艦隊これくしょん-異世界戦記-   作:りらたま

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3話

中央歴1639年4月5日 バイヤー島、艦隊司令部

 

「では、これより作戦会議をはじめる」

 

 司令部の一角に集まった数人の艦娘の前で、カイザーは開始の宣言をする。

 

「現在クワ・トイネ公国領内に侵入したロウリア王国軍は、西部方面に侵攻しています。追跡中のUボートからの報告によると4400隻の艦隊が経済都市マイハークに接近しているとのことです」

 

 軽巡洋艦娘「大淀」がクワ・トイネ公国の現状を報告する。

 

「数だけは多いな。まずは、この艦隊を空母機動部隊で叩く。陸は……いきなり敵の本土を攻撃してみるか。ロウリアの重要都市はどこだ?」

「クワ・トイネ公国からの情報ですと、ビーズルと呼ばれる都市ですね。この大陸で最大の工業都市らしいです」

 

 カイザーの問いかけに重巡洋艦娘「青葉」が答える。いつの間にそんな情報を手に入れたんだ?

大淀は、地図に書かれていたビーズルの位置を示す。

 

「なるほど……よし、ビーズルの爆撃は航空隊に任せる。陸の防衛計画も各々に任せる」

 

 彼の指示に妖精たちは頷く。

 

「あとは、艦隊の編成だな。空母は赤城と加賀で……イントレピッドとフランクリンで決定だな」

 

 数が多いので、ロケット弾も搭載できる艦載機を装備したアメリカ空母を選んだのだ。

 

「戦艦は、ビスマルクとシャルンホルストでいいか」

 

 こちらは装填速度が比較的早いのを選んだ。

 

「ワイバーン対策でアトランタと秋月を連れていって。まあ、こんなもんかな」

「分かりました。早速準備に取り掛かります」

 

 大淀は、カイザーに敬礼するとすぐに部屋から出ていった。

数時間後。

 

「作戦計画概要をご説明いたします」

 

 何回聞いたかわからない大淀のセリフと共に、大講堂で作戦計画についての説明が行われた。

 

◆◆◆

 

クワ・トイネ公国公都クワ・トイネ、政治部会。

 

 政治部会の会場は重苦しい空気に満たされていた。

たった数日前にロウリア王国軍の侵攻が始まった。

 現在、ロウリア王国軍は国境から10kmの場所にあるギムを占領したが、それ以上の進軍は見られていない。

推定戦力は最低でも10万人を上回り、さらに4000隻を超える大艦隊がマイハークに向かっているとのことだ。

 

「首相、カイザー提督から緊急伝が届いています」

 

 政治部会に参加していた首相カナタの元に、秘書が入ってきた。

 

「内容は?」

「対ロウリア戦に向けて、何もない広い平原を貸してほしいとのことです」

「平原を……?どういうことだ?」

 

 カナタは、伝文を持ってきた秘書に説明を求めた。

 

「どうやら航空戦力を展開するための飛行場にするそうです」

「それなら、エジェイ周辺のダイタル平原がぴったりだ。彼に自由に使ってよいと伝えてくれ」

 

 軍務卿が、地図を見て答える。

 

「マイハークに向かっている大艦隊は、12隻の艦隊を派遣するとのことです」

「12隻!?たったの12隻で迎撃するつもりか!?何を考えて……」

 

 政治部会が混乱に包まれる。

4000隻を超える大艦隊をたったの12隻で迎え撃つ。正気の沙汰とは思えない。

真意が分からないまま、時間だけが過ぎていく。

 

「彼らに託そう。彼らならやってくれるかもしれない!私たちは彼らに託すしか無いのだ!」

 

 考え込んだのち、カナタは決定を下した。

 

◆◆◆

 

その日の夕方、マイハーク。

 

 日が沈み始め、オレンジ色の夕日がマイハーク市街を照らしている。

港にある公国海軍司令部の一角では、提督パンカーレが出撃作業の様子を眺めていた。

水夫たちが矢避けの盾や、油の入った壺を運び出している。

 

「提督、間もなくバイヤー島から12隻の艦隊が援軍として到着します」

 

 しばらく眺めていると、通信兵が報告する。

 

「12隻だと?たったの12隻で大艦隊に挑もうというのか!?」

 

 パンカーレは自分の耳を疑った。

 

「はい、そう報告を受けています。また、観戦武官を1名、派遣してほしいそうです」

「観戦武官か……分かった。だが……」

 

 パンカーレは言いよどむ。死地と分かり切っているのに派遣して大丈夫だろうか?

