艦隊これくしょん-異世界戦記-   作:りらたま

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6話

 中央歴1639年4月16日 ロウリア軍占領下のギム。

 

 ロウリア軍は、先の海戦での大敗やビーズルの壊滅を受けて侵攻計画の変更がなされた。

本来であれば、ギムで少し休んで城塞都市エジェイを攻略、そこから東進してクワ・トイネ公国を侵攻する予定であったが、急遽予定が変更されることになった。

士気の低下を防ぐため、軍の高級幹部以外には情報が伏せられることとなった。

 しかし、急なギムの拠点化やワイバーン隊に支給される食糧が減ったことから、前線の将兵たちは少しばかり疑問を抱き始めていた。

軍上層部からは何の報告も無いため、「気のせいだろう」と自分を納得させていた。

 このギムでのんびり過ごしていたたことが致命的な選択ミスであることを、まだ誰も知らない。

いや、クワ・トイネ公国に侵攻したこと自体が取り返しのつかないミスであった。

 

◆◆◆

 

「さて、そろそろエジェイへ向かいますかね」

 

 ギム虐殺の首謀者である東方討伐軍副将アデムは、エジェイ侵攻のための部隊に出撃準備の指示を出していた。

「アデム様!」

 

 伝令兵が駆け込んできて報告に来た。

 

「大変です!先ほど偵察隊から、こちらに接近する敵部隊を確認との報告が!」

「なに?」

 

 アデムはこの報告を聞き、非常に驚いた。敵部隊がわざわざギムまで来るとは想定外であったからだ。

 

「ふむ、少しのんびりしすぎたか。よし、全ワイバーンを出せ!敵の侵攻部隊を粉砕する。用意させろ!」

「はっ!!」

 

 アデムはすぐに伝令兵に命令する。

彼はこの侵攻に絶対の自信を持っていたため、特に警戒することもなく命令を下したのだ。

 だが、これが彼の命取りとなった。

◆◆◆

 

 同日数時間後、ギム東方上空。

 

 ギムの飛行場から発進したワイバーン隊20騎は、偵察隊が発見した敵部隊へ襲撃をかけようとしていた。

ところが。

 

「畜生!なんだこいつらは!?」

「ダメだ!追いつけない!!」

 

 20騎のワイバーンは敵へ襲撃をかけようとしたが、敵の飛竜によって阻止された。

 

「何とかして避けろ!食らった死ぬぞ!」

 

 敵の連続発射できる光弾を食らえば即死する。

彼らは避けようと必死で飛行する。

だが……。

 

「ギャアアア!!」

 

 また1騎が光弾に直撃した。そのワイバーンは数か所から血を吹き出しながらそのまま落下していく。

1騎、また1騎と撃墜されていく。光弾を避けることで精いっぱいで反撃する余裕すらなかった。

 

「そんな馬鹿な!最強のワイバーンがこんなにあっさりやられるだと!?」

 

 隊を率いる隊長はそう叫ぶ。

 

「見てろ!俺が1騎でも落としてやる!!」

 

 彼はワイバーンの手綱を引き、敵飛竜へ突撃する。

 

「食らえええ!!」

 

 隊長は相棒のワイバーンに合図を送り、火炎弾を発射させる。

 

「そんな馬鹿な!!」

 

 彼は絶望した。必中の火炎弾はあっさりと避けられてしまった。

そして彼は「Bf109 G型」の20㎜機関砲によって、ワイバーンもろともミンチ肉にされた。

 

◆◆◆

 

「一体何があった?」

 

 アデムは、ワイバーン隊から送られてきた報告を聞いて呆然とした。

まず敵の飛竜に全く追いつけない。そして光弾が発射されるたびに味方のワイバーンは1騎、また1騎と恐ろしいやられていく。

理解できない。

 すると、また伝令兵が駆け込んできた。

 

「アデム様!大変です!東から飛竜の大群が接近中とのことです!」

「……分かった。今すぐ迎撃態勢を整えろ。急げ!!」

「はっ!」

 

 アデムはすぐに迎撃態勢を整えるように命令した。

 

