病街録   作:とうぶん

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読んでいただいている皆様に感謝申し上げます。


不完全な箱庭の中で(下)

「やれやれ、君は僕という友を置いて、幼馴染と文化祭を謳歌するとは。随分と心の距離が離れたような気がするよ」

 

あれこれ忙しくしているとあっというまに

文化祭2日目当日。

当日準備をしている隣ではさっきからグチグチと呪詛のように言葉を吐き出している風見。

当然俺と文化祭を回るものだと思っていたようで、朝から黒い瘴気のようなものを辺りに撒き散らしている。

 

「ああ、玉木よ。君と僕には大きな隔たりがあったんだね。非常に残念だ…」

 

「一日目は一緒に回っただろ」

 

「ううう…」

 

椅子の上で器用に三角座りする風見はさておき、俺は未だに迷い続けていた。

百川さんの告白の返事について。

自分でも優柔不断とは思いつつも、俺の心の中には確かに優奈がいた。

なんだかんだ言いつつも、世話を焼き続けていたのはなぜなのか、己に問い続けていた。

 

「榊原さん、これやってくれてありがとね!助かったよ~」

 

「…うん」

 

…なんだかんだ言って今日まで優奈はサボらずに仕事に取り組んでいた。

1日目は自ら長時間の店番を買って出ていたし。

それに、ほんの少しではあるがクラスメイトとも話しているところも見受けられたし。

少なくとも、良い変化があったのは事実だ。

けれど。

それがどうにももやついてしまう。

俺が文化祭にきちんと参加するように言わなければ、優奈は人と関わらず、これまで通り俺だけが優奈に干渉し続けることだっただろうと。

…何を考えているんだろう、俺は。

手のかかる幼馴染が、成長しているのに。

…黙々と手を動かす作業をしていると、思考に耽りやすくなるからか、頭の中で雑念ばかりが渦巻いてしまうのだろう。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「…お待たせ」

 

「もう少し早く来て欲しかったわ」

 

俺のシフトが終わり、優奈と合流する。

優奈は昨日長めのシフトで入ってたため、今日のシフトは免除されていた。

手には小さめのりんご飴を持っている。

 

「正直、変な奴に声かけられるから楽しむに楽しめないんだけどね」

 

優奈はうんざりしたような顔で腕を組みながらりんご飴に口づける。

ああ、ナンパか。

確かに、一般公開だから色んな奴が出入りしてるからなぁ…

 

「…だから、ヒロが隣にいてくれないとうざったくてしょうがないっての」

 

「ああ、悪かったよ。じゃあ行こうぜ」

 

俺は歩きだした優奈に歩幅を合わせる。

なんだかんだ、楽しんでいるんじゃないか。

 

「ここ入ってみない?」

 

「…ほう」

 

優奈が指差したのは、上級生達の中でも取り合いになったというお化け屋敷だった。

外観も雰囲気を出すように、中が見えないよう暗幕を垂らし、受付も死装束を思わせる装いをしている。

金を払い、二人で入ると予想よりもしっかりとした造りになっているようだった。

 

「昔、ヒロと行った遊園地を思い出すわ…あの時はビビってあたしにしがみついてきたよね」

 

「いつの話してんだよ…」

 

小学生の時、親同伴で優奈と遊園地に遊びに行ったことがあった。

いつも俺の後ろに付いて回ってくる奴が、俺が怖いものが苦手だとわかった瞬間、堂々と俺の前を歩き始めたんだよな。

…随分、懐かしい記憶だな。

 

「そうは言っても、あの時よりかはさすがに…うわっ!!」

 

「ヒロ…ビビりすぎだって…ふっ」

 

足首に変なぬめりと嫌な冷たさが伝わり、思わず声をあげる俺。

それを見て呆れながら口に手を当てて忍び笑いをする優奈。

なんだかめちゃくちゃ悔しいんだが…

いっつも俺に世話をかけるくせに…。

…なのに、笑顔でいてくれるのが嬉しい俺がいる。

 

「あーっ、もう、先進むぞ!」

 

「ふっ…ふふっ」

 

