IS -Scharlachrot-   作:小糠雨

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第三四話:ポ○リのCMといえばセン○バ

 

「こっちだ。面倒だからはぐれるなよ」

 

〔はぐれないように

 手を繋ぐなんてのは

 どうです?〕

 

「嫌だ」

 

 八月十四日、金曜日。箒は大きな鞄を抱えて、生まれてから小学四年生までを過ごした町を歩いていた。一人ではない。スティナが半歩下がって隣を歩いている。今日は夏休み前に約束した通り、彼女を篠ノ之神社へ案内しているのである。

 

〔なるほど

 どうせ繋ぐなら

 一夏さんがいいと〕

 

「どうしてそうなる! 同性の者とつなぐのは、なんというか、その……ああもう、わかれ!」

 

〔今どき女同士で

 手を繋いだくらいで

 誰も気にしない〕

 

 男同士だとホモだゲイだと騒ぐ輩も多く居るかも知れないが。

 

「それでも私が気にするんだ! いいから、きりきり歩け!」

 

〔アッハイ〕

 

 今のスティナは連れて行ってもらう立場だし、特段仲が良いわけではないので、箒の機嫌を損ねればここに置き去りにされるかも知れない。無論、そうなっても来た道くらい覚えているし、万一道に迷ったとしても弾か蘭に助けを求めれば帰れるだろう。

 

(弾さんにはあまり頼みたくありませんね……)

 

 迷子になったから助けて、なんて、あまり格好の良いものではないし。そりゃ、どうしても弾を頼るしかなくなったときには意地など張らず助けを求めるが、あまりそういう姿を彼に見せたくはない。

 

(そういえば、今頃兄さんはどうしているでしょう)

 

 ジギスヴァルトは二泊分の荷物を持って今朝出かけていった。本音の実家へと旅立ったわけだ。

 

 更識家の使用人の家系と聞いてひとつの可能性が脳裡をよぎったが……黙ったままの方が面白そうな気がしたので何も言わずに送り出した。確証があったわけではないし。

 

(まあ、兄さんがどうなろうが些事ですね。神社の方が優先です)

 

 別に死ぬわけでもなし。ちょっとおもしろおかしいことになるだけだ。

 

 ……多分。

 

 

 

 

 ★

 

 

 

 

 本音に指定された駅で降り、彼女と合流したジギスヴァルトは、連れて来られた家の前で絶句した。

 

 立派な門の向こうに、大きな屋敷――武家造、というのだったか。それだけならまだ冷静でいられただろうが、門に掛けられた表札が問題だった。

 

 表札が示して曰く――更識。

 

「……本音?」

 

「なにー?」

 

「……ここか?」

 

「ここだよー」

 

 本音が少し背伸びをしながら、更識の表札の少し下を指差す。

 

 ――布仏と書かれた小さな表札が、そこにはあった。

 

「...Tatsaechlich(マジで)?」

 

「うちは代々更識の使用人だからねぇ。ここの離れに住んでるのだよねー」

 

 本音に手を引かれて門をくぐり、屋敷の脇の建物へと歩いていく。離れと言うわりに普通の一軒家のような建物だ。

 

 本音は玄関の扉を開け――。

 

「お帰りなさいませご主人様ー☆」

 

 ――即座に閉めた。

 

「……ジグ、ちょっとここで待っててね」

 

「お、応」

 

 顔に満面の笑みを貼り付け、最小限だけ扉を開けて中へ滑り込む。

 

「弱P・弱P・→・弱K・強P」

 

「ちょ、本音ちゃん? 待って待ってシャレにならない、それはシャレにならない!?」

 

 中から聞こえる絶叫。

 

 さもありなん。中に居たのは裸エプロン(に見える水着エプロン)で待ち構える更識楯無――最高に空気を読めていない女だったのだから。

 

「ぎにゃあああああ!?」

 

 

 

 

 ★

 

 

 

 

〔わあ!

