ただ愛されればそれでいい   作:サラダボウル

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絶対勝つ!

 諏訪隊の作戦室。

 ここではいつも通り、次のランク戦に向けた作戦会議が行われていた。

 

「じゃあ、次のランク戦に向けて作戦会議ってわけだが……」

 

「どんな作戦たてればいいんですか、これ。勝ち筋全く見えないんですけど」

 

「そりゃあ、あれよ。カメレオンで四人捕まえて俺と堤で吹っ飛ばす」

 

「天と地がひっくり返っても成功しない作戦はやめましょう」

 

 諏訪から提案された作戦か怪しい、それを丁重に拒否する笹森。

 笹森はトリガーセットにカメレオンが入っているため姿を隠して接近することができる。

 が、姿は隠せてもトリオン反応はレーダーに映り続けるため、カメレオンをメインとする戦術を用いる風間隊と競ってきた加古隊にとって、カメレオンなど攪乱にもならないというのが笹森が最終的に導き出した答えだった。

 

「やる前から諦めてどうする、ひさと!何事も挑戦だ!」

 

「若者の命を無駄に散らそうとするのはやめよう、おサノ。多分、一瞬で片付けられるよ」

 

 諏訪隊のべた踏みアクセル担当小佐野からGOサインが出るが、堤によって止められる。

 柿崎隊は変えることのできない軸を持っていることもあり、加古隊対策はそこまで難航しなかった。

 那須隊は柔軟に動ける分、狙撃手を用いた作戦が取れた。

 

 それに対して、諏訪隊はある程度の軸がありながらも柔軟に動けてしまうせいでこれといった作戦が出てこないのが現状だ。

 変わり種としての狙撃手はいないし、基本的に全員近接戦を得意とする隊員。寄れば寄るほど苦戦を強いられる展開が待っている。

 加古は飄々としながらハウンドを放ち、黒江は新たなトリガーを得てさらに脅威に、壽は遠近両方ともやれることが判明したせいでどっちの彼が来るのか分からない、そしてその三人を支える縁の下の力持ちとしての喜多川もいる。

 狙撃手がいないという欠点すらも壽一人で片付けられる現状、加古隊は隙が無かった。

 

 唯一可能性があるとすれば、まだ入ったばかりの黒江と壽が何かミスをおかすことぐらいで、その一瞬を逃さないようにするぐらいの方針が限界。

 もしくは、諏訪の勘を頼るぐらいだった。

 

 事前情報もまだまだ足りず、明確な弱点が発見されていない以上、諏訪隊にはそれをどれだけ引き出せるかが求められている。

 自分たちにとっても、他の部隊にとっても加古隊の戦闘は全て情報の宝庫。実際、壽が射手もやる人間だという情報は、重要な情報だったと言われている。そのせいで余計に悩まされることは抜きにしてだが。

 

「おはようございまーす」

 

 辛気臭くなり始めた作戦室に、突如ある人物が突撃してきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいおい、来たぜ。諸悪の根源がよ」

 

「よく来れたな、とももり!今ここでぼこぼこにしてやるぜ!!」

 

「だめだよ!おサノ先輩、さすがに許されないよ!」

 

 ボーダーに到着した俺は、次の対戦相手である諏訪隊に挨拶にでも行こうかと思い、作戦室に来た。

 そういうわけなのだが、入って早々おサノ先輩に襲われかけている。襲われるようなことをした記憶はないんだけどなあ。

 

「俺が何かしましたか?」

 

「いや、色々あってな」

 

 その色々が知りたいんだけど。

 教えてくれなさそうだ。

 

「それで、何しに来たんだ?」

 

「ランク戦の前に挨拶でもしとこうかなって。どうせ、また出禁命令が出るんでしょ?」

 

「よくわかってんじゃねえか。今回は特にな」

 

 外部の力をほいほいと使うつもりはないって話だったけど、今回は敵だからしょうがない。

 そこについて文句を言うつもりはないので、別れの挨拶も兼ねた訪問だ。

 

「状況が状況だからね。しょうがない。それと、1つ宣言しにきたんだ」

 

「宣言?」

 

 何を言い出すんだこいつ、とでも言いたげな表情をしながら俺のことをじろりと見てくる洸太郎さん。

 もう少し好奇心を持っていそうな視線を向けてほしい。見るからにめんどくさがっている。

 

「次のランク戦。諏訪隊全員俺が倒すよ」

 

 宣言。

 というか、宣戦布告。

 果たし状をたたきつけに来たわけだ。

 

「おもしれえ、乗ってやるよ。その勝負」

 

 さっきとは打って変わり、洸太郎さんの表情から呆れが消える。

 今初めて明確に、俺のことを敵だと認識した顔だ。

 

「ずいぶんと大体な宣言だね」

 

「こんな形ではありますが、皆さんに恩返しができればなと思いまして。一応加古さんからも面白そうだしいいんじゃない、とのお言葉頂きました」

 

「あいつなら許すだろうな」

 

 実をいうと、加古さんが面白半分で言ったことを俺が実際にやってみるってだけなんだけど、それは黙っておこう。

 洸太郎さんとはあまり一対一でやったことがないし、ましてや諏訪隊と戦ったことなんて一度もなかったので、俺もすごく好奇心が沸いた。

 なぜか黒江も乗り気だったので、ついてくる可能性が大いにあるが、それも黙っておこう。敵に情報を正確に伝える必要はないからね。

 

