IS -Scharlachrot-   作:小糠雨

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第一五話:少女の願いは

 

「酒が飲みたい」

 

 ラウラの件があった後、夜、自室にて。大真面目な顔で言い放つジギスヴァルトを前に、本音は珍しく溜め息を吐いた。

 

「具体的にはビールが飲みたい」

 

「……何言ってるのージグ。お酒はー、二十歳になってからだよー?」

 

「ドイツではビールとワインなら十六歳から飲めるぞ」

 

「ここは日本ですー」

 

「IS学園はいかなる国家にも属さぬはずだが」

 

「…………」

 

 睨まれた。

 

 いや、まあ、本音に睨まれても全然怖くはないのだが。しかし彼は本音が真剣に反対しているのもわかっている。彼女は二十歳になる前の飲酒が体に及ぼす影響を心配しているのだ。

 

 でも、飲みたい。飲みたいものは飲みたいのだ。

 

「どうしてもダメか」

 

「ダーメ。ていうかー、学園内ではお酒売ってないよー?」

 

「……そうか」

 

 ガックリと項垂れるジギスヴァルト。それは普段のキリッとした姿とはかけ離れていて、本音の目にはとてもかわいらしく写った。ギャップ萌えというやつである。

 

 だから衝動の赴くままに、本音は彼の頭を抱き寄せて、ささやく。

 

「私はジグが心配なのー。代わりにコーヒー淹れてあげるからー、それで我慢してー?」

 

「……本音、コーヒーなど君に淹れられるのか」

 

「あーひどいー。コーヒーくらいちょおよゆーですー」

 

 頬を膨らませてジギスヴァルトの額を小突いた本音が、それを証明すべく立ち上がったとき。

 

 ――ドンドン! と乱暴に扉が叩かれた。

 

「ジグ! 俺だ、一夏……と、シャルルだ! 頼む、開けてくれ!」

 

 さらに、扉の向こうからなんだか切羽詰まった一夏の声。

 

 このとき、ジギスヴァルトの脳裏に閃くものがあった。こう、キュピーンと。

 

 思い出すのは今日の昼過ぎ。楯無と話した、シャルルについてのこと。シャルルのあまりにもあんまりなクオリティーの男装はどう考えてもすぐバレるというあの予想。もしかして本当にバレたのかも知れない。

 

 いや、でも、一夏だって馬鹿ではない――はず。女装に気づいたからといって、いくら何でもシャルル本人を連れて他人の部屋に行こうなどと考えはしない――と、思う。扉の前にシャルルも居るみたいなことを言っていたが、さすがに冗談だろう――と思いたい。

 

 思いたかった、のだが。

 

O Gott(なんてこった)...」

 

 とりあえず本音にはそのままコーヒーを準備してもらって扉を開けると、なんだか怒っている様子の一夏の後ろに、居た。ジャージ姿で、普段と違って胸を潰していないシャルルが。

 

 織斑一夏は、ジギスヴァルト・ブレヒトが思うよりずっと――馬鹿というか、考え無しだった。

 

 

 

 

 ★

 

 

 

 

「……それで?」

 

 他の生徒に見られては困るのでとりあえず部屋に招き入れ、とりあえず座らせ、とりあえずコーヒーを出した。

 

 なお、本音の淹れたコーヒーはなかなかに美味であったことを記しておく。インスタントだけれど。

 

「何から話したらいいか……とりあえず、シャルルは実は女の子だったんだ」

 

「いやそれは知っていたが」

 

『えっ!?』

 

「私も知ってたよー?」

 

『ええっ!?』

 

 驚く一夏とシャルルを見て、ジギスヴァルトは頭を抱えた。頭を抱えついでに、今一番頭を悩ませている問題について突っ込むことにした。

 

 ありありと呆れの浮かんだ顔で睨みながら、言う。

 

「一夏。お前、どうしてシャルルをここに連れてきた?」

 

「な、なんだよ、どういう意味だよ」

 