 これが

 篠ノ之神社!〕

 

 境内まで連れてくると、スティナは飛び跳ねんばかりの勢いで拝殿へと駆け出していった。写真や動画でしか見たことの無かった日本の神社を目の前にして相当にテンションが上がっているらしい。

 

 そんな彼女を横目に見ながら、箒は境内に建てられた道場の奥にある家へ向かった。

 

 玄関の扉を開けて――。

 

「お帰りなさい、箒ちゃん」

 

 そこには、自分たち家族が離れることになってからずっとこの神社を守ってくれていた叔母――雪子が居た。箒が来るのを玄関(ここ)で待ち構えていたらしい。

 

「……只今戻りました、雪子叔母さん」

 

 挨拶をしてから、靴を脱いで中へ。今日から()()()()部屋――かつて暮らしていた頃に使っていた部屋だ――に荷物を置いて、今度は居間に移動した。

 

「暑かったでしょう?」

 

「ええ、まあ」

 

 雪子が出してくれた冷たい麦茶を飲み干して、一息。

 

「ありがとうね、お手伝いしてくれて」

 

「せっかく近くに帰ってこられましたから。久しぶりにやりたかったんです」

 

 二日後の日曜日、ここ篠ノ之神社ではお盆祭りが開かれ、神楽舞を奉納する。箒も幼い頃に舞ったことがある。箒たち家族が離散してからは神社を管理してくれている雪子が御神楽を舞っていたのだが、今年は箒が舞う予定だ。とはいえ最後に舞ったのは六年程も前であるから、打ち合わせやら練習やらに時間を取るために今日ここへ戻ってきた。スティナを連れてきたのはそのついでだ。

 

「ところで、箒ちゃん」

 

「はい?」

 

「境内で写真をたくさん撮ってるかわいらしい女の子は、お友達?」

 

 それがスティナのことであるのは明白だ。彼女は今日ここに来られるのを本当に楽しみにしていたようで、いつの間にか買っていたデジカメを引っ()げて来ていた。さっきもずいぶん興奮していたようだから、きっと今頃はしゃぎまわっているに違いない。

 

「……あいつは、」

 

 あいつは――何だろう?

 

 友達、ではないと思う。自分も彼女も、互いが互いを嫌っているはずだ。彼女は(ねえさん)の娘を自称しているが、正式に養子縁組がなされたわけではないから親戚とも言えないだろう。しかしただの知り合いと答えるのも少し違うように思える。

 

「クラスメイト、です」

 

 結局、出たのはそんな答えだった。

 

「あら、そうなの。じゃあちょっとご挨拶してこないとね」

 

「え?」

 

「箒ちゃんがいつもお世話になってます、ってね」

 

 そう言って立ち上がった雪子の表情は、まるで悪戯を思いついた童女のようだった。

 

 

 

 

 ★

 

 

 

 

 その頃のジギスヴァルト。

 

「なかなか実戦慣れしているようですね。ですが、そこがガラ空きです!」

 

 ――ぱちっ。

 

「くっ……だが、ここに仕掛ければまだ間に合う!」

 

 ――ぱちっ。

 

「なるほどなかなかの戦術眼だ。でもこれならどうです? 最善手を打とうとしたその思考こそが命取りですよ!」

 

 ――ぱちっ。

 

「仲間が……私の兵が! 何が……生きて帰れだ……。何が……敵陣に斬り込めば勝機はあるだ。私は怖いのだ! 私は生きたい!」

 

 ――ぱちっ。

 

「何っ!? 遊びが過ぎたようですね!」

 

 ――ぱちっ。

 

「私は生きる! 生きて本音と添い遂げる!」

 

 ――ぱちっ。

 

「貴方が!? 不覚! 本音の想い人と出会う……ふふ、なかなか面白い人生でした。ですが負けませんよ!」

 

 ――ぱちっ。

 

「本音ちゃんをめぐって血で血を洗う争いが……。本音ちゃん、怖ろしい子っ!」

 

「じ、ジグが……添い遂げるって……。え、えへへー……そんな、まだ早いよぉー」

 

「あ、聞いてないわねこれ」

 

 ……本音の父親と将棋に興じていた。

 

 

 

 

 ★

 

 

 

 

 お賽銭を入れて拝んだ後、神社に夢中になっていたスティナは――普段ならば近寄られればわかるのだが――背後から這い寄る影に気付かなかった。

 

「こんにちは」

 

「――――!?」

 

