ただ愛されればそれでいい   作:サラダボウル

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ランク戦!

 6月5日。

 俺はいつものように茜と一緒にボーダーへ向かっていた。

 

「今日からランク戦だな」

 

「はい!うちもさっそく夜やります!」

 

 B級ランク戦。

 個人とは違い、何人かでチームを組んで三つ巴か四つ巴で戦闘を行う。

 生存点とか撃破点とかいろいろと、ルールはあるが一番ポイントが高い奴が勝ちだ。

 最後まで生き残ることではなく、撃破だとか生存でポイントを稼ぐのを目的としたランク戦。

 

 それが、今日から始まる。

 俺はログでよく見ていたが、本物を見るのは今日が初めて。

 ましてや、実況もつくときた。行かない理由がない。

 

 本当は昼から見たかったけど、学生は勉学に励まないとね。 

 ランク戦に参加しない人間は学校優先とボーダーに言われているので見られなかった。

 

 中位が鈴鳴第一、諏訪隊、漆間隊、早川隊の四つ巴。

 上位が二宮隊、弓場隊、王子隊の三つ巴だった。

 

 見たかったな。

 特に上位。

 

 二宮さんの戦闘をリアルタイムで見ておきたかった。

 解説付きで。

 

「那須隊は、荒船隊と柿崎隊だっけ?」

 

「そうです!どちらも前シーズンで戦いなれた相手ですから、負けられません!」

 

 目をキラキラと輝かせながら、こちら見る茜。

 楽しそうだな。いいチームなんだろう。

 

「頑張って」

 

「頑張ります!」

 

 那須隊。

 那須玲をエースとして、熊谷友子と日浦茜が援護をするチーム。

 今の順位は13位。そこまで高いわけじゃない。中位の下から数えた方が早いぐらいだ。

 理由は明白。射手がエースをしているから。

 またただでさえバイパーで頭を使うのに、指揮もしていた。本領を発揮しづらい環境に違いない。

 そんなガタガタなチームだからそこにいるんだろうなと、俺は思っている。

 

 チームの内情をそこまで知ってるわけじゃないから、ログを見た感想に過ぎない。

 だが、外れてはいないと思ってる。

 

 ちょうど今から見られるし、その辺も確認するか。

 俺が各チームに抱いているイメージが合っているのかどうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ボーダーのみなさんこんばんは!海老名隊オペレーター武富桜子(たけとみさくらこ)です!」

 

 元気なオペレーターのあいさつがランク戦夜の部の開幕を告げる。

 上位に行ってもよかったのだが、後で茜から感想とか聞かれたら困ると思い、那須隊VS荒船隊VS柿崎隊の試合を見に来た。

 ま、学ぶことはあるだろうし悪い選択だとは思っていない。

 

「本日の解説は加古隊の加古隊長と昼の部で激戦を繰り広げた王子隊の王子隊長に来ていただきました!」

 

「よろしくね~」

 

「おつかれさま」

 

 加古さん。は特に言うことはない。

 A級を率いている人ってぐらい。

 

 もう一人、王子隊長と呼ばれていたのは王子隊を率いている王子一彰(おうじかずあき)だ。

 昼の部が終わって早々に解説とはなかなかハードなことをする人だな。

 二宮隊と弓場隊の相手は楽じゃなかっただろうに。

 

「今日はランク戦初日!ということもありまして、王子隊員にはランク戦の説明を──」

 

 と、初日ということも相まってランク戦の解説が始まった。

 上位中位下位だとか、ポイント制だとかその辺の話。

 別に聞く必要はないなと、聞き流していると。

 

「あ、壽先輩」

 

「黒江じゃん」

 

 黒江が現れた。

 ランク戦見るんだ。

 

「隣いいですか?」

 

「どうぞ」

 

 A級に上がるし、ランク戦を見ているような余裕がないと思っていたが別にそんなことはないのだろうか。

 それとも何か目当てでも?

 

「あの、壽先輩はこの試合どこが勝つと思いますか?」

 

「え?勝つチーム?」

 

「はい、どう思うかなって」

 

 どう思うかなって……何が?

