IS -Scharlachrot-   作:小糠雨

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第三一話:出し物決定

 

「……また失敗ですか」

 

「はい。男性操縦者はいまだ存命。さらに悪いことに、両名とも専用機が第二形態移行(セカンドシフト)を遂げました」

 

「厄介なことになりましたね」

 

「前回失敗したとは言え、やはり今回も《亡国機業(ファントム・タスク)》にやらせた方が良かったのでは?」

 

「確かに、ああいった工作は《天神地祇(てんじんちぎ)》よりも亡国機業の方が得意ですが……今回に関して言えばどちらにやらせても同じだったでしょう。暴走後は誰にも手出しできませんから」

 

「……というと?」

 

「暴走させるまでの過程に不手際が無かった以上、天神地祇のミスとは言えないということですよ。

 今回は我々の見通しが甘かった。ただそれを認めて、次に活かせば良いのです」

 

 

 

 

 ★

 

 

 

 

 福音事件の顛末を語ろう。

 

 銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)の操縦者、ナターシャ・ファイルスは、暴走した福音の機動に耐えきれず負傷。意識不明のまま、IS学園と提携している病院に収容されている。福音は開発計画ごと凍結され破棄されることが決定したが、本当に破棄されるかは怪しいところである。

 

 一夏、ジギスヴァルトの両名は第二形態移行した機体のデータ収集のため数日間拘束された。IS全体で見ても稀にしか起こらない第二形態移行をたった二人しか居ない男性操縦者が起こしたとあって、各国はどうにかデータを掠め取ろうと躍起になった。それを鎮めるのに、束が各代表候補生の機体に疑似体験させたシャルラッハロート・アリーセの経験値が一役買ったのは――まあ余談と言っても良いかも知れない。

 

 そして、福音事件から十日あまりが過ぎた今日。期末試験を終え、あとは数日後から始まる夏休みを待つばかりとなったIS学園では、皆が夏休み中の予定について盛り上がっていた。

 

 が――中には盛り上がれない者も当然居る。

 

「国に帰っても家が無い」

 

〔右に同じ〕

 

 ジギスヴァルトは実の親を(理由は全く覚えていないが)失い、養父たちと生活していた家も四年前に消し飛び、束が今どこに居るのかも知らず、ドイツで一人暮らししていた家も来日の際に引き払っている。

 

 スティナも似たようなもので、そもそも試験管ベイビーなので両親など居ないし、スウェーデン軍には帰れないし、軍を追い出されてすぐ束に拾われたし、それからずっと束と暮らしていたためスウェーデンに家も無く、束はスティナが日本に来た後に住処を移してしまったのでそこにも帰れない。

 

 よって帰省など出来るはずもないので寮に居残ることになる。加えて、日本に知り合いが多いわけもなく、日本の地理に詳しいでもない。旅行に行くにしても、IS学園か国際IS委員会が護衛という名の監視をつける可能性が高いのであまり気が乗らない。要は外出する予定が特に無い。

 

 そんなわけで、このままだと寝正月ならぬ寝夏休みとなってしまいそうなのである。

 

「ジグは本音とデートとか旅行とかしないの?」

 

「本音も大半は実家で過ごすらしくてな。一応、二・三日くらい遊びに来ないかと誘われてはいるが」

 

〔ご両親に

 挨拶?〕

 

「……ああそうか、そうなるのか」

 

 シャルロットと話しつつ廊下を歩くジギスヴァルトとスティナ。三人とも寮に帰るところだ。今日まで続いた試験には当然のように実技もあり、わりと疲れているのでさっさと休みたかった。ちなみに本音は珍しく生徒会に行っている。

 

「スティナは日本文化が好きなんだよね?」

 

〔はい〕

 

「だったら、あまり遠出しないでも行ける神社をいくつかめぐってみるとかどう?」

 

〔神社ですか〕

 

 言われて少し想像してみる。まだ見ぬジンジャ・テンプルを求める旅。行ってみたいが、やはり一人では寂しい。誰か一緒に来てくれないだろうか。例えば弾とか。……弾? なんで弾? ジギスヴァルトや、それこそ提案してくれたシャルロットじゃなくて?

