IS -Scharlachrot-   作:小糠雨

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Zweites Kapitel -Wert/Werkzeug-
第一一話:甘いカボチャは現の至宝


 

 六月某日、日曜日。

 

 ジギスヴァルトは一夏に連れられ、彼の中学時代の友人だという五反田弾の家に来ていた。

 

 既に脚は完治し、リハビリも終え歩行に支障は無いため本音は留守番だ。たまには男だけで騒ぎたいという一夏の希望もあってのことだが。

 

「……で?」

 

「で? って、何がだよ?」

 

 一夏と格闘ゲームで対戦中の弾が一夏に会話を振った。ちなみにジギスヴァルトはテレビの画面を横から興味津々といった様子で見ている。ゲームなどやったことが無いから物珍しいのだ。

 

「だから、女の園の話だよ。いい思いしてんだろ?」

 

「してねえっつの。何回説明すりゃ納得するんだよ」

 

「嘘を吐くな嘘を。お前のメール見てるだけでも楽園じゃねえか。なにそのヘヴン。招待券ねえの?」

 

「ねえよ馬鹿」

 

 あ、でも。と一夏は続ける。

 

「ジグは確かにいい思いしてるな。うん」

 

「なにぃ!?」

 

「待て一夏、何故そこで私の話を出す」

 

 弾の注意が一気にジギスヴァルトに向いた――というか、注意どころか顔をジギスヴァルトに向けた。その隙をついて一夏が弾の操作キャラクターのHPをゼロにする。

 

「よっしゃ、また俺の勝ち!」

 

「きったねえぞ一夏!」

 

「よそ見してるお前が悪い!」

 

 ちなみに彼らが対戦しているゲームは『IS(インフィニット・ストラトス)/(/)VS(ヴァースト・スカイ)』。第二回モンド・グロッソ出場者のデータを基に作られたゲームで、諸事情あってモンド・グロッソ参加二十一ヵ国それぞれのお国別バージョンが発売されている。

 

「……まあいいや。で? ジグがどんなおいしい思いをしたって?」

 

「……続けるのか、その話」

 

 ジギスヴァルトとしては嫌な予感がするのでこの話題は避けたいのだが。

 

「当たり前だろ! 一夏はどうせいつも通りなんだろうけど、お前は予想がつかないからな。さあ吐けこのイケメン野郎!」

 

 ――なんとなく、こいつがモテない理由がわかった気がした。

 

 一夏の近くに居たからというのもあるかも知れないが、この男、僻みが半端じゃない。あと、おそらくがっつきすぎだ。顔は良いのにもったいない。

 

 それはともかく、さてどうやってこの話題を切り上げようか。などと考えていると、一夏がまたしても余計なことを言い始める。

 

「こいつ、先月脚を怪我してさ。ちょっと前まで車椅子だったんだ」

 

「……一夏、それどの辺がいい思いなんだ? むしろかわいそうじゃねえ?」

 

「寮で彼女と相部屋だからってずっと彼女に世話してもらってたぞ、こいつ」

 

「爆ぜろリア充! ていうか薄々そんな気してたけどやっぱ彼女持ちかこの勝ち組め!」

 

 凄い形相で弾が叫んだ。今の彼は阿修羅すら凌駕する存在――かも、知れない。

 

「落ち着け弾よ。一夏はああ言ったが、出来ることは自分でやっていたぞ」

 

「……でも、自分で出来ないこともあるんでしょ?」

 

「それはまあ、そうだな」

 

「密着するようなこともあるんでしょ?」

 

「…………無いとは言わん」

 

 というか、自分で出来ないことをしてもらおうと思ったら密着せざるを得ない。車椅子から何かに移る時とか。

 

「…………」

 

「…………」

 

「……ちなみにその子、胸は?」

 

「超巨乳」

 

 ――あ。

 

 とても今日初めて会ったとは思えないほど仲良くやっていたせいか、つい口を滑らせてしまった彼だが、こぼれた水が盆に帰ることはない。

 

「やっぱ勝ち組じゃねえかよ! リア充しね! 爆ぜろ! 爆ぜてしね!」

 