「あまりの事態に誰かを頼りたくなるのはわかる。教師になど言えぬから同じ男である私を頼ろうというのもまあわからんでもない。だが、それなら何故私をお前たちの部屋に呼ばなかった? 来るまでに誰かに見られるやも知れんし、この部屋には本音も居るのにだ」

 

「いや、のほほんさんなら信用できるかなと……」

 

「本音は生徒会の人間だぞ。この子を経由して生徒会長や教師にバレるとは考えなかったのか?」

 

 それに本音はけっこう口が軽い。そりゃもちろん“本当に言ってはいけないこと”は決して漏らさないが、拡散した方が面白そうなことに関しては本当に軽い。それを知っていれば彼女のことはむしろ警戒して然るべきであろう。知らなかったのだから救いようが無いが。

 

 ――ちなみに。彼女の口の軽さが原因で最上級の面倒事に巻き込まれていることを、今に至ってもまだ、一夏とジギスヴァルトは知らない。

 

 さておき。

 

「……え? のほほんさんって生徒会所属なのか?」

 

 今度こそ。今度こそ、ジギスヴァルトは絶句した。

 

 この男、こんなんで本当に大丈夫だろうか。そのうち誰か親しい者を不幸のどん底に叩き落としそうな予感がする。しかも、こう、よかれと思ってよからぬことをしでかす感じで。

 

「…………まあ、過ぎたことか。今はいい。

 それより事情を話せ。シャルルが女なのは知っていたが、どういう経緯で男装に至ったかは知らんのでな。一夏の様子を見る限り、お前はあらかた聞いたのだろう?」

 

「あ、ああ……。シャルル、頼む」

 

「あ、うん……」

 

 そしてシャルルの口から語られた内容を、ジギスヴァルトは頭の中でたっぷり五回は反芻(はんすう)した。そうして、自分が今から言おうとしていることが単なる悪口ではなく事実の指摘であることを念入りに確認したうえで。眉間を押さえながら、言った。

 

「……シャルル。お前はアレだな。思っていたより阿呆だな」

 

「なっ!?」

 

 突然の罵倒にさすがに狼狽した。決して良いものとは言えない身の上話をして気分が沈んでいるところにそれが飛んできたものだから余計に。

 

「さすがにもう少し警戒しろ。シャワーを浴びている最中に替えのボディーソープを持った一夏が入ってきてバレたなど、本当に隠す気があるのかどうか疑わしいぞ。

 それと一夏。シャルルが普段、私たちに着替えを見られることさえ嫌がっていたのは貴様とて知っているはずだ。だのにボディーソープを渡しに堂々と扉を開けただと? もはやデリカシーだとかそういう次元の話ではない、人として最低だ」

 

「ぐっ……! いやでも、男だと思ってたし……。それに普段一緒に着替えないから今日こそは、と思って……」

 

「あのな。仮に男同士だとしても、何をしても許されると思うなよ。嫌がっているのだから潔く諦めろ。

 というかだな。前々から思っていたが、どうしてそんなに一緒に着替えたがる? 貴様ホモか? だとしたら即刻ここから出て行け。二度と私に関わるな」

 

「ホモじゃねえよ!? ていうか、問題はそこじゃねえ!」

 

 確かに一夏の言う通り、問題はそんな些細なことではない。

 

 シャルルがデュノア社長の愛人の子であること。母が死に、父に引き取られ、ISの適性が高いと知られ、社のテストパイロットとして道具のように扱われていたこと。特に社長夫人からの扱いが非道く、彼女の息のかかった者に暴力を振るわれることも多々あったこと。第三世代型ISの開発に遅れをとったデュノア社は経営が傾き、打開策を求めて男性操縦者のデータを欲したこと。だから一夏とジギスヴァルトに近づいてデータを盗むためにシャルルは男装を強要されIS学園に派遣されたこと。

 

 どれもこれも大問題だ。特に最後のはいわゆるスパイ行為。バレれば退学どころの騒ぎではない。

 

 だが何よりも問題なのは。最大の問題にシャルル本人さえ気付いていない点である。

 

「シャルルよ。一応確認するが、男装するに当たって何か特別な指導を受けたか?」

 