 

「…………?」

 

 ――まあ、とにかく。どうして最初に弾を思い浮かべたかはよくわからないにせよ、神社をめぐるという提案は実に魅力的だ。そういえばいつだったか、一夏が近所に神社があるとか言っていたし、手始めにそこから行ってみるのもいいかも知れない。

 

「ま、僕も居残り組で暇だからさ。良かったらどこか遊びに行くってときは声掛けてよ。もちろん僕も二人を誘うし」

 

〔はい

 是非に〕

 

 そうしてあれやこれやと、なんだかんだで盛り上がりながら昇降口を抜け、寮への一歩を踏み出したとき。スティナは視界の端に人影を捉えた。

 

(……あれは)

 

 急いで視線をそちらに向けると、見覚えのあるポニーテールがアリーナの方へ消えていった。

 

〔すみません

 用事ができました〕

 

「え、スティナ?」

 

 シャルロットが呼び止めるのを無視して、スティナはその人影を追っていった。

 

「どうしたんだろ」

 

「さてな。まあ、特に心配する必要は無かろう」

 

 そんなことより帰って寝たいと、寮に向かってずんずん進んでいくジギスヴァルト。そんな二人を暫く見比べて、心配そうに溜め息を吐き――しかし疲労感が勝ったのか、結局シャルロットも寮に帰ることにした。

 

 

 

 

 ★

 

 

 

 

 人の居ない第三アリーナにて。箒は紅椿を展開し、黙々と飛んでいた。飛行に慣れてきた後はターゲットを出現させ、それに攻撃している。彼女は今まで授業以外ではほとんどISに関わらなかったことを考えると、放課後に自分の訓練をするようになったのは大きな変化と言えるだろうか。

 

 紅椿の主武装は日本刀型の近接ブレード二(ふり)。腰の左右にそれぞれ一口ずつ()かれたそれは二刀流を想定しているのだろうが――箒は一口しか使っていない。何故なら、彼女は剣道で二刀流を練習したことが無いからだ。これは彼女の剣道への執着とは別の単純な理由によるもので、彼女は二刀を上手く扱えない。なので彼女は利き手である右手で抜きやすい左腰の雨月(あまつき)だけを使い、右腰の空裂(からわれ)は使わないでいる。

 

『▼告/雨月ハ打突時ニエネルギー弾ヲ飛バスコトガ可能/何故使用シナイノカ』

 

「うるさい。飛び道具など無くても……!」

 

 ターゲットを全て斬り落とす。が、それはお世辞にも鋭い攻撃とは言えない。

 

「私には剣道(これ)がある!」

 

 そして再びターゲットを出現させ、刻んでいく。

 

 何度そうしただろうか。不意に、拍手が聞こえた。音がした方を見れば、入口からスティナが歩いてくるのが見えた。

 

〔こんにちは

 箒さん

 お疲れ様です〕

 

「……何の用だ」

 

〔いえ別に

 さほど大事な用でも

 ないんですが〕

 

 箒があからさまに警戒してくることに肩を竦めて、スティナは発言をプライベート・チャネルに切り替えた。

 

『篠ノ之神社って、箒さんの実家ですよね?』

 

『……それがどうした』

 

『私、夏休みに神社をめぐってみようかと思ってまして。手始めに、ここから近いらしい篠ノ之神社に行ってみたいんです。案内してくれません?』

 

『……は?』

 

 何を言われたのか理解するのに時間がかかってしまって、思わず間の抜けた声を出してしまった。

 

『案内って……私がか?』

 

『はい。ダメですか?』

 

『いや……ダメというか……』

 

 箒にとってスティナは敵だ。一夏に剣道ではない剣を教えているのもそうだし、何より彼女が――自分以外の女が一夏と一緒に居ることそのものが気に入らない。

 

 そして敵だと思っているのはスティナも同じはずだと、箒は思っている。学年別トーナメントであれだけいろいろ言っていたのだから、好感を得ているとは考えられない。

 

 そんな相手に案内を頼む感覚というのが、彼女にはよくわからなかった。

 

『まあ、嫌なら嫌で他の方に頼むだけです。例えばそう――一夏さんはあの辺りに詳しいらしいですね』

 

『…………』

 

『箒さんにフラれて傷ついた心を一夏さんに癒してもらうのもいいかも知れません。二人きりで篠ノ之神社に行って、その後は一夏さんの家で――』

 