「待て弾、今のは間違いだ。口が滑った。訂正させてもらう。超はつかないかも知れない」

 

「それでも巨乳なんじゃねえか! しかも“かも知れない”ってことはつく可能性あるってことだろ!」

 

「落ち着け。お前とてまだまだこれからだろう。望みはある」

 

「その余裕が腹立たしい!」

 

 殺意の波動に目覚めた弾を必死で宥めるが、正直ジギスヴァルトが何を言っても逆効果なのだった。

 

「お兄! さっきからお昼出来たって言ってんじゃん! さっさと食べに――」

 

 どかんとドアを蹴り開けて、ジギスヴァルトにとっての救世主(メシア)が入ってきた。弾の妹の五反田蘭、中学三年生。ショートパンツにタンクトップというなんともラフな格好をしている。

 

「あ、久しぶり。邪魔してる」

 

「いっ、一夏……さん!?」

 

「む? 弾、この娘は誰だ?」

 

「残念ながら俺の妹だ」

 

 残念ながら、と(のたま)った弾を蘭はギンッと睨みつけた。途端に弾が縮こまったから、おそらくこの家のヒエラルキーはそういうことだ。

 

「あのっ、き、来てたんですか……? 全寮制の学園に通ってるって聞いてましたけど……」

 

「ああ、うん。今日はちょっと外出」

 

「そ、そうですか……」

 

 ――また一夏か。

 

 視線を弾に向けると、なんとも言えない表情で彼は頷いた。妹が友達に惚れているというのはなんとも複雑な心境なのだろう。

 

 ――妹といえば、いつかのあの娘は元気にしているのだろうか。別に血が繋がっているわけでもない、それどころかせいぜい一ヶ月間一緒に居ただけの娘だが、別れ際に大層悲しんでいたのを覚えている。

 

「あの、ところで、そっちの外人さんは……?」

 

「外人? そんな者がこの場に居たか?」

 

「いやおめーだろうがよ」

 

 弾のツッコミが飛ぶ。薄々思っていたが、この男やはり普段からそういう役回りなのではなかろうか。

 

「冗談だ。私はジギスヴァルト・ブレヒト。一夏と同じ学園に通っている」

 

「そ、そうですか。あの、よかったらお二人もお昼どうぞ」

 

 言って、そそくさと部屋を出て行った。

 

「……なあ弾」

 

「何だ?」

 

「見ず知らずの私にも昼食を勧めてくれるとは、なかなか出来た妹ではないか」

 

「何だよ、皮肉か?」

 

「当然だろう? 一夏に良く見られたいという魂胆が見え見えだからな。もっとも……」

 

 チラリと一夏を見る。何事か考えているようだが、まあろくな事ではないだろう。

 

「こいつは気づいておらんだろうがな」

 

「だろうな。どうした一夏、うんうん唸って」

 

「いや、蘭ともかれこれ三年の付き合いだけど、いまだに心を開いてくれないなと思って。なんかよそよそしいし」

 

 一夏の言葉にジギスヴァルトと弾は顔を見合わせ、やれやれと首を振った。

 

「な、何だよ?」

 

「別に。弾の妹御(いもうとご)も苦労するなと思ってな。兄としては複雑だろう?」

 

「まあな。こんな歳の近い弟は勘弁してほしいけど、妹が報われないのもそれはそれでなあ」

 

「なんで弟の話が出るんだ?」

 

「いーからいーから、ほれ、メシ食いに行くぞ!」

 

 一人わかっていない様子の一夏の背を押して部屋を出る。一度一階の裏口から出て、正面の食堂入り口へ。五反田家は食堂を経営しているのである。その名も五反田食堂。そのまんまだ。

 

「うげ」

 

「ん?」

 

「どうした」

 

「…………」

 

 露骨にイヤそうな声を出す弾の向こうを除く一夏とジギスヴァルト。そこには彼らの昼食が用意してあるテーブルがあるが、先客が居た。

 

「何? 文句あるならお兄だけ外で食べてもいいよ」

 

「聞いたかお前ら。妹の優しさに触れて俺ぁ泣きそうだ」

 

