ただ愛されればそれでいい   作:サラダボウル

29 / 42
友達

「ざっと気になったのはそんなところですかね」

 

「そうか……ありがとう。助かったよ」

 

「かまいませんよ。これぐらい、俺も良い勉強になりますし」

 

 定期的に開催される柿崎隊の反省会。

 それに呼ばれた俺は、いつものように試合を見て気になったところを指摘する。

 

 今日でこれも5回目ぐらいだろうか。

 柿崎さんもよくこんなのに付き合ってくれるなあ、なんて思いながら俺は今日も反省会を手伝った。

 

「今回の試合は結構よかったですね。作戦もうまく決まってたし、柿崎さんも第二の東さん名乗れるんじゃないですか?」

 

「いくらなんでも大げさすぎるよ。まだまだあの域には達してない」

 

「そうかもしれませんけど、特に諏訪隊に使った作戦。面白かったですけどね」

 

 先ほどのログで、堤さんに使った陣形。

 柿崎さんと照屋先輩が角度をつけてアステロイドを撃ち、虎太郎が走り出すと同時に柿崎さんがメテオラに切り替えて目の前を爆破。

 発生した土煙に紛れてバックワームを着用しながらのダミービーコンの展開。前方に虎太郎がいると思っている堤さんを欺いて、虎太郎が後方からのアステロイド。完璧だった。

 最初に集合を優先するだけあって、三人そろうと恐ろしい人たちだと思わされる。

 

「ダミービーコンとバックワームを同時に起動させるってなかなか大変だったんじゃない?」

 

「そんなことないですよ。ビーコンの方は宇井先輩に任せてるんで、合図に合わせるだけでした」

 

 俺の後ろで一緒に話を聞いていた虎太郎は簡単そうに言ってくれるが、わずかにでもずれたら気取られるかもしれないし『だけ』ってことはないと思うけどなあ。

 トリオン反応を出すだけな分、結構融通が利くビーコン。オペレーターが直接的に戦闘に参加できる数少ないトリガーなわけだが、こう戦闘中に使われるとかなり嫌だな。

 以前俺が柿崎隊に提案した作戦もそうだが、トリオン反応はやっぱりすごく気になる。ましてや、目の前がメテオラのせいでよく見えていない状況なら、どうしてもレーダーを頼ってしまう。俺が使われたときはどうしようかな。

 

「ところで、話は変わるが加古隊に入ったそうだね」

 

「ああ、そうですね。前からお誘いは受けていたので」

 

「B級に降格になったって話だったけど、大丈夫かい?」

 

「何がですか?」

 

 そんな心配されるようなことがあっただろうか?

 B級の降格ってわざわざ聞かれるほど深刻なことなのか?

 

「いや、A級になりたくて入ったんだろ?それなのに、Bに落ちるなんてその……残念だったりしないのかなって」

 

「全然そんなことはないですよ。てか、B級に落としてほしいって言ったのは俺ですし」

 

「え、B級の降格って壽先輩からだったんですか?」

 

「うん、B級の人の戦いをログで見てて、戦ってみたいなって願望があったから頼んだんだよ。なので、心配されるようなことは特にないですよ?」

 

 どうやら柿崎さんを不安にさせてしまったらしいので、そう訂正しておく。

 何を心配されているのかはよくわからないけど。

 

「そ、そうだったのか……」

 

「何かありましたか?」

 

「いや、そうだったらいいんだ……」

 

 全くよくなさそうな顔してるけど、本人がそう言うのならこれ以上の追求はやめておこう。

 あまり俺の方からぐいぐい行くもんじゃないだろうし。気になるけどしょうがない、柿崎さんだけの秘密ってことで。

 

「そういえば、土曜日が終わったので次の対戦相手が分かるはずなんですけど、知ってたりしますか?」

 

「壽先輩、次の対戦相手知らないんですか?」

 

「ちょっと最近部隊のことで忙しくてね、ランク戦の方はここ最近見られてなくて」

 

 主に加古さんに連れまわされてるだけだけど、あっち行ったりこっち行ったりと忙しいのだ。

 あと、二宮さんからどうして加古の所に入ったと小一時間詰められた。いやあ、あれは大変だったね。最高に拗ねてたもん。

 ジンジャーエールを差し入れにもっていったが、あまり効果はなさそうだった。途中で洸太郎さんが俺のことを回収してくれなかったら、きっとあのまま二宮隊の作戦室でミイラになっていたことだろう。

 今、思い出しただけでも恐ろしい。

 

「どこか知ってる?」

 

「次はうちですよ」

 

「え」

 

 うち?

 うちって……。

 

「加古隊の対戦相手は、柿崎隊と那須隊です」

 

 え?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい!加古隊の最初の相手は私たちと柿崎隊です!」

 

「そうだよねー。いやあ、運命のいたずらってやつかな」

 

 月曜日。

 いつものように茜とボーダーへと向かっている俺は、ちょうどいいのでランク戦の話を彼女に振った。

 彼女たちのランク戦の話をすることはあれど、こうして自分たちも絡めた話をするのは初めてでなんだか変な感じだ。

 

「初戦が知り合いって言うのは、うれしいようなやりづらいような」

 

「やっぱり、そうなんですか?熊谷先輩もどうして加古隊なのーって言ってましたけど、そう思ってたのでしょうか?」

 

「たぶんそれは、また違う理由だと思うよ」

 

