「もしもーし、大丈夫ですかー?」
「………………」
「へんじがないただのしかばねのようだ」
習うより慣れろ、とはいうが、そもそも世界の創造とかいう大事業を始めるにあたって何をすればいいのかもわからない。
下手の考え休むに似たりとも言うし、答えを知っているであろう案内役がいるなら聞くのが早い。直接答えをもらえずとも、ヒントくらいはもらえるはずだ。
「………………」
「そもそもゴーストタイプなら最初から死んでるはずじゃ……」
ふと思い付いた事を口にしてみる。死んだ振りはバレているぞとのカマかけにもなるし、反応があれば次のステップに進めるはずだ。
「………………」
「……ダメかぁ〜」
思わず肩を落とし、溜め息を吐いてしまう。ああ、貴重な幸せが逃げていく〜。
その後も死んだ振り確認で色々と悪戯を予告してみたり実践してみたりもしたが、結果は同じ。
あいての ???には
こうかは ない みたいだ……
しかし困った。知恵を絞り手を尽くしたのに、うんともすんとも言わない。
アルセウスは見守ってくれてるらしいが、そもそも時間を超越した存在なら俺換算で気が遠くなるほどの時間でも待ててしまう可能性もあるので、助けは期待できそうにない。これは詰んだか?
「……って、そうか、時間」
よくよく考えたら、まだ世界の創造すらしていないのだ。時間も空間も存在していないから停止したままの可能性もある。
この拠点がある以上、世界そのものは存在している事になるのかもしれないが、これはアルセウスから与えられたものでもある。そのアルセウスが影響を懸念して去っていったなら、まだ所有権が俺に移っていなかったり、機能が制限されていたりするかもしれない。
アルセウスとその分身はみんな時間を超越してるだろうから、恐れ多くもその末席に連なる俺も停止してるどころか存在しないはずの時間の中でも動けるのだろう。
だが、案内役は違う。アルセウスが言うには、別の宇宙からやって来た。つまり時間がなければ動けない。停止中の意識だってあるか不明だ。
きっとない。そうであってほしい。動けるようになった瞬間アルセウス並らしい強さを向けられるのは嫌だ。あ、でもツボツボに近いなら攻撃力は低いのか。安心だな!(慢心)
「そうと決まれば早速ディアルガを作ってみよう! やり方は……わからんorz」
思考のブレイクスルーが起きたと思ったのも束の間、今度は技術のブレイクスルーを要求された。ハードモードすぎん?
「うーん、うーん」
悩む。すごく悩む。イメージしてどうにかなる問題だろうか。
生命の創造、しかも時間を司る神様だ。コスト的にはものすごくお高いに違いない。ガチャだとしても天井前提の最高レアなのは簡単に予想できる。
「……そうだな。どうせなら楽しまなきゃ損だ」
俺一人ならまさか確率を相手にする事はない。そう思っての発言だった。
だが俺は……弾けた。
「そして君が生まれたってわけ」
『とても納得したくない』
「元気出して下さい。いざとなったらミュウツー並の逆襲しましょう」
「案内役が謀反を起こそうとしないでくれるかなぁ?」
はい、ディアルガ無事誕生です。創造したのがスマホゲーやブラウザゲーあるあるなチュートリアル用の確定ガチャな事もあり、単発ツモした今は非常に気分がいい。
創造する前は自作自演なので虚しいかなーと思ってたが、いざ回してみてちゃんと動いてちゃんと演出がはいって無事に排出されるのを見ると、テンションが上がるのなんの。ものづくりの醍醐味である。
そんなわけで初めての創造が上手くいった事に対する感動が強くて、予想してた虚しさとかは感じる暇がなかったと言えるだろう。
そしてディアルガが誕生した事で時間が発生し、俺の予想した通りに案内役が起動した。
ふっふっふっ、試行錯誤する中で怒って我慢しきれずに動き出すかなーと思って描いた顔の落書きとかの証拠を隠滅しといて良かった。ディアルガに反逆の案内してるのは仕返しじゃないと信じたい。
「そうは言いますけど、世界で最初に作ったものがガチャとか大丈夫なんですかこの宇宙」
「大丈夫だ、問題ない」
「それダメなフラグでは? でもまぁその流れだと『神はまだ言っている……』って、その神があなたなんですよねぃ」
肩を竦める案内役は、割とフランクかつ友好的だった。
肝心のポケモンに関する知識はそこまでではなく、必要に応じてインターネットで調べるらしい。あるのかインターネット。俺も使いたい。
そんな感じで捲し立てたら、出身世界の都合というか、規格が違うからこその芸当らしい言葉を返された。
つまり俺の創造する世界に含まれないので俺には干渉する事もできないらしい。無念。でも朗読とか写本はできるので、漫画の新刊とかは頑張ってもらう予定。
「それじゃあ次は……ディアルガときたらパルキアかな?」
「創世神話というかチュートリアル的にはそれで間違いありませんが、その辺はあずゆーらいくってやつですの。致命的な不具合が起きそうなら止めますので」
「了解。じゃあ早速ガチャの中身を変えて……っと」
時間の次は空間。この二つが揃えば、いよいよビッグバンに近い現象と共に宇宙を誕生させる事が可能になるらしい。
人間だった頃は時間の方が強そうだったが、時空を超越するアルセウスの身になって考えると、時間は一方通行の前後一次元で空間は縦横高さの三次元だから、空間の方がお高いんだよなぁ。
なので意図せず俺は順序良くステップアップしていると言えるのではなかろうか。やる事がガチャを回すなのは言ってはならない。創造神の決めた原初のルールだ。
「それでは設定も済んだし……お祈りタイムだ!」
「創造神が神頼みとはこれいかに」
「だまらっしゃい!」
「そういえばポケモンに運命神っていましたっね?」
「知らん!」
『威厳の欠片もないのだが……』
「ごふぅ!」
「アルセウス戦闘不能! ディアルガの勝利!」
『は? いや……ううん?』
ごめんねディアルガ、ダメな父親で……父親?
