ただ愛されればそれでいい   作:サラダボウル

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作戦

「激動のB級ランク戦!11日目・夜の部がまもなくはじまります!」

 

 いつもと変わらない元気な挨拶が、観覧室に響く。

 本日の観覧室は中位とは思えない人だかりとなっており、ちらほらとB級上位にいる隊員や、A級隊員の姿もあった。

 観客の数、そして珍しく中位に実況解説が付けられていることを踏まえれば、どれだけこの一戦が注目されているのかが分かる。

 

「本日の解説はわたくし、海老名隊オペレーターの武富桜子が務めさせていただきます!」

 

 はつらつとした声が、ランク戦の始まりを告げる。

 大勢の観客の声がわずかに静まり、意識がそちらへと向けられた。

 

「本日の解説はこの方々!三輪隊の三輪隊長と!」

 

「よろしくたのむ」

 

「冬島隊の当真隊員に来ていただきました!」

 

「よろしく~」

 

「今回の試合は観客もたくさん入っており、こうして実況もついたわけですが、お二人は本日の試合をどうなるとお考えでしょうか」

 

 挨拶を終えて早々、今回の試合についての話へと移る。

 多くの隊員が注目している一戦。解説する人間にもそれなりの圧がかかるものだが、そういったことを気にしない二人がここにはそろっている。

 

「ま、加古隊が押して残りの2部隊がどう対応するかって形になるじゃねーの?二人も新人が入っちゃうと、過去のログもあんま使えねーしな」

 

「そう……ですね。どのような作戦をとるか分からない以上、那須隊と柿崎隊の対応力を求められる一戦となるでしょう」

 

「なんかめっちゃ真面目じゃーん。弟子がいるから?」

 

「関係ないです」

 

 当真の絡みに一瞥もすることなく拒絶する三輪。

 この二人は相性が悪く、この試合の解説をする上ではあくまで個人を評価して選ばれている。

 ルーズな当真と、ルール絶対な三輪では基本的に反りは合わないのだ。

 

「なるほど!やはり、新しくやってきた加古隊がこの一戦を動かすことになるというわけですね」

 

 それをうまくまとめ上げる自信があるから、武富はこの二人を解説席に呼んだわけであり。

 これぐらいのいざこざならスルーしてしまうのだ。

 

「今回の一戦で一番順位が低いのは加古隊ということで、ステージ選択権は加古隊にあるわけですが……」

 

 そう口にするとともに、画面には加古隊の選択したステージが表示された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「市街地Aでいきますか」

 

 ステージの選択権。

 これはより上の部隊と戦ううえで、大事な戦術を組み立てる要素の一つであるわけだが、俺たちにとってはそれほど重要ではない。

 

「その理由を聞いてもいいかしら?」

 

「これといって戦術的な理由がなくてあれですが、この部隊としての初めての戦闘なわけですし感覚をつかむためにも変な場所はやめた方がいいかなって。那須隊は射手戦ができますし、柿崎隊は銃手と攻撃手を兼ねているので近接戦闘と中距離戦ができます。自分たちの力を確認するうえでも、場所じゃなくて部隊で勝負したいなと」

 

 なにより実戦経験。

 勝ちを狙いに行くのは当然だが、この部隊でどこまでできるのはいまだ机上の空論に過ぎないのが現状だ。

 今回の試合でどれだけのデータが取れるかは、俺がこれからの立ち回りを考えるために要素となる。

 

 他の二部隊で試すような真似をして悪いが、まあランク戦なんてそんなもんだし、文句は言われないだろう。

 とりあず、初戦で感覚をつかむ。加古さんや喜多川先輩との連携、黒江と二人で多数対多数を試したいし、手札を使いすぎるのが気になるがデータが欲しい以上しょうがない。

 どこまで俺たちがやっていけるのかは、俺たちにとっても大事なデータである。

 

「向こうに着いたら順次指示は出します。臨機応変にいきましょう……って感じでいいんですかね?」

 

「いいんじゃないかしら、これからのランク戦は知盛くんに任せるわ。東さんからもそう言われてるしね」

 