『こちら直掩隊、数だけで100はいる。でかいのが30ほどいる。これはまずいぞ』

『まずい!低空から20騎ほど高速で向かっている。』

 

 迎撃に向かった直掩隊から、悲鳴のような通信が入ってきた。

 

「急げ!敵が来るぞ!」

 

 飛行場では、竜舎で休んでいたワイバーンが飛び立とうとしていた。

 

「上がれるものから上がれ!離陸を急げ!!」

 

 竜騎士たちは、ワイバーンを引っ張って離陸の準備を急いでいる。

しかし、彼らの努力は遅すぎた。

 

 低空を高速で飛行する10機の「Fw 190 F-8」はR4Mロケットを10発抱えながら、暗い影のようにギムの飛行場に近づいていた。

 エンジンの轟音が地上に響き渡り、やがて視界に入ると同時に地上から悲鳴が上がった。

 

「あれは……?なんだあれは!?」

 

 「Fw 190」は、ロウリア軍が見たことのない異様な形状の飛竜だった。鋭い機銃口がまるで猛禽の爪のように輝き、恐ろしい威圧感を放っていた。

 

「全員、迎撃態勢を取れ!飛び立てるワイバーンは即刻離陸しろ!」

 

 叫びが飛行場に響き渡ったが、混乱の中での命令は遅すぎた。FW 190が地上にいるワイバーンたちに向けて急降下し始めた。

 そして13㎜、20㎜機関砲とR4Mロケット弾が雨のように襲いかかった。

 

「グワアアア!!!」

「ギャアアアア!」

 

 数十発の機関砲弾がワイバーンたちを切り裂き、ロケット弾の破片が竜騎士たちを切り刻む。

 

「そんな……こんな簡単にやられるだと……?」

 

 司令官であるパンドール将軍は呆然と立ち尽くしていた。目の前で次々と倒れていくワイバーンと竜騎士たち。彼らの最強の飛竜が、あっという間に無力化されていく光景に、絶望が広がっていく。

 敵は次々と攻撃を続け、地上のワイバーンを一掃していった。ロウリア軍は反撃する間もなく、ただ蹂躙されていく。

 これで終わりではなかった。

「Ju 288」爆撃機の編隊がギム市街地に接近していた。死と破壊を運ぶエンジンの轟音が徐々に大きくなり、地上の兵士たちは空を見上げた。

 

「……あれは?」

「さっきの奴らと同じなのか?」

 

 彼らは絶望の中で立ち尽くしていた。そして、その予感は的中する。

240発もの250㎏爆弾が重力に引かれて急速に地上へ向かっていく。ロウリア兵たちはその光景に凍りついた。

 

「に、逃げろ!!」

 

 兵士たちは一斉に逃げ始めた。しかし彼らの努力も空しく爆弾が着弾と同時に炸裂し、巨大な爆発音が響き渡った。

建物が崩れ、炎と煙が街全体を覆い尽くした。爆風が吹き荒れ、兵士たちは次々と吹き飛ばされる。司令部のある建物も2発の直撃弾を受けて消滅した。

 この爆撃でギムは一瞬にして廃墟と化し、司令部要員を根こそぎ失ったロウリア軍は指揮系統が完全に崩壊した。

そして、さらなる絶望が彼らを襲った。

 

「やべぇよ…やべぇよ…」

「この状態で戦うのか?俺たちは」

 

 彼らの視界に広がるのは、爆撃を隠れ蓑に進軍してきたクワ・トイネ公国軍で埋め尽くされていた。

歩兵だけでなく、鉄の怪物までいる。

 現在、ギム周辺に展開している兵力は20万人であるが、その半数が市街地に詰めていたため、爆撃で吹き飛んでしまった。

 よって残りの10万人で戦わなければならない。

 

◆◆◆

 

 最初に動いたのはロウリア軍の騎兵隊であった。

 

「突撃せよ!敵を蹴散らせ!」

 

 騎兵隊長は剣を高く掲げ、部隊を率いて突撃を命じた。数百騎の騎兵たちは、戦場を駆け抜けるようにしてクワ・トイネ軍に向かって突進する。

 

