ただ愛されればそれでいい   作:サラダボウル

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おかしい奴ら

 あっという間に1か月が過ぎ、もう五月。

 冬の寒さはどこへやら、夏の暑さが顔を見せ始めている。熱いのは苦手なのでもうちょっと冬には居座ってほしかったな。

 

「荷物もったか」

 

「大体?」

 

「全部持てって言ってんだろ!」

 

 携帯と財布をポケットに突っ込み、洸太郎さんと一緒に家を出る。

 何とかボーダーの入隊試験を乗り越えた俺は、無事合格を勝ち取った。洸太郎さんと茜に少しだけ試験について教えてもらって乗り切った。感謝してもしきれない。

 

 そして、今日が入隊日というわけだ。

 

「今日は一緒に行くんだよね?」

 

「ああ、俺も本部で仕事しないといけないからな。どっかで会うかもしれない」

 

 仕事できるのかなこの人。

 家汚かったけど。

 

 

 

 

 

 

 

「おお、すげー」

 

 ボーダー本部に着いて洸太郎さんと別れ、案内に従って体育館みたいなところに着いた。

 周囲には俺と同じ白い隊服をきた若い子たちがいっぱいいる。若いって言っても、俺よりも年上がほとんどだろうけど。

 中学生っぽい背丈の人もちらほらいるが、やはり高校生の方が多い気がする。

 

「ん」

 

 周囲の厳かな雰囲気を楽しみながらちらちらとしていると、びしっとスーツを着た人が現れた。

 職員の人だろうか。

 

「ボーダー本部長忍田真史だ。君たちの入隊を歓迎しよう」

 

 ボーダー本部長がどのぐらいすごい立ち位置なのか分からないけど、少なくとも入隊式であいさつをするぐらいすごい人なんだろう。そんなすごい忍田さんが俺たちの入隊式の挨拶を担当してくれるらしい。

 本部長だというこの人も強いのだろうか。ボーダーの活動は色々と知っているが、こういった偉い人がどのように偉い立場に着いたのかは知らない。強い奴が一番上スタイルだったりするのか?

 

「君たちは今日からC級隊員としてボーダーに入隊した。三門市と人類は新たにボーダー隊員となった君たちにかかっている。ぜひ正隊員を目指して頑張ってくれ。君たちと共に戦える日を待っている」

 

 そういって、忍田さんは敬礼をした。

 ただそれだけなのに、俺たちはその貫禄に当たられて自然と背筋が伸びた。

 多分強いなこの人。なんか、本能がそういってる。

 

「私からは以上だ。ここから先は嵐山隊に一任する」

 

 忍田さんの退場と共に嵐山隊が入ってくる。

 本物だ。すげー。

 ただ立ってるだけなのに風格があるな。歴戦の猛者ってやつ。

 

 周りの隊員もそれを感じ取っているようで、ざわざわとしてる。

 さすがボーダーナンバーワンの人気を誇る部隊。ほぼアイドルだ。

 

「これから入隊指導(オリエンテーション)を始めるがまずはポジションごとに分かれてもらう。攻撃手(アタッカー)銃手(ガンナー)を希望する者はここに残って、狙撃手(スナイパー)を希望する者はうちの佐鳥について訓練場に移動してくれ」

 

 ポジション。正直あんまり考えてなかった。

 なので俺は一番人気の攻撃手を選んどいた。後でも変えられるらしいから、なんかあったら変えればいい。

 俺はポ〇モンには攻撃技しかいれない主義の人間だったし、そっちの方がいい。ガンガン行こうぜ。

 

 狙撃手組が訓練場へと向かい、この場には攻撃手と銃手志望の隊員が残った。

 人数が減ったこともあり、嵐山さんの方へと集合がかかる。

 

「改めて、攻撃手組と────

 

 と、嵐山さんがいろいろと話し出した。

 まずは正隊員になる条件。忍田さんが言っていた正隊員になるのは俺がなんとなくで選んだ『弧月』ってやつのポイントを4000点まで上げる必要があるらしい。

 最低1000ポイント与えられているらしいが、俺は1400ポイント。何か評価されたようだ。少なくとも、学力じゃないことは確か。

 

 そして、このポイントを上げるには合同訓練で良い結果を出すか、ランク戦ってやつでポイントを奪うの2つだそうだ。

 後者は物騒だな。

 

 と、一通り話を終えたらしく、俺たちは訓練を体験することになり嵐山さんについていく。

 ボーダー本部は地味な感じで、学校の廊下みたいだった。なんなら、窓や賞状だとかがない分学校よりも殺風景。

 どこに自分がいるのか分からなくなりそうだ。

 

「おお、広いな~」

 

 嵐山さんに続いて歩いていくと、とんでもなく広い部屋に皆が入れられた。

 縦にも横にも広く、うちの第二中学の生徒位だったら全員余裕で入るだろう。

 

「それじゃあ、みんなには早速対近界民戦闘訓練をしてもらう」

 

 いきなりだな。

 いくらなんでも気が早すぎやしないか。

 

 周囲の反応も俺と同じで、みな困惑している。

 それもそうだろう。入学式当日に授業が始まったようなものだ。もうちょっとオリエンテーションはないのだろうか、と思ってしまう。

 

 その後、嵐山さんは困惑する俺たちを置き去りに訓練室の説明と、今回戦う近界民の説明をする。

 大型近界民をちょっと小型化したやつらしい。らしいが、十分でかいのでこれで小さくなったのかと驚愕する。

 小型化した奴でも十分人よりでかい。それはもう何倍も。

 

 正隊員はこれ相手に余裕で勝てる人たちなのか。

 洸太郎さんも正隊員なのでこれに勝てるぐらいすごい人というわけだ。少しだけ見直した。

 