 いきなりよくわからないことを聞いてくるな。

 

「荒船隊じゃない?このチームなら」

 

「結構すぐ言い切るんですね」

 

 驚いたような口調でそう言ってくる黒江。

 結構妥当な評価だと思ったけどな。

 ま、最近B級に上がったばっかの新参者の予想だけど。

 

「荒船隊って隊長が最近攻撃手から狙撃手に転向したところですよね。そういう奇抜さがってことですか?」

 

「いや、普通にチームとして強いってだけ」

 

「それなら他の隊も別に負けてはいないと思いますけど」

 

「まあね、別に他の2部隊も弱いわけじゃないよ」

 

 那須隊と柿崎隊を過小評価しているわけじゃない。

 ただ弱みを考えた場合、荒船隊に軍配が上がるってだけ

 

「ただ、決定力的に狙撃手の方が有利じゃん」

 

「そうですけど、狙撃手は寄られたらおしまいですよね?他の2部隊が寄ってしまえばそこまででは?」

 

「そうだね。だから、柿崎隊はそのことを考えたマップを選ぶだろうけど、そうなればなるほど荒船隊からしたら好機なんだよ」

 

「好機になるんですか?」

 

 なんかよく口が回る気がする。

 黒江は教えがいのあるやつだな。

 

「狭い場所を選ぶならどうしても那須隊と柿崎隊がぶつかる。完璧に協力関係を築くのも1つだが、荒船隊を追い詰める時にどちらかが一撃加えられたら?」

 

「…………最後にそのチームが不利になる」

 

「だから、完璧な協力関係は築けない。後のことを考えると、荒船隊よりももう1部隊の方が危険度が上がるから」

 

「なるほど」

 

 荒船隊は脅威だが、それは柿崎隊と那須隊どちらも共通して持っている考えだ。特に狙撃手のいない柿崎隊は狙撃手が満足に働けない前提でステージを選ぶ。

 那須隊にも狙撃手入るが別にメインじゃない。遮蔽がある方が那須隊員にとって有利なので柿崎隊が狙撃手を嫌うほど有利になる。

 

「お!柿崎隊はどうやら『市街地A』を選んだようです」

 

 妥当だな。

 これと言って代り映えのない、想定内のステージ選択。

 市街地Bはそれなりに高い建物があるからあり得ない。市街地Cは論外。市街地Dはショッピングモールで那須隊の相手をするのは嫌がるだろうからない。

 他の河川敷とか、森とかは荒船隊や那須隊のどちらかが有利になりやすい。また、柿崎隊は全員での行動することにこだわる癖があるので、合流が遅れるのも嫌がるはずだ。そう考えると、次第と安パイの市街地Aになる。

 

 なんて柿崎隊のステージ選びを考察しているうちに時間がやってくる。

 

「さあ、転送完了!各隊員は一定以上の距離を置いてランダムな地点からスタートになります!!」

 

 そうして、B級ランク戦1日目の夜の部が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだか、あっという間でしたね」

 

「ね」

 

 しっかり20分以上戦っていたはずなのに、見ている側からするとほんの数分の出来事のようだ。

 

 試合の経過を端的にいってしまえば、やはり荒船隊の勝ちに終わった。

 堅実にチームの合流を優先した柿崎隊。それを考えて那須隊長を柿崎隊の対処にあて、熊谷隊員と茜の二人で荒船隊に詰めていった那須隊。

 それを理解して、守りの体制をとった荒船隊。

 

 そして、繰り広げられた激闘に最初のインパクトを与えたのは穂刈隊員の狙撃。

 姿をくらましている熊谷隊員に狙われていると分かっていながら、好機を逃すことなく巴隊員が最初に落ちる。

 その後、そんな穂刈隊員を茜は見逃さず狙撃、すかさず半崎隊員がカウンタースナイプで3人一気に落ちた。

 

 一瞬にして3人。

 各隊から一人ずつ落ちた時に一番つらいのはどこか。

 それは、3人での戦闘に重きを置く柿崎隊だ。

 

 那須隊長の攻撃を受けきれず照屋隊員が撃破。

 間髪入れずに、照屋隊員が撃破されたときに発生した煙の中からバイパーを叩き込み柿崎隊長も撃破。

 

 そんな過程を経て隠密状態の狙撃手二人と場所の分からない狙撃手に狙われることを恐れてバックワームを使う那須隊という構図になると思われた。

 が、さすが荒船隊長。柿崎隊長が撃破される寸前に那須隊長を狙撃で撃破。

 荒船隊が3点。那須隊が3点。柿崎隊が0点となり、荒船隊と那須隊の引き分けで終わりを迎えると思われたところで、熊谷隊員が荒船隊長を急襲。

 荒船隊長の右手を落とすも、あいにくと利き手は左手。思うように有利な状況を作れずに熊谷隊員が撃破されてしまい荒船隊の勝利となった。

 

 個人的には、熊谷隊員にはあそこで完璧に身を潜めてもよいと思ったが、部隊の順位が低いことを気にしているのか攻めた。

 もう少し攻めに出られる人ならワンチャンあったかな。熊谷隊員は守りをメインにする珍しい攻撃手だから援護なしじゃ、やりづらいだろう。

 しれっと後ろに半崎隊員も待ってたしね。

 

「面白かったですね」

 

「なかなかなものだね。解説も聞いてて得になることも多かったし、実況も面白い」

 

 ログだけを見てきた人間にこんなに良いものを提供されてしまうと、もう見に来るしかないじゃないか。

 次は土曜日のはず。昼の部から見るしかないなこれは。

 

「あら、二人ともいいところに」

 

 ランク戦の感想会のようなものをラウンジでやっていると、後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。

 聞こえてしまった。

 

「加古さん、さきほどは解説お疲れさまでした」

 

「あんなのなんてことないわ。そんな瑣末なことよりも壽くん?」

 

 ランク戦の解説を瑣末なものと言いやがった!