『【警告】スティナ・ヴェスターグレン/此以上ノ発言ハ篠ノ之箒ヘノ敵対行動ト見做(ミナ)シ対処シマス』

 

 スティナの言葉を受けて箒が激情に駆られそうになったとき、紅椿が割り込んだ。機体が箒の意思とは関係なく動き、雨月をスティナに向ける。箒は怒鳴りつけようとした出端(でばな)を挫かれて所在なさげにしている。

 

 それをまるで気にしていないかのようにスティナは肩を竦めた。今にも攻撃されるかも知れないというのに、ISを展開する等何らかの対処をしようとする様子も無い。彼女には紅椿がそうした理由がわかっていて、本当に攻撃されることは無いと理解しているからだ。

 

『すみません、お巫山戯が過ぎました。嘘です、安心してください。一夏さんのことは友人としては好きですけど、それだけです。

 でも、箒さんに案内して欲しいのは本当です。他の誰かではなく、私はあなたがいい』

 

 真っ直ぐに箒の目を見て彼女は言う。赤い瞳が箒を捉えて放さない。

 

『……どうして私なんだ。お前は私が嫌いなんだろう』

 

『はい。今のところは大っ嫌いです』

 

『だったら――』

 

『今のところは、と言っているでしょう?』

 

 箒のすぐ目の前まで歩いて、少し上にある顔を覗き込む。スティナの顔には学年別トーナメントのときのような憤怒も侮蔑も嘲笑も無い。大嫌いだと言う割には、嫌悪のようなものも見えない。

 

IS学園(ここ)で見た以外のあなたを私は知りませんから。

 別に仲良くしてくれなんて言いません。一緒に神社をまわってくれなんても言いません。ただ鳥居の前まで案内してくれるだけでいいんです。お礼だって、出来る範囲で必ずします。だから案内、お願いできませんか?』

 

 吸い込まれそうな双眸の赤い輝きに目を奪われた箒は一瞬呆けて、思わず首を縦に振ってしまった。

 

『やった! じゃあ連絡先を交換しましょう。と言っても、私は声が出せないのでメールしか使えませんけどね。さあさあ、ISは一旦しまってしまって!』

 

 まるで童女のようにはしゃぐスティナに毒気を抜かれた箒は素直に紅椿を解除して携帯端末を取り出し、連絡先を交換した。

 

『では、詳しいことは追々。今日はこれで帰ります!

 ……あ、それとですね』

 

 去り際に、ひとつ。

 

『束さんが言うには、紅椿には剣道のモーションデータがインストールされているらしいです。ISで効果的に“剣道”をするにはどう動けば良いかを追求したデータらしいので、その子の自律稼働モードで実演させて、体で覚えてみると良いかもしれませんよ』

 

 助言のつもりでそう言い残して、彼女はアリーナを出て行った。その背を訝しげに見送る箒は、彼女の言動がいまだに理解できない。

 

(ふふ……これで道に迷う心配は無くなりました。やったぜ)

 

 しかし何のことはない。彼女は本当に道案内が欲しかっただけ。それには箒が最適だったから彼女に頼みに行ったという、ただそれだけのことである。箒にはああ言ったが、もし頑として断られたら弾に頼むつもりだった。一夏に頼むと箒や鈴やセシリアを敵に回しそうだし。

 

(まあ、箒さん自身にも興味はありますしね。どうしても箒さんがいいっていうのもあながち嘘というわけでもありません)

 

 一度開発をやめた紅椿を、束は仕様を変えてまで箒に与えた。それが箒に、ひいては周囲にどんな変化をもたらすのか――それを見てみたく思う。だって、束は箒を信じてそうしたのだから。“娘”である自分が見届けなくてどうするのだ。

 

 だが今は、そんなことはどうだっていいんだ。重要なことじゃない。

 

(さあ、まだ見ぬ神社が私を待っていますよー!)