 俺の戦術眼(?)を鍛えるために、そういう役回りになってしまった。

 いやって程ではないけど、A級の人を俺の指示で動かすのはさすがに恐れ多い。

 なにか見逃してそう……。

 

「黒江と喜多川先輩も最初は突っ込みすぎないようにお願いします」

 

「はい」

 

「まかせろー」

 

 俺も黒江も初めてのランク戦。

 俺が焦りすぎないことを気を付けつつ、黒江にも気を配る必要があると思っているが……。

 その辺は先輩二人に任せてもよいのだろうか?どれほど二人が戦闘中に意見してくれるかによるんだが。

 

「とりあえず、そんな感じで行きましょう」

 

 

 

 

 

 

 

「市街地A……ね。さすがにひねっては来なかったみたいか」

 

「もしかしたらと思っていくつか作戦を立ててたけど、これならいつも通りにやればよさそうね」

 

 ステージ発表を見た熊谷と那須は、ひと時の安心感に浸る。

 ここで市街地CやD、河川敷なんかが選ばれた場合、明らかに何かが隠されていることを疑う必要があるため、立ち回りに影響が出る。

 しかし、市街地Aは基本的なステージであるため細工する要素はあまりない。できても天気ぐらいなので、その程度なら那須隊にとって問題はない。

 

「もしかして雪とかでしょうか!?そこで手間取ってる間にザシュっといかれたり?」

 

「雪かー、たまに使われるけど……」

 

 天気の変更は雨が多く、時折雪や暴風などが採用される。

 雨は狙撃手を使えなくするために採用され、出番が多い。

 雪や暴風は相手の意表を突くために採用されることがごくまれにあるが、採用したチームのメリットに必ずなるわけではないので頻度は低い。

 

「できれば何パターンか対策を作っておきたいところだけど、すぐに試合が始まっちゃうわ。作戦はこのままでいきましょう」

 

「そうね。今日は強敵だけど、いつも通り勝ちに行くよ!」

 

「「はい!」」

 

 

 

 

「加古隊には最大限警戒するように。絶対に一人であたるなよ」

 

「分かってますよ。全員エース級の人間ですからね」

 

 壽と黒江が入るまで、一人で攻撃をこなしていた加古の強さは言わずもがな。

 そして、新しく入った二人も今期の取得ポイントでは一位と二位だ。どれだけ強いかはそれを見ただけで分かるし、柿崎隊にとって壽は作戦を作ってくれる協力者でもある。

 点も取れて、戦術もできる存在と戦うのだ。嫌でも気にする必要が出てくる。

 

「那須隊相手も気を抜くなよ。熊谷と戦っていても那須ならすぐに飛んでくる。合流できるまで接敵したらすぐに報告するように」

 

「初めてのランク戦ってことで加古隊が連携で躓いてくれるとこっちとしては楽なんだけどな~」

 

「さすがにないですよー。なんやかんや二人が隊員になってから二か月以上も経ってますから。かなり仕上げてきてると思いますよ」

 

「やっぱそうだよね~」

 

 宇井の願望ともいえる言葉を、巴は否定する。

 初めてのランク戦と言えば、だれでも緊張するし、チームでの連携にもまだまだ粗があるのが普通だ。

 それが加古隊に全くないなんてことはないだろうが、だからと言って完璧な連携を見せてくることもないはず。

 

 柿崎隊が加古隊に勝てる部分があるとしたら連携。

 どれだけ崩されずに保ち続け、相手を崩せるかが勝つカギだ。

 

「今日は簡単じゃないだろうけど、やることは変わらない。勝ちにいくぞ!」

 

「「「了解!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

「────ってわけで、狙撃手は当てりゃいいんよ」

 

「おっと、当真隊員のためになるお話はお時間になってしまったのでここまでとさせていただきましょう。ありがとうございました!」

 

 転送までの時間を埋めるために行われていた当真勇の狙撃手講座はお開きとなり、全員の視線と興味はモニターへと移った。

 良い子でつまらなさそうに話を聞き流していた三輪の視線ももちろん、そちらにくぎ付けとなる。

 

「各隊員の転送開始!これよりB級ランク戦!11日目・夜の部!スタートです!!!」

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