 あまりに驚いたスティナは思わずヒュッと音がするほど息を吐き、慌てて振り返る。そこには四十代後半の女性が居て、落ち着いた物腰でやわらかな笑みを浮かべている。

 

「うふふ、そんなに驚いてくれるとは思わなかったわ」

 

「…………?」

 

 誰だろう。どことなく箒に似ている気がするが、この神社の人だろうか。

 

「私は箒ちゃんの叔母で、ここを管理している雪子です。あなたは?」

 

〔スティナ・ヴェスターグレン

 箒さんの

 クラスメイトです〕

 

「スティナちゃんね。箒ちゃんがいつもお世話になってます」

 

〔いえ〕

 

 喋らずに空中投影ディスプレイで発言するのを目にしても表情を動かしもしない雪子の様子に、逆にスティナが驚かされた。それが伝わったのか、変わらぬ笑顔で彼女は言う。

 

「声が出せない理由があるのよね? あ、別に言わなくてもいいわよ」

 

〔助かります〕

 

「それより、せっかくだからお昼ご飯、食べていかない? 学校での箒ちゃんのことも聞きたいし」

 

「…………」

 

 さて、どうしようか。せっかく神社の人に会えたのだからいろいろ話を聞きたくはある。お昼は五反田食堂にでも行ってみようかと思っていたが、ここからは地味に離れているようだからご馳走してくれると言うならありがたい。

 

 だが、学校での箒の話と言われても、自分に話せることなどあまり――。

 

「ちなみに、今日のお昼は冷えたお素麺よ」

 

〔頂きます〕

 

 即断だった。

 

 だって――今朝からずっとテンション上がりっぱなしなのでなんとか気にせずにいられたが――夏真っ盛りなのだ。キンキンに冷えた青いパッケージの“飲む点滴”が欲しくなるような、三十九度のとろけそうな日なのだ。さんさんさん太陽の光、少女の肩に降り注ぐ。ギンギラギンだが全然さりげなくない、むしろ自己主張の塊だ。

 

 さすがに着ていられなかったので勇気を振り絞ってコート無し(エイフォニック・ロビンの拡張領域(バススロット)には入れてあるが)、伊呂波にもらった白いワンピースに麦わら帽子という薄着であるとはいえ、暑いものは暑い。そんなときに冷たいお素麺を目の前にぶら下げられては飛びつくのも仕方ない。仕方ないのだ。

 

 ……それにしても、どうして伊呂波は毎度毎度スティナにピッタリのサイズの服を出してこられるのだろうか。彼女が遠慮する度に「でもその服は私には小さくて着られないので、スティナちゃんが着てくれないなら捨てるしかありません。なのでもらってやってくださいな」などと言うし。確かに彼女と伊呂波では身長差がだいぶあるので着られないのはわかるが、何故そんな服を伊呂波が所持しているのかが本当にわからない。お下がりならまだわかるが、毎回タグ付きの新品だし(しかもわりとお高い)。

 

「じゃあ、気が済んだらでいいから、あの奥の建物に来てちょうだい。その間に準備しておくから」

 

〔了解しました〕

 

 雪子が指差す建物を確認して頷いたスティナは、今度は手水舎(ちょうずや)へ駆けていった。入ってきたときに寄って身を清めてはいたのだが、改めて写真を撮りたいのである。

 

 そんな彼女の後ろ姿を微笑ましげに見つめた後、雪子は家に戻っていった。

 

(それにしても、あんな小さな子がクラスメイト……飛び級か何かかしら?)

 

 ……大いなる誤解と共に。

 

 

 

 

 ★

 

 

 

 

 三十分程後、スティナは篠ノ之家の居間に正座していた。彼女の向かいには箒が座っていて、テレビで昼ドラを見ながらボーッとしている。なんとなく流しているだけのようで、内容は頭に入っていなさそうだ。普段あまりテレビドラマを見ないスティナも、流し見する程度に留めている。

 

『聞いてよお姉ちゃん、あたし気づいたの。ゲームに勝つ方法ってやつ。馬鹿だから時間かかっちゃったけど。……勝つためには誰かが負ければいい。あたし以外の誰かが!』

 

『あぁ!? やってみなさいよぉ!!』

 

 画面の中では二人の姉妹が男を取り合っている。何故かチェーンソーでチャンバラをしているのはツッコミ所だろうか。

 