「え? ううん。一人称は“僕”を使いなさいって言われた以外は胸を潰すサポーターと男子用制服を渡されただけだけど……それがどうかした?」

 

 前略、道の――ではなく、IS学園学生寮一年生棟より。楯無会長、あなたの予測、大当たりのようです。

 

「そうか。ならばここでハッキリさせておく必要があるな」

 

「何をだよ?」

 

「シャルルを男装させて送り込んだ理由をだ。デュノア社、いやフランスにとって、私たちのデータを盗むのは二の次ということだよ」

 

「……え?」

 

 戸惑うシャルル。当然だろう。嫌がる心を押し殺して命令を遂行していたのに、自分が受けた指示は実はどうでもいいんだよなんて言われてはいそうですかと納得できるわけがない。

 

「忌憚なく言わせてもらうがなシャルル。お前の男装は“お粗末”の一言に尽きる。骨格、動き方、仕草、我々男と接する態度等々、どれもこれもがわかりやすく“女”だった」

 

「……そんな」

 

 そのうえ嫌々ながらも必死でやってきた男としての振る舞いまで否定されて、かなりヘコんだ。

 

「だが相手は仮にも大企業。何の訓練もしていない女が男装してバレないなどと考えているはずがない。つまり、シャルルの男装はバレる前提のものということだ。

 さてここで一夏に質問なのだが」

 

「な、何だ?」

 

「仮に。もし、仮にだ。お前が若いリビドーを抑えられず、シャルルが妊娠してしまったとする」

 

「はあ!?」

 

「に、妊娠!?」

 

 顔を真っ赤にしたシャルルが涙目で睨んできた。別に彼はセクハラしようだとか思っているわけではないのだが。

 

 表情には変化が無いが後ろ姿がなんとなく悲しげなジギスヴァルトを見て、本音は彼が内心傷ついていることを悟った。案外繊細なのだ、彼は。後で膝枕か何かして慰めてあげよう。抱き締めるのも良いかもしれない。

 

 ちなみに、話に入れないというか、ジギスヴァルトに任せることにした本音は今、コーヒーとカステラでまったりしている。

 

(たわ)け、真面目な話だ。聞け。

 まあ別に妊娠でなくともいい。単純に肉体関係を持ってしまったらだとか、この際そこまでいかずともお前とシャルルが交際することになったら、でもいい。

 その後スパイ行為がバレたシャルルがフランスに強制送還されたとしたら。一夏、お前はどうする」

 

「そりゃ、なんとしてもついて行くさ。俺には責任があるからな」

 

「それだ」

 

 当たり前のように即答する一夏に、パチンと指を鳴らしてジギスヴァルトが頷く。

 

「それがシャルルを送り込んだ本当の目的だ。私たちと同じ男性であれば、少なくともどちらかと相部屋となる可能性が高い。そしてルームメイトとなった男にバレて、襲われて、そいつをフランスに来させる。そのための――言い方は悪いが、駒がシャルルだ。いわゆるハニートラップだな」

 

 今度は一夏が絶句する番だった。

 

「なんだよそれ……。親だからってそんなことさせていいのかよ!」

 

 一夏には親が居ない。捨てられたのか死んだのかは知らないが、とにかく気付いたら姉と二人だけだった。八つ年上の姉が必死で守ってくれたが、それでも小さい頃には街で見かけた楽しそうな親子連れを見て羨んだこともある。

 

 だからだろうか。彼は親が子に理不尽を強いることを極端に嫌う。今回についても、愛人の子だからといってシャルルを道具のように扱う父親の話を聞いてただでさえ憤っていた。

 

 それが、ジギスヴァルトの話を聞いて、今度こそ爆発した。やはりなんとしてもシャルルを助けなければと思った。

 

 だが彼には何の力も無い。IS学園はあらゆる国家の干渉を受けないという特記事項によってシャルルを少なくとも三年は保護できる、と彼女に伝えるのが精一杯だった。だから、自分より頭が良いと思うジギスヴァルトに知恵を借りに来たのだ。

 

 ――なのに。

 

「ジグ、力を貸してくれ! 俺はどうしてもシャルルを守ってやりたいんだ!」

 