 なんて奴だ!きっと悪逆非道で必ずあの邪知暴虐な奴を取り除いてやると思われるような人物に違いない!!

 

「人違いです」

 

「いいえ、間違っていないわ。それでどうかしら?うちに部隊に入る話。考えてくれた?」

 

「その件は、黒江から聞いたと思っていたんですけど」

 

「本人の口から直接聞かな──」

 

「お断りします」

 

「あら、はっきりと」

 

 加古隊に入る気はないって言ってるのに。

 この誘いを断る正当な理由を得るためにもどこかの部隊に入るべきだろうか。

 

「ま、いいわ。また聞くし」

 

「諦めてはくれないんですね」

 

「こういう時間も大事よ。A級の人間との関わりって案外ないものなんだから」

 

「元A級の東さんがいるんで間に合ってますよ」

 

「元でしょ?現A級の知り合いは私しかいないじゃない」

 

「一応三輪先輩がいますよ」

 

「あの子は、まだまだひよっこだから」

 

 なぜか、三輪先輩はA級扱いしてくれないらしい。

 あの人も立派なA級隊員のはずだが?

 

「それなら、ゆくゆく黒江が知り合いになるので」

 

「それはそれで結構なことよ。きっとうちの作戦室に来ることも増えるだろうし」

 

 誘導されたのかこれ。

 まんまとはめられたな。

 

 だが、加古さんの言うことはおそらく現実になるだろうと、俺は思っている。

 黒江に誘われて加古隊の作戦室に連れていかれるんだろうな、俺。

 以前堤さんから、気を付けた方がいいって言われたのがとても気になっている俺はあまり行く気になれない。のだが、黒江の誘いを断るほどの勇気もないのでおそらく行くことになる。何を気を付けるべきなんだろう。

 

「あ、喜多川(きたがわ)先輩」

 

「ん?」

 

 黒江の言葉と視線につられて、そちらを見る。

 そこには到底人とは思えない見た目の人が立っていた。おそらくトリオン体の改造をしているのだと思われるが、癖の強い改造だな。

 そこまで自分の体と離れていると感覚のずれでおかしくなりそう。

 

「あら、真衣。どうしたの?」

 

「東さんがよんでた」

 

「東さんが……?そう、わかったわ」

 

 そう言って立ち去るのかと思ったら、ちらりとこちらを見てまたねと言ってから帰っていった。

 また会うつもりなのは大変いやだが、実際そうなるだろうし何も言えない。

 

「えっと……」

 

 新たに現れてそして、残された人物の目が合う。

 これ俺を見てるんだよね?目として見慣れない見た目をしてるからよくわからない。

 

「この方は、喜多川真衣(きたがわまい)先輩。加古隊の特殊工作兵(トラッパー)をやってる人です」

 

「よ、よろしくお願いします」

 

 一応ログで見たことあるけど、実物はやっぱ違うな。

 なんか、不気味というか……愛くるしい?これが?愛くるしい????

 

 俺の中に浮かんだ感情に不気味さを覚えながらも、握手を交わす。

 あ、感触は普通の人と一緒なんだ。

 

「どうも。壽くん」

 

 俺のこと知ってんだ。

 きっと加古さんを経由してだろう。

 

「じゃあ、私も用事があるから」

 

「あ、そうなんですね」

 

「さようなら~」

 

 突然現れて、突然帰っていく喜多川先輩。

 自由人だな。

 

「じゃあ、おれもそろそろ行こうかな」

 

「あ、あの!」

 

「ん?」

 

「今日も一戦いいですか?」

 

「ああね。いいよ」

 

 そういえば、今日はまだ戦ってなかったな。

 サクッとやって作戦室に戻るか。




壽くんがいつまでたっても部隊に所属しないため、ランク戦は割愛です。
さすがに主人公がいない試合を長々とやるわけにもいかないんでね、お許しください。

当初の予定ではある部隊に加入させるつもりでしたが、アンケートも視野に入れています。とりあえず、いくつかの部隊や隊員と仲良くしている様子をお届けしつつ、皆さんにどこに入ってほしいか考えていただけたらなと考えています。
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