『百合子……? うちのメイドのトップが、何故ここに……』

 

『お許しくださいお嬢様方……百合子はご信頼に背きました』

 

 チャンバラに決着がつく直前、姉妹の家の使用人が横から男を掻っ攫っていった。謝りながらなのが逆に煽りになったか、姉妹は怒り狂っている。

 

『嘘、なのね……全部』

 

『許しは請わん。恨めよ』

 

『……小さな、存在ね……あなたも、私も……』

 

 かと思えば、使用人の女性は男に騙されて呆気なく死んでしまった。そして本日分の放送はそこで終了し、お昼のニュースが流れ始める。丁度そのタイミングで、雪子がお素麺を盛った大皿を運んできた。

 

「どうなったの、今日の『鴉と山猫』?」

 

〔メイドが

 死にました〕

 

「あら意外な展開。あとで録画見なくちゃ」

 

 そして始まる昼食。氷水に浸されたお素麺が暑さで火照った体に心地良い清涼感をもたらしてくれる。

 

「ねえスティナちゃん」

 

「…………?」

 

「箒ちゃん、学校で浮いちゃったりしてない? ほら、この子ちょっと無愛想でしょう?」

 

「…………」

 

 ……さて何と答えたものか。

 

 正直言って、スティナと箒の接点はさほど無い。スティナは一学期の途中からの編入だったし、学年別トーナメント以降は箒の方が彼女を避けていた。箒が一夏の訓練を邪魔しないよう監視するために剣を指導しようとしたこともあったが、その時も箒は彼女のことを半ば無視していた。

 

 結局、スティナは箒のごくごく僅かな面しか見たことが無い。クラスメイトと言っても、本当に“同じクラスに所属しているだけ”という感じだ。スティナの中にある箒の印象は、結局大部分が、直接関わるのではなく遠巻きに見たり他人から噂を聞いたりした結果の産物である。そういう意味では、学年別トーナメントでの一件は箒にとってなんとも理不尽だった。

 

 ――それでも、敢えて言うならば。

 

〔たしかに

 少し浮いてます〕

 

「あらあら、やっぱり?」

 

 でも。

 

〔心配いりません

 これから徐々に

 改善されます〕

 

 それが束の願望であり、スティナはそれを信じると決めた。

 

 そもそも、クラスの皆に聞く限り――一夏が絡まない場面では、だが――ちょっと無愛想で口下手ではあるが悪い奴ではない、という印象らしいのだ。一夏と仲良さげにしている女子に対して容赦なく殺気を飛ばしたり、そんなときの一夏に暴力を振るったり、ということをするからちょっと引かれているだけで。

 

 だから、どうしようもないくらいクラスで浮いている、というわけではない。実際、ルームメイトである鷹月静寐とはある程度関係は良好だと、静寐本人から聞いている。

 

 ならばISに関わる場面では紅椿が、それ以外の場面では自分や静寐等学園の皆が積極的に関わっていけば、何かが変わるかも知れない。否、変わって欲しい。

 

 それは決して箒に対する情からではなく、ましてや“箒のため”などでもなく。ただ、束の想いが行き着く先が見たいという、スティナ自身の好奇心のために。

 

〔雪子さん

 ここの道場

 使えますか?〕

 

「え? ええ、使えるわよ」

 

〔では箒さん

 食事が済んだら

 行きましょう〕

 

「は? 何のために?」

 

〔決まってるでしょう〕

 

 本当は、昼食は町に出て食べてそのまま学園に帰る気でいたから、これは完全に予定外なのだけど。でも、せっかく時間ができたのだから、是非ともやっておきたいことがあった。無論、本人が承諾してくれるなら、だが。

 

〔私と剣道

 しましょうよ〕

 

 

 

 

 ★

 

 

 

 

 その頃のジギスヴァルト。

 

「何をしたのだ楯無会長! そのボタンは何だ!」

 

 びー、びー、びー。

 

「何って、屋敷中の警備の者に()()()()を知らせるボタンよ。もうじきここに来るわ」

 

 びー、びー、びー。

 

