1話
地球に似た、別の惑星。
全世界を支配したラヴァーナル帝国と、神による魔神戦争から数十万年後。
神の空間にて。
「ラヴァーナル帝国の新兵器は、もう人間の手には負えません。我々が対抗策を練らなければ、この世界のすべてが滅んでしまう」
1人の神は、どこかに逃げたラヴァーナル帝国の実験台にされた惑星を、指をくわえながら見ることしかできなかった。
水上を滑る様に動き回り、船を片っ端から沈めていく化け物。突然深海から現れるので、神々は深海棲艦と名づけた。
「奴らの兵器を模した兵器の構想は済んでおる。だが、あと一押しが足りんのじゃ……」
立派な髭を生やしたリーダーは、頭を悩ませた。
「む?この『地球』という星の、沈んだ軍艦や世界規模の戦争で使われたものはどうだ?」
「沈んだ軍艦が使えるのか?」
「言っておるじゃろ。構想は済んでおると。これに再び、魂を宿らせる。軍艦の魂とすれば、奴らと対抗できるだろう」
リーダーの提案に、ほかの神々は賛成した。
だが
「い、いかん!もう奴らが『地球』に来おった!」
想像を超える早さに、リーダーは慌てた。
「待っておれ、地球の人々よ。すぐに、わしらが対抗策を送ろう。それまで耐えるのじゃ!」
彼らの願いに答えるように、地球の人々は、徐々に押し込まれながらも深海棲艦の猛攻を耐えていた。
「よし、間に合ったぞ。あとは、彼女たちを指揮する者が必要じゃ」
リーダーは、ほかの神々と顔を合わせた。
「それなら、私が創りましたわ」
ひとりの女神が、手を上げた。
「ラヴァーナルは、元の世界に戻ってくる。私が創った彼なら、いきなり別世界に飛ばされても大丈夫なはずよ」
「ならば、彼らを『地球』に送るぞ」
神々は祈りを捧げ、深海棲艦の対抗策を地球に送り込んだ。
◆◆◆
20XX年。
地球は、突然現れた未知の敵と戦争になった。
「深海棲艦」と呼ばれるようになった敵は、片っ端から船を沈め、あっという間に制海権を奪っていた。
現代の艦砲やミサイル等は、効くには効くが、大してダメージを与えられなかった。
そして、恐れていた、深海棲艦による地上侵攻。
じりじりと後退を続けていたが、神による救援が間に合ったのだ。
「カイザー」と名乗る男が指揮する、「艦娘」と呼ばれる、第二次世界大戦時の軍艦の魂を宿した少女たち。
さらに、第二次世界大戦時の武器や兵器を使用する、陸軍妖精たちの活躍により、深海棲艦を太平洋の片隅に押し返すことに成功した。
しかし、深海棲艦を全滅させることはできなかった。
どこかに逃げたのだ。
同時に、「艦娘」や「妖精」たちも一緒に消えてしまった。
彼らと共に現れたバイヤー島も、どこかに消えてしまった。
◆◆◆
中央暦1639年1月23日。
この世界は「第一文明圏」、「第二文明圏」、「第三文明圏」の3つにランク分けされている。
第三文明圏から外れた大東洋に、1つの大陸がある。
ロデニウス大陸と呼ばれるその大陸には、3つの国が存在する。
豊穣の女神に祝福され、肥沃な土地が国土の半分以上を占める農業国家「クワ・トイネ公国」
多数の鉱石が採れるが、作物が育たない砂漠地帯が多い「クイラ王国」
ロデニウス大陸で最も力があり、人間のみが住む「ロウリア王国」
またロウリア王国は、亜人の迫害政策を行っているため、クワ・トイネ公国とクイラ王国と敵対関係にある。
クワ・トイネ公国とクイラ王国はお互いに助け合い、ロウリア王国に対抗している。
最近では、「もうすぐ戦争が始まる」とうわさされ、緊張状態は高まっていた。
今日も何事もなく1日が終わる。はずであった。
その日の夜。ほんの数秒、真昼の様な明るさになったかと思うと、再び闇が世界を支配した。
翌日、1月24日 クワ・トイネ公国
昨日の夜に起こった奇妙な出来事について、クワ・トイネ公国は軍を動員して調査にあたらせていた。
結果、東部に新しい島が誕生していた。
その島はかなりの大きさで、建築物があることから、どうやら人間の住む島のようだ。
実際、人が住んでいたのだ。なぜか女性が多いが。
「別世界から転移してきた」と自称する彼らは、「地球」という星から来たらしい。
国が転移してきた前例もあり、クワ・トイネ公国は彼らと条約を結んだ。
大量の食糧を供給するだけで、彼らの進んだ技術を入手できるのだ。
大チャンスを逃すわけには行かなかった。
ちなみに、隣国のクイラ王国には大量の資源や燃える黒い水があると教えると、「カイザー」と名乗った男はすっ飛んで行ったとか。