 

 神社めぐりがだんだんと形になっていくことにテンションの上がったスティナ。嬉しさが体中から滲み出る彼女はスキップで寮へ戻っていった。

 

 

 

 

 ★

 

 

 

 

 夏休み前日。終業式後に特別HRが開かれ、教室内は大騒ぎになっていた。

 

 ――と、いうのも。

 

「えー、“一夏とジグのホストクラブ”、“一夏・ジグとツイスター”……? あと“一夏&ジグとポッキー遊び”に“一夏とジグと王様ゲーム”……。

 全部却下」

 

『えええええー!?』

 

「却下に決まってんだろ! だいたい誰が嬉しいんだこんなもん!」

 

 現在、夏休み明けに行われる学園祭での出し物を決めている最中なのである。クラス代表である一夏が司会進行役、ジギスヴァルトが書記を務めている。クラスの皆にやりたいことを挙げていってもらい、とりあえず全部黒板に書き留めた結果がこれだよ。

 

「私は嬉しいわね、断言する」

 

「そうだそうだ! 女子を喜ばせる義務を全うせよ!」

 

「織斑一夏は共有財産である!」

 

「俺だけ!? ジグは!?」

 

「私は本音のものだ」

 

「てひひ、そーゆーことー」

 

「はーいはいごちそーさま」

 

「あれ、でもその理屈だとジグ君参加させらんなくない?」

 

「それはそれ、これはこれ」

 

「他のクラスとか先輩とかがいろいろうるさいのよ。私たちにもチャンスを寄越せー! って」

 

「だからほら、私たちを助けると思って!」

 

「メシア気取りで!」

 

 なんかもう、てんやわんやである。

 

 助けを求めて視線を動かす一夏だが、今この場に千冬は居ない。時間がかかりそうだから、と早々に職員室へ帰ってしまった。

 

「山田先生、ダメですよね? こういうおかしな企画は」

 

 なので、千冬の次に頼りに()()()()真耶に救いを求めてみた。

 

「えっ!? わ、私に振られても!?」

 

「や、副担任なんだからしっかりしてくださいよ」

 

「え、えーと……うーん、わ、私はポッキーのなんかいいと思いますよ……?」

 

 顔を赤くしながら言う副担任・山田真耶。いいと思いますよじゃねえよあんた教師だろ止めろよ、と一夏とジギスヴァルトは嘆息した。

 

「とにかく、もっと普通な意見をだな!」

 

「ではメイド喫茶はどうだ?」

 

 スッと手を挙げてそう言ったのは、意外なことにラウラだった。クラス中がぽかんとする中、彼女は淡々と続ける。

 

「客受けはいいだろう。それに、飲食店は経費の回収が行える。たしか招待券制で外部からも入れるのだろう? それなら、休憩所としての需要も見込めるはずだ」

 

 言っている内容は、軍人らしいというか、合理的だ。だがそれがメイド喫茶についての話というのがラウラのイメージとかけ離れていて、聞く皆は内容を理解するのにしばらくの時間を要した。

 

「……一応聞いておくが、ラウラ。それは誰の入れ知恵だ?」

 

 ラウラが自分一人でその案を出せる筈が無いことを理解しているジギスヴァルトはまるで菩薩のような穏やかな顔で尋ねた。

 

「クラリッサです。学園祭といえばメイド喫茶を置いて他に無い、と」

 

 ……またクラリッサ(お ま え)か!

 

「でもでもー、メイド喫茶だと織斑君とジグ君は裏方になっちゃわない?」

 

「そーじゃん! せっかく男の子が二人も居るのに裏方なんてモッタイナイよ!」

 

「なら執事&メイド喫茶はどうだ? 一夏と兄様に執事の格好をしてもらって」

 

『それだあああああ!!』

 

 ラウラの提案に諸手を挙げて賛同する女子一同。こうなってはもう他のいかがわしい案は排斥されたも同然だ。執事&メイド喫茶――要するにコスプレ喫茶というのもやりようによってはだいぶいかがわしいが、学生主体でやるのだからあれらの案よりは百倍マシなものになるはずだ。

 

「でも衣装どうすんの? 作る?」

 

「セシリアってお嬢様だし、持ってないかな?」

 

「ええまあ、多少は実家にありますが……皆さんのサイズに合うかどうかはわかりませんわよ?」

 

「いーよいーよ全然おっけー! じゃあ夏休み明けに皆で衣装合わせしてみて、足りない分は本音が作るってことで!」

 

「うぇ? 私ぃー?」

 

「だってあんた、見かけによらず手先器用じゃない。ISの整備だってできるくらいだし」

 

「うーん……まあー、誰か手伝ってくれるならいいよー?」

 

「それじゃああとは内装とメニューだ!」

 

 と、一夏とジギスヴァルトが制御できないところでとんとん拍子に話が進んでいく。

 

「そうだ! ねえジグ君、ちょっと執事っぽいことやってみてよ!」

 

「どんな無茶振りだそれは!」

 

 女子の一人の提案にツッコミつつ、ジギスヴァルトは考える。執事っぽいことって……なんだ?