「先程の将棋で思考力の程は見せてもらいましたから、次は腕っ節をと思いまして。ほら、ジグ君の立場はいろいろ微妙でしょう? ですから、降り掛かる火の粉くらいは払えなければ、娘を任せるのは父親として不安なのですよ」

 

 どどどどどどどどどど。

 

「馬鹿かあんたら馬っ鹿じゃないのか! またはアホか!」

 

 どどどどどどどどどど、すぱーん。

 

「お嬢! 布仏の旦那ぁ! ご無事ですか!」「なんだあいつ」「見ねえ顔だ」「侵入者か?」「布仏の皆さんに手ぇ出そうたぁいい度胸だ」「やっちまうか」

 

 わいわいがやがや。

 

「ああ、クソッ! こうなったら自棄(やけ)だ! はいだらー!!」

 

 

 

 

 ★

 

 

 

 

 夕刻。スティナはやや疲れた様子で駅へと歩いていた。

 

(いやあ、なかなかどうして、侮れませんねえ箒さん)

 

 昼食後、しばらく休憩した後、何度か試合をした。

 

 以前生身で箒とやったときには、剣道ではなく、純粋に両者の“剣を用いての戦闘の腕”を比べるための試合だった。故にスティナは防具をつけず、打ち込む場所も自由、さらには足払いや拳等何でもありだった。

 

 しかし今回は“剣道の試合”をした。スティナも防具をつけ、反則や有効打もきっちり剣道のルールに則って行った。

 

 結果――勝負がつかなかった。

 

 スティナは身体が小さく、筋力も女性の平均より少し上程度。なので生身での戦いでは“速さ”を重視している。それは単純な速度ではなく、絶えず動き回り相手に狙いを絞らせないという“速さ”。しかし今回は剣道のルールの中での戦いであることに加えて慣れない防具もつけていたためそれが発揮できず、常に箒の正面に居ることになった。

 

 一方箒は、中学生の部とはいえ剣道で全国優勝する程の実力者。前回のような何でもありルールや学年別トーナメントのような空中戦では遅れを取ったが、地上での剣道ならば彼女の一撃一撃が重く、鋭い。

 

 体格でもパワーでもスピードでも劣ることとなったスティナは防戦一方となり、しかし持ち前の反応速度で全ての攻撃をいなし続けた。有効打となる部位は決まっているのも大きな要因だったと言える。何度も引き分け、何度も再開し――そして勝負がつく前に箒の体力が尽きた。スティナも、倒れはしないまでもフラフラだった。

 

 なので今回はそこでお開き。少し休憩した後、箒と再戦を約束して帰路についた。

 

 ――そう、再戦を約束したのだ。

 

(次やるときまでに防具に慣れておかないと……いやあ、これが我流剣術の弊害ってやつですかねぇ)

 

 彼女の剣術は誰かに習ったものではなく、趣味で棒やら何やら振り回しているうちに一から組み上げられていったものだ。それ故斬るのに相応の技術を要する日本刀は扱えないが、それはともかく。彼女にとっての剣術とは、趣味であると同時に、“やられる前にやる”ためのもの。

 

 だからだろうか、何でもありの戦いなら強いが、剣道のように厳格なルールがあるとあまり役立たないことが今回のことでわかったように思う。

 

(……剣道部、入ろうかなあ)

 

 IS学園では、何らかの部活動に所属しなければならないと校則で決まっている。今まで特にやりたい部活も無かったのでジギスヴァルト共々とりあえず生徒会庶務にしてもらってその縛りから逃れていたが、生徒会から除名してもらって剣道部に行くのもいい気がする。

 

 だって、そう――。

 

(次やるときには勝ちたいですからね)

 

 ――あいつにだけは負けたくないと、思うのだ。

 

 

 




 更新速度が落ちる一方だぜ! 夏休み編難しい! でも夏休み編はもうちょっとだけ続くんじゃ。

 そういえば、ISの世界って西暦何年なんでしょうね。作中でわかっている「九月二十七日が日曜日」に当てはまるのは今年、つまり二〇一五年です。その前は二〇〇九年で、次は二〇二〇年らしいです。技術レベル的に二〇〇九年はないんじゃないかなとは思ってるのですが、はてさて。
 まあ、原作で描写があるけど私が忘れているだけという可能性も大いにありますがそれはそれです。
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