俺は自らの恥態を振り切り、歩いていく。

色々な仕掛けが施されているが、結局出口付近まで優奈はお化け屋敷側が求めるだろうリアクションをすることはなかった。

 

「ようやく出口か…」

 

「ヒロのリアクションだけで楽しめたよ、ホントに…ん?」

 

俺が優奈の方を振り向くと、血糊をつけためちゃくちゃ背の高い男が立っていて、優奈の肩を優しく叩いていた。

 

「き、キャアッッ!!」

 

「のわあっっ!?」

 

流石に音も出さずに出てきた大男にはビビったのだろう。

優奈は短い悲鳴を上げると、俺の手を掴んで出口まで駆け抜けた。

景色が黒から白に急激に明け、倒れ込むように廊下に出る。

 

「なんだよ…結局お前もビビって終わったな」

 

「しょうがないでしょ!あれは流石に驚くって!!」

 

「ふふっ、これでお互い様だけどな」

 

「っ…恥ずっ…」

 

ばっと顔を隠す優奈。

なんだかんだいって、優奈は結構弱みを見せるのだ。

その姿に俺は、一瞬胸を弾ませる。

なんだか、俺も顔が赤くなってきた気がして、顔を覆った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

俺は気恥ずかしくなり顔を若干背けながら歩いていると、優奈がある方向を指差した。

 

「ヒロ、あれ食べない?」

 

「チョコバナナか…お前甘いものばっかり食べてない?」

 

「いいでしょ別に」

 

気がつくと、飲食系の出し物が多い場所に足を踏み入れていた。

その中でも、一際チョコバナナの店は他の店より行列が長い。

 

「なんでこんなに並んでるんだ?」

 

「知らないけど…」

 

それは列が進み、店の奥が見えたことで理由が判明した。

百川さんが店に立っているからだ。

ずいぶん男が並んでると思ったら…

…そういえば、チョコバナナ出すって言ってたか。

 

「…ヒロ、あたし離れて待ってていい?」

 

「えっ?なんでだよ。もう少しだぞ」

 

「いいから!」

 

急にそう言うと列から離れていく優奈を尻目に、順番が回ってくる。

すると、俺に気づいた百川さんが元気よく話しかけてくる。

 

「あっ、玉木くんだ!…今休憩中なの?」

 

「まぁ、そんなところだね。百川さんこそお疲れ様」

 

「来てくれて嬉しいな…ねっ、じゃんけんしよ!」

 

「じゃんけん?」

 

「そうそう。じゃんけんして、私に勝ったらチョコバナナ2本あげる!」

 

「そんな屋台みたいな感じでやってんだ…」

 

「結構私じゃんけん強いんだからね。今10連勝ぐらいしてるんだから!」

 

腕まくりするポーズを取る百川さん。

俺はさしてチョコバナナが食べたいわけではなかったけれど、仮に勝っても優奈が食べるだろう。

俺と百川さんは掛け声を合わせ、手を出す。

俺がグー。百川さんがチョキ。

 

「あー、負けちゃった!…まさか負けるなんて…じゃあ約束通り2本あげるよ」

 

落胆するように肩を落とす百川さんからチョコバナナを2本受け取る。

 

「ここはずいぶん人気だね」

 

「まぁね~、だから休憩も取れないよ。…本当に残念。チョコバナナ、2()()()()()()んだろうなぁ…」

 

「えっ?」

 

「んーん。なんでもないよ。じゃあ、後夜祭でね」

 

「あぁ…うん」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「あー、疲れた」

 

「なんだかんだ、結構回ったな」

 

チョコバナナを買った後、文化祭は終了時刻近くを迎えていた。

俺と優奈はそれぞれチョコバナナを片手に、ベンチに座る。

 

「久々にお前と遊んだって感じがするわ」

 

「…そうだね」

 

疲れもあるが、二人の間を漂うなんとも言えない空気感。

周囲には付き合っているとおぼしき生徒達が肩を寄せあっている。

 

「ねぇ、少し言いたいことがあるんだけどさ…いい?」

 

「あぁ」

 