「よし、待て……今だ!」

 

 ロウリア騎兵隊が射程内に入った瞬間、クワ・トイネ公国とバイヤー島陸戦部隊の連合軍は一斉に銃撃を開始しし、猛烈な弾幕が騎兵たちに襲いかかった。

 

「ギャアアアア!!」

「うわあああ!!」

 

 ロウリア騎兵たちは次々と撃ち倒されていく。頑丈な鉄の鎧ですら、銃弾に耐えられるはずがなかった。

騎兵隊長の両腕が千切れ飛び、胴体や首が血を吹き出しながら吹き飛ぶ。

 

「な……なんだこれは!?」

 

 騎兵隊長は自分がなぜこんな目に遭っているのか理解できなかっただろう。

彼は何が起こったかも分からないまま絶命した。

 騎兵たちは次々と弾丸に倒れ、「IV号戦車H型」の75㎜砲で馬ごと肉塊と化していく。戦場は一瞬で血みどろの地獄と化した。

 騎兵隊の士気は一気に下がり敗走状態となった。

 

「ひいい!!逃げろ!」

 

 騎兵隊は、蜘蛛の子を散らすかのように逃げ始めた。だが、この惨状から逃れることはできなかった。

数分間の激しい銃撃と砲撃の後、戦場には騎兵隊の馬とロウリア兵たちが散乱していた。

 今度は、重装歩兵の後ろに通常歩兵を続かせて突撃したが、騎兵隊と同じ運命をたどった。

 

 ロウリア軍の突撃が失敗に終わり、連合軍は市街地へと突入した。

ロウリア兵たちは剣を振りかざし、槍を突き出しながら連合軍に突撃した。瓦礫を飛び越えながら、一気に距離を詰めようとする。

 

「突撃しろ!!」

 

 だが、待ち構えていた妖精部隊やクワ・トイネ兵たちの一斉銃撃を浴びせた。

銃弾が次々とロウリア兵に叩き込まれ、バタバタと倒れていく。

一部のロウリア兵は必死に距離を詰め、クワ・トイネ兵に近接戦闘を挑んだ。

 

「なんだこいつらは!?」

 

アデムは目の前の光景を見て驚く。

 

「ば……化物だ!」

「助けてくれぇ!」

「逃げるんだぁぁぁ」

 

逃げ惑う兵士、(異世界式の)降伏した兵士達を次々と射殺しながら、灰色の服を着た敵兵が向かってくる。

アデムは部下達と共に後退しようとしたが、背中を見せた途端、銃撃を受ける。

 

「ぎゃあああ!」

 

 アデムは倒れる。

 

「閣下!」

 

 振り返った部下も撃たれてしまった。

アデムは、何とか立ち上がろうとするが、腹部から血を流していた。

 

「ちくしょう!こんなところで死んでたまるか!」

 

 這ってでもその場を離れようとする。

 

「逃すな!撃て!」

 

 さらに撃たれ、アデムは動けなくなった。

 

「はぁはぁ」

 

 位の高そうな男が腰にあるホルスターからワルサーPPを抜く。

そして、アデムの頭に銃口を向けて引き金を引いた。

38口径9mm弾が脳天をぶち抜く。

 そのまま2発、3発と撃ちこみ、アデムは絶命する。

 廃墟の市街地からは、2時間ほど絶え間ない銃声と剣の金属音が響き渡った。

 

◆◆◆

 

 やがて銃声は止み、廃墟の市街地はロウリア兵の死体で埋め尽くされた。戦闘は終わったのである。

連合軍は市街地を完全に制圧し、ギム奪還作戦は成功に終わった。廃墟と化した街には、クワ・トイネ公国軍の勝利の歓声が響き渡った。

 

 今回の戦闘によりロウリア軍は兵士10万人以上が戦死または行方不明となった。東方討伐軍副将アデムや司令官のパンドール将軍も戦死した。

 ロウリア軍は、クワ・トイネ公国侵攻軍の主力を完全に喪失。

この戦は今回の戦争のターニングポイントになったのである。

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