「うちの部隊に勝つつもりか、とももりー。良い度胸じゃねえかよ。ぼっこぼっこにしてやるぞ!」

 

「なんで、おサノ先輩がそんなに乗り気なんですか。でも、そう言うのなら受けて立つよ。先輩としての威厳を見せないとね」

 

 思ってた以上にみんなノリノリだな。特におサノ先輩。

 ぞんざいに扱われないと嬉しいなーぐらいの気持ちだったが、ここまで熱烈だとこっちもやる気が出てくる。

 

「ランク戦当日を楽しみにしてますね!じゃあ、俺は出禁なのでこの辺で」

 

 ばいばーいと諏訪隊のみんなに手を振って、作戦室を後にする。

 あのソファでゴロゴロできないのは非常に残念だが、しょうがない。

 うちの作戦室のソファでなんとかしよう。あそこは、昼飯時には外出しておかないと炒飯が襲来するのが玉に瑕。

 今のところ俺があたりを引いたことはないので、避ける方針だ。前食べたガーリックチョコミント炒飯はすごかった。口の中で味が大戦争していた。

 ガーリックの強烈さと、チョコミントのさわやかさがそれはもう───。

 

 と、加古の悲劇を回想しようとしたら、見覚えのある顔が現れた。

 

「先日ぶりですね。柿崎さん」

 

「ん、壽か。この前はお疲れ様」

 

 つい先日ランク戦で戦った相手である柿崎さん。

 厳密に言うと、俺はサラマンダーを打ち込んで、虎太郎とちょっとだけやりあっただけだが、細かいことはいいだろう。

 

「柿崎先輩こそ、うちの黒江がお世話になりました」

 

「一方的にぼこぼこにされてただけだったけどな」

 

「そんなことないですよ。多対一の良い経験を積ませてくれました」

 

 一対一をする場こそあるボーダーだが、多数対一をやる場はない。

 何人か人を集めてきて、やればいいだけと言えばその通りだが、ランク戦中ということもありみんな忙しそうだったから、手間が省けたと思っている。

 

「うちもいい経験だったよ。三輪に言われた通り、もう少しみんなの実力にも目を向けてみようと思う」

 

 負けた。

 その事実だけを考えると、もう少しへこんだりするのかなと俺は思っていたのだが、ボーダーの隊員はみんな強いらしい。

 俺もよく負けるが、ランク戦での負けと個人戦での負けは重みが違うと思っている。

 うまく表現できないが、壁ってのを明確に感じる瞬間だと思う。

 

 それでも、変わらない柿崎さんはやはり強い人だと改めて感じた。

 

「何か困ったことがあったらまた聞いてくださいね。東さん仕込みの教育術ってのを見せてあげますよ!」

 

「はは、楽しみにしてるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「洸太郎さーん、帰ろー」

 

 ランク戦に向けての調整を終え、日が沈んだぐらい。

 俺はつい数時間前に出禁を宣告された諏訪隊作戦室に来ていた。

 

「ん、もうこんな時間か」

 

 作戦室には洸太郎さんと、堤さんの二人。

 おサノ先輩と笹森先輩は不在のようだ。

 

「じゃあ、先帰るわ」

 

「お疲れさまでした。壽くんも、お疲れ様」

 

「堤さんはまだ残るの?」

 

「ああ、まだやりたいことがあってね」

 

「そっか、じゃあ、また今度!」

 

 堤さんに別れを告げて、洸太郎さんと帰路につく。

 ボーダーの迷路な廊下にもさすがに慣れてきたなー、なんて思いながら歩く。

 

「知盛」

 

「ん?」

 

 突然名前を呼ばれて、少し驚きながら洸太郎さんの方を向く。

 相変わらず二十歳とは思えない貫禄がある。

 

「加古隊は楽しいか?」

 

「そりゃあ、とっても楽しいけど……どうして?」

 

「保護者として気にしとく必要はあるだろ。加古のこと信用してねえわけじゃないけどよ」

 

「心配性だなぁ。今度のランク戦で加古隊の絆ってやつを見せてあげるよ。期待してて」

 

「言うようになったじゃねえか、このやろ~」

 

「わっ、ちょっと!」

 

 突然、頭をわしゃわしゃとするもんだから反応が遅れて避けられなかった。

 俺の頭は洸太郎さんによって右へ左へ、前へ後ろへと自由自在に動く。

 目が回りそう。

 

「ま、とりあえず、楽しそうなら結構だ。明後日のランク戦にコテンパンにしてやるから、覚悟しとけ」

 

「楽しみにしてるよ!本当にそうなるのかね」

 

 加古さんにわざわざB級にまで降りてきてもらったこともあり、個人的に今期でA級にあげたいと俺は思っている。

 元A級部隊ということもあり、加古さんと喜多川先輩の実力は不安視していない。もし、A級に戻れなかったとしたらそれは俺と黒江の責任だ。

 だから、こんなところでは止まれないと俺は勝手に思っている。たぶん、俺だけが一方的に責任を感じてる。

 

「あっ、今日の夜何がいいですか?まだ決めてないんですけど」

 

「今日か……、麻婆豆腐とかでいいじゃねえの」

 

「麻婆豆腐ですか、分かりました。道中で買っていきましょう」

 

 それに、俺はまだ何の情報も得ていない。

 今度、マキリサ先輩にまた話してみようかな。




加古隊の戦闘を考えるだけで大変なのに、なんで漆間隊と戦うことにしたのか。
サイレンサーの設定に悩む日々が続きます。
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