「正直、前に百川に告白されてた時、嫉妬した。…きっとあたしから離れていくんだろうなって、不安になった。だから、ヒロに構ってもらいたかった」

 

「…そうか」

 

「今日、本当に楽しくて昔を思い出したんだ。それと一緒に、もっと早く素直になればよかったって思った」

 

「…おう」

 

「だから彼氏ができないって言われた時、傷ついた。…あたし達が小さい頃、ヒロがあたしをもらってくれるって言ってくれたから」

 

「……それは、悪かった」

 

「だから言うよ。…ヒロ、好きだよ。あたしはこれまでも、これからもヒロ以外は考えられない。百川よりも可愛げもないし、気配りもできないけど…一緒にいたい気持ちだけは、負けない」

 

優奈が一寸の迷いのない瞳で見つめてくる。

その先は、俺に委ねるということなのだろう。

 

…あれから答えを出すのにずいぶんと長くなってしまった。

百川さんか、優奈か。

答えは、ようやく決まった。

 

「あぁ…俺もだ。俺も、そうしたい。優奈と、一緒にいたい」

 

俺は、この等身大の幼馴染と未来を歩いていきたいと思った。

思わず手に持っていたチョコバナナを手放し、優奈を抱きしめた。

どうせ周りもカップルだらけだ。

恥ずかしくなんて、ない。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

宴もたけなわ、ついに終幕を迎えた文化祭。

いまだ興奮冷めやらない周りの様子は、この後夜祭でも未だ健在だった。

後夜祭は文化祭実行委員の進行のもと、最後の花火を打ち上げると言わんばかりの熱狂で幕を開けた。

俺は舞台上を見つめながら、百川さんの出番を待ちわびる。

百川さんがなにを披露するのかはわからない。

けれど、俺は見届ける必要があると思った。

漫才やダンス、学内の内輪ネタなど多くのプログラムが流れていく。

多少拙くとも、この熱狂の中ではまったく問題がない。

それは「楽しむ雰囲気」が出来ているということだ。

そんなことを考えながら怒涛の勢いで消化されていくプログラムの中で、ついに最終プログラムを知らせるアナウンスが出される。

先程までのプログラムとは異なり、舞台上での準備が大掛かりに始まった。

ギター、ベース、ドラム。

それぞれの演奏者が音を鳴らし、調整しているように見える。

そして。

その中心にいたのは、マイクを持つ百川さんだった。

これだったのか。

この後夜祭の最後を締めるため、バンドとして参加することだと。

舞台上の彼女の佇まいは、聴衆がたくさんいることもあり、一端のアーティストのように見えた。

 

「あー、あー。皆さん!文化祭、楽しめましたか!!」

 

百川さんが始める前のMCとして、喋り出した。

それに呼応するように、聴衆は楽しげな声を出し盛り上がる。

同学年でありながら、この華の出し方。

それを遠い目で眺める俺。

 

「今回は、この軽音楽部の皆と一緒に頑張ってきたので、最後にふさわしく締められるように頑張ります!」

 

そう言うと楽器隊が前奏を始め、百川さんが歌い始める。

流行に疎い人でもどこかで耳に入ってきたことがあるような、そんな歌だった。

…歌も上手いんだな。

いつの間にか周りの生徒達は手に持っているタオルを回したり、跳び跳ねているやつも出てきて。

盛り上がりは最高潮に達しているといっても間違いない。

…俺は、彼女に告白された日の後の記憶を思い返した。

百川さんは、素晴らしい人だ。

それはこれまでの日々で証明されている。

けれど、結局百川さんに告白されても気がつけば俺は優奈を追いかけ続けていたのだ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「……聞いてくれてありがとうございました!…では、ラスト一曲になります!皆さん最後まで、ノっていきましょう!」

 

こんなに多くの人の前で歌うのは、本当に緊張するし、度胸がいる。

私のわがままに付き合ってくれている軽音楽部の皆には、感謝しかない。

そして、好きな人が見える位置にいてくれて本当に良かった。

彼はぼうっとした視線だけれど、舞台上から視線を外さずにいてくれる。

いい。凄く嬉しい。自らの努力の成果で、彼と私の距離が縮まっていると感じられるのが。

私は歌のラストのサビにありったけの感情を乗せ、歌いきる。

歌い終わった瞬間、会場内が沸いた。

非日常の終わりが醸した興奮は伝播していく。

この熱量が、私が欲しかったもの。

 

