め……」
遥か頭上から、巨大な白銀の翼をはためかせ
◆
閑散とした雰囲気を漂わせている冒険者ギルド内にルーナと共に足を踏み入れる。
「あっ、二代目さん、ルーナちゃん。こんにちは。今日は何かお仕事を探しに来られてんですか?」
一週間ぶりにギルドに顔を出した為、施設内をぐるりと見渡しているとハキハキとした耳心地の良い声が耳に届いた。
「おっ、今日はミルが受付担当なんだな」
そうなんですよ。とこれまたニコニコとした表情で元気のよい返事が返ってくる。
ミルと云う少女は、近くの村から住み込みで出稼ぎに来ている
「そうですね……風車技師さんのロンドさんからの依頼と
やはり、戦闘系や護衛任務は報酬面でも非戦闘系に比べ圧倒的でありその為依頼が張り出させるとすぐさま受理されてしまう。
「そうだな……両方とも受けるよ。ロンドさんの依頼はきっと今日中でも大丈夫はずだから、先にミウーダさんの依頼を片付けて、その足でロンドさんの所に行ってくる」
「うう、いつも有り難う御座います」
「…………」
「二代目さん? どうかされました? 何か難しそうな
「あ、いや…。ミル、一つ確認したいんだがここ最近、風車関係の依頼は多くなってるか? 勘違いならいいんだが…」
「ちょっと、調べてみますね」
そう言葉を残し彼女は事務所の方へと消えていった。そして、数分経過して再び姿を見せた彼女は幾ばくかの資料を胸に抱いていた。
「そうですね…確かに二代目さんが仰ったようにここ数か月、件数は少ないですが小さな修理や誤作動の修繕補助の依頼が来てます。確かに珍しい状況ですね」
彼女の返答を頭の隅にしまい込む。ここ数週間、いや、もしかしたら数か月どこか違和感を感じていた。街に吹き込む
◆
冒険者登録タグを提出し依頼を受理してもらう。
さてと、依頼は決まったが
「ルーナ、ってそのジュース誰に貰ったんだ?」
施設内に幾つか設置してあるテーブルでジュースを飲んでいる
「…ご無沙汰しています。トム爺さん」
「ふぉふぉふぉ、うむ。久しぶりだの二代目。元気そうで何よりじゃ」
いつの間にか隣にいた人物に挨拶をする。名をトムファルダと云うこの
彼の経歴を鑑みても公都で裕福な生活が出来るはずだが、
確かに、このでの生活は魅力なモノがある。だが、裕福を捨ててでも得るべきなのかどうか正直、俺には理解できなかった。
年齢を感じさせない覇気を纏った
「ギ、ギルド長! き、緊急……」
「ふむ。フェムト君。いつも云っていることだが、職員が焦りを持っていかん。どんな時でも心を落ち着かせなさい。不安を産み落としてはいかん、冷静に物事が判断できぬようになってしまうぞ」
「は! 失礼しました。トムファルダギルド長。ご報告致します。先刻、
「……(報酬)弾んでくださいよ」
「勿論じゃよ。縁風石と水浄石、炎華石のよくばりセットでどうじゃ?」
にこりと笑い皺を作りながら言葉を零す彼に、そんなにはいらないけどと思いながらも
帰りに、ミウーダさんの薬草採取の依頼もこなせばいいなと考え冒険者ギルドの出入り口に向かう。
出入り口に向かう際に
◆
纏っているジャケットが風に煽られているのが判る。
視界に映るのは波の様に流れる深緑の絨毯。そして、深緑と俺達を隔てるように打ち付けられた背の高い杭。
それらが如何様にも瞬く間に姿を変容させる。それほどまでに
「(……見つけた)」
ゴーグルを介して
正直気が乗らない。だがそんな事を云えないのも理解している。
ため息を、内に殺し機械仕掛けの馬の
◆
荷馬車の中から今自分たちが置かれいる立場を分析すると同時に自分の甘さに対して苛立ちを覚えると同時にやはりこの手の任務には向かないと考えてしまう。
グルニベルデと