そこへ、

 

「私が行きます」

 

 後ろから声がかかる。振り返ると、そこには剣術で海軍首席のブルーアイがいた。

 

「ブルーアイ君、行ってくれるのか?」

「はい。私の剣術が役に立つかもしれません」

 

 海軍の最精鋭の1人であるブルーアイをここで失うわけにはいかない。

パンカーレは決断を下す。

 

「わかった……では、ブルーアイ君に任せよう!」

「はっ!この剣に誓って!!」

 

 その1時間後。

 

 入港してきた12隻の艦隊に、彼は驚いてしまった。

自国の帆船より何倍も大きい船が12隻も入港してくるのだから。

 

「何て大きさだ……」

「あの船は、どうやって動かしているんだろう?」

 

 港の人々が口々に言う。

パンカーレは自分自身の理解の範囲で、この艦隊の戦い方について考えてみることにした。

……確かにこれならあの大艦隊相手でも戦えるかもしれない。パンカーレは考えを改めた。

 一方のブルーアイも、考えていた。

自身の理解を超える技術力。この艦隊は一体どんな戦い方を見せてくれるのか? 彼は期待に胸をふくらませていた。

一隻一隻が大きく、これなら1隻でも数十隻分の戦力となるだろう。

 

「あの船、どうやって動いているんだろう?」

「この艦隊なら勝てるかもしれない!」

 

 作業をしていた水夫たちは口々に言い合う。

公国の運命を分ける海戦。その火蓋は、切られようとしていた……

 

◆◆◆

 

 大型艦ののうちの1隻、戦艦「ビスマルク」に乗り込んだブルーアイは頭がパンクしそうになっていた。

甲板は木でできているが、それ以外は鉄で出来ている。

どうやって動いているのか?マストはあるが、帆はない。動力は何だ!?

中は明るく、光もある。

訳の分からない物で溢れた通路を進み、艦橋に向かう。

 

「提督、観戦武官の方が到着されました」

 

 案内役の妖精がカイザー提督に声をかける。

 

「ああ、わかった」

 

 艦橋に入った彼は驚く。美しい金髪の女性がいるのだ。

クワ・トイネ公国軍では、女性兵士はとても珍しい。

 

「カイザー提督ですね。私は、クワ・トイネ公国海軍観戦武官のブルーアイと申します」

 

 彼は敬礼しながら自己紹介する。

 

「私はこの艦の艦長、ビスマルクよ」

「艦隊司令官のカイザーだ」

 

 カイザーは、自己紹介を返しながら長官室にブルーアイを案内させた。

自国の軍船には絶対にない、ふかふかのベッド。陸地で出されるような食事。

ブルーアイは、この艦の艦長が女性であることに驚きながらも、食事に舌鼓を打つのだった。

 

戦艦  「Bismarck」(旗艦)「Scharnhorst」

正規空母「赤城」「加賀」

    「Intrepid」「Franklin」

軽巡洋艦「Atlanta」

重巡洋艦「摩耶」

駆逐艦 「秋月」「夕立」「時雨」「雪風」

 計12隻の艦隊は、ブルーアイを乗せて明日の早朝に出撃した。

 

 その1時間後、午前6時46分。

 

「第一次攻撃隊、発艦してください!」

「五航戦の子なんかと一緒にしないで」

「そう、見つけたのね。じゃあ始めましょう!Intrepid航空隊各隊、発艦はじめて!」

「さあ行くわよ、攻撃隊発進!」

 

 偵察機からの情報をもとに、合計約200機の攻撃隊が大空へ飛び立っていく。

ロデニウス大陸の運命を変える海戦が始まろうとしていた。

 

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