「皆さん聞いてくれてありがとうございました!…それと、私の方から一つ、この場を借りてメッセージを伝えたい人がいます!」

 

私は楽器隊の方へ振り返り、アイコンタクトを取る。

ギターを弾いていた友達に関しては、ぶっぱなしてこいといわんばかりにサムズアップしている。

 

「2年B組、玉木宏哉くん!私、百川華は貴方に伝えたいことがあります!」

 

途端に皆がざわつき始める。

この出だしだと、何を喋るかは大体予想がつくよね。

 

「…きみは憶えていないかもしれないけど!私は昔、君に勇気を貰いました!君の横に並び立つために、色々な努力をしてきたつもりです…。だから、もう一度、伝えさせてもらいます!」

 

「玉木くん、きみのことが大好きです!私と付き合ってください!よろしくお願いします!」

 

私の最後の弾。

熱狂後の公開告白。

途端、歌っていた時にも劣らないほどの歓声と、ひそひそとした囁きが会場内を巡り出す。

 

「うわ~!」「玉木って誰だ?」「ここで告白かよ!」「もう一度ってなんだろう…?」「百川さんかわいい!!」

 

私は目線を彼に注ぐ。

自ずと彼の周りは人が捌けていき、彼の一挙手一投足に穴が空くほど視線が集まっていく。

気を利かした実行委員会が玉木くんにマイクを渡した。

 

「百川さん…ありがとう。君の気持ちは本当に嬉しいよ」

 

「けれど…君の気持ちには応えられない。好きな人がいることに気がついてしまったから。…ごめん」

 

 

瞬間、会場内がすとんと静寂に包まれた。

あれだけ熱に浮かされていたのに、急激に場内が冷え込み凍りつく。

いや待って。

玉木くん。

待ってよ。

マイクを使っていたから、より克明に耳に入ってしまった。

応えられない…?

…そんなの、おかしいよ。

 

ここで私と貴方は劇的に結ばれて、これからの四季を二人で巡って、あんなこともあったねって笑いあって。

私は私という物語の主人公として、恋した人に殉じるはずだったのに。

 

…ということは…私は主人公ではなかった?

いや待って、好きな人って。

絶対に、あの女(榊原さん)じゃないか。

何で、何でなの。

私をいたぶって、絶望に突き落としたあの女(榊原さん)がきみに好かれるの。

納得できない。理解できない。

瞬間、脳裏に思い起こしたくない記憶が放出される。

 

「あぁぁぁ!」

 

私は思わず歯噛みしながらたたらを踏み、激痛に耐えられなくなって頭を振り回す。

あの時のあの女(榊原さん)がゆっくり近づいてくる!

私を貶めるくせに、いかにも申し訳ないという顔をしている奴が!

加害者の癖に被害者ぶるあの女に、私があれだけ願った幸せがもたらされるなんて!

…許せない許さない許すもんか!

瞬間、何かが頭の中で破裂するような音が聞こえた気がして、私は力なく舞台の上で倒れた。

 

…それが堪らなく惨めで、叶うならきみに見て欲しくなかった。

きみに見てもらうのは、完璧で主人公のような私だけだったはずなのに。

結局砕け散るのは私だったんだって…認めたくなかった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

文化祭から数日経った。

俺はいつも通り、朝飯を食べ、ローファーを履き、優奈と学校へ向かう。

 

「風が気持ちいいな」

 

「まだ冬には早いしね」

 

お互いの腕を組みながら、他愛もない話をし続ける。

明確に変化した関係性に、俺達はすぐに順応した。

 

「…課題、きちんとやったか?」

 

「うん。…こう見えてもあたし、ヒロより頭良いから」

 

「そうだったな」

 