思えば伝説のポケモンは大概性別不明だった気がする。神扱いのポケモンは繁殖する必要がない完成した存在とも言えるし、あるいは本人の意志で性別を変えられる可能性もある。多分そんな感じ。
俺は後者を推すし、俺の性自認は男性だ。でも人外ボディなんだよなぁ。性欲を向ける相手が自分の創造したポケモンってのもあれだし。
案内役? ないわー、体の一部的な意味で。やはり女性らしさの象徴がですね(ろくろを回しながら)。
『わたしは クウカンポケモン パルキア。こんごとも よろしく・・・』
そうしてガチャから排出されたモンスターボール……いや、なんか白い部分も赤いボールから出現する演出と共に現れたパルキアは、どこかの毒電波を受信していた。
空間を司るポケモンだから第四の壁まで部分的に越えちゃったんだろうか。
「無事に創造されましたねぃ。ご感想は?」
「思ったより親しみやすそうで人間達にも大好評だと思います」
案内役の質問に思った事をそのまま答えながら、同時に少し気になった事がある。
俺が創造する世界は、果たしてどんな形にするべきなのだろうか。
ゲーム、アニメ、ギエピー、拡張現実……世界には様々なポケモン作品が存在している。
ゲームだって本家のポケットモンスター以外にも、俺のプレイした人間がいないポケダンやポケモンがいないポケカGB、あるいはポケモンスナップやポケモンGOなんかも存在している。既存作品の模倣だけでも候補は無数に存在するのだ。
アルセウスは俺に俺だけのLEGENDSアルセウスを……とか言ってたが、そもそもLEGENDSアルセウスが何かって説明はしなかったしな。
案内役も致命的にダメな場合は止めるらしいけど、逆に致命的じゃなかったら自由度は高そうだ。
『私か? 私がおかしいのか?』
「おっと闇堕ちフラグが」
「威厳のあるディアルガも人気出ると思うから元気出せよ。俺にはお前が必要だぜ?」
なんて悩んでいたら、何やらディアルガが俺以上に深刻な悩みを抱いていた。疎外感だね、わかるとも。
とりあえず人間やポケモンも、チョリーッスとか挨拶しそうな軽い感じの俺達よりは、威風堂々としたディアルガの方が神様って感じがして頼りがいを感じると思う。見た目だけならどっこいなんだけど、喋り始めるとね。特性『プレッシャー』は格が違った。あれ、パルキアも『プレッシャー』なのか。
そもそもこの場には『じくうのとう』も『ときのはぐるま』もないから闇のディアルガにはなれない、はず。
「そういえば闇堕ちで思ったんですけど、ディアルガとパルキアにはオリジンフォルムなる形態があるのだとか」
「知らん……何それ……怖……」
「ダイパの後発になるプラチナでパッケージを飾ったギラティナちゃんが披露した本来の姿ですよぅ。その後の第八世代にあたるダイパの舞台シンオウ地方がヒスイ地方と呼ばれていた大昔のLEGENDSアルセウスでディアルガさんとパルキアさんも解禁したようでして」
「えー、じゃあ俺、失敗してるの?」
衝撃の事実。仮の姿で創造されちゃったんだけど、どうしよう。力が足りなくて時空が歪んだり壊れたりしないだろうか。
それ以上にディアルガとパルキアが不満に思って反逆しないか心配だけど。
「とはいえゲーム的には種族値の合計は変わらないようですし、味方でその姿を取るには専用の『もちもの』が必要なんですよねぃ。更に設定の話ではオリジンフォルムのディアルガやパルキアが存在するだけでその場の時間や空間が狂ったり破壊されたりと、力を持て余してる感があります」
『それは私の望むところではない。最初からこの姿で生まれてこられた幸運を私は感謝しよう』
『ぱるぅ!』
「お、お前達……」
あったけぇ……。自分で創造しといてなんだけど、どこまで影響してるかわからんけど、とにかく良い子に育ってくれて俺は嬉しい!
「まぁ、強いて言うなら世界の創造に失敗したとき用のリセットに必要な能力ではあるかもしれないんですよね」
「うげっ、責任重大じゃん」
『失敗しなければいいのだろう?』
「非常に強気!?」
『パルルゥキアァン』
「お、おぅ。応援ありがとうな」
どうしよう。ディアルガもパルキアも微妙に脳筋なんだろうか。
「あ、そうでした。次はギラティナを作りましょう。なる早で」
「なる早?」
「なるべく早くって意味です」
「あ、うん。意味は知ってるけど理由?」
なる早で、と言う割に焦りを感じないから困惑するんだが。
もしかして究極的には裏切る相手だから他人事とか。あるいは単純に呑気なのか。
うーむ、微妙に悩ましい問題が出てきちゃったよ。