 先客は蘭だった。その姿にツッコミを入れるべきか、ジギスヴァルトは数秒思案したが、やめておいた。わざわざ藪から蛇を出すことはない。

 

「別に四人で食べればいいだろ。それより他のお客さんも居るし、さっさと座ろうぜ」

 

「そうよ馬鹿兄。さっさと座れ」

 

「へいへい……」

 

「……強く生きろ、弾よ」

 

 そして四人がけのテーブルに全員が座る。蘭と一夏が横に並んで、その向かいに弾とジギスヴァルト。席順については、蘭による無言の圧力があったことを付け加えておく。

 

 さて、席についた直後であるが、ここで一夏が蘭の変化に気づいた。

 

「あれ? 蘭、着替えたのか? どっか出掛ける予定?」

 

「あっ、いえ。これはその、ですねっ」

 

「ん? …………ああ!」

 

 何事かひらめいたようだ。弾とジギスヴァルトの予想では全く見当違いなひらめきだが。

 

「デート?」

 

「違います!」

 

 ダァン! とテーブルを叩いて声を荒げる蘭の姿に一夏は驚いている。どう考えても何故彼女が怒っているのかわかっていない。

 

「俺は時々、こいつはわざとやってるんじゃねえかと思うよ」

 

「同感だな。そちらの方がまだ説明がつく」

 

「……なんかお前ら、この数時間で仲良くなりすぎじゃねえ?」

 

『おかげさまでな』

 

 二人同時に、全く同じ仕草で、全く同じ事を言った。完全なシンクロだった。それほどまでに、なんというか、呆れていた。

 

「食わねえんなら下げるぞガキども」

 

 そこへぬっと現れたのはこの五反田食堂の大将、五反田(げん)。ジギスヴァルトは知らないことだが御年八十。筋骨隆々で肌は浅黒く、背筋もビシッとしている。

 

『いただきます!』

 

「おう。食え」

 

 満足げに頷いて彼は料理を再開した。ジュウジュウと野菜を炒める音が店内に響く。それをBGMにしてご飯を食べながら、彼らは雑談に興じた。

 

 なお、ここでは絶対に食べ物を噛みながら喋るなと言い含められたジギスヴァルトは忠実にそれを守っている。というか普段からそんなことはしないが。

 

「そういや一夏、例のファースト幼なじみと再会したって?」

 

「ああ、箒か? そうだな、久しぶりに会えたよ」

 

「……? 誰ですか?」

 

「前に話したことあったろ。ファースト幼なじみだよ」

 

「セカンドは鈴だそうだ」

 

「あ、そういえば鈴姉もIS学園に居るんですよね?」

 

「おう、居るぞ」

 

 鈴姉などと呼ぶということは、ある程度仲が良いのだろうか。しかし彼女の表情は硬い。

 

(大方、人として好感は持てるし仲良くしたいが恋敵ゆえ完全には心を開けない……といったところか?)

 

 などとジギスヴァルトがあたりをつけている間に一夏は、

 

「ああ、箒といえば、寮で同じ部屋になりかけたんだよ」

 

「同じ部屋ぁ!?」

 

 再び爆弾を投下していた。この男、学習というものを――いや、無理か。自覚していないし。

 

ガタッと音を立てて蘭が立ち上がる。その後ろで椅子が床に転がり――厳が人を殺せそうな眼光でこちらを睨んだ。が、椅子を倒したのが蘭だとわかると何事も無かったかのように視線を戻した。この爺さん、孫娘には甘いらしい。

 

 そんなことより一夏と蘭だ。もう嫌な予感しかしない。

 

「い、一夏、さん? 同じ部屋っていうのは、つまり、寝食を共に……?」

 

 ――ああ、厨房から香ばしい匂いがする。やはり日本(ヤーパン)の醤油は素晴らしい。

 

「そうだよ。俺、寮長やってる千冬姉の部屋に住むことになったんだけど、いざ入寮となって部屋に行ってみたら汚くてさあ。誰かに掃除手伝ってもらおうと思って箒に頼みに行ったら、そんな手間がかかるなら私の部屋に住め――とかって。あ、でもさすがにそうはならなかったぞ。俺は拒否したし、あいつ千冬姉に直談判しに行って鉄拳喰らって諦めてた」