「は? いや、普通に嫌だが」

 

 彼の返答は、無情だった。

 

 

 

 

 ★

 

 

 

 

 話をしていて、どんどん一夏の機嫌が悪くなっていくのがわかった。

 

 まあ、当然といえば当然だろう。私とてシャルルの話を聞いて腹に据えかねるものはある。正義感の強い一夏ならなおさらだ。

 

 だから、一夏が何を言うかもある程度予想はついた。

 

「ジグ、力を貸してくれ! 俺はどうしてもシャルルを守ってやりたいんだ!」

 

 ――ああ、相変わらずこいつは良い意味でも悪い意味でも期待を裏切らないな。

 

 だが、こいつは恐らく気づいていない。いや、そういう発想が無いと言うべきか。

 

 シャルルの話が真実である保証など無いということをこいつは考えない。何故なら、一夏にとってシャルルは既に“友達”だからだ。友達を疑うなど言語道断とでも考えているのだろう。それ自体は真っ直ぐで非常に好ましいが、ある意味ハニートラップが成功してしまっているとも言える。それがハニーである必要の無い方向に、であるのは一夏らしいかも知れん。

 

 実際、シャルルの話したことについては既に学園が――というか更識家が完璧に調べ上げて裏まで取ってある資料を見せてもらったので、“私には”彼女の話を信じるだけの根拠がある。

 

 一夏には今回それが無いのだから、もう少し疑うことを覚えて欲しい。今回はシャルルが真実を語った。だが、もし一夏に友達だと思わせるところから既にシャルルの策略で、彼女が嘘を喋っていたとしたら? そして、もし次に同じようなことがあったとき、その者は馬鹿正直に真実を話すだろうか?

 

 別に信じるのは構わないが、そういったことを頭の片隅にでも良いから留めておいてもらわなければ困る。でないとこいつは最悪全てを巻き込んで破滅する。

 

 それに、シャルル自身の心の問題もある。今のままの、全てを諦めたままの状態の彼女を助けたところでそれは私と一夏の自己満足。彼女のためにならない。

 

 故に、私は――。

 

「は? いや、普通に嫌だが」

 

 とりあえず()()拒否するとしよう。それと、布石も打っておかなければな。

 

 

 

 

 ★

 

 

 

 

「嫌……だって?」

 

 一夏はジギスヴァルトの言葉が信じられなかった。一夏は彼のことを、口ではなんだかんだ言いつつも最終的には友達のために行動する、そんな男だと思っていた。だからこそ、彼の言葉が許せない。

 

「ふざっけんなよ! 友達が困ってんだぞ!」

 

「そうだな」

 

「親の身勝手で無理矢理やらされたことのせいで、犯罪者として牢屋にぶち込まれるかもしれねえんだぞ!」

 

「それも理解している」

 

「だったら!」

 

 激昂する一夏を出来る限り冷ややかな視線で見下ろして、言う。

 

「嫌だと言っている」

 

「なんでだよ!」

 

()()()が真実を語っているという保証が無――」

 

 ――一夏がジギスヴァルトに殴りかかった。

 

 ISだけでなく生身での戦闘も授業で少しは学んでいるとはいえ、まだまだ素人同然の拳だ。避けることはできた。が、彼は敢えて避けない。避ければ一夏がヒートアップして余計に暴れる可能性がある。

 

 頬に一夏の拳がめり込むが、ジギスヴァルトは微動だにしない。

 

「……痛いではないか」

 

「うるせえ! 困ってる友達をこの女呼ばわりして、しかも疑うなんて、てめえ何考えてやがる!」

 

「お前こそ何を考えている? この女は性別を偽って私たちを騙していたのだぞ。根拠も無く信じるなど正気とは思えん」

 

「この――」

 

「仮にこの女の言が正しいとしてもだ」

 

再び殴ろうとした一夏の拳を今度は受け止め、捻り上げる。

 

「ぐぅっ……!」

 

 すぐに手を放してやってもよかったが、好き勝手暴れさせておくと話がしにくいのでこのまま続けることにした。

 

