「部費を稼ぐために通販やろう!」
お姉ちゃんは生徒会、ばしゃめは農作業。のこたんと二人きりのシカ部で静かな時間が過ごせるはずもなく。
「また? ツノ型印鑑ケース結局一部にしか売れなかったじゃない」
「印鑑を使うために一々ツノを外さなきゃいけないのがダメだったと思うんだよね!」
「それだけじゃないと思うけどね。問題は」
「そこで今回はツノ型ヘッドフォンを開発してみました!」
相変わらず行動力の化身ね。
「それ普通のヘッドフォンにツノ生やしただけよね」
「何を言う! 普通のツノにヘッドフォンを生やしたんだよ!」
「ふーん……」
お姉ちゃんなら深追いするけど、私はしないわ。
「というわけで試着してみて!」
「なんで私が……」
有無を言わさず付けさせられたわ。図々しさも相変わらずね。取り付けたのこたんは私の後ろでサイドステップで跳び始めたわ。
「どう!?」
「頭が重たくて落ち着けないわ」
「そう言うと思って……ほら! 今回もツノを外せるようにしてあるんだ!」
「とうとうただのヘッドフォンね」
「これを三本セットで売っておまけにツノ型印鑑ケースも付けるよ!」
「在庫処分もここまで来ると清々しいわね」
「という訳で番組やるよ!」
「手伝わないわよ」
「えっ……そんな……」
「この世の終わりみたいな顔」
オーバーなリアクションで崩れ落ちるのこたん。一々行動に落ち着きがなくて、本当……見てて飽きない。でもしょんぼりしちゃってるし、からかうのはこの辺にしとこうかしら。
「まあ、どうしてもと——」
「話は聞かせてもらいました! 不肖ばしゃめやらせていただきます!」
「おお! ありがとー!」
「…………」
いきなり扉が開かれたと思ったら出ていっちゃった。ふーん……私以外でも全然いいんだ? いや別に。私もいいけどね? ばしゃめはのこたんの一番弟子であって自然な流れというか、なんで私に回ってきたのかという話でもあるし。
「わりぃ。遅れちまっ……ひぃ!? どうしたあんこ!?」
「……ブラッシング」
「へっ?」
「ブラッシング!!」
「は、はい!」
お姉ちゃんに毛繕いしてもらってもモヤモヤは晴れなかった。はぁ……。すぅ……。
「うわあ!? 姉のスカートを吸うな!」
翌日。一見いつも通りのシカ部。だけど私の様子を窺ったお姉ちゃんがのこたんを部屋の隅へと連れ出した。
「えー!? こしあんやりたかったの!?」
「ば、馬鹿! 声がでけえよ!」
「馬鹿じゃないもん! 人と鹿のハイブリッドだもん!」
……のつのつショッピング自体をやりたかった訳ではないんだけどね。
「私そっちのけでイチャイチャかしら?」
「ごめんごめん! でも言ってくれれば良かったのにー。ほら! こしあんの分」
「ヘッドフォンも特に欲しくないわ」
「またまたー」
ヘッドフォンのツノを頬にグイグイと押し付けられ、本人のツノが小気味良くこめかみを叩いてくる。
「お、おい鹿乃子。ちょっとやりすぎ……」
「でもあんこちゃん嬉しそうですよ」
「あれっ!?」
出会った時からあなたは身勝手で図々しくて、人の心にずけずけと入ってきて。そんなあなたに、思わず心を許してしまって。
「わー手が滑った」
「ヌーン!?」
反応が面白くてつい、からかっちゃうけど。あなたは遠慮なんてしないでいつまでも図々しいままでいてね。
「……今度は付き合ってあげるわ」
「本当!? じゃあ早速ツノ型カチューシャを!」
「ヘッドフォンの試作よねそれ」
いつも全力でぶつかってきてくれるあなたがいるから、心地良いの。ふふっ……もうあなた無しでは生きられない体になっちゃったかもね。