 

 ――六月ともなると、さすがに暑いな。蝉も鳴き始めたし。

 

「寮長って――い、一夏さん、女子寮に住んでるんですか!?」

 

 ――見ろ、弾もこんなにダラダラと汗を流している。だが日本(ヤーパン)ではこれからもっと暑くなると聞くぞ、今からそんなことでどうする。

 

「そりゃそうだろ。全寮制だけど男子寮無いんだから」

 

 ――それにしてもこのカボチャ、甘すぎやしないだろうか。私はこういう甘さが好きだから大歓迎だが、鈴あたりは苦手そうだ。

 

「おいジグ、なにさっきからてめえだけ現実逃避してんだよ助けろ」

 

「無理だ。このド朴念仁が口を閉じなければな」

 

 だいたい、自分が口を開く度にこのテーブルの――というか蘭の周りの空気が冷えていくことに全く気付かない一夏はもはや病気レベルの鈍感さと言えた。普段は別にそんなことはないのに、自分への好意が絡む事柄になるとどうしてこうも落差があるのか。

 

「……お兄」

 

「は、はい!?」

 

 弾が子犬のように震えている。それを見て首を傾げる一夏を左腕(義手)でぶん殴ってやろうかと思ったが、そんなことをすれば彼の頭はトマトのようにパーンしてしまうのでなんとか抑えた。

 

「後で話し合いましょう」

 

「お、俺、このあとこいつらと出かけるから……ハハハ……」

 

「では夜に」

 

 有無を言わせぬ口調。隣で真っ白に燃え尽きている弾にジギスヴァルトが合掌していると、蘭が再び口を開いた。

 

「……決めました」

 

 ――何をだろうか。

 

「私、来年IS学園を受験します」

 

 ガタタッ! と派手な音を立てて今度は弾が立ち上がった。

 

「お、お前何言ってぐはあっ!?」

 

 とんでもないスピードで飛んできたおたまが弾の顔面を直撃した。なるほど、これは確かに大人しくしていなければ危険だ。五反田厳……なんて恐ろしい老人だろう。

 

「え? 受験するって……なんで? 蘭の学校ってたしかエスカレーター式で大学まで出られて、しかも超ネームバリューあるとこだろ?」

 

「大丈夫です。私の成績なら余裕です」

 

「IS学園は推薦無いぞ……やめとけ……」

 

 どうやら体力(ライフ)は低くても復活(リスポーン)が早いらしい弾がよろよろと立ち上がった。彼の指摘を受けた蘭はしかし自信満々に胸を張り、

 

「お兄と違って私は筆記で余裕です」

 

「いや、でも……そ、そうだジグ! あそこって実技あるよな! な!」

 

「あるぞ。IS起動試験で適性の無い者を落とし、続く教官との戦闘で稼働状況を確認する」

 

 それを聞いた蘭は無言でポケットから紙を取り出した。それを受け取って開き、中身を見た弾は途端に苦虫を噛み潰したような顔になる。

 

「IS簡易適性試験……A判定……」

 

「問題は既に解決済みです。で、ですので……」

 

 こほん、と咳払いをして蘭は続ける。

 

「い、一夏さんには是非先輩としてご指導を……」

 

「ああ、いいぜ。受かったら――」

 

「安請け合いはやめておけ一夏。それから妹御も。IS学園に入るのはよく考えてからにしろ」

 

 ――豪速のおたまが飛んできた。

 

 なんとなく予想していたそれをジギスヴァルトは左腕で掴んで止め、飛ばした元凶――厳にふわりと投げ返す。厳はそれをキャッチし、自分の投げたおたまが止められた事実にしばし呆けていた。が、すぐに持ち直しジギスヴァルトを睨みつける。

 

「おうアメ公。テメエ、蘭の決定に文句があるってのか」

 

「私はアメリカ人ではなくドイツ人だが……まあ今はそれはいい。文句は無いが、忠告くらいはしておこうと思ってな」

 

「忠告だあ?」

 

「それから妹御よ、なにも弾はお前の邪魔をするために反対しているわけではないことを覚えておけ」

 

「え?」

 