「この女を助けることに意味はあるのか? 先程から力無く項垂(うなだ)れているこの女は、お前に一言でも助けを求めたのか? 私にはとてもそうは思えんが」

 

 言われて、一夏はシャルルを見る。

 

 確かに、シャルルは一夏に身の上話はしたが、助けは請わなかった。けれど彼女はきっと救いを求めているのだと、一夏は信じている。信じているからこそわざわざジギスヴァルトに助力を頼みに来たのだ。

 

 そんな一夏の想いとは裏腹に、シャルルは何も言わない。俯き、いかなる感情によるものか、震えている。

 

 それでも。

 

「んなこと関係あるか! 俺は大事な人を皆守るって決めたんだ! いいから知恵貸せっつってんだよ!」

 

 ――なんとまあ。なんてご大層なハリボテの決意だろうか。

 

 しかし、はてさてどうするか、とジギスヴァルトは考える。正直、一夏が感情的になりすぎていてこのままでは話にならない。ぶん殴ってでも聞かせるというのも手段としてあるにはあるが――今回に限ってはシャルルを助けることそのものは間違いではないのでそこまでする気になれない。

 

 それにそろそろ()()が来る頃だ。あまり待たせると機嫌を損ねてしまって面倒くさいことになるかも知れない。今回はとりあえずシャルルの諦観を取り除くだけで善しとして、一夏が本格的に暴れ出す前に収拾をつけることにしよう。

 

「シャルル」

 

「……何?」

 

「仮に、お前を解放出来る手段があるとしたら――どうする?」

 

 ハッとした彼女が顔を上げるが、すぐにまた悲しげに表情を歪めて俯いた。そこには色濃い諦念がある。

 

 そして一夏は、先程まで助力を嫌がっていたジギスヴァルトの突然の言葉に困惑している。いったい何をするつもりなのか、まさかこれ以上シャルルを追い詰める気なのか、と。

 

「無理だよ。経営危機にあるって言っても、相手は腐っても大企業。僕はもう……」

 

「仮に、と言っているだろうが馬鹿者。もし助かることができるのだとしたら、お前はどうしたい。自由になりたいのか、それともそのまま社の人形で居たいのか」

 

「そんなの――そんなのっ!」

 

 バンッ! と机を叩いて、彼女は立ち上がる。目には涙を溜めて、感情のままに叫ぶ。

 

「自由になりたいに決まってる! 僕は女なんだ! 男じゃない! 普通の女の子として生きていたいに決まってるじゃないか! でも――!」

 

「でも、ではない。だから、だ。()()お前は何者だ。社に操られる木偶(でく)か? 諦観のうちに朽ち果てる死者か? それとも――IS学園一年一組、シャルル・デュノアか?」

 

「それは――」

 

 木偶人形なのは否定できない。今のまま全てを諦めて流されるままに生きるなら死人と変わらないだろう。

 

 でも、もしそれを変えられるのならば。

 

「お前がIS学園の生徒だと言うのなら。IS学園の生徒でいたいと願うなら。言え、お前の願望を。IS学園の生徒たるお前自身の口で。IS学園の生徒たるお前自身の意志で!」

 

「僕……僕は……」

 

 皆を騙している己にはIS学園の生徒でいる資格は無いのかも知れない。皆はそれを許してはくれないかも知れない。

 

 でも、もし許されるのならば。

 

「もう、嫌だ……男装なんてしたくない……。ジグを、一夏を、クラスの皆を騙したくなんてない……! 普通の女の子としてここに居たい! もうデュノアの言いなりになんてなりたくない! だから……」

 

 だから、誰でもいいから、どうか――。

 

「助けて……。誰か、助けてよぉ!」

 

 少女の願いは――。

 

「オーケー承ったぁ! おねーさんに、まっかせなさーい☆」

 

 勢いよく扉を開けて乱入してきた学園最強(生徒会長)が、しっかりと受け止めた。

 




 実は恋愛描写がものすごく苦手で主人公とのほほんさんをどういちゃつかせればいいのかわからない、なんてそんなことは御座いませんよ。ええ、御座いません。
 …………すみません、嘘です。
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