 

 まあ、別に本当に執事をするわけでもなし。なんとなくのイメージでいいか、と、黒板前から本音の席へ歩いて行く。左手を腹に当て、右手を後ろに回して、可能な限り真面目な顔で、礼。

 

「お迎えに上がりました、本音お嬢様」

 

「うむー、ごくろーさまー」

 

「では、こちらへどうぞ」

 

 手を取って、本音を連れて黒板前へ戻る。

 

 ――教室が歓声に包まれた。本音の顔が僅かに赤い。

 

「イケる! これならイケるわ!」

 

「大儲け間違いなしよ!」

 

「いくらでも毟り取れるね!」

 

「出し物最優秀賞は頂きよ!」

 

「あ、やば、鼻血が……」

 

「いいなー本音」

 

 もう大盛り上がりである。

 

 ここまで盛り上がっては、もう出し物はこれで決定だろう。というか、この流れで他の出し物がいいなんてことになったらそれはそれで怖い。移り気とかそんなもんじゃない、もっと怖ろしいものの片鱗を味わうハメになる。

 

「あー……じゃあ皆、出し物は執事&メイド喫茶でいいんだな?」

 

『おっけぃ!』

 

 ()くして、一年一組の出し物は執事&メイド喫茶(萌えの園)に決定した。

 

 

 

 

 ★

 

 

 

 

「本音は明日実家に戻るのだったか?」

 

「うん、そーだよー」

 

 夜。消灯時間の少し前。ジギスヴァルトと本音は自室でコーヒーを飲んで寛いでいた。早い者は放課後にさっさと帰省してしまったが、本音は明日の午前中に三年生の姉・(うつほ)と一緒に帰る予定だ。

 

「しばらくお別れだな。寂しくないか?」

 

「あー、そんなこと聞いちゃうんだー?」

 

 椅子に座るジギスヴァルトの背後に回り、抱きつく。

 

「寂しいに決まってるでしょー」

 

「……そうか」

 

「だからー……寂しくないよーに、今のうちにいーっぱい愛してほしいなー?」

 

 耳元でそんな風に囁かれて、彼は無言で立ち上がった。この後滅茶苦茶――まあ、うん。

 

 一方その頃、スティナは。

 

「…………」

 

「…………」

 

 五所川原伊呂波が部屋に招いたティナ・ハミルトンと対峙していた。睨み合うような形で互いに距離を測っている。

 

「…………」

 

「…………」

 

「……あの、スティナちゃん? ティナちゃん?」

 

 予想だにしない状況に困惑する伊呂波を置いてけぼりにして、膠着状態は続く。そして――。

 

 バッ! と、二人が同時に、よく分からないポーズを取った。

 

「私があなたで」

 

〔あなたが私で〕

 

「二人は」

 

〔合体〕

 

『融合体』

 

 ガシィッ! と握手を交わす二人。なんだこれ、という顔でその様子を見る伊呂波。

 

「あなたとはいい友達になれそうよ」

 

〔他人という気が

 しません〕

 

「まるでもう一人の自分を見ているようね」

 

「いや、名前が似てるだけですよね?」

 

 伊呂波のツッコミなど耳に入らぬとばかりに無視し、二人は今度は熱い抱擁を交わす。

 

 よくわからない友情が誕生した瞬間だった。

 

「私たちはずっと仲間よ!」

 

〔はい!〕

 

「……まあ、楽しそうだから、いいや」

 

 ――夏休みが、始まる……!

 

 

 

 

 

 




 あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致します。

 出し物を夏休み前に決めた理由は、キャノンボールの日付が九月二七日であることから学園祭の日付を計算してみると夏休み明けに出し物決めてたんじゃ時間が足りなさそうな気がしたからです。
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