ただ思いついたような話題を口にしていく。

…でなければ、あの後夜祭の出来事を頭から離すことができないだ。

数日経ったにも関わらず、べっとりと記憶に塗り込まれてしまった。

百川さんが倒れた後、周囲は騒然となった。

渦中の人となった俺は、その騒ぎの最中で腹を殴られ、鈍い痛みが走ったのを覚えている。

見ると、イケメンエースストライカーだった桜橋先輩が俺を睨みつけ走り去っていった。

おそらく、百川さんを傷つけた俺が許せなかったんだろう。

…仕方ない。

何かを得るには、何かを代償として払わないといけないのだから。

 

「ヒロ…?」

 

「あぁ、悪い。ちょっと考え事してた」

 

「そっか」

 

気がつけば高校の手前まで来ていた。

俺達は組んだ腕を放し、教室へ歩いていく。

数日経った今でも、学校で百川さんを見かけることはなかった。

連絡を取ってみようかと思ったが、断った俺が言えることなどなにもないだろう。

もやつく思考を払うように、俺と優奈はクラスへ入る。

…何かがおかしい。

教室にいる皆が、まるで異物を見るような視線を向けていた。

その視線は戸惑いや嫌悪が含まれていて、嫌な感覚。

 

「なぁ…玉木。これなんだけど」

 

そしてその雰囲気に割って入ってきたのは、風見だった。

後ろにいる優奈をチラチラと伺いながら、俺にスマホを見せてくる。

そこにはクラスのチャットルームに、動画が貼られていた。

俺は自分のスマホを取り出し、チャットルームを開く。

画質は荒い。

トイレと思われる所で、複数人の女子が一人の女子を囲んでいるように見える。

 

「これ、他のクラスの友達から回ってきてさ…これって…榊原も映ってるよな?」

 

動画を見続けると、一人の女子に対して複数人の女子が囲っているのがわかる。

音質も良いとは言えないが、その女子たちは優奈の名前を呼んでいることから、この状況に関わっているのだろう。

優奈の方へ振り向くと、青白い顔をしており、暑くもないのに顔から汗が滴り落ちている。

 

「この動画ってさ…おそらくかなり昔のものだけど、イジメの現場ってことだよな?」

 

風見の言葉が続くが、なんと返せば良いかわからない。

突然の出来事で、頭の中がこんがらがる。

これは、どういうことなんだ…?

現実の世界に対応できずにいると、スマホにメッセージの通知が送られてくる。

 

差出人は、百川さんだった。

俺は、ゆっくりとメッセージ欄を開く。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

大好きな玉木くんへ 

 

きみはきっと、優しくて強い人だから、きっと私のことをブロックしていないと思ってこのメッセージを送るね。

 

きっと今頃、過去の私が映っている動画が学校内で出回っていると思う。

 

ひどく惨めで、不細工な私が…。

けれど、私よりもずっと醜い榊原さんも映っているよね。

 

動画にもあるように、私が小学生だった頃、彼女は私をいたぶったんだ。

それが要因となって転校せざるを得なかった。

 

…きみは憶えていなかったと思うけど、私ときみは小学校の時一緒のクラスだったんだよ。

 

初めて告白した時に気づいてくれるかなと思っていたけれど、無理ないよね。

 

…だって名字も変わってるしね。

深い付き合いがない限り、数年経てば人の記憶からは抜けちゃうだろうし。

 

正直、悔しいかな。

きっと最終的にきみが榊原さんを選んだ理由は、付き合いの長さだったと思うから。

 

私があの時、転校していなかったら。

もしかしたら、きみと思い出を積み重ねていって、違う未来があったかもしれない。

そう思うと、全身が引き裂かれそうなくらい辛いし、榊原さんが本当に憎いよ。

 

…長くなっちゃったから、最後にするね。

私、百川華はフラれても、いつまでも貴方を想い続けるね。それと…

 

 

きみのことは大好きだけれど。

 

きみの隣の女は、大っ嫌いってことを。

 

 

ねぇ、きみは…人の人生を狂わせたその女を、変わらない目で見続けることができますか?

 

 

またいつか、きみに答えを聞きに行くね。

 




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