 言ったジギスヴァルトは立ち上がり、厨房前へ歩いていく。

 

「御老体。ISとは何だと思う?」

 

 問われた厳はしばらく考え込んだ後、

 

「スポーツみてえなもんだろ? テレビなんかでもたまに競技だっつってやってるじゃねえか」

 

「……そうか。まあ、そんなものだろうな。しかし御老体――」

 

「御老体御老体言うな。俺には厳って名前があるんでえ」

 

「――失礼した、厳さん。話を続けるが、ISが競技に用いる武装は全て本物の兵器であり、シールドバリアも絶対防御も百パーセント身の安全を保証する物ではあり得ない。その証拠に、私は訓練中の事故で脚を怪我して一ヶ月間も車椅子だった。嘘だと思うなら学園に問い合わせてもらって構わない」

 

 無人機の襲撃は箝口令が()かれているため、彼の負傷は訓練中の事故ということで処理されている。そのため具体的なことも言えず、ただただ怪我をしたとぼかすしかない。

 

 が、それならそれでその状況を利用するだけだ。

 

「わかるか厳さん。()()()()()()()()()車椅子だ。もしもこれが実際の競技中ならばもっと酷いことになるかも知れん。

 いや、競技ならばまだ良い。だが実際に戦場に出ることにでもなってみろ。死ぬか、捕虜になって拷問を受けるか、もしかしたら女性として辱めを受ける可能性だってある。戦場に男が皆無というわけではないのだからな」

 

 それを聞いて蘭が怯えたように自らの身体を抱きかかえた。少々かわいそうな気もするが、これも彼女らのためだと思って続けることにする。

 

「けどよ、ISは戦争に使わねえってナントカ条約で決められてんだろ?」

 

「建前に決まっているだろう。でなければ各国は軍にISの配備などせん。もし何かきっかけがあればISを使った大戦争の幕開けだし、現在だって表沙汰にならぬだけでISによる戦闘は少なからず行われていると考える方が自然だ」

 

「…………」

 

「加えて、IS操縦者自体が貴重だ。いくら全ての女性に可能性があるとはいえ、それを満足に動かせる者は限られてくるからな。

 さてここでIS学園の話に戻るが――」

 

 彼は今度は弾に向けて言う。

 

「弾はわかっているだろう? わかっているから妹御を止めようとしているはずだ。言ってやれ、IS学園の生徒がどれだけ危険か」

 

「……ISの操縦技術が高ければ高いほど、IS適性が高ければ高いほど、いろんな国や組織に狙われる。もし戦争になって正規の軍人じゃ足りなくなったら生徒やOGが駆り出されるかも知れないし、戦力を減らすために敵国に殺されるかも知れない」

 

「パーフェクトだ、弾。付け加えるとするならば、もし専用機を持つことになれば機体データ目当てに危害を加えんとする輩も出てくるだろう。だからこそ――」

 

 そこで言葉を切って、彼は自分の座っていた席に戻って箸を取り、

 

「やはり考え直すべきだ。受験の時期までかけてよく考えたうえで、危険性、弾の想い、それら全て飲み干して入学すると言うのなら止めん。その時誰かが反対するようなら私に言うが良い。ありとあらゆる手段を以て障害を排してやる」

 

 そして言いたいことは全て言い切ったとばかりに食事を再開した。厳と蘭は黙ったままだ。

 

「……頼むよ蘭。お前のことは応援してやりたいけどさ。兄ちゃんやっぱお前に危険な目に遭ってほしくない」

 

 懇願するような弾の言葉に、蘭がようやく口を開いた。

 

「……考えとく」

 

 それから、食堂全体が微妙な空気になったので、無言でさっさと食べ終えて蘭以外は食堂を出て街へ。

 

 ――状況についていけなかったのか、一夏だけはどういう話か理解していなかったが。あの空気の原因の一端はお前だぞ、馬に蹴られてしまえ、とジギスヴァルトは思った。

 

 




 あれ……おかしいですね。なんだか最後の方が少しシリアスな雰囲気に……何故でしょうね?
 でも、原作のこのあたりを読んだときに思ったことを主人公に代弁してもらったので私は満足です。
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