「説明は以上!各部屋で始めてくれ!」

 

 嵐山さんからの開始の合図を受け、みなちりぢりに動き始めた。

 俺もどっかいかないと。

 そう思い、周囲を見回すとなんか強そうなオーラを放っている女の子を見つけた。明るい髪色でツーサイドアップの少女。背中しか見えないが、なんかこいつはすごいオーラを放っていた。

 

 その子についていき、後ろに並ぶ。

 

 それにしても、やっぱりでかいな近界民。

 今戦っている隊員たちが必死に駆け回りながら、攻撃をしてる。平均タイムは2:30ってところだろうか。

 今一番早いのは1:21の人かな。

 

「んー、あの目っぽいのが弱点なのか?」

 

 他の隊員が戦っているのを見るに、目に攻撃が決まった時が一番効いてる気がする。

 一番早かった隊員も目を優先的に狙っていた。てか、あれ目なのか?

 

「あ」

 

 気づいたころに、目の前の女の子がもう訓練室に入っていた。

 周囲を気にかけすぎた。あぶないあぶない。

 

『一号室用意────始め!』

 

 開始の合図。

 それと同時に、彼女は駆け出す。

 あっという間に距離を詰め、近界民の目(ぽいやつ)に一撃叩き込む。

 今までの誰よりも素早く、そして正確だった。

 

 しかし、まだ致命傷にはなっていないらしく大きく首を振り、彼女を振り払う。その行動に全く焦ることなく、距離を話した彼女はもう一度敵の攻撃をかいくぐりながら一気に近づき、もう一撃。

 これは、さすがに決まったようで、近界民は倒れたあとに泡のようになって消えてしまった。

 

『一号室終了。記録11秒』

 

 ぶっちぎり。

 今のところの最短記録を優に超えている。俺の目に狂いはなかったらしい。やっぱ、この子強いな。

 そして、目が弱点ってのも合っていそうだ。二度ともあの黄色い目に攻撃を加えたうえでのこの短さだ。最も効率的に倒すために設定された弱点か。あれは本物にもあるのか?

 

「次、あなたですよ」

 

「あ、どうも」

 

 訓練室から出てきた彼女にわざわざ呼ばれてしまった。考え込みすぎてた。

 てか、小さな。身長が低い俺よりも小さいぞのこと。小学生か?

 

 っと、さっさと入らなきゃ。

 

「狙うのは目。弧月の間合いならそれなりにいける……いや、もっと柔軟にいくか」

 

『一号室用意────始め!』

 

「ふんっ!」

 

 開始の合図。

 それと同時に俺も駆け出す──のではなく、手元に出した弧月をぶん投げた。

 

 他の人の試合を見ていて気付いたことだ。

 この近界民は開始直後、約一秒動かない。起動時間なのか、はたまた訓練用だからこその配慮なのか。

 銃手の人ならこれを有効活用できるだろうが、あいにくと俺は超近接型の弧月。射程はない。

 

 なら。

 作ればいい。

 

「ドンピシャ!」

 

 近界民の目に突き刺さった弧月。

 しかし、まだ致命傷になっていないらしく。さっきの少女の時のように動き出してしまう。

 その場合に備えて、投げると同時に走っておいてよかった。

 

 すでに懐に入った俺は、近界民の目めがけて跳ぶ。

 そして、目に突き刺さった弧月をとるのではなく、手元に弧月を生成して横に一振り。正直弧月の再生成は憶測での実行だったが、前の弧月を破棄すれば可能なようだ。

 二発も決まれば近界民も限界だったようで、力なく倒れてしまった。

 

『一号室終了。記録10秒』

 

「いいね」

 

 なかなかのタイムじゃないか。

 あとから戦った分情報に有利があったとはいえ、前の少女よりもタイムは短い。情報のおかげで勝てた感じかな。

 多分、一番手だったらもっと時間かかってただろう。

 

 時間にすると10秒だが疲れた。

 なんかどっと体が重くなったように感じる。トリオン体に疲労はないらしいが、脳が疲労を感じているってところだろう。

 いくら体が万能でも、脳が追い付かなきゃ意味ないよな。その辺も慣れてけばなんとかなると願っておこう。

 

「強いんですね」

 

 訓練室を出ると同時に、さっきの少女に話かけられた。

 自分と似たようなタイムを出した俺が気になった感じか?俺もそれなりに気になってはいたし、是非お友達になりたい。

 

「いや、人の見て思ったことをやっただけだよ」

 

 特にこの少女の一戦は実にいいものだった。

 タイムを短くするにはどうしたらいいのか、それが理解できた。

 

「人のを見てできるようになるほど世の中簡単じゃないと思いますけど」

 

「案外そんなもんさ、世の中ね」

 

 世界を語れるほど世界を知らないが、できた以上そういうことなんだろう。

 俺が根拠だ。

 

「君だって、11秒じゃん。十分早い」

 

「でも、あなたより1秒も遅いです」

 

 確かにそうだけど……。

 俺と比べるんじゃなくて、周囲と比べてほしいんだけどな。負けず嫌いか?

 一番が俺の10秒。二番目がこの子の11秒。その次は1分以上差がある。データをとる上では排除することさえ考慮される外れ値組だ。

 

 そんな外れ組で比べてもあれだろう。

 本来の物差しを見誤っている。

 

「あの……お名前は」

 

「壽知盛だ。君は?」

 

黒江双葉(くろえふたば)です」

 

「なるほど、よろしく。黒江」

 

「こちらこそ、よろしくおねがいします」

 

 友達三号だな。

 初日に同期の友達ができるとは思っていなかったが、少しはボーダーでの生活が楽しくなりそうだ。




壽くんの入隊時期は黒江、茶野、藤沢と同時期です。
が、茶野隊の二人の登場予定は今のところありません。
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