依頼難度は下から二番目のEランクだったと記憶している。護衛任務にしては非常に低いランクだった。ギルドがこの難度を付けた理由はこの街道における魔物との遭遇率の低さに起因している。
遭遇率の低さは、グルニベルデと
そして、今回の私たちのパーティーは後者に当たる。
「そんなに気を張らなくて大丈夫だよ。そんな気を張って入たらいざとなったら動けなくなるからね……」
激しく揺れる荷馬車の二台で彼等にそう言葉を零す。無理もない。彼らはまだ冒険者となって一ヶ月だと聞いている。それにまだ、成人となったばかりの少年と少女なのだ。
激しく揺れる荷馬車を追っ手くる
御者に街道を外れるよう指示する。
「リンネ・タルホいいかい? これから戦闘に移るからね。慌てないで自分がすべきこと出来ることをやりきるんだ。そうすれば大丈夫だよ。決して自分の想いを忘れてはいけないよ」
不安を隠しきれていないが判りましたと。琥珀色の瞳の少年と翠色の瞳の少女ががしっかりと私を捉えている。
荷馬車から草原へと下り立ち、子鬼達を迎え討つ。荒々猪に騎乗する子鬼達の数は二十を超える集団だった。
彼等の中に、獣の骨で作成したであろう大笛を持つ青色の子鬼を見つける。恐らく彼がこの集団のリーダー格であろうと判断する。
彼等の数には驚かせられたが、赤色の子鬼が存在しなかったのが嬉しい誤算であった。彼らは
私たちが荷馬車から降り抵抗の意を見せたのを理解したのか、リーダー格の
「
黒く長い髪、信念の宿った灰色の瞳、穏やかに笑う好青年がそこに舞い降りた。
◆
二代目ユリエス・ヴィルザルドと名乗った青年は二十を超える子鬼達の群れを目の前にしても、まるで道端で会った知り合いに気さくに話しかけるような口調でこちらに話しかけてくる。
「…あ、ああ。すまない私はクロードと云う。今回の護衛依頼を受けた冒険者だ」
続いて、リンネ、タルホにも彼は軽く膝を折り目線を合わせ気さくに挨拶をする。この場では非常識な雰囲気を持った彼にリンネ、タルホは呆気に取られていた。
「す、すまない。ユリエスと呼んでいいかな? この場を早く対処したい。御者も不安だろう。どうだろうか?」
「あ、そうですね。すみません。ユリエスで構いませんよ。クロードさんって呼びますね。では、確認としてタルホ君とリンネちゃんはどんなことが出来るんです?」
そう言葉零す、ユリエスに簡単にだがリンネ、タルホの状況を説明する。まだ駆け出しの冒険者でああること。タルホは大楯で防御を専門にすること。リンネは攻撃魔法と補助魔法を扱うことができることを伝える。
「もう、冒険者業を生業としているんですか。俺より若いのに凄いね」
再度、彼はにこやかに笑顔を零した。こんな状況でそんな言葉を零した青年に対しリンネ、タルホがきょとんとしている。
「ユリエスはどんな魔法を使うんだ? 武器の類を持っていない様に見えるんだが……」
改めて、ユリエスを観察する。紺色のジャケットに沢山のポケットがついているカーゴパンツにロングブーツ。装いは冒険者とは見えない。短剣の類を隠し持っているのであろうか?
「俺のですか……そうですね……」
答えを待つ前に、子鬼に背を向けている彼に荒々猪に騎乗した子鬼が襲い掛かる。
「ユリエスさん、危な……」
リンネが警告しようとした瞬間。にこやかに笑う彼を目に私達は言葉を失った。
子鬼が彼を襲うことはなかった。彼の云った魔法だろう。虚空が波打つかのように歪みそこから碧の鎖と黄の鎖が子鬼を拘束する。担い手を失った荒々猪はユリエスを守るために飛び出したタルホの大楯に衝突し気絶した。
「……これが、俺の唯一の魔法です」
彼がそう言葉をこぼした瞬間、再度虚空が歪み赤い鎖の矛先が子鬼の
「術の名は