 B級にいる人たちからすると、またA級部隊が下に降りてきた絶望的な状況だと思っていることは容易に想像できる。

 一応、新人を二人抱えているわけだしやりようがあると思ったり思わなかったり。熊谷先輩は俺の実力が分かっているからこそ、それに加えてA級部隊がついてくるって事実に悲鳴を上げたんだろう。

 俺もそっちの立場だったら頭が痛くなる。どうすればいいんだよって。

 

 ま、今期のB級上位がまさしくそんな状況だろうし、誤差でしょ誤差。

 ちょっとA級部隊が増えただけ、2も3も一緒よ。

 

 たぶん。

 

「でも、知盛くんが加古隊に入るのは意外だったなぁ」

 

「そう?」

 

 結構伏線のようなものはあったと思うけど。

 俺が加古さんに追い回されている姿がボーダー中で見られたはずだ。

 毎日のようにね。

 

「私てっきり諏訪隊に入ると思ってたもん」

 

「いやあ、一番ないでしょ。諏訪隊に俺が入るスペースなんてないよ?」

 

「そうかな。結構なじんでたと思うんだけど」

 

 今でも諏訪隊の作戦室には邪魔するし、ゴロゴロとしているのでのけ者にされてるってことはないけど、部隊としては俺の居場所はない気がしてる。

 あそこに入るんだったら銃手か狙撃手あたりがいいんじゃないかな。諏訪さんならその辺の指揮も問題なくできるだろうし、攻撃手を加えるのはいくらなんでも近距離に偏りすぎな気がする。

 

 そんな感じの色々な理由で俺は諏訪隊への加入の可能性は感じていなかった。

 付け加えるのなら親みたいな人と一緒に仕事するのはなんとなく気まずい。

 

「仲良くはしてたよ。それと部隊の加入は別。こう編成をちょっと気にして選んだし」

 

「編成?」

 

「加古隊なら後衛が二人、前衛が二人になってそれなりにやりやすいかなって。攻めを主体とした加古さんの部隊と、守りを中心とした喜多川先輩の部隊に分けるのなんかも面白そうじゃん」

 

 あくまでそう言うのを考えてただけだが、加古隊へ加入するうえでの戦術はどのようなものがあるのかは考えてある。

 それが採用されるかどうかは知らないけど。

 部隊の一員として仕事がある程度はできるところを見せないといけないし。

 

「知盛くんってすごいよね!指揮もできて、戦いも強くて、私はそういうのできないからあこがれちゃう!」

 

「茜は狙撃手だから、役割が違うよ。狙撃手はじっとまってその一瞬に当てられれば十分だよ。バリバリ戦闘するようなトリガー構成もしてないだろうしね」

 

 狙撃手でもない人間が何言ってんだって感じだが、俺のイメージはそれである。

 静かに、その時を待って、その瞬間に引き金を引く。

 

 アイビスとか使ったことないから、狙撃のその字もない人間なので独断と偏見に過ぎないが、ログではよく見たのでちょっとぐらいかすってると思う。

 間違った狙撃手のイメージではないはずだ。

 

「そう……なんだろうけど……」

 

「茜がそれ以上を望むのなら俺も手伝うよ。近距離も行ける狙撃手なら荒船先輩って言う先例があるし」

 

 攻撃手から狙撃手に転向した荒船先輩は、トリガー構成にしれっと弧月を混ぜているのでたまに狙撃手らしからぬ戦闘を見せてくれる。

 イーグレットぶっぱなしてから、弧月に移るシーンは最高に熱かった。映画のワンシーンにしか見えなかった。

 

「そ、そっちじゃなくて、指揮の方だよ!」

 

「ああ、そっち」

 

 どうやら近距離でバリバリいきたいってことじゃなくて、後ろから指揮したいってことだった。

 東さんみたいな感じか。狙撃手は視野を広く持てるから悪くないかもね。

 

「それなら俺も教えられるからまた今度時間取るよ。東さんも言ったらちょっとは教えてくれるだろうし」

 

「ほんと!?」

 

「友達のお願いはかなえないとね」

 

 東さんが暇な時間が基本的にないので、俺がちまちま教える時間が多くなるだろうけど茜なら大丈夫だろう。

 テストの成績は平均ちょい下ぐらいだったが、指揮とテストの結果に直接的な関係があるという論文はまだこの世にないはずだ。

 

「でも那須隊って指揮は那須先輩がとってたよね?わざわざ茜が一から覚える必要はなさそうだけど」

 

「そうだけど、わたしたちって那須先輩に任せっきりなところがあるから、どうにかしたいなって」

 

「なるほどね。なかなか良い着眼点を持っていらっしゃるようで」

 

 外部の俺が察するぐらいなのだから、同じ部隊員として働いている茜が気付かないわけがない事柄ではあるが、やはりそこが気になっているらしい。

 那須隊は香取隊ほど那須のワンマンチームというわけでもないが、エースも指揮も背負ってる面では香取隊よりも負担が多い。香取先輩はあまり指揮しないから。

 

 那須隊が上を目指すのならこの問題の解決は必要なことだろう。

 もちろん、全員がもっと強くなって上を目指すことはできるだろうけど、上位入りを思い出程度にするか、上位の部隊として生き残るか。

 ましてや今期はさらに魔境となっている。チームの問題は間違いなく足を引っ張る要因となる。

 

 それに向けて、茜が努力したいというのなら俺の使える人脈を使って茜を第二の東さんにするのもやぶさかではない。

 

「だから、お願い!わたしに指揮を教えて!」

 

「まかせな、必ずや茜を東さんにしてあげるよ!」

 

「あ、東さんにする必要はないよ!?」




次回、やっとこさランク戦
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。